歩行用トラクタによる死亡事故のうち,挟まれによる事故は約4割を占めている。本研究では,作業者が背後の物体とループ式ハンドルにより拘束された状態を想定し,把持部が高さ1.2 mの壁面及び天井面に接触した状態で,駆動力が作用する際に発生する力学的作用を測定した。その結果,挟圧力の最大値は4530±93 N,車軸トルクは451±2 N・mとなり,本条件で挟まれた場合,作業者に深刻な影響を及ぼす可能性が高いと判断された。車軸中心から車輪接地反力の作用点までの水平距離の推定式を導出し,各測定値から算出した結果,89±1 mmとなった。車輪接地反力の作用する位置が車軸直下と異なることが判明した。
急傾斜地での安定走行を目指し,電動シリンダを使った荷台制御機構を搭載した電動走行ユニットを開発した。荷台制御により,等高線方向走行時の接地圧バランスの差や,谷側への経路ズレが軽減された。登坂時には,重心位置が進行方向へ移動することで登坂力が得られるなど傾斜地走行に有効であることを確認した。実用化を目指し改良した走行ユニット2号機では,連続稼働時間は約3時間であった。約11 aの樹園地における収穫運搬作業時のバッテリ使用率は約23 %となり,作業途中の充電は不要であることを確認した。また急傾斜地での収穫運搬作業時の特性から電動の走行ユニットには有利な条件であることも分かった。
非熟練者が牧草反転作業する際に熟練者のアドバイスを聞きつつ作業した場合と,GNSSガイダンスに従い作業した場合の作業精度を比較した。非熟練者は,熟練者のアドバイス時は熟練者と同等の精度で作業が可能だが,GNSSガイダンス利用時は重複面積が26 %増え,未作業面積はなくなった。また非熟練者が4.5 haほ場の反転作業を行った時の,GNSSガイダンス利用時と未利用時の走行距離と作業時間を比較した。ガイダンス利用時は未利用時より走行距離は33 %,作業時間は16 %短くなった。非熟練者はGNSSガイダンスを利用することで,熟練者のアドバイスを受けるのと同様に未作業面積を減らし,作業能率の向上に効果があると考えられた。
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