企業内の業務に関する知識・技術・技能の伝承を支援するためには、それらの存在を明確にし、多くの人が認知できる形式で可視化することが重要である。本発表では、安価な小型PCとマイコンおよびセンサモジュールを用いたIoT技術の活用によって、主に中小製造業を対象とした現場作業者の活動を可視化する取り組みについて述べる。このような可視化自体は、市販の製品やサービスとして各事業者から提供される範囲が広がりつつあるが、本発表ではこのような可視化を使用者自ら実現するエンドユーザ開発の観点で報告する。
発電現場は省力化が進み、ベテラン人材は減少傾向にある状況で、現場技術の伝承と自由競争下でのさらなる効率化を両立させる必要がある。一方、監視画像の深層学習による異常の検知AIの開発の際には、学習に必要な異常データが充分に存在しないという現場の課題がある。本研究では、現場の知見ベースで模擬の異常データを生成して特徴学習に用いるというアプローチで検知AIを試作し、実設備への適用性を検証した。
福井県敦賀市に位置する実験用原子炉施設である「ふげん」は廃止措置中である。廃止措置は時間とコストを抑えることが大切であり、近年は、廃止措置自体は技術で解決可能な課題であると指摘されている。廃止措置が進む一方で新炉の建設は未定である。そのため、これまで培われてきた知識や技術等の喪失が懸念されている。こうした諸課題に対して十分に研究されていない。そこで、まずは「ふげん」を研究事例とした知の伝承を射程に、対象となる知識、技術を同定することを目的にする。
登山での転倒・滑落は下山時に発生することが多いが,近年,疲労や病気を原因とする高齢者の山岳遭難が増加傾向を示しており,心身の疲労具合に応じた安全な登山が求められている.本研究では実際の登山道において,眼鏡型および腕時計型ウェアラブル端末を用いてストックあり・なしの歩行状態を計測・分析した.その結果,ストックの使用が,①下山時の着地強度の軽減,②視線移動の減少に伴う足元への注視,③荷重分散と筋力の消耗低減に伴う歩行バランスの安定化に寄与できる可能性があり,また被験者の登山経験の差異によって足の踏み込み方の違いがある可能性が示唆された.ストックの適切な使用を登山者に指南できれば,遭難事故防止の一助になることが期待される.