人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
2026 巻, FIN-036 号
第36回金融情報学研究会
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
  • 橋本 龍二, 高田 亮介, 鈴木 雅弘, 田中 優貴, 和泉 潔
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 01-08
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    人工市場シミュレーションは,適応的なエージェントの相互作用から生み出される金融市場の価格ダイナミクスを構成論的に理解する有用な枠組みである.人工市場のエージェントモデルにおける構成要素に,学習と投資家特性があるが,両者を統合的にモデル化した場合にどのような集団的ダイナミクスが生じるのかについては,十分に明らかにされていない.本研究では,マルチエージェント強化学習を用いて,異なるリスク回避度,時間割引率,情報アクセスを持つエージェントが,人工市場において相互作用しながら取引戦略を学習する枠組みを提案する.この枠組みでは,投資家特性は,観測および報酬関数の設計を通じて学習過程そのものに組み込まれており,各エージェントは他者の学習行動によって変化する市場環境の中で,自身の嗜好に整合した行動様式を相互作用的に獲得していく.実験の結果,i)投資家特性の異質性の下での学習は,特性に対応した固定的なルールではなく,相互作用を通じて機能的に分化した戦略の形成を促すこと,ii)このように分化したエージェント同士の相互作用が,ファットテール性やボラティリティ・クラスタリングといった現実的な市場ダイナミクスを再現することが示された.本研究は,投資家特性と学習メカニズムを統合的に設計することで,適応的相互作用を通じて市場生態系が自己組織化する人工市場を構築できることを示した,適応的市場仮説を計算論に具体化する枠組みを提示するものである.

  • 小田 直輝, 星野 崇宏
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 09-14
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は、日野自動車のトラックデータを用い、日本市場の製造業における企業業績及び決算サプライズのナウキャスティングの有効性を検証した。従来の会計情報は、企業活動から公表までに制度的な遅延を伴う。そこで本研究では、高頻度のトラックデータから物流成長指標を構築し、企業活動を即時的に捉えることを検証した。実証分析の結果、物流成長指標は前年同期比の売上高成長率と有意な正の相関を示し、物流活動が企業業績を捉える指標となり得ることが確認された。また、物流成長指標と経営者の業績目標値との乖離は、決算サプライズを事前に予見する有効な指標となり、当該情報に基づく投資戦略が正の累積異常リターンを生む可能性を示した。

  • 金澤 輝代士, 佐藤 優輝
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 15-17
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    In financial market microstructure, linear price-impact models have been widely used to estimate transaction costs: ${\rm E}[\Delta p \mid Q]\approx \lambda Q$, where the conditional average of price change $\Delta p$ is proportional to the total volume of market orders $Q$, with a coefficient $\lambda$ (called Kyle's lambda) characterising the market liquidity. This linear price impact is fully implemented by the linear propagator model, to account for the diffusive behaviour of the financial price even in the presence of long memory of market-order flow. However, it has been empirically established recently that such linear price-impact models are not technically correct; the square-root law is empirically correct for large $Q$. In this talk, we revisit this linear propagator model from a statistical viewpoint of model misspecification.

  • 星野 知也
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 18-23
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,市場構造の類似性に基づく検索型資産配分手法を提案する.金融市場を構成する資産間の関係性は,相関構造やネットワーク構造として表現でき,これらは個別資産の価格変動のみでは捉えにくい市場構造の特性を反映する重要な情報を含む.本手法では,分散共分散行列および資産間ネットワークから市場構造の特徴量を抽出し,これに基づいて過去の類似する市場局面を検索する.得られた類似局面を参照することでリスク構造を推定し資産配分を決定する.米国株式市場を対象とした実証分析により,本手法が従来の平均分散アプローチ等と比較して,優れたパフォーマンスを示すことを確認する.

  • 原田 春貴
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 24-31
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は、日本企業における取締役の兼任ネットワークの中心性が、売上減少時における販売費及び一般管理費のコスト下方硬直性(cost stickiness)に与える影響を分析するものである。コスト下方硬直性は、需要の不確実性や調整コスト、あるいは経営者のエントレンチメントといった観点から説明されてきた一方で、取締役の兼任によって形成される企業間関係がコスト調整行動に及ぼす影響については、体系的な検証が限定的である。取締役の兼任は、企業間の情報共有を通じて取締役会の助言機能に寄与し得る一方で、取締役による経営者への監督機能を低下させる可能性も指摘されており、その効果は一様ではないと考えられる。取締役会が担う助言機能と監督機能の間には、経営者による情報開示行動を介したトレードオフの存在が示されており、取締役の独立性が十分に確保されていない環境では、経営者が取締役に対して選択的に情報を開示するインセンティブが強まり、監督機能は低下しやすい。取締役会に内部昇進取締役が多く、取締役と経営者の間で人的・組織的な結びつきが形成されやすいと考えられる日本企業では、取締役の兼任が助言機能に寄与するというよりも、監督機能を毀損する方向に作用する可能性がある。さらに、このような環境下では、兼任ネットワークにおいて中心的な位置を占める企業ほど、監督機能の低下という影響をより強く受けると考えられる。本研究は、取締役兼任ネットワークの中心性という構造的特性に着目し、日本企業における取締役兼任ネットワークとコスト下方硬直性との関係を明らかにすることを目的とする。本研究の知見は、取締役の兼任を単なる社外取締役の有無や取締役の独立性の問題として捉えるだけでなく、兼任がもたらす企業間のつながりを通じてガバナンスがどのように企業行動に結びつくのかを示し得る。特に、日本企業においては、取締役兼任ネットワークが情報共有による助言機能への寄与よりも、監督機能の形骸化を通じてコスト調整行動への影響を示した点に本研究の意義がある。

  • 二俣 新
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 32-38
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    日本では、二酸化炭素(CO₂)排出量取引制度が2023年度に試行的に導入され、2026年度には本格運用が開始される予定である。欧州では排出量取引が長い歴史と高い取引量を有している一方で、日本においてはCO₂排出量取引の拡大が依然として主要な課題となっている。本研究では、マルチエージェント・フレームワークを用いてCO₂排出量取引市場を分析する。排出企業、吸収企業、マーケットメーカー、および取引所をエージェントとしてモデル化し、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いてエージェントレベルおよび市場レベルのパラメータを推定するとともに、人工市場を構築する。さらに、大規模言語モデル(LLM)に基づく生成AIを排出企業および吸収企業のエージェントに組み込み、外生的なニュースを反映した注文提案を生成する。人工市場の分析から、以下の3点の主要な知見が得られた。(1) マーケットメーカーの参入は取引量を増加させること、(2) その増加幅はマーケットメーカーの取引戦略に依存すること、(3) ニュースを取り込むことは、企業行動のみならず市場価格にも影響を与えることである。

  • 板倉 亮真, 平野 正徳, 今城 健太郎, 坂地 泰紀, 野田 五十樹
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 39-46
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は、金融市場における取引制度の影響評価を目的とした人工市場シミュレーションに向けて、LLMベースエージェントを用いた人工市場モデルの構築手法を提案する。従来のルールベースエージェントによる人工市場では、投資家の意思決定則およびその分布を人手で設計する必要があり、設計コストと恣意性が課題となる。そこで本研究では、LLMが生成した投資戦略を疑似コードとして事前に生成・保持し、疑似コードを実行して注文を決定する疑似コード駆動エージェント(LBA-P)を提案する。これにより、戦略をテキストとして保持したまま、現実の投資家の分布を模した多様な戦略分布を半自動的に導入し、事後的な戦略分析を可能にする。実験の結果、疑似コード条件では市場のStylized Factsを満たす一方、戦略表現をPythonコードにすると一部指標が満たされなかった。また戦略ロジックの事後分析から、出力形式の違いが戦略分布に系統的な偏りを生むことを示し、LLMに基づく市場の半自動モデリングにおいて戦略表現の選択が重要であることを明らかにした。

  • 市川 佳彦, 白井 祐典, 高野 海斗, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 47-54
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    In this study, we examine whether sentiment in the Federal Reserve's Beige Book is reflected in the Bitcoin market, focusing on the magnitude of price movements and mining difficulty changes around release dates. Prior work using financial sentiment dictionaries and FinBERT suggests that energy-related sentiment is linked to mining difficulty, but such approaches may miss context-dependent meaning. We therefore compare dictionary-based scores, FinBERT, a dovish–hawkish measure, and LLM-based sentiment scores computed at both the sentence level and the document level using gemini-2.5-flash/pro, Claude Opus 4.5/Haiku 4.5 with a generic and a cryptocurrency-oriented prompt. Our results indicate that dovishness in the economic-activity summary is weakly associated with larger Bitcoin price moves, while energy-topic dictionary sentiment is associated with larger mining difficulty changes; only the document-level, cryptocurrency-oriented LLM score for the full report is significant for price-move magnitude, and no LLM specification is significant for mining difficulty.

  • 白井 祐典, 市川 佳彦, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 55-60
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    企業の利益予測は、経営者の意思決定支援に加え、投資家・アナリストをはじめとする外部ステークホルダーにとっても重要なタスクである。従来は財務諸表等の数値データに基づく定量モデルやアナリスト予測が主流であったが、財務諸表外の定性的情報や経営者の見通しといった文脈情報を十分に取り込めないという限界がある。そのため、アナリストの推論過程を模倣できる大規模言語モデル(LLM)を用いた利益予測が高精度である可能性が報告されている。しかしながら、どのような企業特性で予測精度が分かれるのかという予測の異質性、学習に含まれない将来の未知データに対する汎化性能(アウトオブサンプル性能)、reasoning出力の有無が精度に与える影響は十分に検証されていない。そこで本研究では、日本株式市場における利益増減方向予測のベンチマークデータを用い、クラウド型LLM(GPT5.1、Claude 3.7 Sonnet)とローカル型LLM(GPT-OSS-120B)を比較評価する。モデル間の公平性を担保するため、ナレッジカットオフの近いモデルを選定したうえで、ベンチマーク最高精度のモデルとの比較に加えて、ベンチマーク公開後の直近期を対象とした厳格なアウトオブサンプル評価を行う。さらに、売上規模および業種別に精度差を分解し、業種別の利益増減の自己相関との関係から、予測が当たりやすい条件・外れやすい条件を考察する。加えて、出力されるreasoning文字列の傾向を分析するとともに、reasoning出力を禁止した場合の精度変化を測定する。

  • Ito Tatsuto, Ozaki Ryota, Imajo Kentaro, Hirano Masanori
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 61-67
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は、日本の金融市場分析を目的としたローカル大規模言語モデル(LLM)のドメイン適応を調査するものである。企業とテーマの関連性スコアリングを、企業名と投資テーマから整数スコア 0から10へのマッピングとして定式化し、ランキングに用いる。訓練データはgpt-oss-120bによって生成された疑似ラベルから構成され、複数の8Bクラスのオープンモデルを教師ありファインチューニング(SFT)により学習させた。InstructモデルとSFTモデルを比較した結果、SFTにより出力の一貫性が大幅に向上することが確認された(例:Llama-3.1-8BのTSE33業種分類におけるTop-1精度が0.354から0.677に改善)。最良モデルはこのタスクでTop-1精度0.707を達成し、15の投資テーマにおけるテーマ関連銘柄の特定でPR-AUC 0.651を記録した。全上場企業を対象としたドメイン外評価では、事前学習において日本市場の知識を含むベースモデルの方が汎化性能が高く、SFTは全てのモデルで一様に性能を向上させるわけではないことが明らかになった。

  • Kameyama Takashi, Kato Masahiro, Minakawa Naoto, Hio Yasuko, Takano Ya ...
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 68-75
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    Large language models (LLMs) are trained on enormous amounts of data and encode knowledge in their parameters. We propose a pipeline to elicit causal relationships from LLMs. Specifically, (i) we sample many documents from LLMs on a given topic, (ii) we extract an event list from from each document, (iii) we group events that appear across documents into canonical events, (iv) we construct a binary indicator vector for each document over canonical events, and (v) we estimate candidate causal graphs using causal discovery methods. Our approach does not guarantee real-world causality. Rather, it provides a framework for presenting the set of causal hypotheses that LLMs can plausibly assume, as an inspectable set of variables and candidate graphs.

  • 中川 慧, 竹本 悠城, 久保 健治, 加藤 真大
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 76-83
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は、取引時間帯の非同期性により先に閉まる市場で確定した情報が後に開く市場の寄付きから日中にかけて反映するというリード・ラグ仮説を、日米の業種別ETFデータを用いて検証する。具体的には、米国の業種ETFで観測される当日のClose-to-Closeリターンを情報集合とし、日本の業種ETFの翌営業日Open-to-Closeリターンを予測対象として、日米の結合相関行列に対する部分空間正則化付きPCAに基づく予測シグナルを構成する。当該シグナルは米国のリターンに対する日本のリターンのランク線形予測器として表現でき、共通ファクターが米国で顕在化し翌日に日本へ波及する理想化モデルの下で、最良線形予測であることが示される。実証分析では、提案法に基づくロング・ショート戦略が、モメンタム、正則化なしPCA、モメンタムとのダブルソート等のベースラインと比較して、リスク調整後のパフォーマンスおよび最大ドローダウンの観点で優位である。

  • 杉本 実優, 加藤 真大, 皆川 直人, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 84-91
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,多数の銘柄から構成されるインデックスを,少数の銘柄で構成されるポートフォリオによって複製する手法を提案する.本課題を,対象インデックスと複製ポートフォリオの収益率分布のモーメント(平均,分散,歪度,尖度)を一致させる問題として定式化し,一般化モーメント法(GMM)に基づいて複製ポートフォリオのウェイトを推定する.平均のみならず,分散に加えて歪度・尖度などの高次モーメントにも追随するよう推定することで,対象インデックスの分布特性をより精緻に捉えた複製が可能となる.さらに,少数銘柄による複製を実現するため,複製ポートフォリオの重みに対する罰則(正則化)を導入する.

  • 吉田 凌也, 尾崎 令拓, 今城 健太郎, 平野 正徳
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 92-98
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年の大規模言語モデルの発達に伴い、金融テキストを株価予測に活用する研究が多く取り組まれている。そのような取り組みにおいては、テキストを埋め込み表現に変換してから下流の予測モデルに入力する枠組みが広く用いられる。しかし、従来手法の多くは株価時系列と金融テキストの埋め込みを対応づけるアラインメントを明示的に行っていないため、両者の表現が整合せず、下流の予測モデルがテキスト情報を十分に活用できない可能性がある。そこで本研究では、個別銘柄の株価予測に応用することを前提に、銘柄関連ニュースから得られるテキスト埋め込みを将来の株価時系列埋め込みとアラインメントするための時系列・テキスト間の対照学習手法を提案する。提案手法では、銘柄関連ニュースと将来の株価時系列を正例とした対照学習によってテキストエンコーダを事前学習する。これにより、下流タスクでは時系列表現と整合したテキスト表現を用いることができ、ニュースに含まれる将来の価格推移に関連する信号を活用しやすくなることが期待できる。評価実験では、米国株式市場のニュース・株価ペアデータセットを用いて、株価変動方向の2値分類を下流タスクとして提案手法の有効性を検証した。その結果、提案手法による事前学習を行うことで分類性能が一貫して向上することが確認できた。提案手法によって、株価予測に関する様々な下流タスクにおいて銘柄関連ニュースを効果的に活用できるようになることが期待できる。

  • 尾崎 令拓, 平野 正徳
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 99-105
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    株式投資におけるポートフォリオ最適化において,ユーザの好み(選好)は重要な要素の一つである.例えば,投資家ごとに異なるリスク・リターントレードオフに対する選好を反映することが重要である.一方で,リスク回避度などの選好パラメータを投資家が直接具体的な値として指定することは一般に難しい.本稿では,投資家からの選好フィードバック(ペア比較および改善方向の要求)を用いて選好を逐次的に推定しつつ,平均分散モデルにおけるリスク回避パラメータを探索することで,ユーザの望ましいトレードオフを実現する解に効率的に到達する手法を提案する.日本株式データを用いた数値実験により,提案法が少ない探索回数でより望ましい解を発見可能であることを示す.

  • 都木 誠, 浅沼 達也, 柴田 大輝
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 106-113
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では、Lo & MacKinlay(1997)による予測可能性最大化ポートフォリオ(Maximally Predictable Portfolio; MPP)をマルチアセットクラスに適用し、その運用戦略としての有効性を検証した。MPPは、資産リターンに含まれる予測可能成分に対して決定係数(R²)を最大化するように構築される。しかし、MPPをマルチアセットクラスに適用した実証研究は比較的少なく、十分に検討されていない。本研究では、この点に着目しマルチアセットクラスを対象にMPPを構築するとともに、リターン予測に基づきポジションを動的に調整するタイミング戦略を設計し、その収益性を評価した。実証分析の結果、MPP は予測手法によらず一定程度の予測力を持つことが示唆された。特に、Ridge回帰を予測モデルとして用いたロングショート戦略は、安定した優位性を示した。以上より、MPPはマルチアセット環境においても有効に機能し、適切な予測モデルとの統合を通じて運用成績の向上に寄与し得ることが示唆された。

  • 大野 善之, サハ ソウラブ, 石坂 一久
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 114-119
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    pandas は,表現力の高い DataFrame API により金融データ分析で広く利用されているが,シングルスレッド実行および eager 実行モデルに起因して,データ量や処理の複雑性が増大するにつれて性能が制約されるという課題を抱えている.本稿では,既存のユーザーコードを変更することなく,Just-In-Time(JIT)コンパイルにより金融データ分析を高速化する,pandas 互換のデータ処理基盤 FireDucks を提案する.FireDucks は,ドメイン特化の DataFrame コンパイラアーキテクチャを採用し,define-by-run 方式により実行時に DataFrame 操作を捕捉して高レベルな中間表現(IR)を構築する.この IR に基づき,DataFrame ワークロードに特化した操作列全体を対象とする最適化と,マルチコア CPU を活用した効率的な並列実行を実現する.金融実務を模擬したワークロードを用いた評価の結果,pandas と比較して最大 86.6 倍の性能向上を確認し,提案手法の有効性を示した.

  • 川﨑 直弥, 渡部 敏明, 欅 惇志, 小町 守
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 120-127
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    不確実性の測定やボラティリティ予測といった金融分野のリスク研究では,近年テキストデータの活用が進められているが,既存手法には課題が存在する.例えば,不確実性指標の構築において用いられる単語頻度に基づく手法は,日次のようにテキスト量が十分でない場合,安定した特徴量を得ることが難しく,多くの指標は月次にとどまっている.そこで本研究では,日次というテキスト量の限られた場合でも安定した数値表現を得るため,事前学習済み言語モデル(Pre-trained Language Model; PLM)を用いてテキストを高次元の数値表現へ変換する.一方で,このような高次元表現はリスクに無関係な情報も含み,金融データのサンプル数が限られた場合に推定が不安定となる可能性がある.この問題に対処するため,本研究では,将来のRealized Volatility (RV)を教師信号とした教師あり次元削減を組み合わせ,高次元のテキスト表現からリスクと関連する情報のみを抽出する手法を提案する.実証分析の結果,提案手法により,膨大なテキストデータを前提とせずともニュースデータから日次頻度で金融リスクを表現できることが確認された.また一部の期間および予測モデルにおいてはボラティリティ予測精度の改善が示された.

  • 川住 歩弥, 加藤 真大, 段 磊
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 128-135
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    信用審査や与信管理に関するデータ分析では,アウトカムが「A-G」などの順序付き離散ラベルとして与えられることが多い.本稿では,多項ロジスティック回帰のような確率出力を持つクラス分類器からクラス確率を得る.次に,そのクラス確率で重み付けしたクラス値$C_d$の期待値をスコアの点予測として定義し,この点予測器に対して分割コンフォーマル予測を適用することで,分布仮定なしに有限標本の被覆率保証を持つ予測区間を構成する手順を整理する.特に本稿では,運用上の制約により,多項ロジットモデルなどの順序を考慮しないモデルを用いざるを得ない状況を想定する.さらに,周辺被覆率だけでは不十分であるという実務的要請に応えるため,条件付きキャリブレーションに基づき,特徴量に応じて異なる予測区間に対する保証を与える手法も提案する.

  • 丹波 靖博, 原口 健太郎, 大石 桂一
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 136-140
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    地方債スプレッドの決定要因に関する既存研究はOLS回帰に基づいており、因果関係と相関関係の識別が困難であった。本研究は、Causal ForestとDouble Machine Learning(DML)を日本の地方債市場に適用し、財政指標・債券特性がスプレッドに与える因果効果を推定する。分析の結果、次のことが明らかになった。第一に、分析対象とした変数について統計的に有意な平均処置効果(ATE)を検出し、それら変数について理論的予測と整合的な符号を確認する。第二に、条件付き平均処置効果(CATE)の分析により、全変数で処置効果に大きな異質性が存在することを示す。特に、マイナス金利政策導入前後で市場構造の変化が確認された。第三に、SHAP特徴量重要度と因果効果の大きさを比較した結果、両者の変数ランキングに高い整合性が認められ、SHAP重要度が因果的関連性の近似指標として有用であることを示唆する知見を得た。これらの結果は、地方債市場における市場規律の存在と、説明可能なAI手法と因果推論手法の相補的な活用可能性を示すものである。

  • フェリ アンジェラ詩織, 鈴木 彰人, 田代 雄介, 山中 卓
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 141-145
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    企業の有価証券報告書における「事業等のリスク」は,経営環境の変化や企業の戦略を反映する重要な情報源である.鈴木ら[1]はこのテキストデータに対し,文埋め込みモデル(GLuCoSE)と独立成分分析(ICA)を適用することで,事業リスクを表現する成分を抽出する手法を提案した.それに対し本研究では,先行研究が実施した単一年度のクロスセクション分析を複数年度に渡って実施することにより,企業が認識する事業リスクの時系列方向の変遷を解析する.2015年度から2024年度まで本邦の企業の有価証券報告書に対して業種別に分析を行った. その結果,新型コロナウイルスの流行と,対応するリスク成分値の推移が整合的であることが観測された.また,コーポレートガバナンス・コード改訂前後において,事業リスクの記載内容がより実質的なガバナンスへの言及へと変容したことが,リスク成分値の時系列変化の観点で検出された.その他にも,空運業におけるエネルギーリスクを表現する成分値が,マクロ状況と整合的に変化していることが確認された.

  • 坂地 泰紀, 平松 賢士
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 146-149
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    アナリストレポートは,企業の財務状況や業界動向に基づく詳細な分析を提供し,投資家の意思決定において極めて重要な役割を果たしている.レポート内で付与される「buy」や「sell」といったレーティングは,株価形成の主要因となり得る一方で,市場への影響力が大きいことから頻繁な変更が困難であるという性質を持つ.そのため,レーティング変更の硬直性を補完する情報として,レポート本文の記述に含まれるトーン(論調)の変化に着目した研究が進められてきた.しかし,既存の研究では,個別の銘柄評価を超えてアナリストが知覚している経済全体の潮流,すなわち「経済ナラティブ(Narrative Economics)」の観点は十分に活用されてこなかった.アナリストが持つ市場全体の因果認識を定量化できれば,新たな経済分析の指標となり得る.そこで本研究では,アナリストレポートからナラティブを抽出し,経済シミュレーションや景気予測に資するナラティブインデックスの構築を試みる.具体的には,テキストに含まれる原因と結果の表現対(因果関係)を抽出し,それらを連結させたものをナラティブと定義する手法を適用する.本稿では,提案手法により構築したインデックスと景気動向指数(DI)との相関関係を分析し,どのようなナラティブ指標が実際の景気変動を捉え,予測に有用であるかを検証する.

  • 小林 義正, 酒井 浩之, 仁科 慧, 高野 海斗
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 150-157
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    企業分析において売上構成比の高い主力事業には情報が集中しやすい一方、多角化や新規性を示すが認知されていない意外性のある事業は、主力事業の情報に埋もれ見落とされやすいという課題がある。そこで本研究では有価証券報告書に記述されている企業の事業内容を、主力事業かそれとは関連性の低い意外性のある事業に分類し、さらに分類した事業内容を売上構成比等に基づき構造化して用いることで、クエリと事業との関連性を表す説明文(以降、事業説明文とする)をLLMで生成し提示するシステムを構築する。 事業説明文の生成では、まず有価証券報告書から抽出し、分類した主力事業と意外性のある事業を用いて事業概要を生成する。ここで生成する事業概要は意外性のある事業を含む、その企業の全ての事業を説明している事業概要である。次に分類された事業内容と生成された事業概要を用いて、ユーザーのクエリに対して、クエリと事業との関連性を説明する事業説明文を生成する。例えばクエリが「量子コンピュータ」であれば、その企業の事業と「量子コンピュータ」との関連性についての事業説明文となる。 評価実験では、事業概要や意外性のある事業内容を用いた提案手法によって生成された事業説明文と、事業内容を分類せずに生成するベースラインによる事業説明文をLLM as a Judgeを用いて比較評価した。その結果、提案手法はベースラインと比較して、クエリに対してより詳細な事業説明文を生成する能力において優位であることが確認された。

  • 小林 司, 山本 竜也, 成末 義哲, 森川 博之
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 158-162
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿は、中小企業向けトランザクションレンディングにおいて、口座取引データ以外の情報が限られる状況下で経営者のノウハウを捉える新たな指標を提案する。代表者の略歴と法人の事業内容記述の関連性に焦点を当て、単語レベルの埋め込み表現と最大コサイン類似度に基づく「意味的整合性(Managerial Semantic Alignment)」を構築した。指標の有効性を検証するため、上位10%と下位10%のサンプルを用いて審査担当者によるブラインド評価を実施した。結果、両グループ間で担当者の経営者ノウハウ充足評価に統計的に有意な差が認められた。本知見は、提案指標がテキストデータに内在する経営者ノウハウを効果的に捕捉することを示唆している。今後の研究では、本指標を債務不履行予測モデルに統合し、予測精度への追加的貢献度を評価する予定である。

  • 田中 麻由梨, 土井 惟成
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 163-170
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    適時開示資料は、東京証券取引所が運営する「適時開示情報伝達システム(TDnet)」を通じて公表され、株価に重要な影響を与える可能性のある会社情報を掲載した資料である。決算短信を始めとする、主要な財務情報等が掲載された適時開示資料は、XBRLというマシンリーダブルなフォーマットによる情報と併せて開示されているものの、その大部分はPDF形式のみで開示されている。そのため、PDF形式の適時開示資料からの機械的な情報抽出は、投資家等の意思決定において課題となっている可能性がある。そこで本研究では、PDF形式の適時開示資料の構造化に関する試験的な取組みとして、大規模言語モデルを活用することで、特別損失に関する適時開示資料からの構造化データの抽出手法について検討する。実験の結果、複数の大規模言語モデルの出力を組み合わせることにより、高い精度による構造化データの抽出が可能であることが確認された。

  • 衛藤 泰地, 日出間 健, 岡田 公治
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 171-176
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,ESG(Environment, Social, Governance)投資の拡大により,企業の中長期的な価値創造プロセスを説明する統合報告書の重要性が高まっている.一方で,統合報告書の記述は多義的かつ文脈依存であり,従来のキーワード頻度や辞書ベース,特徴量設計に依存した古典的自然言語処理では,企業固有の価値創造ストーリーを十分に捉えきれないという課題がある.本研究は,大規模言語モデルを活用し,6資本の資本変換という視点から,統合報告書に記載された価値創造活動を抽出し,比較可能な形で定量的に可視化する手法を提案する.資本変換の有無に加え,活動の強度を段階尺度として整理することで,企業間比較や時系列分析を可能にし,投資家の分析負荷低減や投資判断の説明可能性の向上などに資する情報の抽出を試みる.

  • 野呂 祐介
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 177-184
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    企業の類似度を予測することは、市場マッピング、リスク評価、ポートフォリオ構築に貢献する重要なタスクである。従来のアプローチでは主に、財務テキストまたは事前定義された財務指標(例:投資収益率、負債比率)や機械的に計算された特徴量に、一般的な機械学習モデルを組み合わせている。しかし、これらのアプローチは、複数の勘定科目による経済事象の表現、勘定科目数値の時間的依存性、特定の経済事象に対する会計処理の一貫性といった、財務会計データ固有の特性を明示的には捉えていない。そこで、本研究では、これらの特性を自己教師あり学習タスクに組み込み、会計数値の性質を捉えるトランスフォーマーベースのモデルを提案する。類似性評価として4つのダウンストリームタスク、すなわち業種分類、類似した業績変動を持つ企業の検索、ペアトレード戦略、誤謬・異常検知を行い、提案アプローチの有効性を評価した。

  • 種村 賢飛, 久保 健治, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 185-192
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本論文は, 経営者によるMD\&AテキストへのLLMセンチメントスコアが企業ファンダメンタルズとどの程度対応するかを検証する。分析対象は2016--2024年度の日本上場企業であり, 5つのLLMと2つのベースライン(辞書法・BERT)を用いた。LLMセンチメントはSizeおよびProfitabilityと中程度から強い正相関を示し, 既存ファクターとの情報重複が示唆されたが, このProfitability依存度は経時的に低下する傾向がみられた。ファクター制御後も係数は概ね正であるが, 全期間回帰の$t$値は限定的であった。ファクターエクスポージャー除去により全7モデルでQ5-Q1スプレッドが改善し, 生センチメントにファクターバイアスが含まれている可能性が示唆された。COVID-19後, LLMモデルは正のスプレッドに回復した一方, 辞書法・BERTは負のスプレッドが継続した。市場区分別分析では, プライム市場で負のスプレッド傾向, その他の市場で正のスプレッド傾向が観察され, 予測方向の逆転は主としてGPT系で目立った。その他の市場ではファクター除去後にLLMs全5モデルの残差Pearson ICが正の値を示し, アナリストカバレッジが低い市場においてテキスト固有情報の限界的価値が高い可能性が示唆された。

  • 河村 飛来, 久保 健治, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 193-202
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    大規模言語モデル(Large language models: LLMs)の性能発展に伴い,LLMの投資戦略への応用が急速に進展している.一方で,LLMが投資戦略の改善プロセスにおいてどの程度有効かについては,十分な実証的理解が得られていない.特に,LLMに対してどのような形式でフィードバックを提示すれば,投資戦略が改善されていくのかは,これまで体系的に検証されてこなかった.そこで本研究では,以上の問題意識のもと,LLMを用いた株式投資戦略の自動生成フレームワークを構築し,フィードバック設計が戦略改善に与える影響を実証する.具体的には,提示する情報の範囲(基本情報のみ/基本情報+追加情報)および提示形式(テキストのみ/テキスト+プロット)という2軸に基づき,複数の条件下で戦略改善タスクを反復的に実行した.実験の結果,フィードバック設計の差異は改善プロセスに一定の影響を与えるものの,パフォーマンスの改善に対する効果は限定的であった.一方で,使用するモデルの違いは,パフォーマンスの改善においてより大きな差異をもたらした.この結果は,戦略改善の成否がフィードバックの細かな設計よりも,モデル固有の特性に強く依存する可能性を示唆する.

  • 高野 海斗
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 203-210
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    近年,LLMの発展に伴い様々な分野でのLLM活用が盛んに行われている.資産運用業においても例外ではなく,テキストの要約やスコア化によって,ポートフォリオ構築を支援するための技術開発が行われている最中である.LLMを金融分野に応用する研究は数多く存在するが,大半の研究は非数値情報であるテキストデータを活用することに焦点を当てている.一方で,従来から分析に使用されてきた数値情報も存在し,今後はこれらを組み合わせて活用していくことが求められる.例えば,ポートフォリオ構築においては,様々なファクターを用いたマルチファクター運用が存在する.そこで本研究では,このマルチファクター運用のモデルをLLM(大規模言語モデル)に代替し,実証分析を行った.具体的にはLLMによるマルチファクター運用の銘柄選択の再現性,投資パフォーマンス,重視するファクターを確認した.

  • Xue Yunfan
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 211-218
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    The effectiveness of traditional risk models relying on static, single-label industry classifications (e.g., GICS or TOPIX-33) has diminished due to the increasing complexity of modern conglomerates. This study proposes a novel framework to construct dynamic risk factors by leveraging Large Language Models (LLMs) to granularly decompose the business activities of firms. Specifically, we utilize LLMs to structure unstructured text from Annual Securities Reports, extracting semantic descriptions for each business segment and explicitly linking them with their corresponding financial data (revenue and operating profit). By weighting the semantic embeddings of each segment by their financial contribution, we synthesize "Composite Business Vectors" that reflect the true multidimensional risk exposure of a firm. We then apply hierarchical clustering (Ward's method) within this financially-weighted semantic space to construct a data-driven Industry Tree. The ultimate objective of this research is to derive continuous "Semantic Betas" and calculate factor returns based on this dynamic classification. As a preliminary analysis, we apply this methodology to TOPIX constituents to demonstrate the practicality of the pipeline and examine its potential effectiveness in portfolio risk management compared to traditional classification standards.

  • 中田 喜之, 鹿子木 亨紀
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 219-226
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    大規模言語モデル(LLM)の発展により、決算短信などの金融文書を活用した投資判断支援のための分析が注目されている。一方で、汎用LLMは金融分野における専門性が十分ではなく、人間の証券アナリストが有する「業種ごとの専門的な着眼点」が欠如しているという課題がある。また、特定の業種に対して買い/売りの判定が偏る「業種別バイアス」の存在も確認されている。本研究は、プロンプトエンジニアリング、RAG(Retrieval-Augmented Generation)、およびファインチューニングの手法を用いて、人間の専門性に近い分析の再現可能性を検証することを目的とする。具体的には、TOPIX1000構成銘柄の決算短信を対象に、LLMを用いて投資レーティング(買い・中立・売り)の分類および分析コメントを生成し、人間の証券アナリストとの比較分析を実施した。さらに、専門性の取り込みに有効とされるプロンプトエンジニアリング、GraphRAG、ファインチューニングといった各手法によって生成された分析コメントを比較し、企業分析における専門性獲得の効果を評価した。意味的類似性、専門用語の分布、トピック分布の3点から評価を行った結果、GraphRAGが最も人間の専門性に近い文章を生成できることが示された。ただし、現時点ではいずれのアプローチにおいても専門性を完全に再現するには至らないことも示唆された。

  • 中田 雄大, 西浦 佑一郎, 石川 法史, 本田 順一朗, スプリチャル 仁マイケル
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 227-234
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    金融実務では専門家が価格変動とニュース等の出来事を経験的に結び付け市況を解釈する。一方LLM生成では数値と出来事の統合過程が不透明で誤りや根拠不明瞭さが課題である。本研究は日次マーケットコメント生成で、数値時系列データとニュース等の質的情報をLLMに統合的に扱わせる枠組みを提案する。具体的には、時系列因果探索で得たコモディティ価格間の因果構造に、LLMエージェントが関連ニュースを対応付け、出来事がどの変数を介して価格に影響するかを分析して文章を生成する。公開されているマーケットコメントと因果構造あり/なし生成コメントを各6サンプル用意し、実務家2名が6観点7件法で、提案手法が公開コメントに近い品質を得られるかをブラインド評価した。評価後にヒアリングも実施した。因果構造ありは正確性などで因果構造なしを上回り、流暢さは公開コメントより高い一方、実務有用性は低かった。ヒアリングでは日次コメントは概観が主目的で、正確でなくとも興味を引く記述が評価され得るとの指摘が得られ、正確性重視の生成方針が有用性評価に影響した可能性が示唆された。

  • 櫻井 慶悟, 小川 貴弘, 長谷山 美紀, 阿南 晏樹, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 235-241
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    The rapid expansion of retail investing and online brokerage platforms calls for financial recommendation systems that balance user engagement with financial performance. In this setting, two objectives must be jointly considered: preference-oriented ranking (e.g., normalized Discounted Cumulative Gain, nDCG), which encourages users to act on recommendations, and outcome-oriented ranking (e.g., return on investment, ROI), which determines the realized financial benefit. However, these objectives are not always aligned. Rankings optimized purely for return may reduce diversification and overlook user preferences, whereas relevance-focused rankings can achieve adoption without generating satisfactory returns.To address this tension, we introduce Risk-aware Utility Re-ranking (RURA), a plug-in re-ranking framework applied to the top candidates generated by an upstream recommender. RURA maximizes a user-specific expected utility function that incorporates investor risk tolerance. The framework also supports a likelihood-aware extension that accounts for calibrated adoption probabilities. A single diversification parameter enables smooth control over the trade-off between preserving upstream ranking quality and improving ROI, allowing minimal degradation in nDCG while enhancing financial outcomes. Experiments on a real-world investment dataset show that RURA achieves superior ROI compared to risk-aware baselines, maintains nDCG within the range of a strong reference method, and consistently improves expected utility across heterogeneous risk groups.

  • Kato Masahiro
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 242-249
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    \abstract{This study proposes ScoreMatchingRiesz, a score-matching-based approach for Riesz representer estimation in debiased machine learning (DML), and introduces the policy path as a causal parameter that captures continuous treatment effects. The Riesz representer is a key nuisance component in DML, enabling $\sqrt{n}$-consistent and asymptotically efficient estimation of causal and structural targets via Neyman-orthogonal scores. We formulate Riesz representer estimation as a score-estimation problem and propose ScoreMatchingRiesz, which facilitates estimation of the average marginal effect (AME) and the average policy effect (APE). In addition, we define the policy path, a parameter that captures how policy effects evolve under continuous treatments and connects the AME and APE. Using ScoreMatchingRiesz and the policy path, we analyze how Japanese monetary policy shocks affect potential GDP over the mid- and long-term. Through this analysis, we document the time structure of monetary policy absorption across different sizes of policy shocks. Note that the AME and the policy path generalize impulse responses, and our method can be interpreted as a nonlinear, semiparametric version of the local projection method.

  • 原口 健太郎, 丹波 靖博, 池田 大輔, 阿部 修司, 大石 桂一
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 250-256
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    金利予測モデルの構築とその予測精度は,従前から学術上・実務上の重要な課題とされてきた。本研究では,わが国の地方債市場を題材として,機械学習モデルと大規模過去データを用いて,将来の金利予測精度を検証するとともに,予測精度がどのような要因で増減するかを明らかにする。分析の結果,次のことが明らかになった。第一に,機械学習モデルを用いた金利予測精度は,OLS等と比較して十分に高く,地方債市場における機械学習の活用可能性が示唆される。第二に,金利予測精度は,財政状態が悪い地方公共団体ほど低くなる。第三に,公募債市場の金利予測精度は,非公募債市場よりも低くなる。これらの結果は,ファイナンス・会計学・データサイエンスに跨る領域横断的な貢献を有するとともに,破綻実績のないわが国における経験的な金利予測手法の開発は,実務上も重要な意義を有する。

  • 久保 正裕, 梶並 俊彦, 鈴木 智也
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 257-263
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,機械学習を用いた他社株公開買付け(TOB)の発生予測モデルを提案する.TOB公表時にはターゲット企業に対して株価プレミアムが付与されるため,その事前予測は投資戦略上,極めて重要な意味を持つ.本モデルでは,財務データに加え,ガバナンス構造を反映する株主構成比率を説明変数に採用し,今後1年以内のTOB発生の有無を二値分類で予測した.RandomForestを用いた分類の結果,ROC-AUCで0.6〜0.7を記録し,一定の予測可能性が示された.また,SHAPを用いた要因分析により,筆頭株主保有比率が予測に大きく寄与していることを確認した.さらに,モデルが算出した予測確率に基づくポートフォリオ運用シミュレーションの結果,予測確率の高さと運用収益の間に正の相関が認められ,実務的な有効性が示唆された.

  • 渡部 航史, 尾崎 令拓, 今城 健太郎, 平野 正徳
    原稿種別: 研究会資料
    2026 年2026 巻FIN-036 号 p. 264-271
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/03/18
    研究報告書・技術報告書 フリー

    市場全体のリスクをヘッジする取引戦略において残差リターンが有効であることが知られている.残差リターンの特定には多変量解析手法が用いられるが,金融時系列において頻繁に発生するランク落ちなどの不安定性が大きな課題となる.本論文では,主成分分析とガウス型グラフィカルモデルを組み合わせて残差要因を抽出する方法を提案する.提案手法によって得られた残差リターンは,広く用いられている主成分分析ベースの手法から得られるものと比較して,高い安定性と直交性を示すことを確認した.さらに,S\&P500およびTOPIX500構成銘柄の過去データを用いたバックテストでは,残差リターンの直交性が向上し,リバーサル戦略におけるシャープレシオが改善することを確認した.

feedback
Top