モノづくりにおける熟練技術者の知識伝承と設計の生産性向上に資することを目的として、熟練者の知識を獲得し、デジタル化して体系的に蓄積し、逐次実行できる知識ナビゲーションシステムを開発した。このシステムは、熟練者の知識・ノウハウをワークフローと制約・根拠情報のフレームワークにより、デジタル化して獲得、編集、蓄積、実行できる。実装されたシステム「指南車」は、設計、製造の現場に適用され、モノづくりにおける知識伝承ならびに品質レベルの高位平準化、リードタイムの短縮に効果的であることが確認された。
リスクの存在は私達の日常生活に深く浸透している重要な問題であり,次々に発生する予測不能なリスクに対して組織・社会がいかに対応力を育んでいくかが社会的課題となっている.そこで本研究では,組織リスクマネジメントの技能伝承の可能性を検討すべく,はじめに組織リスクマネジメントの成熟度を既定するモデルであるJ-RMMM及びこのモデルに基づいた成熟度診断ツール開発の経験を紹介し,次に電気・電子製品製造業,化学産業,電力供給業,航空業といった高度技術産業分野において第一線でリスクマネジメントを実践するプロフェッショナルへのインタビュー調査の結果を紹介し,成熟度モデルで既定する組織リスク対応のための形式的な知とプロフェッショナルの持つ暗黙的な知の意味的連結の分析を行った.最後にこれらリスクマネジメント技能の伝承問題について考察する.
本稿ではBRM(Bridge Resource Management)シミュレータトレーニングのシナリオ難易度を評価する 手法を提案する。はじめに、過去のシミュレータトレーニングのログを利用してタスクネットワークモデルを構築する。このモデルにより、他船の出現や外部からの通信といった状況に対するチームの行動を表現する。モデルに基づくシミュレーションにより、シナリオ内で発生する危険なイベントをチームが発見するまでの時間を評価し、これをシナリオ難易度の基準とする。複数のシナリオを本手法によって評価した結果、シミュレーション結果が示す難易度は、熟練者らによる主観的評価と一致した。また、シミュレーション結果の可視化分析によりシナリオ間の差異も明らかとなった。