本研究では,大学におけるSlackの1年余の単一事例を通して,組織文化とコミュニケーションツールが職場のコミュニケーションをどのように形成していくかを検討する.本研究では,「コミュニケーションツールの特性が,組織文化を直接的に形成することはない.」「既存の組織文化が,コミュニケーションツール特性の活用法を決定する.」という2つの仮説を検証する.管理者向けアナリティクス機能によるデータおよび一般的なSlack/Teamsの運用傾向との比較を用いて,活動量やチャンネルの開放性,投稿の偏りなどを把握し,仮説が支持されることを確認した.オープンなツール特性を有するSlackに対して,実際にはクローズドで階層的な文化に沿った利用がなされており,パブリックチャンネル外での投稿が多数を占め,投稿者の偏りが観測された.本研究では,組織文化とツール特性を媒介する「運用レイヤ」を提案し,組織文化とツール特性の間を調整する主要なレバレッジとして位置づけた.移行・運用に関する実践的な示唆についても概説する.
データ駆動型研究における再現性確保は、データやコードの共有を研究者に求めるが、その作業負荷がオープンサイエンス推進の障壁となっている。この課題を解決するため、我々はAIを活用したTransliterate Computingを提案する。これは、人間が理解できる自然言語の文書(プロジェクト定義書、論文など)を基に、AIが実行可能なコードや環境を作り出す実行可能な手順書を自動生成するアプローチである。研究者はコードや手順書ではなく文書の共有に注力でき、再現性確保のプロセスが大幅に効率化される。共有情報が特定の技術環境に依存しないため、持続可能な知識共有の実現にも貢献する。
筆者らはプログラミング教育において多くの演習問題をこなすことが、学習者の理解を促進すると考えている。従来は一般的に有用と考えられる演習問題を教員が作成し学習者に提供していたが、学習者の理解度のばらつきにより、易しすぎたり難しすぎる場合があった。本稿では、学習者の理解に合わせて演習問題を生成する方法を提案する。
ビジネスモデルの設計では,顧客価値を生むビジネスモデルを作成する必要がある.これまで,顧客価値に焦点をあてたビジネスモデルを作成する方法が知られている.また,顧客が抱える厄介な課題に基づいてイノベーションを創造する方法が提案されている.しかし,顧客の課題に基づいてビジネスモデルを設計する方法は明らかではなかった.本稿では,ジョブ理論に基づいて識別した顧客の課題から製品・サービスの機能を明かにするVPC を用いて,BMC によりビジネスモデルを設計する方法を提案する.また,提案手法を防災スマートハウスに適用することにより,有効性を確認する.
製品・サービスのビジネスモデルや社会課題の解決策の設計では,多様な手法が提案されている.たとえば,顧客価値に焦点をあてたビジネスモデルの作成法が知られている.また,社会が抱える厄介な課題を解決するデザイン思考手法が提案されている.しかし,これらの多様な手法の成熟度を共通的に評価する指標は明らかではなかった.本稿では,品質,アーキテクチャ,プロセスからなるQAP三角形を用いて,各種の手法の成熟度を明かにする方法を提案する.また,構造化デザイン思考フレームワークに,提案手法を適用することにより,有効性を確認する.
従来ゲームシナリオの中ではゲーム内での時間的経過を無視し、台詞などに矛盾が生じることがあった。こういった矛盾の起きないイベントシステムを提案し、業務フローの検証などにも応用をつなげる1歩とする。