農作業時接触する機会の多い悪臭物質の, 羊毛, 綿, ナイロン, アクリル, ポリエステルなど各種繊維への吸着性と, その吸着に及ぼす水分の影響を検討した。得られた結果は以下の通りである。
1) 繊維の種類によって, 悪臭物質の吸着量は異なり, それらは以下のような順となった。(1) アンモニア: 羊毛>綿>ナイロン>アクリル>ポリエステル (2) 硫化水素: 綿>羊毛>ポリエステル>ナイロン>アクリル (3) 酢酸 (4) アセトアルデヒド (5) ホルムアルデヒド: 羊毛>綿>ナイロン>ポリエステル>アクリル2) 吸着の大小は繊維の水分率にほぼ比例し, 吸湿性の高い繊維での吸着量が大きいという傾向を示した。3) 悪臭物質の一種で水との親和性が強いホルムアルデヒドの吸着は, 湿度によって変化し, 低湿度領域での増加は緩やかであるが, 高湿度領域では急激に上昇した。低湿度領域での吸着挙動は, ホルムアルデヒド濃度が高くなっても, 吸着量が一定量以上に増えない, 見掛け上ラングミュア型となった。4) 水分率を0に外挿した時の吸着量は, 各繊維の溶解度パラメーター値に比例した。このことから, 悪臭物質の繊維に対する吸着性は, その繊維の溶解度パラメーター値から推定可能であることが判った。
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