現在,宇宙航空研究開発機構(JAXA)ではH-IIAロケットの信頼性向上へ向け,情報技術を積極的に利用した設計プロセスへの移行を目指した活動を行っている.ロケットの新規開発は10年以上間隔があくため,形式知化を通した設計知識の伝承が大きなテーマのひとつとなっている.ここではH-IIAロケットで多数使われているバルブの設計プロセスの革新の活動についてご紹介する.
生産ライン操作や保守作業では、初心者と熟練者の間には段取り・手順に違いが現れ、効率・正確性に差が出る。我々は、熟練者の作業手順を記録し共有化する手法を研究している。試作したWearable作業記録システムは、カメラで作業内容を録画すると同時に、手足につけた加速度センサで作業者の動作を記録する。動作から重要な作業のイベントを発見することができる。このシステムを用いて、作業記録マニュアルを自動生成できることを示した。
産業界における「ナレッジ・マネジメント」の重要性が叫ばれている。それを三つの要素に分解するなら知識の共有・創造・収集となる。先人たちの知識をいかにその三要素に取り込むかのできるだけ具体的な方法論を示す。
ソフトウェア開発における設計者の設計思考過程を表現して,他の設計者が利用できるようにするCAPISモデル(CAsality of Problem-Issue-Solution Model)の研究を進めている.本論文では,設計者が思考過程の表現で記述するべき記述項目の「構造」と記述項目間の「関係」を考慮して思考の内容を表現できるようにする方法(表現支援法)について述べる.さらに、ライントレースロボットの制御システムの開発への適用実験を行い,提案する表現支援法を用いることにより思考過程の表現に慣れていない設計者でも設計過程における思考の内容を正しく表現できることを確認する.
技術・技能の伝承には、マニュアルに描けない重要な要素として動作・知覚・思考があげられる。本研究では人の高次認知機能である類推力に着目し、対象物を如何に分類し知識表現できるかを自演するゲームを構築した。まずは学生を対象として日常のテーマで実験し動作履歴を分析した結果、思考パターンが類型化され思考の変化をとらえることができた。このゲームが技術・技能の伝承支援と、若手の思考鍛錬になる可能性を考察する。