人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会
Online ISSN : 2436-4576
Print ISSN : 0918-5682
98回 (2023/9)
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 谷村 緑, 山口 征孝, フォード 麻美
    原稿種別: 研究会資料
    p. 01-06
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    本稿の目的はカナダ在住の非英語母語話者が語りを通してある種の規範を作り出すときに,カナダにおける適切な言語行動を一緒に判断し合意に至るまでの実践を示すことである.使用したデータはカナダ在住者のリンガフランカとしての英語による語りである。半構造化インタビュー法を用いて現在の職業や将来のキャリアについて語ってもらった。収録は二人一組(いずれも初対面)でzoomの録画機能を使って行った。なお参加者らが母語と認識している言語は以下の通りである(参加者A: Swedish,B: Yoruba, Bekwara, Mbe,C: Nepalese, D: Persian,E: Arabic, French, F: Thai)。本稿では参加者らが,欧米文化を背景とする白人が一般的に持つと考えられる規範に基づき,語りの評価を共同構築すること,また,その談話が社会的に共有可能なナラティブになることを示す。

  • 平田 未季, 杜 長俊
    原稿種別: 研究会資料
    p. 07-12
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    発表者らは、同じ地域に住む日本語母語話者(NS)と非母語話者(NNS)がまちづくりについて対等な話し合いを行うことを目指し実践研究を行っている。本発表が分析対象とする演劇ワークショップでは、参加者は、寸劇を通じディスコミュニケーション場面を体験したのち、同数のNSとNNSを含む5つのグループに分かれ、その解決策について話し合いを行った。伝達補助ツールとして、参加者全員に多言語併記の感情カードを配布し、日本語初級のNNSを含むグループには通訳をつけた。話し合いでは、傍参与者だったNNSが感情カードを用いることで、NSのみで形成された関与領域がNNSを含む形で拡張される、NNSがNSの発話に理解を示したと受け取られるなどの様子が観察された。このように感情カードというツールにより、NNSが通訳を介さず周辺的な参加から中心的な参加へと移行し、話し合いの展開に影響が及ぼされた。

  • 高梨 克也
    原稿種別: 研究会資料
    p. 13-18
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    著者らは,高齢者の地域コミュニケーションを主な対象とした地域コミュニケーション学の確立に向けた研究を進めている.地域高齢者に関わるコミュニケーションには,A) 地域コミュニティ内での高齢者の日常的コミュニケーション,B) 高齢者と専門職・行政職の間でのサービス場面,C) 高齢者の生活・福祉に関わる専門職・行政職間での多職種・多機関連携,といった複数の層が存在していることから,調査研究においても,地域社会学,社会福祉学,地方行政学,相互行為分析などの関連分野間での学際的連携をいかに促進するかという工夫が求められる.本発表では,現在著者らが取り組んでいる学際融合的研究プロジェクトの狙いや工夫を具体的に紹介することを通じて,「地域社会とコミュニケーション」というテーマに関する一つの方向性を提示することを目指したい.

  • 森 大河, 楊 潔, Jokinen Kristiina
    原稿種別: 研究会資料
    p. 19-24
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    日常会話では、聞き手は様々な形で話し手に反応を返す。このような反応は聞き手反応と呼ばれ、中でも相槌や笑いは代表的な聞き手反応である。聞き手反応は単独で用いられることもあれば、複数のモダリティの反応が同時に用いられることもある。しかし、聞き手反応をマルチモーダルな視点から分析する研究はまだ多くない。本研究では聞き手が笑いながら話す現象の一端を明らかにするため、繰り返し発話と笑いに注目し、聞き手が笑いを伴う繰り返し発話をどのように用いるかを分析した。分析の結果、笑いを伴う繰り返し発話は聞き手が笑うべきものとしてプロジェクトされていない発話や先行発話の直後でない位置でも笑うことを可能にすることがわかった。

  • 田中 弥生, 小磯 花絵, 江口 典子, 大武 美保子
    原稿種別: 研究会資料
    p. 25-30
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は、共想法(高齢者の認知的健康のために工夫された会話支援手法)に基づいた談話の、テーマと修辞機能の関係の検討である。修辞機能分析の分類法(修辞ユニット分析(選択体系機能言語学の談話分析手法)を日本語文法の枠組みで修正したもの)によって、分析単位メッセージ(節)の発話機能、述部の時制、主語や主題の組合せから、修辞機能と脱文脈化指数が特定される。共想法では、与えられたテーマに合う写真を持参し、「話題提供」のスピーチと「質疑応答」を行い、セッション終了後に「小作文」を書く。本稿では、パイロットスタディで観察されたテーマと修辞機能の関係が、人数とテーマを増やした今回のデータでも概ね見られることを確認し、「自分の嗜好や習慣」、「将来の行動」、「過去の出来事」、「個人と関係ない内容」で出現しやすい修辞機能がわかり、テーマ設定によって、使われやすい修辞機能が調整される可能性が示唆された。

  • 臼田 泰如
    原稿種別: 研究会資料
    p. 31-36
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,日本語の会話音声における,節末の形式と韻律の関係を明らかにする.日本語の節末の形式は,いわゆる文として完結する形式である「完結形式」と,完結せずに次の節と統語的に接続する形式である「継続形式」とに分けることができる (Iwasaki 2013).そのような統語的な完結/継続の区分がある一方で,節が完結するか継続するかには,節末の韻律が重要な役割を果たす.そこで本研究では,それぞれの統語的な節末の形式が,どのような韻律と共起するのかを明らかにする.データは『日本語日常会話コーパス』に収録されている会話である.このデータについて,継続形式・完結形式において,どのような韻律でそれらが生じているかを集計した.結果,継続形式では完結形式に比べて,継続を印象付ける音調が多い一方,いずれの形式においても完結を印象付ける音調が最も多く,似通った韻律特徴をもっていることがわかった.

  • 田頭 未希
    原稿種別: 研究会資料
    p. 37-42
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    手話言語は物理的音を持たないが、音韻的仕組みと階層的な韻律構造を持っている。音声日本語について統語構造と韻律構造の関係を扱った研究は非常に多くあり、統合構造の違いに起因する韻律要素はすでに解明されつつある。しかし、日本手話においては研究自体が遅れている上、日本手話の韻律をあるかう研究は非常に限られる。本稿では日本手話において、語順は同じであるが、統語構造が異なり、意味に曖昧性が生じる名詞句を用いて、統語構造の違いが韻律にどのように反映されるのかを調査した。手話言語では韻律構造が非手指要素に現れることがわかっているが、どの要素がどのように関わるのかについてはわかっていない。また、アメリカ手話やイスラエル手話などで報告されている韻律境界で観察される要素の入れ替わりの現象についてもデータをもとに論じる。

  • 榎本 美香, 伝 康晴
    原稿種別: 研究会資料
    p. 43-48
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    我々は、野沢温泉で行われている道祖神祭り(1月)、湯澤神社例祭(9月)の準備作業を、11年間に渡って調査し続けてきた。年々、過疎化や少子化により祭りの執行者の人数が減る傾向にあり、それに伴い作業の簡略化や業者への委託など、慣習的な祭りの執行形式が変遷してきている。従来は、長時間に及ぶ力作業を要する非常につらい作業を共に行うことで、大きな達成感が得られ、執行者たちの間に強い結束感が生じていた。仲間と過ごすそれらの時間が徐々に失われつつあることが、この祭りを通した執行者たちの地域コミュニティの絆へどのように影響するのかについて考察する。

  • 阿部 廣二
    原稿種別: 研究会資料
    p. 49-54
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    本論では,阿部[2]で示された重いものを受け渡す際に産出される掛け声の相互行為上の機能を、地域社会の観点から考察すること検討することを目的とした。そのために、阿部[2]で示した祭りの準備過程における「ぼや」の受け渡し場面の事例を抜粋し、その際に産出される掛け声が持つ相互行為上の機能を概観した.その結果,第一にぼやの担い手が二番手に移ったことを示すこと,第二に受け渡しのやり方を理解したことを示すこと,第三に三番手に受け渡し開始を予示すること,第四に活動のリズムを作ることといった相互行為上の機能がある可能性を示唆し、それらの序列を示唆した.最後に、地域社会において掛け声が持つ意味について、第一に祭りを作り上げる要素の観点、第二に外部の人間が祭りを認識するための資源の観点から考察を行った。

  • 鈴木 青龍, 藤岡 豊太, 永田 仁史
    原稿種別: 研究会資料
    p. 55-58
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    機械学習を用いた音声強調処理は、非定常性雑音にもある程度の効果をもち、最小平均二乗推定(MMSE)などの統計的手法を上回る性能が報告されているが、入力信号分析方法として一般的な離散フーリエ変換(DFT)の分解能によって性能が限定される現象があり、とくに非定常性の強い雑音環境の場合に生じやすい。そこで、本報告では異なる長さのDFTの並行処理に基づく音声強調処理の性能向上手法について検討した結果、一つのDFTに基づく通常手法の場合に比べ、入力信号SNRが0dBのとき、10種類の雑音環境に関する平均値として、セグメンタルSNRにおいて2.7dBの向上が達成できた。

  • 牛尾 貴志, 樋口 陽祐, 久原 卓, 藤原 晴雄, 加藤 博司
    原稿種別: 研究会資料
    p. 59-65
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

     近年、リモート会議が広く使われるようになり、商談を代表とする音声対話の解析ソリューションが普及しつつある。例えば、商談に含まれる言語特徴の抽出や要約を通して、会話スキルを評価することが進んでいる。一方、非言語によるコミュニケーションに関しても、笑いやフィラー、咳払いなどを把握することで、相手に与えた印象や感情を推測することができる。 そこで、本研究では笑い検出を目的として、事前学習済み音声認識モデルを用いた検出モデルの提案と、笑い区間が不明瞭な弱ラベルデータに対する学習手法を提案した。 日本語会話コーパスにおいて評価した結果、従来手法と比較して高精度な検出ができることを明らかにした。また、精度に与える要因の考察を行った。

  • 渡邊 陸翔, 中西 惇也, 馬場 惇, 吉川 雄一郎, 石黒 浩
    原稿種別: 研究会資料
    p. 66-71
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    対話システムでは、特にユーザの意向や状態を確認するために、「はい」「いいえ」「わからない」の意図で答えられるような質問(YES-NO疑問文)を行い、その返答意図の正確な解釈をすることが重要である。本研究では、このYES-NO疑問文に対する返答意図を高精度に推定することを目指した。具体的には、対話コーパス(日本語Yes-No疑問文と返答の対)を作成し、大規模言語モデルを用いた複数の意図推定器を設計し、その精度の比較評価を行った。その結果、全結合層を追加したGPTモデルが最も高い推定精度を示し、91%のF値を達成した。また、推定器間の比較から、GPTモデルによるプロンプトプログラミングを使用した場合、「わからない」と誤推定する傾向が確認された。本研究は対話システムの疑問文の意図推定能力の向上に貢献するとともに、機械学習モデルの性能評価に関する新たな指標と洞察を提供する。

  • 林 貴斗, 基村 竜晟, 石井 亮, 二瓶 芙巳雄, 深山 篤, 岡田 将吾
    原稿種別: 研究会資料
    p. 72-79
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
    会議録・要旨集 フリー

    ラポールとは,他者と調和している感覚である.我々は,会話中の非言語行動から話者の主観ラポールを自動的に推定することを目指している.一般的に,ラポール推定は回帰問題として定式化される.しかし,主観ラポールの評価傾向には個人差があるため,会話中の非言語行動とラポール評価のマッピングを学習することは容易ではない.この問題を軽減するため,ラポール推定をランク学習として定式化する方法を提案する.ランク学習では,ラポール評価の値ではなく,会話相手間のラポール評価の順序ラベルを訓練に用いるため,評価の個人差の問題を回避できる.提案手法の有効性を検証するために,主観ラポール評価を含む初対面会話と友人間会話から構成されるデータセットを用いた.特徴量としては知覚者の発話区間の音声と表情を使用した.実験の結果,提案手法は回帰よりも高い精度で同一の知覚者の会話をラポール評価の高い順に順序付けできることが示された.

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