血液透析, 血液濾過, 血液吸着, 血漿交換療法に用いられる素材表面を走査電顕により観察し, 血液浄化療法用素材に対する血球付着と付着を規定する諸因子について検討した. 血液透析膜に対する白血球付着は一般に動脈側に多く, 中央部, 静脈側では漸減したが, 膜素材, 透析器形状, 滅菌法, 血液流量, 抗凝固薬, 治療法(透析または濾過法)により付着量, 付着パターンに差がみられた. また, 膜への白血球付着と透析中の一過性白血球減少の間に関連はみられなかった. 血小板付着には白血球ほど著明な動静脈差や滅菌法, 膜素材, 透析器形状の影響は認められなかったが, 抗凝固薬により付着量には大きな差異がみられ, とくに血小板機能抑制薬で付着は少数であった. 血球付着とくに白血球付着を定量的に解析する上で中空糸の吸光度分析法は有効な手法であった. 血液吸着療法用活性炭表面への血球付着は, 被包化材料よりも活性炭の表面性状, 抗凝固薬の影響を強く受けた. 血漿分離膜への白血球付着はほとんどみられず, 静脈側への赤血球, 血小板の付着が主体で, とくに赤血球の膜孔への陥頓像が特徴的所見であった. 以上の成績から, 治療用素材への血球付着は素材の性状, 治療法など多岐の要因の影響を受け, 血球付着の解析はこれらの生体適合性評価上, きわめて有用な方法と考えられる.
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