人工臓器
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17 巻, 3 号
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  • 筏 義人
    1988 年 17 巻 3 号 p. 817
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • (逆起電力を利用した駆動制御方式の検討)
    中村 孝夫, 林紘 三郎, 関 淳二
    1988 年 17 巻 3 号 p. 819-822
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    三相の電気モータ駆動式の人工心臓システムを、長期間安定かつ高効率に駆動制御するために、モータの回転子磁石の回転によって、固定子巻線上に誘起される逆起電力を利用する方法を新しく考案した。効率の情報が反映される逆起電力の位相を零電位検出器で測定し、モータへの入力電力を制御することによって、システムを高効率化する。モータの3個のノードのうち、2個のノードには逆相同振幅の矩形波電圧を印可し、残りのノードから逆起電力を検出することにし、60度位相ごとにノードの状態を切り替える方式とした。この制御方法には、これまで採用してきた可変電圧、固定デューティ比型パルス幅変調方式が有効であることがわかった。逆起電力の振幅は回転子の速度に比例するので、モータの回転開始時には十分な振幅が得られないため、開ループ制御を併用することにした。本方式でこれまでに開発してきたシステムを駆動制御するために、ハード及びソフトウェアの変更、最適化を進めている。
  • 福永 信太郎, 浜中 喜晴, 石原 浩, 末田 泰二郎, 金広 啓一, 松島 毅, 村上 博宣, 松浦 雄一郎
    1988 年 17 巻 3 号 p. 823-826
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ブラシレスDGモータと減速装置及び円筒カム機構を利用して、体内植込型人工心臓を試作した。直径50mmのハーモニツクドライブで減速された方向が一定の回転運動を、試作した円筒カムによリモータを逆転すること無しに行程が15mmの直線往復運動に変換し、カム両端のプツシャープレートとケーシングとの間にある左右2個の人工心室を収縮する。左右の人工心室は互いに逆の位相で収縮拡張を繰り返し、その% systoleは50%に固定である。血液ポンプ部分はポリウレタン製で、その設計一回拍出量は87mLである。体外模擬循環回路において拍動数39-125bpmで2.9-7.3L/minの拍出流量が得られた。その時の消費電力は15-43Wであつた。拍動数が60bpmで連続運転した時の模擬循環回路内生理食塩水及び人工心臓ケーシングの温度上昇はそれぞれ0.4及び3.9℃であつた。体重120kgの仔牛を用いて動物実験を行い、人工心臓の可能性及び改良すべき点が明らかになった。
  • 高谷 節雄, 高野 久輝, 妙中 義之, 野田 裕幸, 木下 正之, 梅津 光生, 阿久津 哲造, 越路 耕二, 宇都宮 敏男
    1988 年 17 巻 3 号 p. 827-830
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    この研究では、前回に報告したモーター駆動人工心臓システムの小型軽量化、システムの安定性、耐久性等の改良に就いて検討を加えた。先ず、小型の低速、高トルクDC BRUSHLESSモーターの開発を行なった。従来のSAMARIUM COBALT磁石よりも強力な磁力を持つNEODIUM IRON磁石をモーターのローターに使用し、また機械駆動部の再設計を行なうことにより全体の重量を前回の1.5Kgから約850gmに軽減することが出来た。また、制御システムにEPROMを導入することによりモーターの速度波形を自由にプログラム出来、また人工心臓の前後負荷に応じて、一心拍毎に適切な波形を選択できるように再設計した。このシステムを循環模擬回路でテストしたところ、9-10L/MINの最高流量が得られ、全体のシステム効率は約7-10%の結果を得た。現在システムの耐久性及び動物実験に就いて検討中である。
  • 平野 篤, 岡本 英治, 三田村 好矩, 三上 智久
    1988 年 17 巻 3 号 p. 831-834
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全埋め込み型人工心臓を対象とした経皮的エネルギー伝送装置の基礎的検討結果に加え、電源電圧と効率の関係を考察し、経皮的トランスの一層の小型化と二次側補助電源システムの見直しを行ない、体外模擬循環回路に接続された拍動型モータ駆動人工心臓に対する電力伝送実験を行なった。電源電圧はコアを通過する最大磁束密度が飽和磁束密度を越えない範囲で高く設定することが望ましく、直径36mm、厚み11mm、重量30gの小型ポットコアを用いた経皮的トランスを使用して、12V及び18Vの電源電圧で発振周波数50kHz、出力14V、24Wの電力伝送を行なった結果、各々67%、78%のシステム効率が得られた。人工心臓に対する伝送実験では、伝送電力により駆動数94bpm、前負荷15mmHg、後負荷95mmHgの条件下で4.0l/min. の流量が得られた。電源電池の交換時等に一時的に負荷に電力を供給する補助電池はトリクル充電方式とし、補助電池への切り換え及び各種警報システムの動作を確認した。
  • 妙中 義之, 高野 久輝, 高谷 節雄, 矢倉 明彦, 木下 正之, 野田 裕幸, 巽 英介, 阿久津 哲造, 宇山 親雄
    1988 年 17 巻 3 号 p. 835-838
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    欧米人に比べ身体のサイズの小さい日本人での使用が可能な全人工心臓を、1. 過去の全人工心臓臨床例の心拍出量データを参考にした一回拍出量、2. ヒトの胸腔の解剖学的特徴を考慮した基本的形状、3. 日本人の核磁気共鳴断層撮影像からえられる寸法、の検討に基づいてデザイン、試作した。過去の臨症例の心拍出量の検討から、人工弁の逆流量を差引いた有効な一回最大拍出量を、左は70ml、右は65mlとした。全人工心臓の基本形状は、頭尾方向に長い長球形で、しかも、胸骨に近い三尖弁口と頭側に位置する肺動脈弁口の間に位置する右のポンプは、左に比べて、扁平で長い形とした。日本人の核磁気共鳴断層撮影像からえられる寸法の検討から、右側のポンプは、高さ35mm、幅65mm、長さ95mmとし、左側は、高さ、幅ともに55mm、長さ80mmに決定した。試作した空気圧駆動式ダィアフラム型全人工心臓は、胸腔及び心室部分を切除した心臓の再構築プラスチックモデルに良くfitした。
  • 三田村 好矩
    1988 年 17 巻 3 号 p. 839
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 筒井 達夫, 井島 宏, 三井 利夫, 堀 原一
    1988 年 17 巻 3 号 p. 840-843
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体の至適血流量を知るためのパラメータとして大動脈特性インピーダンス(Zo)に着目し, モデル実験を行った。雑種成犬を用い, 段階的な急速輸血および脱血により心拍出量を変化させ, Zoの変動を検討した。供給心拍出量がコントロール値よりも過大であるばあいZoは一定値をとり, 過小である場合には心拍出量の減少とともにZoは増加した。次に, 代謝促進剤である2, 4―ジニトロフェノールを投与すると心拍出量は増加した。この時点から同様に供給心拍出量を変動させると, Zoは新たなコントロール値の前後で同様のパターンをとって変化した。これは, 自律神経系をはじめとする循環調節系が心拍出量需要に応じて体血管特性を再設定した事を示すと思われる。このZoの変化するパターンは, 人工心臓などを用いた循環制御において, 至適循環血流量を決定する情報の一つとして有用であると考えられる。
  • 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 井街 宏, 満渕 邦彦, 前田 潔, 今西 薫, 保坂 茂, 浅野 雅広, 米沢 卓実, 藤正 巌, 渥美 和彦
    1988 年 17 巻 3 号 p. 844-848
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究は、種々の人工臓器およびME技術を駆使して人工生体環境を作成し、それに摘出心臓を接続し常温にてその拍動循環を維持させることにより長期の心保存を行なうことを目的としている。
    試作した人工循環系は、循環系パラメータとして最低血圧を、呼吸系パラメータとして動脈血ガス分圧を、それぞれ生理的範囲内に一定に保つようにコンピュータにより実時間にてフィードバック制御できるようにした。この人工循環系を使用して、24時間程度の摘出心臓の拍動維持は可能であることが示されたが、摘出心臓の機能は低下傾向を示し、補助循環を加えてもその回復はみられなかった。
    摘出心臓長期保存のための人工生体環境として、循環系および呼吸系パラメータの制御が可能となったため、今後人工代謝系に関する検討を進めて行く必要があると考えている。
  • 杉田 洋一, 原崎 弘章, 能勢 之彦, 新井 達太
    1988 年 17 巻 3 号 p. 847-850
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今回我々は、一側の肺逆循環を利用したユニークな非開胸式左心バイパス法の有効性を動物実験にて検討した。バルーン付の内径5mm~6.5mmのinflow cannulaを左肺動脈に挿入し、バルーンを拡張し、左肺に流れる順行性の血流を遮断し、左房からの血液を逆行性にinflow carmulaより脱血し、それを遠心ポンプを使って頸動脈に送血する事によって左心バイパスを施行した。実験の結果、0.4L/minから最高3.5L/minの左心バイパス流量が得られ、心拍出量の30~40%の流量補助が可能であった。この一側の肺逆循環を利用した非開胸式左心バイパス法は、左房圧に反応して自動的に流量が増減し、必要最小限のバイパス流量が得られるという利点があり、将来Cannulを工夫すればSwan-Ganzカテーテールの様に挿入できるので、ICUやCCUにおける緊急の左心バイパス法として有用である。
  • 妙中 義之, 高野 久輝, 高谷 節雄, 梅津 光生, 木下 正之, 野田 裕幸, 巽 英介, 矢倉 明彦, 中谷 武嗣, 阿久津 哲造
    1988 年 17 巻 3 号 p. 849-852
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    慢性動物実験成績の向上のために、1. 全人工心臓の植え込み手術方法、2. 生体と全人工心臓を結合させるためのコネクターのデザイン、3. 左右ポンプの流入出部の位置と方向、に改良を加え、その実験成績に及ぼす効果を、改良開始前5頭と開始後4頭の子牛で検討した。体外循環時間は、改良前の245±35分(平均±標準偏差)から改良後は164±29分に短縮できた。改良前は1例も気管チューブの抜管ができなかったが、改良後は全例が抜管可能であった。生存期間の検討では、改良前は、3日間生存が1例、他の4例は総て24時間以内に死亡していたが、改良後は、18、1、68、81日間と、長期生存が得られるようになった。結論として、1. 手術術式の改良は止血を容易にし、体外循環時間の短縮に有効で、そのことが術後の肺機能の改善、手術成績の向上につながつたと考える。2. コネクターとポンプのデザインの改良は、抗血栓性の向上、結合の容易さ、fittingの改善に有効であったと考える。
  • 満渕 邦彦, 中島 正治, 井街 宏, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 前田 潔, 浅野 雅広, 今西 薫, 米沢 卓実, 藤正 巌, 渥美 和 ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 853-857
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    近年、心房性ナトリウム利尿ポリペプタイド(ANP)の生体における水バランスおよび血圧の調節に対する役割が明らかにされてきた。冠血流が遮断され心房組織の線維化が生じる完全人工心臓動物においては、ANPの異常が予想され、これが人工心臓駆動下において生じる中心静脈圧や血圧の上昇などの循環動態異常にも重要な役割を演じている可能性が示唆されてきた。今回、長期生存完全人工心臓装着ヤギを用いて、血中ANPと循環動態およびANPが影響を及ぼすとされているレニンなどの内分泌系との相関を検討し、ANPが完全人工心臓駆動下における異常循環動態に演じている役割を検討した。結果としては、少なくとも術後100日程度は血中ANPレペルは維持されており、また、ANPと上記の因子の間には明確な相関関係は得られなかった。ANPが完全人工心臓駆動下において生じる循環動態異常に演じている役割についてはさらに検討が必要と思われる。
  • 矢倉 明彦, 妙中 義之, 高野 久輝, 松田 武久, 岩田 博夫, 野田 裕幸, 木下 正之, 高谷 節雄, 巽 英介, 梅津 光生, 阿 ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 858-861
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)や全置換型人工心臓(TAH)の利用は増加しつつあるが、生体の体液バランスを維持する機構については不明な点が多い。本報告では、血漿心房性ナトリウム利尿ポリペプチド(ANP)と血漿レニン活性(PRA)に注目し、人工心臓使用時のそれらの分泌動態について検討し、以下の知見を得た。
    ANPは、WAD装着例では左房圧の低いモデルで低値、右房圧の高いモデルで高値を示し、ともに心房圧に反応した分泌を示したと考えられた。TAH装着例の慢性期では低値を示し、中心静脈圧上昇に対する分泌増加が見られず、心房の機能が障害されている可能性が示唆された。
    PRAは、右房圧の高いLVAD装着例と右ポンプの故障で右房圧が上昇したTAH装着例では高値を示し、高い腎静脈圧により腎のtransmural pressure gradientが低下し分泌が亢進していると考えられた。その他のLVAD装着例、TAH装着例では正常から低値を示し、腎臓の灌流が適切に行われていたと考えられた。
  • 藤正 巖
    1988 年 17 巻 3 号 p. 862
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 片平 美明, 仁田 新一, 山家 智之, 佐藤 尚, 三浦 誠, 本郷 忠敬, 香川 謙, 毛利 平, 依田 隆一郎
    1988 年 17 巻 3 号 p. 863-866
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    優れた臨床用補助人工心臓を開発するために, われわれは流れの可視化法を用いたVADの形状の流体力学的評価を行なつてきているが, 今回は, VADの形状のin vivoでの評価を行なうために21頭の山羊を用いた慢性実験を行なつた。改良を行なつていつた4種類のVADについて, 抗凝固, 抗血小板療法をせずに評価を行なつたが, 全21頭の平均生存期間は26.5日, うち30日以上生存43%, 血栓発生率24%であった。流体力学的な評価にもとずき, 拡張後期における旋回流の発生を強くし, また流入における滞流域を減少させるように改良を加えた結果, 従来の形状のVADの血栓発生率67%に対して, 新しい形状のVADでは7%と, 臨床使用上問題のないレベルにまで減少させることが可能となつた。
  • 深町 清孝, 麻生 俊英, 中村 祐一郎, 戸嶋 良博, 小江 雅弘, 三谷 淳夫, 益田 宗孝, 木下 和彦, 富永 隆治, 川内 義人, ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 867-870
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助循環(Left Heart Bypass, LHB)の右室収縮性に及ぼす影響について、右室収縮末期圧―容積関係(Emax)を用いて検討した。雑種成犬8頭に対し、遠心ポンプにて左房及び左室脱血、下行大動脈送血のLHBを行い、補助率を変化させ、各補助率での右室Emaxを測定した。Contrl(補助率0%)を100%としたLHB施行時の右室Emaxは、補助率25, 50, 75, 100%においてそれぞれ97±5, 93±5, 85±13, 86±8%であり, 75, 100%の補助率においてControlに比し有意に低値であった(p<0.02)。このことから補助率を上げることにより、LHBが右室収縮性に対し抑制的に作用することが示された。
  • 福田 幸人, 高野 久輝, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 野田 裕幸, 木下 正之, 梅津 光生, 岩田 博夫, 松田 武久, 高谷 節雄, ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 871-874
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    正常心及び左心不全心における長期間の左心補助人工心臓(LVAD)駆動による右心機能への影響について検討した。実験にはヤギを用い正常心モデルは6頭で, 左心不全モデルは1頭で, 左心不全は左室自由壁にmultiple ligation法により約30%領域の梗塞を作成した。LVADは左房―下行大動脈間に装着し, 心拍同期の最大補助率で4~6週間の駆動を行なった。術翌日よりLVADのON/OFF時の, 両心房, 心室, 大血管の各圧, 肺動脈流量, バイパス流量, 及び右室短軸径, 右室自由壁局所の心筋長を測定した。その結果, 1)正常心モデルでは6週間のバイパスに於いても右心機能を抑制しなかった。2)LVAD駆動初期に右室自由壁の伸展傾向を認めたが, これは右室への静脈還流量の増加と, 左室腔縮小による右室の形態の変化によると考えられた。3)左心不全モデルでもLVAD駆動により正常心とほぼ同様の変化が認められたが, 右室自由壁の伸展傾向はより大であった。
  • 大久保 修和, 松田 暉, 中埜 粛, 渡辺 真一郎, 大竹 重彰, 榊 成彦, 丹 志城, 松若 良介, 阪越 信雄, 広瀬 一, 川島 ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 875-878
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心バイパス(LHB)中に左室機能を評価する目的で, 超音波パルスドプラー(PD)法による拡張期指標の応用を試みた。雑種成犬19頭を用い正常および冠動脈結紮心において, LHB非使用時とLHB中(補助率50~65%)の各指標の関係, およびLHB中の各指標とLHB離脱時の(+)および(-)max dP/dtとの関係について検討した。PD法での左室流入血流動態から求めた指標として急速流入期ピーク流速(R), 平均加速度(AC), 平均減速度(DC), 心房収縮期ピーク流速(A), 比A/Rを用いた。LHB非使用時においてR, AC, DCは, (+)および(-)max dP/dtの正の, A/Rはこれらと負の相関を示した。全ての指標はLHB中と離脱時の間に正の相関を示した。またLHB中のR, AC, DCは, LHB離脱時の(+)max dP/dtと正の, A/Rは(+)および(-)max dP/dtと負の相関を示した。以上よりLHB中のPD法による拡張期指標は, 補助率がある一定の範囲では離脱時の収縮機能を含めた心機能を反映すると考えられた。
  • 橋本 成広, 馬渕 清資, 浅利 秀男, 石原 昭, 笹田 直, 水野 勝
    1988 年 17 巻 3 号 p. 879-882
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    流体力学的な血栓成長抑制について円錐・平板型粘度計実験から得た成果を, 人工心臓ポンプなどの設計へ応用することを目的として, 遠心ポンプ流路形状を設計した. 羽根車(外径64mm, ポリプロピレン製, 回転速度1500rpm)とケーシング(アクリル製)との間の血流速度分布を, Couette流で近似し, 壁面速度勾配が到る所で400s-1になるように, 両者間の透き間寸法を決定した. 設計に従って製作したポンプを, 塩化ビニル製チューブで構成した閉鎖循環回路に接続し, イヌ新鮮血を充填して, 24℃において血栓形成試験を実施した. 試験の結果, 羽根車とケーシングとの間には, 血栓形成がほとんど観察されず, 「壁面速度勾配が400s-1以下のところがないように, 羽根車とケーシングとの透き間寸法を決定することが, 血栓成長を抑制する流路形状設計に有効である」ことが示された.
  • 清水 健
    1988 年 17 巻 3 号 p. 883
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 土田 弘毅, 橋本 明政, 青見 茂之, 清野 隆吉, 小柳 仁, 佐々木 章, 風間 茂, 鈴木 進
    1988 年 17 巻 3 号 p. 884-887
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    胸部下行大動脈瘤においてBio-Pumpとヘパリン化親水性材料(H-PSD)コーティングチューブを使用し, 全身ヘパリン化をしない左心バイパス法(1例は胸部下行―大腿動脈バイパス)による手術を行い良好な成績を得たので報告する。症例は7例で男性6例, 女性1例, 平均年齢55.3歳(38歳~68歳)で, 解離性大動脈瘤3例, 動脈硬化性の胸部下行大動脈瘤3例, 胸腹部大動脈瘤1例である。平均バイパス時間87分(46分~165分)であり, 最大バイパス流量は平均20±0.4L/分, 遠位側平均血圧は60mmHg以上であり, 尿流出も良好であった。本補助手段に起因した合併症は認めず, 術後の肝腎機能, 血小板数, プロトロンビン時間, 活性化部分トロンボプラスチン時間は良好に保たれていた。手術死亡は1例(術後15日目)で他の6例は健在である。以上より胸部下行大動脈瘤手術において本法は大動脈遮断に伴う左心負荷を軽減し, 遮断遠位側の血流を保ち, ヘパリン使用に伴う合併症が軽減できる有効な補助手段法である。
  • ―経食道ドプラ断層心エコー図による評価と臨床的問題点―
    許 俊鋭, 半田 宣弘, 高本 真一, 安達 秀雄, 上田 恵介, 横手 祐二, 尾本 良三, 妙中 義之, 高野 久輝
    1988 年 17 巻 3 号 p. 888-891
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心バイパス補助(LVAD)施行時の心房間逆短絡は動脈血酸素化を著しく低下させ, 末梢諸臓器のショックからの回復を疎外するだけでなく, 致命的な多臓器不全(MOF)の原因となりうる。LVAD施行例では術中に卵円孔開存(PFO)の有無を確認し小さなPFOでも術中に閉鎖すべきとされているがその確認は容易ではない。開心術中の心内血流動態の評価に最近極めて有効とされている経食道ドプラー断層をLVAD施行症例に応用し特に心房レベルの逆短絡の評価に興味有る所見がえられたので報告する。51才男子の心室中隔破裂根治手術後の左心バイパス補助症例で, 右心不全の増強と共に逆短絡の増加が経食道ドプラー断層により観察され, 患者の動脈血酸素化を悪化させMOFの進行に悪影響を与えたと考えられた。Autopsyで径1mmの卵円孔開存が確認された。PFO短絡孔は小さくとも臨床上有意な逆短絡が観察された場合再手術によりPFOは閉鎖すべきと考えられた。
  • 丹治 雅博, 星野 俊一, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 阿部 俊文, 高野 光太郎, 安藤 正樹, 萩原 賢一, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明 ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 892-895
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    LAVDを使用した5症例のうち, 離脱・生存した2症例と死亡した2症例について検討した。心機能からみれば, 生存した2例ともCIが2.5l/min/m2以上でありMOFへの進行を防止しえたことから, 臓器灌流を維持しMOFの進行を防止するにはCI2.5l/min/m2以上が必要であると思われた。またその時のPWPは15mmHg以下であった。腎不全が進行し乏尿となり, HD・CAVHを必要とした症例では, third spaceへの水分貯留が著明となり全身浮腫が増大し, volume負荷による心拍出量の増加は一時的であった。さらにHDとCAVHによる血小板数の低下, CAVHへのヘパリン投与によるACTの過剰延長により出血傾向が著明となり, 一例は脳出血を合併した。以上より腎不全となりHD・CAVHを行なわざるを得ない症例ではthird spaceへの水分貯留・出血傾向・感染などの可能性があり, MOF防止のもう一つの大きな問題であると思われた。
  • 高野 久輝, 妙中 義之, 野田 裕幸, 中谷 武嗣, 木下 正之, 巽 英介, 矢倉 明彦, 関井 浩義, 梅津 光生, 松田 武久, 岩 ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 896-900
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    LVADの治療成績向上のため、自験例の検討を行ない以下の結論を得た。1)多臓器不全の予防として、低心拍出の重症度とその持続時間等臨床経過の判断に基づく早期適用の決断と実行が肝要である。また救命し得ないと思われる症例の不適用基準の確立、及び予防的適用も肝要である。2)右房圧を18mmHg以上に高めても心係数が2.0L/min/mm2以下の場合には、RVADを装着すべきである。3)全身への血流量は心係数で3.0L/min/m2前後が適正であるが、SvO2、乳酸値を夫々65%以上、10mg/dl以下に保つ流量を維持することにより諸臓器機能を良好に維持せしめ得る。4)急性心筋梗塞や左室内手術の左室内血栓形成予防のため、早期の抗凝血療法と共に100%補助が必要な場合は非同期駆動を行うべきである。5)冠血行再建術は、出血性梗塞を避けるため、発症後2時間以内と虚血発作を伴う場合のみに行なう方針である。6)回復不能心に対してはLVADの保証期間内で取換えるが、可及的な心臓移植の実現が望まれる。
  • 香川 謙
    1988 年 17 巻 3 号 p. 901
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 中村 孝夫, 林 紘三郎, 関 淳二, 中谷 武嗣, 野田 裕幸, 木下 正之, 妙中 義之, 高野 久輝, 阿久津 哲造
    1988 年 17 巻 3 号 p. 902-905
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞モデルを用いた慢性動物実験で、補助心臓駆動による心機能の回復過程を心力学的に検討した。血行動態諸量の他に、超音波センサで左室内径、ならびに健常部位と虚血部位の心筋長および壁厚を測定し、左室全体および局所心筋のなす外的仕事量を計算した。この結果、1)補助心臓は虚血部心筋の機能を回復させ、梗塞部位を縮小させる効果があること、2)血行動態データからだけではポンプ停止テストを行わなければ心機能の評価が難しいが、左室全体のなす外的仕事量を観測すれば、ポンプ駆動を停止しなくてもポンプ離脱時期を決定できる可能性があること、3)左室容積は漸増するが、虚血部心筋はこれに伴う変化を示さないこと、4)ポンプ駆動に伴う心筋壁厚の漸減傾向は健常部よりも虚血部で顕著であること、7)ポンプ除去後、血行動態および左室変位データが安定するまでに約1週間を要すること、等が示唆された。
  • ―形態計測学的検討―
    木下 正之, 高野 久輝, 妙中 義之, 野田 裕幸, 巽 英介, 矢倉 明彦, 関井 浩義, 阿久津 哲造
    1988 年 17 巻 3 号 p. 906-909
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)の持つ心負荷軽減効果は, 障害心筋部回復には有効に作用する事が認められているが, 正常心筋部に対してはむしろ退行性変化を引き起こす可能性が考えられる。本研究では, LVADの長期使用が正常心筋組織形態に与える影響を形態計測学的方法により検討した。LVADを最大補助率(総拍出量のおよそ80%)で30日間駆動した群(n=2), 60%の補助率で30日間(n=1)及び90日間(n=1)駆動した群において駆動後の左室心筋組織形態を, 形態計測学的手法を用いて, LVADを使用しない対照(n=4)と比較した。その結果, 最大補助の群で, 心筋細胞横断面積の減少, 単位心筋細胞質中の筋原線維及びミトコンドリアの体積密度の減少を認めた。また60%補助でも, 30日間駆動では変化がなかったが, 90日間駆動で同様の退行性変化を認めた。LVADはその補助量と補助期間によっては, 左室正常心筋に退行性変化を引き起こす事が確認された。
  • ―特に心筋局所血流量及び心外膜マッピング心電図からの検討―
    鈴木 修, 長谷川 隆光, 塩野 元美, 小笠原 弘二, 折目由 紀彦, 並木 義夫, 畑 博明, 長坂 不二夫, 栗原 和直, 八木 進也 ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 910-913
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ブタの右冠動脈分枝を順次結紮して, 右室梗塞に伴う右心不全モデルを作成し, 右心補助人工心臓(RVAD)と大動脈内バルーンパンピング(IABP)を各々, 単独に又は併用して使用し, 各種血行動態, 及び心筋局所血流量, 心外膜心電図より評価した梗塞領域への効果について比較検討した。
    梗塞作成後, 心拍出量の低下, 心拍数の増加, 中心静脈圧の上昇, 右室拡張末期圧の上昇, 右室の拡張などにより右心不全に伴う心原性ショックが確認された。
    IABPを単独に施行すると, 右室梗塞縮小効果は, 認められるが, 右心補助効果は, 少なかった。
    RVAD単独使用例では, 右室前負荷の軽減, 右室仕事量の低下をもたらし, 梗塞領域縮小効果を示した。両者を併用すると, 梗塞領域縮小効果, 及び右室負荷軽減効果は, 最も著明で, 急性右心不全に伴う心原性ショックに対して有効な補助手段と思われた。
  • 麻生 俊英, 小江 雅弘, 富永 隆治, 深町 清孝, 戸嶋 良博, 中村 祐一郎, 三谷 淳夫, 坂本 真人, 岸崎 邦昭, 益田 宗孝, ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 914-917
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環離脱困難例におけるVADの至適適応時期を明らかにするため、人工心肺下完全体外循環の心機能回復に及ぼす効果を収縮末期圧―容積関係(Emax)を用いて検討した。雑種成犬18頭を2群に分け20、ないし45分の常温虚血心を作成した。人工心肺による120分の補助循環中、Emaxの回復経過は指数関数状であった。このため再灌流60分の時点で、すでに急性期に期待し得る心機能回復の大部分(81.0-92.6%)が達成されており、人工心肺によるそれ以後の補助は心機能上有意な利益をもたらさないと考えられた。これよりTime Lossをできるだけ減少させる立場から再灌流60分の時点でVADの導入を決断すべきであると結論した。
  • 北村 惣一郎
    1988 年 17 巻 3 号 p. 918
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―心筋高エネルギーリン酸動態からの検討―
    木下 正之, 妙中 義之, 野田 裕幸, H. NODA, 巽 英介, 矢倉 明彦, 関井 浩義, 高野 久輝, 阿久津 哲造
    1988 年 17 巻 3 号 p. 919-922
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    従来、心血行力学的に推測され、病理組織学的に確認されてきた左心補助人工心臓の心筋保護効果を、心筋高エネルギーリン酸及びこれらに代謝上影響を及ぼすと思われる内因性カテコラミン動態から検討した。正常心に左心補助人工心臓を30分駆動した第1群(n=3)では、駆動前後で高エネルギーリン酸濃度に変化は認められなかった。虚血心に同時に左心補助人工心臓を駆動した第2群(n=6)では、駆動(虚血作成)前後でカテコラミン濃度はほとんど変化せず、虚血部の高エネルギーリン酸濃度の低下も有意に少なく抑えられた。虚血心に左心補助人工心臓を使用しなかった第3群(n=5)では、虚血作成30分後にカテコラミン濃度は上昇傾向にあり、高エネルギーリン酸濃度も第2群に比較し有意に低下した。これらの結果より、左心補助人工心臓は、心血行力学的な効果と代謝上の効果とがあいまって、高エネルギーリン酸を温存し、梗塞範囲を縮小させる可能性のある事が示唆された。
  • ―Regional blood cardioplegiaとの併用効果―
    井上 紀雄, 数井 暉久, 田中 利明, 伊藤 敏行, 泉山 修, 横山 秀雄, 小松 作蔵
    1988 年 17 巻 3 号 p. 923-926
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性冠動脈閉塞3時間後の再灌流時における左心バイパス(LHB)とRegional blood cardioplegic reperfusion(RBCR)の併用効果について検討した。左前下行枝(LAD)近位部を3時間閉塞後, 再灌流の方法別に3群に分類した。I群(n=8)は再灌流1時間したもの、II群(n=8)は再灌流と同時にLHBを施行したもの、III群(n=10)は再灌流前にRBCRをVAバイパス(VAB)下に10分間施行した後再灌流をLHB下にしたもので、各群とも再灌流1時間で心臓を摘出した。再灌流1時間後の%SSは閉塞前のI群7.1±11.6%, II群14.0±18.3%, III群38.4±22.9%とIII群で有意(p<0.05)に改善した。AN/ARはI群69.5±14.4%, II群61.4±15.5%, III群39.0±8.6%とIII群で有意(p<0.01)に低値であった。この結果より急性冠動脈閉塞後の再灌流時におけるRBCRおよびLHBの併用により再灌流障害は緩和され、局所左心機能の改善および心筋梗塞範囲の縮小効果が認められることが示唆された。
  • C. K. BEH
    1988 年 17 巻 3 号 p. 927-932
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究は1972年1月より1987年3月までの間当施設にて単独または複数の長時間補助循環を必要とした開心術死亡例9例を対象に、特に細網内系(RES)を中心に病理学的検討を行った。全例に敗血症性変化、8例に重要臓器のうっ血、出血、変性などのMOF変化、5例に全身的出血傾向が認められた。RESにおいて肝臓のKupffer細胞及び脾、リンパ節、骨髄のマクロフアージ〔Mφ〕が大量のhemosiderinや異物貧食のため膨化し、一部は壊死に陥っていた。鉄、PAS、およびリゾチーム染色陽性のKupffer細胞とMφはいずれの臓器にも増加しており(平均85±48個/mm2)、また、脾とLNにおいては、 S-100陽性Mφが増加していた。溶血や破壊された血液成分の浄化処理に担うRESは、長期補助循環症例において、著明な変化を来しており、RES抑制の状態が強く示唆された。血液成分破壊を最小限に留め、RES機能の温存、賦活に努めることは敗血症、MOF予防に重要と考えられる。
  • 森岡 晴記, 二宮 淳一, 山内 茂生, 三枝 直紀, 林 晃一, 庄司 佑
    1988 年 17 巻 3 号 p. 933-936
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞や心臓手術後の心源性ショックや心不全のための治療法として、大動脈バルーン・パンピング法(IABP法)が普及しているが、重症者には限界があり、補助心臓(人工心臓)や心移植も検討されるようになった。しかし両者は費用の面や社会的コンセンサスの面等で臨床応用がまだ難しい。そのため、著者らはIABP法の限界である圧補助のみの方法に加えて補助心臓の如く流量補助可能なシステムを開発し動物実験でその効果を検討した。12頭の急性左心不全犬に対して心拍同期式流量補助可能なIABP法を施行した結果、control時の心拍出量の15~20%の少流量補助を加味した本法により、shock levelにあった血圧、左房・左室圧、心拍出量等は著しく改善し本法の有効性が確認された。
    以上より本法は今後2, 3の問題点を解決すれば臨床応用可能な優れた方法と考えられた。
  • 徳永 皓一
    1988 年 17 巻 3 号 p. 937
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 金森 由朗, 田辺 一, 下野 高嗣, 牧野 茂行, 岡部 学, 矢田 公, 草川 實
    1988 年 17 巻 3 号 p. 938-942
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左室補助人工心臓の駆動方法には様々なものがあり意見の統一を見ていない。拍動型人工心臓において心拍同期駆動では不整脈などの問題があり非同期駆動が使用されることも多い。しかし非同期駆動で左心バイパス(以下LHB)を行なう際には, copulsationとなる場合とcounterpulsationとなる場合などさまざまな状況が存在し, 各心拍で心補助効果が異なると考えられる。そこで拍動型非同期駆動で流量を変えLHBを行い, 各心拍における循環諸量を測定し, さらに各心拍についてポンプの拍動周期を1周期としポンプ収縮開始時からR波までの位相について各パラメーターのphase analysisを行い, 左心補助効果を検討した。また超音波パルスドップラー心エコー法により左室流入血行動態を観察した。拍動型非同期駆動LHBで中流量以上特に高流量において常に前負荷が軽減され心補助効果を認めたが, 低流量では容量負荷の軽減に比べ圧負荷の増大が多く無効と考えられた。よって心拍非同期では50%以上の補助が必要と考えられた。
  • 二宮 淳一, 山内 茂生, 森岡 晴記, 三枝 直紀, 原口 秀司, 小坂 真一, 庄司 佑, 能勢 之彦, 相沢 猛
    1988 年 17 巻 3 号 p. 943-946
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肺高血圧を伴った高度右心不全に対する右心補助を右心補助人工心臓(RVAD)とCentrifugal pump(CP)を用いて行い, その効果を比較検討した。雑種成犬8頭を使用し右室梗塞をmultiple ligationにて作製し, かつ両側肺動脈末梢を絞扼し肺高血圧を併せ作製した。RVAD又はCPを駆動させ補助流量をcontrol時の大動脈血流量の20%, 40%, 60%, 80%と変化させ, Aortic flow, 体血圧, RA圧, RVEDP, LA圧, LVEDP, PA圧, 冠静脈血流量(CSF), 心筋酸素摂取率を測定した。右心補助流量の増加に伴いAortic flow, 体血圧, LA圧, PA圧, CSFの漸増が認められ, かつRA圧, RVEDPの漸減が認められた。しかし80%流量補助では, mRA圧とRVEDPはcontrol以下に低下し, PA圧の上昇が認められた。本研究からはRVAD又はCPによる右心補助はcontrol時のAFの40~60%で充分であり, かつRVAD方式が血行動態的により有効と考えられたがCP補助と比較して各指標に有意差は認められなかった。
  • 坂本 徹, 荒井 裕国, 鈴木 章夫
    1988 年 17 巻 3 号 p. 951-954
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IABPは最も広く普及した補助循環法であるが、不整脈とくに心房細動(af)時には同期作動が難しく未解決の問題である。今回、af時の大動脈圧(AP)収縮期時間が先行するECG上のRR間隔、即ち左室充満時間によって規定されているとの考えのもとに新アルゴリズムを考案し臨床例から収録したaf時のECG・AP波形を用いて市販5機種との比較分析も加え検討した。af時、先行RR間隔とR~dicrotic notch間隔の間には2次回帰を示す正相関が認められ1000msec以上では同一の時間分布を示した。市販機種では、先行数心拍の平均値より次心拍予測制御型はballoon拡張timingのズレ分散は大きくS. D. 43~54msecを、絶対時間制御型はS. D. 14~19msecを示したが、我々の新アルゴリズム型はS. D. 8-5msecと著しく良好な追従性を示した。また、af時のPEPも先行RR間隔と逆相関を示し今後unloadingの制御も回帰式制御法が有用と考えられた。
  • 草川 實
    1988 年 17 巻 3 号 p. 955
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―IABPカテーテルの診断的応用について―
    丸山 俊之, 荒井 裕国, C. K. BEH, 天野 純, 坂本 徹, 鈴木 章夫
    1988 年 17 巻 3 号 p. 956-959
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    IABPカテーテルを治療だけでなく診断用あるいはモニター用のTOOLとして捉え直し, 以下の検討を行った。IABPカテーテル先端より得られた大動脈圧波形(中心動脈圧波形)をもとに, 臨床例10例において(1)Pulse-Contour Methodによる心拍出量の推定と(2)1:1IABP Off直後の2心拍に着目し, 圧及び一回拍出量の変化分(ΔP, ΔV)を求め, これより心収縮能の評価を行った。
    (1)心拍出量の推定は, 熱希釈法により較正を行った時点から12時間以内であれば, 相関係数0.91, 変動係数14.9%で推定可能であった。しかし時間並びに動脈圧の変化と共に誤差は増加し, 一因として動脈コンプライアンスの非線型性が考えられた。(2)心収縮能は, 比較基準がないため左室一回仕事指数・肺動脈楔入圧(SWI-PAw)平面上で低心機能群を定義し(SWI≦30gm/M2(PAw≧15mmHg), SWI≦20gm/M2(PAw<15mmHg))検討したが, 低心機能群は非低心機能群に比しより大きな負のΔV変化を呈した。
  • 吉岡 幸男, 西田 博, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    1988 年 17 巻 3 号 p. 960-963
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    大動脈内バルーンによると思われる腹部内臓壊死死亡症例を3例経験した。3症例ともA-Cバイパス術後で身長は161cm以下と小柄であり, いずれもDatascope 8.5Frの大動脈内バルーン(長さ28cm, 容量40ml)を挿入していた。発症原因として, 身長に比してバルーンが長すぎ, 腹部内臓血管にバルーンが直接機械的障害を及ぼしたものと推測された。
    この腹部合併症を発症しない, 日本人の体格にあわせたバルーンサイズを決定するため, 心カテーテル検査時に, 心疾患を有する45例に対して, 大動脈弓部から腹腔動脈までの距離(Xcm)と, 下行大動脈の直径(Ymm)を測定した。両者の関係は, Y=0.15X+6.99(n=45, r=0.339, P<0.05)であり, その結果により3種類のバルーンサイズを決定した。A:長さ23cm, 直径15.5mm, 容量38ml。B:長さ20cm, 直径15.0mm, 容量30ml。C:長さ18cm, 直径14.0mm, 容量24mlである。
  • ―各種補助循環法の選択および管理方法に関して―
    江石 清行, 西田 博, 今村 栄三郎, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 小柳 仁, 副島 健市
    1988 年 17 巻 3 号 p. 964-968
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1984年1月から1987年10月までに, 当科にて, 術後3時間以上の補助循環を必要とした例は1349例中, 16例(1.2%)であった。V-Aバイパスをもちいた症例(VAB群)が4例(25.0%), 両心バイパスから左心バイパスへ移行した症例(DLVB群)が10例(62.5%), 左心補助心臓を用いた症例(LVAD群)が2例(12.5%)であった。各群の離脱成功率, 長期生存率は, VAB群:50.0%, 50.0%, DLVB群:50.0%, 20.0%, LVAD群:100%, 100%であった。16例中, 6例は人工心肺からの離脱が不可能で引続き補助循環を行った。その内の2例に対し, 計画的LVADを施行した。しかし, 10例は人工心肺から離脱した後の緊急使用であった。VAB群の生存例はRVEF25%の成人ファロー四徴症で術後典型的右心不全による心室細動を呈し, 9時間の補助で離脱可能となった。他の1例はCABG後のPMI(術中, 術後心筋梗塞)で3時間の補助にて離脱可能であった。DLVB群の生存例は53時間および9時間の補助を行った。死亡例に比べると, DVB中は高流量にて補助し, 小量のカテコラミンと, 1/3の流量補助で血行動態が安定した時点でLVBに移行することが望ましいと考えられた。そして, 3日以上に及ぶ場合は, LVADへの移行が必要と考えられた。LVAD群は, LVEF 15%の左室瘤症例とLVEDVI540のAR症例であり, 10日以上の補助でもMOF, DICの発生を予防し, 長期生存が可能であった。
  • 斉藤 憲, 江口 昭治, 山本 和男, 諸 久永, 中込 正昭, 大関 一, 横沢 忠夫, 川並 修, 二見 精彦, 野口 法康
    1988 年 17 巻 3 号 p. 969-971
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ヘパリンコーティングチューブとローラーポンプを使いヘパリン化せずに補助循環を行ない有用な結果を得た。雑種成犬8頭で24時間左心バイパス実験を行ない、開始前、開始後1, 6, 12, 24時間で採血し血小板数、ACT, FDPを測定した。ACTは開始後1時間でやや高値(136.8±19.1sec)を示した。FDPは経過を通じ10μg/ml以下であった。血小板数は前値23.0±10.2×104に対し24時間後15.2±5.0×104と軽度の減少を認めた。実験終了後解剖し諸臓器を検索したが血栓塞栓症の所見はなかった。次に臨床においてIABP使用下でCPB離脱不能の4例及び開心術後のLOSの1例の計5例にヘパリンコーティングチューブとローラーポンプを使った補助循環を行なった。初期の症例で毎分1000ml以下の流量補助で充分な例では酸素化装置のないV-Aバイパス、最近の例では左房脱血、大腿動脈送血の左心バイパスを行ない5例中4例が離脱に成功し良好な結果を得た。
  • 松田 暉, 大谷 正勝, 谷口 和博, 西垣 恭一, 大久保 修和, 大竹 重彰, 澤 芳樹, 松若 良介, 高野 弘志, 三浦 拓也, 広 ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 972-975
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1歳未満の2例に小児用遠心ポンプ(Bio-Pump; BP-50, 容量48ml)を用いた左心バイパスを行った。第一例は完全型心内膜床欠損症(11カ月)で根治術後LOS, 心停止となり, 再手術後体外循環離脱困難となった。左房脱血, 上行大動脈送血を行った。第2例は完全大血管転位症(9カ月)でSenning手術後, 不整脈, 心不全から体外循環離脱困難となり, 解剖学的右室心尖より脱血する左心バイパスを行った。共に, 600~1200ml/minの流量が得られ, それぞれ63, 64時間で左心バイパスより離脱できた。尿量は保たれ, 血行動態は良好であった。この間deviceは計3回の交換を要した。離脱後, 第一例は肺高血圧クリーゼ, 感染から, 第2例は脳塞栓から失った。
    1歳未満症例での左心バイパスでのBP-50の有用性を認めたが, deviceでは耐久性で, 管理面では抗凝固療法, 感染に対する対策が今後の問題として残された。
  • 今井 雅尚, 岡田 昌義, 久保田 真毅, 中村 和夫
    1988 年 17 巻 3 号 p. 976-979
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    前下行枝及び対角枝を含む左冠動脈のmultiple ligationにより雑種成犬に急性心筋梗塞を作成し, その後ショックに陥った時点でBio-Pumpを用いる左心バイパス(Left heart bypass: LHB)を行い, バイパス流量の変化に伴う早期の血行動態について検討を加えた。バイパス流量により以下の3群に分類した。I群:バイパス流量を心筋梗塞後ショックに陥った状態の心拍出量の50%にした群, II群:不全心作成後, 各時点においてバイパスの流量を最大とした群, III群:不全心作成後, LHBを実施しなかった対照群である。
    III群では進行性の心不全で全例が90分以内に死亡した。左心拍出量にバイパス流量を加えたtotal flowはLHB開始1時間後に, I群で18%, IIで47%の増加を認めた。また平均動脈圧はI群で11%, IIで26%の増加を認め, LVmax. dp/dtはI群で9%, IIで48%の低下が認められ, 一方, 右心系の血行動態ではI, II群とも有意な変化はみられなかった。
    以上の所見より, LHBは不全心に対して, 良行な血行動態をもたらし, I群に比し, full bypassを実施したIIですぐれた心補助効果と末梢循環の改善が認められた。
  • Hiroyuki IRIE, Taiji MURAKAMI, Hirohumi IZUMOTO, Kohji TAKATA, Haruaki ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 980-983
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓を用いたpulsatile ECMO (V-Aバイパス)による両心補助の試み。重症両心不全モデルにおいてpulsatile V-A ECMOの両心補助循環手段としての評価を行なった。回路はpusher-plate型補助人工心臓と膜型肺からなりリザーバーは含まず、右房脱血上行大動脈送血とした。15頭の山羊を用い、回路装着後心室細動とした。人工心臓の駆動条件は急性実験において最大流量の得られたvarfable rate modeとした。バイパス時間は9~23時間(平均12.8時間)であった。バイパス流量2.5~3.1L/minで人工肺における圧較差は最大170mmHgであり、カテコラミンを用いずに最大動脈圧60~120、平均大動脈圧38~90mmHgが得られた。また拍動流であることの指標としでAo dp/dtを測定したところバイパス前値800~2000、バイパス中400~3400mmHg/secであり良好な拍動流が得られた。溶血は許容範囲であった。本回路は通常の体外循環回路からの移行が容易であり、短期間の両心循環補助及び呼吸補助手段として有効であると考えられた。
  • 松田 暉
    1988 年 17 巻 3 号 p. 984
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 尚, 香川 謙, 三浦 誠, 秋野 能之, 貞弘 光章, 渡辺 孝, 毛利 平, 本郷 忠敬, 堀内 藤吾, 仁田 新一, 片平 美明 ...
    1988 年 17 巻 3 号 p. 985-988
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後低心拍出に対する補助人工心臓(VAD)の臨床使用を行なった6症例について, 肉眼所見レベルでの血液接触面における抗血栓性の検討を, 流量, 抗凝固療法などとの対比のもとに行なった。使用した計9個のポンプのうち2個のサック部分, 2個のコネクターの段差部分にそれぞれ微細な血栓付着が認めうれたが, いずれも塞栓症の原因となり得るものではなかった。血栓形成の原因は頻繁なON/OFF試験, 全身性の重症感染症などで, コネクターの段差に形成された血栓以外はVAD自体の特性によるものではなく, 適正なVAD使用により十分予防可能であった。
    以上, 今回使用したVADシステムは高い抗血栓性を有し臨床使用上極めて安全なものと考えられた。
  • 岡田 昌義, 久保田 真毅, 今井 雅尚, 久野 克也, 小沢 修一, 中村 和夫
    1988 年 17 巻 3 号 p. 989-992
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞後の心原性ショックや心臓手術後のLOSに対して近年補助循環法が普及し、かなりの成果がえられている。最も普及しているのはIABPであるが、これにも効果の限界があり、高度心不全にはさらに強力な心補助効果の手段が必須となる。最近補助人工心臓を用いるLVADが実地臨床面で応用されている。われわれも開心術後の2例にLVADを応用する機会を最近えたが、今回心筋梗塞後の心室中隔穿孔例にLVADを応用し、著効をえたので報告する。症例は68歳女性、心筋梗塞発症2日目にVSRが発生しショックとなったのでIABPを行いながら、緊急手術(CXへのbypassとVSR閉鎖術)を施行した。しかし体外循環か、らの離脱が不可能となり、やむなくLVADを開始したところ心機能は改善しこれより離脱しえた。LVADは7日目にIABPは8日目に離脱することができた。ところが、腎不全を併発し結局24日目にMOFで失ったが、高度心不全にはLVADが最も有力な補助循環法であることを確認し、問題点を検討した。
  • 松本 直晃, 森 文樹, 西健 太郎, 江里 健輔, 毛利 平
    1988 年 17 巻 3 号 p. 993-996
    発行日: 1988/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬16頭を用い, 左冠動脈回旋枝(LCx)を1時間閉塞後, 再灌流時に5時間の補助人工心臓(LVAD)による循環補助を行った9頭(LVAD群)と再灌流のみを行った7頭(Control群)の2群に分け, LVADの効果について比較・検討した。
    心機能では心拍数, 大動脈圧, 肺動脈圧は有意差なく, 左房圧はLVAD群が有意に低値で, 心拍出量, LV dp/dt, 左室仕事量は有意に高値を示した。LCx領域の局所心筋血流量は, Control群では再灌流5時間の間回復傾向を示さず, 一方LVADではほぼ前値まで回復した。心筋乳酸摂取率はControl群では再灌流3時間後より負の値を示したが, LVAD群は再灌流早期より正の値を保ち, 良好な好気性代謝を示した。
    以上より, 急性冠動脈閉塞後再灌流時にLVADで左室補助を行うと, 左室前負荷の軽減, 局所心筋血流量の増加, 心筋乳酸摂取率の改善がみられ, LVAD脱後も心機能の回復が良好であった。
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