人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
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13 巻, 1 号
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  • 水戸 廸郎
    1984 年 13 巻 1 号 p. 1
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 梅津 光生, 川副 浩平, 田中 隆, 藤井 尚文, 藤田 毅, 阿久津 哲造
    1984 年 13 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    機械弁8種, ブタ大動脈製異種生体弁9種, ウシ心のう膜弁7種の計24種の臨床用心臓代用弁の水力学的特性を, in-vitroの弁機能試験装置を用い比較検討を行なった。その結果, 新しい傾斜型ディスク弁(SJM, Omni-Science, Hall-:Kaster, CG-Björk)や新しいウシ心のう膜弁(Hancock Pericard., Mitroflow, Ionescu low profile)などの弁は, 大動脈弁位, 僧帽弁位とも, 弁前後の圧較差や算出有効弁口面積において, 従来のBjörk-Shiley (B-S)やIonescu-Shiley (I-S)よりも優れた性能を有していることがわかった。また, ブタ大動脈弁においては, 従来のHancock弁(H242)に比べ, Carpentier Supra Annularや複合弁のBiocor, M. O. Hancock (H250)の方が水力学的特性の向上が確認され, 大動脈弁位ではB-Sより広い弁口面積を有した。本シミュレーションデータと臨床においてI-S, H242(僧帽弁位), H250(大動脈弁位)で弁置換を行なった患者の術後カテーテル検査データとを比較検討した結果, 両者はきわめてよく一致し, 機械式モデル自体の妥当性も証明することができた。
  • 笠置 康, 和田 寿郎, 横山 正義, 長柄 英男, 山口 明満
    1984 年 13 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    著者らは機械弁(主に傾斜開放型ディスク弁)と生体弁(porcine xenograft)の弁機能上の比較検討を実験論よび臨床例に論いて施行した。in vitroにおける各種代用弁の比較では傾斜開放型ディスク弁とporcine xenograftの間には駆出抵抗, 逆流などに明らかな差異があることを知った。臨床例では弁置換症例のうち僧帽弁狭窄症に対する僧帽弁置換術単独施行症例のみの血行動態について両者の比較を行ったところ, 術前後の心係数, 肺動脈楔入圧, 肺動脈収縮期圧, 左室拡張末期容積, 駆出率の変化には有意の差異を認めなかった。術後の弁口面積はporcine xenograft 1.1cm2に対し傾斜開放型ディスク弁1.8cm2と傾斜開放型ディスク弁は大きい弁口面積を有した。再弁置換時にとり出したCarpentier-Edwards弁の弁機能の検索からは生体組織は均質なものとは言えず, 異種生体弁は変性をきたす為に適した代用弁と言うことはできない。
  • 川副 浩平, 加瀬 川均, 青野 信卓, 小原 邦義, 賀来 克彦, 富野 哲夫, 藤田 毅, 永田 正毅
    1984 年 13 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Hancock xenograft, Ionescu-Shiley xenograftおよびBjörk-Shiley prosthesisの3者に臨床的検討を加えた。Ionescu弁の弁機能は, 弁前後の圧較差・有効弁口面積ともに, 他の2者に比し優れていた。血栓塞栓症はHancock弁において多くみられ, しかも抗凝固療法の有無とは無関係に発生した。risk factorとしては弁尖の開放異常が考えられ, 開放特性に優れたIonescu弁は弁機能とともに抗血栓性を並行して獲得してきたものと考えられる。弁機能不全に対する再手術はHancock弁の1例のみであるが, 心エコー図による追跡では, 弁尖肥厚・石灰化等の経時的変化がHancock弁にみられ, Ionescu弁には観察されなかった。porcine aortic xenograftからbovine pericardial xenograftへの選択の変更は, 弁機能・抗血栓性においてほぼ期待通りであったが, 感染に対しては依然として注意を要する。
  • 中埜 粛, 広瀬 一, 松田 暉, 佐藤 重夫, 榊原 哲夫, 堀田 隆久, 大竹 重彰, 川島 康生
    1984 年 13 巻 1 号 p. 16-19
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1. 大動脈弁置換について―同種大動脈弁ではactuarial survival rateおよびevent-free survival rateはそれぞれ57%, 8%(術後15年)であった。一方, Björk-Shiley弁ではそれぞれ84%, 75%(術後14年)であった。本弁では弁サイズ23mmでも体表面積1.5m2以上のものでは圧較差を生ずる。大動脈弁輪の狭小例では弁輪拡大術を要するものと思われる。2. 僧帽弁置換について―生体弁使用症例のsurvival rateは67%(14年), event-free survival rateは57%であった。Hancock弁では流量と圧較差との間に一定の関係は認められなかった。円板型機械弁(Starr-Edwards disc弁, 6520)における血栓塞栓症のactuarial free rateは84%(術後11年)であった。
    以上の結果, 機械弁では安定した良好な成績が得られており, 生体弁の組織学的変性に関しhost側の原因が解明されていない現時点では抗凝血薬療法の施行困難な場合を除き機械弁を第一選択とする方針である。
  • 数井 暉久, 渡辺 祝安, 星野 豊, 佐々木 孝, 小松 作蔵
    1984 年 13 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    教室では心臓代用弁の選択として大動脈弁位では血栓寒栓症の合併症が少ないことから長期の耐久性に実績のある機械弁を, また僧帽弁位では血栓塞栓症による機械弁の成績が必ずしも満足すべきものでないこと, 弁機構破綻が急激に生じないこと, 溶血が軽度であることなどを考慮して生体弁を用いている. 今回著者らは1974年より1983年7月末までの間にこれらの方針にもとついて施行したMVR 118例, AVR 98例, AVR+MVR 24例, 計240例の弁置換成績, 早期および晩期生存率, 血栓塞栓症, 出血, 感染, 弁機能不全, 溶血, 再弁置換および運動負荷を含めた心機能ならびに弁機能を検討した. 生体弁によるMVRおよび機械弁によるAVRで一応満足すべき成績を得たが, 理想的な代用弁が存在しない現在, 患者の年令, 性別, 置換部位, 社会的および地理的条件を考慮して代用弁を選択すべきと考える.
  • 川内 義人, 吉利 用和, 古森 正隆, 田中 二郎, 徳永 皓一, 渡辺 義明, 野瀬 善明, 中村 元臣, 木下 和彦
    1984 年 13 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    219例におけるHancock弁(H弁)置換後8.5年の遠隔成績と, Ionescu-Shiley弁(I-S弁)・St. Jude Medical弁(SJM弁)の弁機能について検討した。1)遠隔成績:遠隔死亡は2.2%/patient-year (P-Y), 6年目のactuarial survival rateは81±4%であった。血栓塞栓症の発生は2.5%/P-Yであり, MVR群では8年目の非発生率は89±4%であったが, AVR群では非抗凝固療法下に7年目までその発生はなかった。primary tissue failureを4例に認め, 全例44才以下であり, 8年目の非発生率は82±12%であったが, 45才以上では7年目まで発生を認めなかった。2)弁機能:術中に大動脈血流, 左房, 左室及び大動脈圧を同時に測定し, 電算機で1心拍毎の弁機能を解析した。頻拍時, 大動脈弁位では圧較差が減少したが, 僧帽弁位では, 拡大し, 僧帽弁位での弁機能障害の可能性を示唆した。有効弁口面積は, 弁サイズ増大に伴い, 拡大するが, SJM弁とI-S弁では差を認めなかった。
  • 安達 秀雄, 井野 隆史, 鰐渕 康彦, 古田 昭一
    1984 年 13 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    多くの弁置換術が安全に行なわれるようになったが, いぜんとして血栓, 塞栓症の発生, 感染弁の出現, 弁の石灰化および耐久性の問題等, 解決すべき課題は残されている。これまで当院においては, 僧帽弁位には一貫して生体弁を使用してきたが, これまでに275例に達したので, これらについて検討を加えた。275例中術後30日以内の手術死亡は12例(4.4%)であった。遠隔期の片麻痺等を伴なう血栓, 塞栓症は3例に発生した。また感染弁を術後2年4か月経過した1例に認めた。小児期に生体弁が使用された例では, いずれも2ないし6年で石灰化を生じ, 再弁置換された。成人例では石灰化を生じた例はないが, 術後4年7か月経過した2例に弁の疲労による破壊を認めた。follow up期間が最長7年と短く, また初期の2例に疲労破壊を生じているので, 慎重に経過を観察している。
  • ―傾斜ディスク弁と生体弁―
    今村 栄三郎, 中野 清治, 樗木 等, 西田 博, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 林 久恵, 小柳 仁
    1984 年 13 巻 1 号 p. 34-36
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    成人の僧帽弁置換に機械弁と生体弁のどちらが適しているか, まだ統一的見解はない。傾斜ディスク弁と異種生体弁の遠隔期成績を比較することで両者の特質および選択の基準を明らかにした。僧帽弁単独置換418例(ディスク弁290例, 生体弁128例)と僧帽弁+大動脈弁の二弁置換186例(ディスク弁131例, 生体弁55例)を対象とした。手術時年齢は16~64歳(平均41.8歳)。手術死亡率はディスク弁の7.6%, 生体弁の11.8%で両者に差はない。遠隔期合併症発生率を%/patient-yearで比較すると, 晩期死亡率は0.89と0.74, 感染性心内膜炎は0.35と0.46でともに差異はない。再弁置換はディスク弁の0.35に対し生体弁0.83と約2倍高い。血栓塞栓症は逆にディスク弁の2.0に対し生体弁は0.55と3分の1少なかった。基本的にはディスク弁を第1選択とし, 抗凝固療法の困難な患者には生体弁の適用が考えられる。
  • 矢田 公, 草川 實, 庄村 赤裸
    1984 年 13 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1976年から1982年までの間に教室および関連3施設で行った僧帽弁置換術症例351例につき, 機械弁(主にB-S弁)(以下M弁)と生体弁(主としてC-E弁)(以下B弁)グループに2分し, 手術成績および遠隔成績につき検討した。対象351例のうちM弁は92例(27%), B弁は259例(74%)であった。その成績は, M弁では手術死亡は6例(6.5%), 遠隔死亡は8例(9.3%)に対し, B弁では夫々22例(8.5%), 15例(6.4%)となり置換弁による差はみられなかった。また死亡原因からは両者間に有意差をみなかったが, ただ感染症の頻度がM弁の1例(1.2%)に比しB弁は9例(3.8%)と多かった。生存曲線をみるとM弁で平均2.7年, B弁で2.9年, 累積追跡期間は夫々226と672 patient-yearであるが3年生存率では85%, 85%, 6年生存率でも85%, 85%と全く同じであった。6年の遠隔追跡ではその他血行動態も含め差はなかったが, B弁の弁機能不全については更に長期の観察が必要であると考えられた。
  • 香川 謙, 本郷 忠敬, 渡辺 孝, 菊池 積徳, 内田 直樹, 庄司 好己, 三浦 誠, 仁田 新一, 堀内 藤吾
    1984 年 13 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    各種代用弁によるMVR 165例の1193.5 patient-yearに及ぶ追跡ならびに遠隔期心カテーテル検査所見から機械弁と生体弁の弁機能対比を行なった。後遺症を残した重篤な血栓塞栓症の発生頻度はHancock(H)弁1.9, Björk-Shiley(BS)弁1.1%pt-yとなったが両者間に有意差を認あなかった。Actuarial methodによるsurvivalおよびevent-free rateは術後7年目でそれぞれBS弁100, 100%, H弁91, 79%となった。生体弁は術後4年目に入り弁の石灰化, 硬化, 破損などが次第に目立つようになった。心カテーテルによる弁機能検査では安静時, 運動負荷時ともCIには有意差を認めなかったが, PAP, PAWP, 弁を介した拡張期圧較差, 有効弁口面積などの諸標の殆んどでBS弁がH弁に比し良好な値を示した。この結果からみて, BS弁とH弁の対比でみるかぎり, 生体弁は抗血栓性において機械弁より絶対的に優れているとはいえず, 耐久性, 弁機能においても機械弁を下廻るものであることが結論された。
  • 小机 敏昭, 鈴木 茂, 新井 達太
    1984 年 13 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    僧帽弁置換において, 機械弁と生体弁の比較という観点から, 病態像による差異も含めて, Björk-Shiley弁・SJM弁とIonescu-Shiley弁の術後血行動態を比較検討した。
    その結果, 病態像からみると, MSに対する弁置換症例で血行動態上の問題点がみられた。急性期血行動態からみると, MS群で機械弁に比し生体弁(IS弁)の方が有利な血行動態が得られた。MR群では有意差はみられなかった。遠隔期の血行動態をペーシング負荷法で検討すると, 生体弁が頻拍に対する順応性高く, より良い血行動態・弁機能を呈した。これは, 弁サイズ29・31mmで顕著であった。但し, 弁サイズ27mmでは機械弁の方が若干有利という結果が得られた。
  • 松森 正之, 西脇 正美, 道山 琴美, 沢田 勝寛, 西山 範正, 麻田 達郎, 大野 徹, 山崎 良定, 知花 幹雄, 小沢 修一, 岡 ...
    1984 年 13 巻 1 号 p. 50-53
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    最近では種々の改良により人工弁は安定した機能を発揮するようになってきたがなお各弁にはそれぞれ長所短所がありより完全に満足しうる人工弁の開発が望まれるところである。昭和41年から教室で行われた196回の僧帽弁置換術のうち最近10年間に主として用いられた2種類の機械弁(Starr-Edwards 6520弁12例, Björk-Shiley弁3例)と3種類の生体弁(Hancock弁12例, Carpentier-Edwards弁7例, Ionescu-Shiley弁3例)について術後急性期ICUでの血行動態をImpedance Cardiographyによりそして遠隔期1か月後の血行動態を自転車エルゴメーターによる負荷を行い同時両心カテーテルにより検索した。その結果, 術後急性期の血行動態では生体弁の方が機械弁より有利であるが遠隔期では差が認められなかった。Ionescu-Shiley弁を用いた3例では安静時には平均拡張期圧較差が4.5mmHgであったが負荷により25.5mmHgまで上昇した。これら3例はいずれも巨大左房と小さな左室容積の症例でこの様な症例に対してはBjörk-Shiley弁のようなlow profileの弁の方が有利であると思われた。
  • 林 純一, 大谷 信一, 横沢 忠夫, 江口 昭治
    1984 年 13 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1975年10月より82年12月までに新潟大学第2外科教室にて施行したMVR耐術79例(C-E弁17例, B-S弁23例, SJM弁39例)を対象として, 脳塞栓, 溶血, 弁機能不全, PVE, 再手術, 遠隔死亡の発生率を比較検討し, 更に48例の弁機能も検討した。C-E弁では脳塞栓症はなく, 明らかなPVE, primary tissue failureもなかった。B-S弁, SJM弁では脳塞栓症が1例づつ発生, パンヌス形成による弁機能不全, PVEも認められた。心原性または代用弁に関連したevent-free rateは術後4年でC-E弁94%, SJM94%, B-S弁85%で有意差は認められなかった。また弁機能上では, 僧帽弁圧較差, 有効弁口面積に弁種間の有意差はなかった。以上より現時点では弁選択上, patient-prosthesis matchingの点も重視すべきと考える。
  • 曲直 部寿夫
    1984 年 13 巻 1 号 p. 58-60
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 新井 達太, 小松 作蔵
    1984 年 13 巻 1 号 p. 61
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 古元 嘉昭, 河本 知二
    1984 年 13 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管植込み後の内被の厚さの変遷は, 予後を大きく左右するものである。人工血管のporosityは, 内被の究極の運命に影響する主要因子である。編織人工血管は, 長期の植込みに際して瘢痕収縮により短縮して初期のporosityは減少, 内被の肥厚化を招く。従って改良開発のためには, 初期のporosityを如何にして永く維持させるかが問題となる。メリヤス編は, バイアス方向に最大の伸びがあり, 短縮につれて元に戻るわけで, 初期のporosityは維持される。基礎的実験として, バイアス裁断人工血管を作成して, 大口径および小口径人工血管の植込みを行い良好なbiological porosityと, 薄層内被をえた。バイアス概念に近い組紐人工血管を試作して, 内径4mmのものを胸腔内で12~18cmのバイパスを行いバイアス裁断人工血管の適応を認めた。しかしながら, 実用化には多くのscreening testを必要とし, 編織上の技術的開発の困難さを打開してゆかなければならない。
  • 長谷川 隆光, 末田 泰二郎, 村下 純二, 田口 一美
    1984 年 13 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    関節屈曲部や体表部の小動脈再建術並びに補助心臓の経胸壁的導管として置換し得る人工血管の開発を目的に、spiral付EPTFE(IMPRA graft)の外面又は内外面をpolyurethaneにて被覆し、犬腹部大動脈及び腹部大静脈に移植した。外面のみ被覆した群は、移植後3ヵ月迄の開存率は大動脈群では90%、静脈群では術後の総開存率は33%であつた。動脈群で移植初期(30日後)には、比較的厚い血栓膜に覆われているが、90日後には全表面はほぼ完成された内皮細胞が覆つていた。内外両面を被覆したEPTFEを比較的短期間の使用(30日以内)を目的とし、補助心臓の導管として仔牛に移植した。移植群のいずれにも著明な血栓形成はなかつた。しかし内皮細胞の形成は全く観察されず、吻合部治癒も内膜化が行われず不良であつた。臨床で、内径6又は8mmの外面被覆人工血管を関節可動域に応用したところ、9例中8例が開存を得ることができた。
  • 橋本 正人, 川上 恒生, 水戸 康文, 児島 哲文, 武岡 哲良, 安田 慶秀, 田辺 達三
    1984 年 13 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    細小動脈への人工血管移植の開存性を高めるための薬剤補助および、人工血管内面への自家血管内皮細胞のseedingについて実験的検討を行なった。内径3mmのGore-Tex人工血管による犬大腿動脈置換に際し、Aspirin, Ticlopidineまたは現在開発途上にある抗トロンビン薬MD-805の投与は長期開存性を高めたが、8週後にもグラフトの組織治癒は完全でなかった。犬の頸動脈置換の実験で一方に、自家血管皮細胞のseediugを行った内径4mmのVascular-Dグラフト、他方にseedingをしていないグラフトを用いた所、両者とも6週の時点で開存していたが、4週の時点で両者の仮性内膜に大きな差がみられ、seediugしたグラフトは6週ですでに完全な組織治癒がみられた。
  • 笹嶋 唯博, 久保 良彦, 小窪 正樹, 和泉 裕一, 稲葉 雅史, 佐藤 綾子, 吉田 博希, 鮫島 夏樹
    1984 年 13 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Dacron人工血管及びBiograftを用いて132例203肢に動脈血行再建を行った。大動脈大腿動脈領域では4~33ケ月の経過で、10例11肢の晩期吻合部狭窄又は閉塞があつた。全例慢性動脈閉塞症であり、動脈瘤での発生はなかつた。11例中9肢がVelour Dacronによる大動脈大腿動脈Bypassであり、TAOが3例含まれる。再手術は9肢に施行したが7肢で吻合部内膜肥厚が確認された。Biograftを用いた末梢動脈再建はASO62例76肢に施行し15肢が6~60ケ月の経過で閉塞した。同様に閉塞原因は吻合部内膜肥厚であり8肢で確認されたが、その発生頻度はDacron人工血管よりも明らかに高かつた。病変の進行が閉塞原因となつたものは1例のみであつた。吻合部内膜肥厚はいずれの材料においても主要な閉塞原因であつたが、これに対しては、早期診断治療が唯一の有効な対策である。早期診断では吻合部雑音聴診が有効であり、大腿動脈レベルまでの再手術(パツチ形成術)は成績が良好であつた。
  • 佐々木 孝, 数井 暉久, 小松 作蔵
    1984 年 13 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    教室における393例の人工血管移殖の経験から、人工血管由来の術後合併症およびその対策について検討したので報告する。術後早期合併症として、ヘパリン使用時の人工血管からの血液漏出および末梢動脈領域での早期血栓閉塞が掲げられる。前者は低有孔性の人工血管に自家血によるpreclottingで十分対処出来るが、fibrin glueを用いることでより完全に対処し得た。後者は人工血管の選択に加え術直後からの抗血小板療法も有効であった。晩期合併症としての吻合部縫合不全、仮性動脈瘤形成は縫合材料に加え人工血管のsuture retentionも関連している。PTFEグラフトはこの点から大動脈領域には不適当であり、woven Dacronの断端のほつれは熱処理を加えることで対処し得た。器質化形成不全による晩期合併症は初期のTetron Teflonなどで経験したが最近は認めていない。現時点での大動脈領域での人工血管はほぼ満足出来るものであるが、細小動脈領域に使用する人工血管の開発が今後の課題と考える。
  • 井島 宏, 児玉 亮, 榊原 謙, 蘇原 泰則, 三井 清文, 鈴木 有二, 三井 利夫, 堀 原一
    1984 年 13 巻 1 号 p. 84-87
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    静脈疾患のうち, 大腿腸骨静脈領域の疾患と大静脈領域の疾患に対して, 血行再建術を積極的に行なってきた。今回は, 前者9症例に対する12回, 後者11症例に対する11回の手術の成績をもとに, とくに人工血管の開存率を向上させる手段を考察した。
    人工血管としてはexpallded polytetrafluoroethylene(EPTFE)を用い, その静脈用人工血管としての優秀性を再認識させられた。しかしなお, 著者らの考案した一時的動静脈瘻併設静脈血行再建術には, 意義があること, ならびにspiral EPTFEは, 外圧の影響を除外し得ることからさらに有用ではないかとの推則も述べた。
  • 田辺 達三
    1984 年 13 巻 1 号 p. 88
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 小林 繁夫, 高橋 英世, 外山 幸雄, 西山 博司, 伊藤 宏之, 苅谷 庸子, 榊原 欣作, 青木 利三郎, 若井 秀治, 中山 芳則
    1984 年 13 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ローラ型拍動流ポンプを使用した左房・大動脈バイパス方式による左心バイパスにおいて, 左心系血行動態についてはほぼ満足すべき成績がえられるようになったが, バイパスを継続するあいだに肺不全に陥る実験例がなお散見された。これらの実験例の検討の結果, 過大脱血圧によって惹起された肺静脈の虚脱が肺循環を障害し, 肺浮腫を生じた結果, ガス交換が障害されるにいたったと考えられた。従来すでに, 過大脱血圧がバイパス施行中の肺高血圧, 動脈血低酸素症の発生原因と考えたので, 過大脱血圧発生防止のための改良を重ね, 脱血回路の過大陰圧を防止できるようになったと考えていた。しかし, これらの改良だけでは, バイパス量を十分大きくした場合には, やはり陰圧が過大となって肺静脈を虚脱に陥る場合があり, これを完全に防止できる脱血方法の検討が今後の課題と考えられた。
  • ―左室造影法併用による評価―
    中谷 武嗣, 高野 久輝, 妙中 義之, 梅津 光生, 田中 隆, 松田 武久, 岩田 博夫, 林紘 三郎, 中村 孝夫, 高谷 節雄, 阿 ...
    1984 年 13 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症心不全に対する治療においては, 全身循環の維持を行うとともに, 不全心に対する負荷の軽減およびその回復をはかることが重要である。今回成山羊4頭を用い, 一定領域完全血流遮断法により左室自由壁の70~80%梗塞を作製し, 重症心不全とし, 左心補助人工心臓(WAD)の適用を行い, LVADの不全心に対する心補助効果について検討した。LVAD駆動により, 全身循環の維持は容易であった。又左室造影(LVG)による検討から, LVADにより不全心における左室容量負荷および仕事量の軽減を行うことが可能であった。又左室にはAkinesisを認めるものの, 明らかなDyskinesisはなかった。心機能の判定を行いながら, 徐々にバイパス流量を減じることにより, 頻拍ではあるが, 重症心不全から回復し, LVADよりの離脱が可能であった。離脱後のLVGでは, 梗塞部に同様のAkinesisと左室拡張末期容積(LVEDV)の拡大を認めた。低下した心機能の代償については, 明らかなDyskinesisを認めないこと, LVEDVの増加および心拍数の増加によりもたらされていると考えられた。
  • 宮村 一男, 那須 通寛, 新保 秀人, 鹿野 和久, 庄村 赤裸, 矢田 公, 草川 實
    1984 年 13 巻 1 号 p. 97-99
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれの開発した, ソレノイド駆動の左心補助装置をin vivoで, 各種脱血方法を用いて作動させた。またcentrifugal pumpを使用した左心補助実験と比較検討した。その結果, 従来の方法による左房―大動脈バイパス群に比し, reservoir bag付き回路使用群や, 心不全でのバイパス群, 左室―大動脈バイパス群, centrifugal pumpによる左房―大動脈バイパス群では, 流量の増加と, 血液チャンバー内の陰圧の減少を認めた。この原因として(i)血液チャンバー容量が大きすぎた。(ii)pusher-plateの引き上げ, すなわち血液チャンバーの拡張が速すぎた。(iii) filling pressureが低かった等が考えられた。従って, われわれの装置で左房―大動脈バイパスによって左心補助を行うには, 血液チャンバー容量を生体心に見合う適切な大きさにすること, pusher-plateの引き上げ速度を, 拍動数に応じて変化させうるよう, 装置の改良を行うことが必要と思われた。
  • 守屋 斗人, 伊藤 忠弘, 石原 昭, 橋本 成広, 馬渕 清資, 笹田 直, 前田 浩義
    1984 年 13 巻 1 号 p. 100-103
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓の流量波形の生体に対する影響につき, 拍動の必要性を含め今だ意見の分れるところである。そこで我々は, ピストン・ベローズ型人工心臓の偏心カム半径を変えることにより, 拍動数, 平均流量を変化することなく瞬時血流量を変えることが出来るのを確認するとともに, 瞬時血流量の変化が生体へ与える影響を観察する為, 完全右心バイパスを試行し, 肺内シャント率を算出した。ポンプの偏心カム半径を変えることにより血流速度120cm/secの生理的拍動流と, 35cm/secの非生理的拍動流が作成された。又非拍動流による完全右心バイパスでも同様に試行した。結果は, これら三群間に肺内シャント率は有意差を認めず, 又, 各群においても肺内シャント率の増減に一定の傾向は認められなかった。以上より, 非生理的拍動流, 非拍動流においても, 良好な酸素化能が保たれ, 肺循環では, 流量波形はあまり重要では無いことを示唆した。
  • 西垣 恭一, 広瀬 一, 松田 暉, 中埜 粛, 奥田 彰洋, 前田 世礼, 金香 充範, 笹子 佳門, 大竹 重彰, 堀田 隆久, 野村 ...
    1984 年 13 巻 1 号 p. 104-107
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬8頭をI、正常心群、II、左冠動脈の一部を結紮して作製した左心不全心群の各4頭の2群に分け、それぞれ、遠心ポンプを用いた左房―大動脈バイパスにおける右心機能の変化を断層心エコー図により検討した。バイパス率はI群で57~72%、II群で72~99%であり最大120分までバイパスを行なったが、その間右心機能の低下はみられなかった。両群ともバイパス開始直後より断層心エコー上、右室腔の拡大、心室中隔が収縮期に右室側へ動く奇異運動がみられた。それをPearlmanがMモード心エコーで定義したSeptal Motion, Septal Position Ratioを用いて定量化して比較した。心室中隔の奇異運動の存在下に右室機能の低下はみられず、むしろこの奇異運動は右室への相対的容量負荷に対する一種の合目的的反応である可能性が示唆された。
  • 石原 昭
    1984 年 13 巻 1 号 p. 108
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 高野 久輝, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 梅津 光生, 松田 武久, 田中 隆, 岩田 博夫, 林 紘三郎, 高谷 節雄, 中村 孝夫, 関 ...
    1984 年 13 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    機能を停止した自然心に代って, 1つの血液ポンプ, 単心室型人工心臓(SAH)による全身循環維持に関し検討を加え, 以下の知見を得た。(1) 右心系をバイパスさせ, 左房―大動脈間に挿入したSAHは, 上流圧を高く保つことによる圧差と吸み上げ効果により, 全身循環を良好に維持し得た。(2) この場合右房圧は, 急性期では14~16mmHg, 慢性期では10~14mmHgで十分であった。(3) 肺血管抵抗は正常である必要があり, 肺血管抵抗と体重の積が8000dynes・sec・cm-5・kg以下であれば, 良好な循環を維持し得た。(4) 又左房からの吸引に際し, 肺血管をcollapseさせないことが望ましく, 左房圧を正の値に保つべきである。(5) このような条件下では, 流量は100ml/kg/min前後, 動脈圧は80mmHg以上を維持し, ヤギはケージ内での生活を普通に行ない得た。(6) 本方式は1つの血液ポンプなので複雑な制御を必要としないし, 又全装置を小型化し得るので, 肺血管抵抗が正常なる患者に対しては, 有力な循環維持法と考える。
  • 猪狩 次雄, 岩谷 文夫, 阿部 俊文, 高野 光太郎, 安藤 正樹, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 武藤 淳, 田崎 哲典, ...
    1984 年 13 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    トーマス型補助循環装置は, 完全置換型人工心臓と同様, セグメント化ポリウレタンを材料とし, D-H接合部のシームレス化, ベース部もポリウレタン製としたオールポリウレタン製である。流入側と流出側にはBjörk-Shiley弁を用い, 人工心臓と異なる点はDiaphragmaの一枚構造である。Mock circulationによる機能試験では, 最大拍出量は5.4l/分(50ccモデル), 3.4l/分(30cc モデル)であり, 駆動圧は200mmHg付近が適当で, 拡張期陰圧は不可欠であった。急性梗塞犬による. 左房―上行大動脈間の左心補助では流入量が維持されている限りにおいて. 心室細動下でも収縮期圧100mmHg以上, 心拙量2l/分以上に維持することが可能であった。胸腔内植込みを意図した. 屍体によるfit trialでは, 右側胸壁第6間位胸腔内に装置を固定し, 左房―上行大動脈間補助が可能ではないかと考えられた。
  • 中村 孝夫, 林紘 三郎, 高谷 節雄, 高野 久輝, 梅津 光生, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 松田 武久, 田中 隆, 阿久津 哲造
    1984 年 13 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓の臨床応用が進むにつれて, これから離脱できない症例に対応するための, 長期間使用が可能なシステムの開発の重難が示唆されている。本研究では, 長期間使用を目的とした完鯉込型システムの開発の第一段階として, プロトタイプを設計, 試作し, その実験結果から将来のシステムの設計指針を得た。ブラシレスDCモータとボールネジにより, 回転―直線運動変換を行ない, プツシヤープレート型ポンプを駆動するアクチユエータをソフトウエアで制御した。in vitro実験の結果, モータのトルク不足が主因となってスピード, 拍出量が共に不足で実用には至らなかった。この実験結果からの計算によれば, 機械的まさつによるトルク損失は全トルクの29%であった。NIHの規準に従って必要なモータ仕様を計算したところ, 回転数3600rpmのときの連続トルクが1.76kg・cm以上必要であることがわかったので, この方向でさらに研究をすすめることにした。
  • 岩谷 文夫, 星野 俊一, 猪狩 次雄, 井上 仁, 高野 光太郎, 阿部 俊文, 安藤 正樹, 菅野 恵, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, ...
    1984 年 13 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1980年2月より1983年8月までに, トーマス型人工心臓による完全置換型人工心臓の植込み術を仔牛を用いて23回行なった。
    4週間以上生存は3頭で, 最長生存は66日であった。死亡原因別にみると. 人工心臓に関連したものが11例(48%)と約半数を占め, 以下, 血栓形成が5例. 駆動装置異常3例, 手術手技2例, その他2例であった。人工心臓に関連した死因では人工弁トラブルが5例と多く, また駆動膜破損が2例にみられた。長期生存3頭の死因は, 血栓形成と駆動膜破損で, いずれも極めて重大な問題である。血栓形成に関しては感染が大きな役割を演じており, 感染のなかった66日例では人工心臓内に血栓形成を認めなかった。駆動膜破損に対しては, 従来より行なってきた, 拡張期位での血液側膜作成を, 収縮期位で行うことにより耐久性の向上を図っている。
  • 高木 啓之, 高木 登志子, 神納 美紀子
    1984 年 13 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    理論的にいえば, 成長もせず, エネルギーも内臓せず, 外部からのエネルギーで駆動するTAHは, そのポンプのデザインに関する制約は自然心よりも少いから, 自然心よりもすぐれた循環維持能力をもつポンプができても不思議ではない。かかるTAHをsuper TAHとよび, 開発の目標とした。その第一歩として, 体重10kgの犬用のTAHに, 大人用のサイズの人工弁をくみこみテストした。左側用には, Modified Duct Ball Valveを, 右側用にはPocketless leaflet Valveをくみこんだ。そして, 我々のFeed Back方式の自動制御でパンピングした。模式循環テストでは, 拍出予備力も静脈圧への対応も, ほぼ自然心に近い結果を得, 急性実験でも, 体温16°から42℃まで, 低体温からの加温中循環を正常に維持した。よって, 更に改良すればsuper TAHも夢ではないと考えられる。
  • S. TAKATANI, T. TANAKA, T. MATSUDA, H. TAKANO, Y. TAENAKA, T. NAKATANI ...
    1984 年 13 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1982年12月以来, 完全置換型人工心臓(TAH)の研究の一環として, 手術手技及び方法の碓立を目標にダイアフラム型TAHを用いて10頭の成山羊に埋め込み実験を行ってきた。その結果, 手術手技・方法の向上, それらに伴う体外循環時聞の短縮等の成果が得られた。また、ダイアフラム型TAHは駆動圧波形により膜の動きを間接的に知るのみであり. ポンプ1回拍出量の把握や流量の制御が困難であった。この点を改良するため, 今回新たに胸腔内に埋め込むことができるコンパクトなプッシヤー・プレート型TAH及び種々の制御機構を備えた駆動システムを開発した。左・右ポンプにはそれぞれプレート位置検出のためのホールセンサが組み込まれており, ポンプ拍出量をデイスプレイ上に連続的に表示することができる。シミュレーション装置を用いたin vitro実験では, ダイアフラムの動きを正碓に把握でき, 流量の制御も容易で満足する流量特性が得られた。
  • 本多 憲児
    1984 年 13 巻 1 号 p. 133
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 土屋 喜一, 梅津 光生, 和田 昭久
    1984 年 13 巻 1 号 p. 134-137
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体の血液循環系を, 制御用コンピュータを付加した機械式モデルを用いて循環系各部の圧力バランスのシミュレーションを行なった。機械式モデルは, 20kgの成犬を対象に容量・コンプライアンスを設定した。機械要素は, 心臓に空気圧駆動式直管型拍動ポンプ, 血管系にはラテックスゴム製弾性管, 末梢・肺容量にはタンクを用い, 動脈・末梢・肺の各抵抗は集中定数化してニードル弁を使用した。また, 血圧調節機構として自律神経系による動脈圧の動脈抵抗に及ぼす影響をGuytonのDigital Simulation Modelを用いて評価し, サーボバルブの圧力に対する比例感度を適切に設定することにより良好な結果を得た。さらに, Frank Starling則に従った心拍出機構をモデル化して, 系全体の安定性について検討を行なった。その結果圧力が静定するまでの時定数・定常偏差とも, 2系統の制御系を変化させることにより良好な結果を得ることができた。
  • 稲生 紀夫, 藤正 巌, 井街 宏, 宮本 晃, 滝戸 直人, 中島 正治, 満淵 邦彦, 塚越 茂, 渥美 和彦
    1984 年 13 巻 1 号 p. 138-141
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全人工心臓装着ヤギを使用して定量的循環不全を作成し, 循環不全時の動物の代謝動態を解析することによって, 全身循環維持の観点からみた補助心臓の適用及び離脱時期と限界について実験的に検討した。すなわち, 人工心臓装着ヤギを使用して, 一定量の低心拍出量状態に対して補助心臓を適用するまでのプロセスをモデル化した。実験を通じて, 動脈血乳酸値, ピルビン酸値を経時的に測定した。一方, 低心拍出量状態時及び心拍出量改善後の動物の嫌気的代謝の動態を説明する簡単な数理モデルを作成し, それらのモデルを利用して実験時の動物の代謝動態を解析した。その結果, 動脈血乳酸値, ピルビン酸値の経時的推移から低心拍出量状態時の代謝動態を評価する方法は, 補助心臓のみならず, 各種補助循環の適用及び離脱時期や限界を判断するための有用な一つの手段になると考えられた。
  • 梅津 光生, 高野 久輝, 中谷 武嗣, 林紘 三郎, 妙中 義之, 田中 隆, 中村 孝夫, 高谷 節雄, 松田 武久, 阿久津 哲造
    1984 年 13 巻 1 号 p. 142-145
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症左心不全に対する左心補助心臓(LVAD)の機能を効果的に発揮させるため, 左房圧と総拍出量(左心拍出量とバイパス流量の和)とを目標値として選択し, それぞれが設定範囲内にはいるようLVAD拍出量を自動制御する「定値制御系」の性能の改良を行なった。まず, 入力信号を8心拍の移動平均として処理することによって不整脈や外乱に強いシステムとした。また, 従来固定していたポンプ収縮時間比(%-Systole; Fs)の変域設定とFsの変化幅に関し, 別のマイクロコンピュータと連動し, そこから適宜入力して従来の制御プログラムを動かすシステムを構成した。Fsの変域は実験毎に異なるので, 動物実験開始後に拍出量とFsの関係を手動操作で求めた後に変域設定を行なった。Fs変化量は動物実験における応答試験より, 従来の+2%から+8%に変更した結果, 1/4~1/2の時間で目標安定域に入れることができた。以上から, きめ細かいLVAD制御が可能となり, 実用に十分耐えるシステムであることを確認した。
  • 中島 正治, 藤正 巌, 井街 宏, 満渕 邦彦, 塚越 茂, 宮本 晃, 滝戸 直人, 稲生 紀夫, 渥美 和彦
    1984 年 13 巻 1 号 p. 146-149
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓において心拍出量は重要な制御パラメーターの一つであるが, どのような左右心拍出量の制御をすべきか, あるいは正常または病的状態での左右心拍出量がどのようになっているかなどについては充分明らかではない。そこで, 当施設における右心拍出量を生理的範囲に保つ制御を行った人工心臓山羊6例と正常山羊1例について左右心拍出量の経過を検討した。結果は, 人工心臓および正常山羊いずれにおいても左心拍出量が10~20%右心拍出量を上まわっており, 人工心臓においては拍動流から無拍動流への切り換えにより左右拍出量差がやや増加する傾向が見られた。経過中左右差はかなり変動し, 動物の生理的状態と関連をもつものと思われた。左右差を生ずる原因としては気管支循環が考えられるが, その生理的意義は不明である。人工心臓においてはこのような左右差とその変動に対応し得る左右心拍出量制御法が必要と思われる。
  • 井街 宏
    1984 年 13 巻 1 号 p. 150
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 桜井 淳一, 前田 肇, 堀 原一
    1984 年 13 巻 1 号 p. 151-154
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    著者らは右心バイパス術後の補助循環法の一つとして, 右心房内トリプルバルーンパンピング法(IAtBP)を考案し, 右心房機能補助効果を確かめるべく実験を行い, 右心室バイパスモデルでは, 著明な右心房機能補助効果をもつことを明らかにしてきた。今回著者らは, 正常犬を用い, IAtBP駆動時には腎動脈/頸動脈血流量比が著明に増加し腎動脈血流の温存効果が推定され, 腎交感神経インパルスRSNAが平均17%減少しており, IAtBPが右心機能補助効果のみならず, 自律神経反射機構を介しての交感神経血管収縮線維の活動を抑制して, 末梢循環不全に対しても改善効果を及ぼしうることが推定された。したがってIAtBPはmechanicalな心機能補助効果のみならず, 自然に備わっているfeedback機構を介して全身の循環動態改善効果をも示唆するものであり, 右心不全を惹起するような病態には広く本法が応用しえるものと考えられる。
  • ―実験的並びに臨床的研究―
    岡田 昌義, 米田 紘造, 楠本 長正, 八田 健, 堀井 弘幸, 清水 一太, 生田 博, 小沢 修一, 松田 昌三, 中村 和夫
    1984 年 13 巻 1 号 p. 155-159
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞後の心室中隔穿孔(VSR)の予後は極めて不良であり, かつ, 急性期手術の成績も一般に芳しくない。かかる現況に鑑み, われわれは冠動脈のmultiple ligationによる急性心筋梗塞を成犬に作成し, 教室で考案した器具を用いて臨床例に近いVSRを造成した。その後経時的に血行動態(大動脈圧, 左室圧, 右室および肺動脈圧, 心拍出量, Qp/Qsなど)を観察した後, IABPを実施し本法の効果を検討した。
    その結果, Qp/Qsが減少するなど, IABPによるsystolic unloading並びにdiastolic augmentalionの効果が認められた。しかし本法の効果は, Qp/Qsが4.5以下の例で認められたが, 4.5以上に及ぶともはやその効果は期待できなかった。一方, 上述の基礎的研究の裏付けのもとに, IABPを本症の臨床例に応用した。6例中4例に本法を応用し, 5例の手術例中3例を救命した。IABPと緊急手術のタイミングよい併用が本症患者救命の要訣であり, IABPを開始した場合は, 遅くとも48時間以内に緊急手術をすべきことを強調した。
  • 川内 基裕, 松本 博志, 浅野 献一
    1984 年 13 巻 1 号 p. 160-164
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    教室では1981年4月より1983年8月までの2年5ケ月間172例の弁置換術を施行し, 13例(7.6%)に術中または術後早期(術後72時間以内)にIABPを実施して, 6例(46%)が生存した。(♂:♀=7:6年令11~64才 平均47才)。
    体外循環よりの離脱にIABPを必要としたのは13例中8例(62%)であり, 2例(15%)が不整脈, 6例(46%)がLOSのためにIABPが実施され, 2例(25%)が長期生存した。体外循環終了後72時間以内LOSによりIABPが施行されたのは5例(38%)で, 4例(80%)が長期生存した。
    13例中10例(77%)がIABPより離脱し, 6例(60%)が期生存した。死亡した3例はいずれもIABP施行にもかかわらず, 腎機能障害が出現・進行し, 調節呼吸による呼吸管理下に多臓器不全にて死亡した。IABPよりの離脱にあたっては心係数等の循環指標だけでなく, 腎機能, 呼吸機能等の全身状態に対する考慮も重要と考えられる。
  • 原田 厚, 山手 昇, 田中 茂夫, 五味 渕誠, 池下 正敏, 山内 茂生, 庄司 佑, 局野 照夫, 田中 啓治
    1984 年 13 巻 1 号 p. 165-168
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心系の補助循環時における右心機能の変化を検討する目的で, 10頭の雑種成犬にてモデル実験を行った。下行大動脈脱血による30mmHgのAfterload reductionと遮断用テープを用いた大動脈狭窄による60mmHgのPressure overloadの両者に対して血行動態の各種パラメーターを測定した。さらに冠動脈中隔枝を結紮し, その前後の血行動態をも比較した。結果は, 冠動脈中隔枝結紮前の右室ストレンゲージ値はAfterload reduction, Pressure overloadの両者に対して有意に上昇し, 右室dp/dtも上昇傾向を示した。これに対して中隔枝結紮後では, Pressure overloadの場合は右室ストレンゲージ値, 右室dp/dtは増加傾向を示したが, Afterload reductionでは右室ストレンゲージ値, 右室dp/dtともに有意に低下した。以上の結果より, 右室機能に心室中隔が関与していることが示唆され, 又心室中隔に障害をもつ場合には左心補助循環により右心機能はむしろ低下すると考えられた。
  • 壁井 信之, 土屋 喜一, 桜井 靖久
    1984 年 13 巻 1 号 p. 169-172
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心嚢内の左室および右室外壁上の心室中隔に対向する位置に, 一対のシート状になった風船(Dynamic Pericardium以下DPと略す)を挿入し, ポンピングすることで, 心室壁を周期的に押し, 心臓に代わって血液を駆出できるものと考え, その実用性について検討した。
    動物実験には体重8から18〔kg〕の雑種成犬を用いた。DPの形状は小判型で厚さ0.4〔mm〕である。
    DPを心嚢内に挿入後心室細動を誘発させ, DPによる両心の完全代行を開始した。完全代行中の平均大動脈圧は50から70〔mmHg〕に維持された。また2から8時間にわたる完全代行をした後, 全例除細動に成功した。さらにDPは閉胸のままで容易に取り出せ, 心筋に対ずる侵襲も軽微であった。
    以上の結果から, DPは予防的に装着することのできる簡便な補助循環装置として, 術後患者の急性心不全に対する安全性を確保するのに有用であることが判明した。
  • 水野 明
    1984 年 13 巻 1 号 p. 173
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 許 俊鋭, 江本 秀斗, 山中 秀雄, 高本 真一, 横手 祐二, 尾本 良三, 森 有一
    1984 年 13 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    AVCO-MGH製ダイナミックパッチ型人工心筋(AVCO-MGHモデル)が広範心筋壊死を伴う重症不全心に対し, 左室機能及び虚血心筋代謝改善効果をもつことは, すでに明らかになっている。しかしAVCO-MGHモデルは(1)左室縫着時に内面可動膜部を縫合針により損傷しやすい。(2)縫合部の完全な止血を得るには高度の手技を要し, 再止血を行う場合の縫合糸の追加は内面可動膜部に対し更に危険である。(3)縫合線近傍の心筋の二次的損傷を生じやすいことなどの大きな欠点があった。これら構造上の問題点を改善するため, 切除左室心筋部埋め込み型縫着フレームとポリウレタン膜でできた可動膜部(volume 13ml)を分離した埼玉―東レモデルを開発した。犬を用い本装置の左室縫着の外科的手技と左室補助効果を検討した結果, (1)人工心筋縫着の容易さと, 縫合線出血の止血の容易性が明らかで, (2)AVCO―MGHモデルの半分のvolume displacementにもかかわらず, ほゞ同様の左室補助効果が見られた。
  • 江本 秀斗, 許 俊鋭, 山中 英雄, 高本 真一, 上田 恵介, 横手 祐二, 尾本 良三, 見目 恭一, 仲野 孝
    1984 年 13 巻 1 号 p. 178-182
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ダイナミックパッチ型人工心筋(D-PATCH)は, 広範梗塞壊死を伴う重症不全心に対し, 梗塞壊死部を置換し, criticalな時期に直接的に左室を補助する目的で開発された。その左室補助効果については既に報告した。しかしながら直接左室を補助した場合, 残存心筋の局所機能に及ぼす影響たついては明らかでない。
    雑種成犬6頭を用い, 右心バイパスモデルを用いてD-PATCH, aortic counterpulsation(CP)の左室補助効果, 及びsonomicrometerを用いて測定した左室残存心筋機能について比較検討した。D-PATCH駆動により, mLAPは75%低下, 又, peak LVPは6%上昇したが, CP併用で23%逆に低下した。TTIはD-PATCHで15%低下, 併用群で23%低下した。残存心筋の収縮率はD-PATCH駆動で139%上昇, 併用群では150%上昇した。以上よりD-PATCHは虚血不全心の残存心筋salvageにとって有利であり, 臨床的にはCPを併用する事の利点が大きいと考えられた。
  • ―抗血栓性材料の検討―
    青見 茂之, 平山 統一, 野尻 知里, 渡辺 直, 高 英成, 瀬尾 和宏, 八田 光弘, 島津 和彦, 小柳 仁, 森 有一, 川瀬 静 ...
    1984 年 13 巻 1 号 p. 183-186
    発行日: 1984/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    親水性ヘパリン化材料(H-PSD)をコーティング材料として用いて酸素加装置のない大腿動静脈バイパス回路を作製し、10例の動物実験を行った。塩化ビニールの段差のない回路を用いた場合は肉眼的に血栓を認めなかったが、SEMでは血小板の付着、凝集、軽度の血栓を認めた。タイゴンチューブを一部に使用した段差のある回路を用いた場合は、肉眼的に段差のある所に血栓が見られ又、ローラーポンプによって扱かれる部分にコーティングの剥離が見られた。回路の条件として段差をもたないことと、チューブ、コーティング材料共に弾性のある材料を用いローラーポンプの扱きに耐えることが必要と思われた。
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