人工臓器
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19 巻, 3 号
選択された号の論文の106件中51~100を表示しています
  • 越後 茂之, 松田 武久, 神谷 哲郎
    1990 年19 巻3 号 p. 1186-1189
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新しい経静脈的動脈管閉鎖術の開発を試み, 形状記憶樹脂ポリノルボルネンを使用したプロトタイプ人工栓を作製した。シリコンシートで“大動脈”“肺動脈”“ぐ動脈管”からなる大動脈模型を作り, 拍動ポンプを装着して湯が循環する回路を組みin vitroの実験装置とした。37℃の湯が循環している大血管模型での“動脈管”閉鎖の実験において, 常温で細く変形された状態の形状記憶樹脂製人工栓は, 前もって留置されたガイドワイヤーとプッシングカテーテルに導かれて“動脈管”へ容易に挿入された。カテーテルから約50℃の湯を吹きかけると人工栓は大きく拡大して変形前の形状に戻り, ガイドワイヤーとカテーテルの抜去後も“動脈管”に安定に留まった。これにより“大動脈”の著明な上昇と“動脈管”での短絡率の減少がみられた。形状記憶樹脂製の人工栓は大血管模型の“動脈管”閉鎖に有用であり, 将来の臨床応用も有望であると考える。
  • 佐藤 ゑみ, 木戸 友幸, 杉立 彰夫
    1990 年19 巻3 号 p. 1190-1193
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今回我々は, ラットにあらかじめ糖尿病(以下DM)を誘発し, 創傷治癒に不利な状態で胃潰瘍を誘発させた後, G. T. XIII局注による組織修復能を検討した。
    DMはStreptozotosin(STZ)50mg/kgを腹腔内注入して誘発させた。胃潰瘍はSTZ投与後3日目に, 胃体部後壁漿膜下に酢酸を注入して作製, 更に3日後, 全例胃壁切開して直視下に潰瘍を計測した。治療群はG. T. XIIIゾルを潰瘍に注入, 対照群は無治療のまま経過観察した。実険に使用したDMラット数は, 治療群8匹, 対照群6匹。3-14日目に胃を摘出し潰瘍部分を観察, 肉眼的, 組織学的検索を行った。
    治療群は観察期間中全例生存, 対照群は1例が潰瘍穿孔によって死亡した。肉眼的, 組織学的検討において, 治療群では早期治癒傾向が認められた。これに対し対照群では, 潰瘍治癒が明らかに遅れていた。
    以上より, G. T. XIIIは, 創傷治癒には不利と考えられるDM状態下でも, 胃潰蕩治癒を促進すると考えられた。
  • 大越 隆文, 野一色 泰晴, 冨澤 康子, 森島 正恵, 小柳 仁
    1990 年19 巻3 号 p. 1194-1197
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は新しい抗血栓性心臓壁補填材料(CUFP)を開発し, 長期動物実験により, その安全性を検討した。成犬に, 右室流出路再建術の要領で, CUFP(超極細ポリエステル繊維をコラーゲンで被覆し, 親水性エポキシ化合物で架橋した材料)を縫着した。CUFPの内腔面は植え込み後, 血栓付着は少なかった。また, 28日目で, 新生内膜が形成され, 中心部のわずかな部分を残して, 内皮細胞被覆がみられた。168日目で, 新生内膜内に平滑筋細胞を認めた。486日目では, 内皮細胞被覆を伴った薄くて, 均一な新生内膜が保持されていた。CUFPの材料壁内部では, 28日で, 線維芽細胞侵入, 血管新生がおこり, 168日, 486日で基質化された材料壁が認められた。CUFPは植え込み後, ポリエステル繊維によって補強された, 一種の自己器官として再構築され, 新陳代謝が行なわれる。そのため, CUFP植え込み後長期間, 変性及び劣化がおこらず, また, その表面に形成された新生内膜を保持すると考えられる。
  • 石川 恵一郎, 金鐸 東, 大城 孟
    1990 年19 巻3 号 p. 1198-1201
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々はウロキナーゼ固定化ポリウレタンカテーテルを中心静脈カテーテルとして使用した29症例, 31カテーテルについて引き抜き造影を施行した。その結果31例中14例(45.2%)に血栓を認めたが, 従来の材質のカテーテルに比べ, 秀れた抗血栓性を示した。血栓には2つのタイプがある事が認められた。つまり, 1) flbrin sheath(fibrin sleeve), 2) mural thrombus (parietal thrombus)で前者が5例(36%), 後者が9例(64%)であった。血栓の発生はカテーテル刺入部とカテーテル先端での血管内膜の損傷が引き金となる事が推測された。臨床的には肺塞栓等の静脈塞栓症状は認めなかった。カテーテル敗血症は6例(19.4%)に認め, その内5例(83.3%)と高頻度に血栓を有し, 血栓が感染巣となる事が示唆された。
  • 谷口 正哲, 竹山 廣光, 水野 勇, 品川 長夫, 吉山 直樹, 青木 秀希, 由良 二郎
    1990 年19 巻3 号 p. 1202-1205
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    静脈内留置カテーテルに、生体内外導通材料としてハイドロキシアパタイト製皮膚端子を装着したものを開発、2例の経静脈栄養施行患者に臨床試用を行なった。右鎖骨下静脈より中心静脈にカテーテルを留置、端子は右前胸部に設置した。留置開始30日経過後は、端子周囲の消毒処置を中止したが、2例とも、端子と皮膚が強固に固着し、端子周囲には発赤・浸出液はみられなかった。1症例は60日、他の症例は96日のカテーテル留置が行なわれたが、留置中に感染徴候は認められなかった。周囲皮膚の組織所見では、端子に沿う皮膚のdown growthは観察されず、炎症性細胞浸潤もなく、良好な生体適合性を示した。走査電顕では、端子の皮膚接合部に帯状の侵食像がみられ、HApと生体とのactiveな固着を示して勢た。以上より、ハイドロキシアパタイト製皮膚端子付きカテーテルは優れた生体適合性・接合性を有し、カテーテル感染の防止に極めて有用であると考えられた。
  • 辻 隆之
    1990 年19 巻3 号 p. 1206
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 周期的に変動するせん断速度の影響
    橋本 成広, 西口 克彦, 阿部 能明, 蟄正 基, 高山 俊政, 浅利 秀男, 風間 繁, 石原 昭, 笹田 直
    1990 年19 巻3 号 p. 1207-1210
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    拍動流下における血栓形成と血液流れとの関係を定量的に論じるために, in vitroおよびex vivoにおいて, 周期的に変動するせん断速度と血栓形成との関係を調べた. In vitroにおける実験では凹凸円錐Couette流型試験機を用い, イヌ血液に50~800s-1の時間と共に正弦波状に変動するせん断速度を3~10分間加え, 凹凸円錐間血液の流動抵抗が血栓形成に伴って上昇する比率から血栓形成度を評価した. Ex vivoにおける実験では, 補助人工心臓をヤギに適用して3~35日間の左心バイパスを実施し, 人工心室周辺の血栓形成・腎臓での梗塞形成の状態と人工心室出口瞬時流量時間変化波形との関係を調べた. これら実験の結果, 壁面せん断速度の最大値が500s-1以上になると血栓形成が抑制され, 壁面せん断速度が100s-1以下の期間が長いほど血栓形成が著しくなることがわかった.
  • 立木 繁, 赤松 功也, 浜田 良機, 中島 育昌, 山本 泰宏, 堀内 忠一
    1990 年19 巻3 号 p. 1211-1214
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    セメントレスTHRの術後X線像を調査し、ステムの骨髄腔への適合性がソケットの固定性におよぼす影響につさ検討した。症例は術後平均3年を経過した32例32関節で、手術時年齢は40才より81才、平均63才である。その結果、ステムの適合性良好群と不良群との間でソケットの内反移動の発生頻度に有意の差はなかった。しかし両群とソケットの挿入角度との間には関連性をみた。すなわちステムの適合性良好群でも開外角に問題のある(40°以上あるいは30°未満)症例に移動が起こりやすく、適合性不良群においては、開外角が良好であるにもかかわらず移動が起こる傾向をみた。またソケットの移動の開始時期は術後1年から約3年であった。したがってソケットの移動の防止には、ソケットを35°の開外角で設置するとともにステムを骨髄睦にpress-fitさせて挿入することが望ましいと考えられた。
  • 今井 庸二, 門磨 義則
    1990 年19 巻3 号 p. 1215-1218
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ポリウレタン(PU)は人工臓器分野にも利用がはかられつつあるが, 材料の劣化, 生体適合性の面でまだまだ改良が必要ときれている。本研究では, ジイソシアナート, ソフトセグメン, トド鎖延長剤を変え, これまでのものとは構造の異なるPUを種々合成し, 細胞培養法により生体適合性の評価を行った。パーフルオロオクタンスルホンアミド基, 水酸基, ポリジメチルシロキサン(PDMS)やポリチオジエタノールセグメントなどを含む新しいPUを合成した。パーフルオロ基やPDMSのような疎水性のユニットを導入することにより, 細胞は付着しにくくなり, 細胞に対する反応がかなり異なる多様なPUを種々合成することができた。三種の芳香族ジイソシアナニトを用いて参たが, 細胞培養ではあまり違いは認められなかった。物性, 合成のしやすさなど, 総合的には通常使われているジフェニルメタンジイソシアナートが優れていた。
  • 福井 美仁, 木村 元彦, 杉浦 敏文, 原田 幸雄
    1990 年19 巻3 号 p. 1219-1222
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    呼気終末期CO2分圧(ETCO2)を制御指標としてペーシングレートの制御を行う筋内刺激横隔膜ペースメーカを試作した。雑種成犬を用いて、動物の横隔神経が横隔膜に入り込む点から約10mm外側の横隔膜筋内部に左右一ケ所ずつユニポーラ電極き装着した。動物の代謝を代謝促進物質を経口投与して亢進させて、ETCO2によるレート制御を試みた。刺激波形には、繰り返し周波数23Hz、パルス幅0.15msecのcathodal波形を用いた。刺激電流強度は最大下刺激とした。PaCO2を一定に保つことができ、ETCO2によるレート制御によって有効な換気制御が行えた。
  • 高井 信治, 佐久間 一郎, 福井 康裕, 金子 明子, 藤江 忠雄, 長岡 昭二
    1990 年19 巻3 号 p. 1223-1226
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体液中に含まれる物質を認識する目的で各種のセンサーが開発されているしかし電気化学的原理を利用したものは生体内の電気的しぐなるを同時に計測してしまうことがありS/Nが悪くなることもある、しかし光ファイバーの先端に機能性材料を固定することにより電気的なノイズわうけない測定が可能である。そこでこれ等のことがらを明らかにするための、基礎的な研究を行った。
  • 広瀬 宗孝, 相馬 彰, 夏山 卓, 田中 義文, 森本 武利
    1990 年19 巻3 号 p. 1227-1229
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    全血中尿素濃度の連続測定を目的として、固定化酵素をカラムに充填し、この部分を通過中に発生するアンモニアから尿素濃度を求めるシステムについて検討した。固定化酵素は、真球状のセルロースゲルにウレアーゼを共有結合することにより作製し、アンモニアガス電極と組み合わせることにより、尿素の連続測定を行なった。固定化酵素は容量約70μlの反応槽に充填し、その交換は容易である。電極に対する血球の影響を防ぐためには透析回路が必要であるが、応答速度の遅延を防ぐため全血を用いた。そこで反応槽前後のアンモニアガス電極電位の差を測定したところ、ヘマトクリット値の変化に影響されることなく尿素を連続的に測定することができた。
  • 江里 健輔
    1990 年19 巻3 号 p. 1230
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 松田 孝一, 谷 徹, 沼謙 司, 阿部 元, 吉岡 豊一, 青木 裕彦, 小玉 正智, 松田 武久, 伊藤 哲雄
    1990 年19 巻3 号 p. 1231-1234
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今回我々は、松田らにより血管吻合用に開発された医用弾性接着剤(PUP-134, 201)を用いて肝、脾、膵、腎臓の実質性出血に対する止血効果と止血手技および安全性につき検討した。PUP-134, 201は親水性のポリオールの両末端にジイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーで、接触面の水およびアミノ酸と反応しながら高分子化反応を起こし組織と密着し、同時に発生する炭酸ガスによる発泡にて柔軟性に富んだ接着剤となる。PUP-201は催奇形性、変異原性のないフッ素化ヘキサメチレンジイソシアネートに変換した材料である。雑種成犬9頭およびマウス75匹の肝、脾、膵および腎臓の一部を切断し、テフロンまたはシリコン膜にて切断面に塗布、圧迫し止血効果を確認し、1年後まで経時的に組織学的検討を加えた。1.5分の圧迫にて容易に止血され、接着面の炎症反応も48時間後以降軽度となった。PUP-201については組織毒性を、皮膚貼布試験、皮下注入、腹腔内投与および生体内易生分解性について検討したが、問題はなかった。
  • 夏目 徹, 田村 康一, 河原崎 茂孝, 清水 慶彦
    1990 年19 巻3 号 p. 1235-1238
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    外科手術時にしばしば遭遇する実質臓器からの出血や毛細管、血管吻合部からの出血に際しては局所吸収性止血材の使用が効果的である。コラーゲンは血小板を粘着凝集させ血液凝固機転を促進するため局所吸収性止血材として応用されており、臨床的にも優れた効果が報告されている。今回我々は、豚皮より抽出したコラーゲンを湿式紡糸法によって平均径50μmの均一の繊維とし、これを綿状コラーゲン止血材(Cotton type collagen hemostat:CC)として、その効果について比較検討した。雑種成犬8頭を用い全身麻酔下に開腹し、脾臓実質からの出血モデルの止血に要する時間と出血量を定量した。対照実験として市販微線維性コラーゲン止血材(Microcrystalline collagen hemostat:MCC)でも止血を行なった。CCはMCCに比べ止血効果は向上し、完全な止血に要する時間も短縮させた。またヘパリン100u/kgを投与した後でも優れた止血効果を発揮した。これはCCの繊維構造が出血に抗するのに有利であり膨潤した後もその基本的構造を保ち創面に密着するためであると思われた。
  • 横山 昌幸, 山田 則子, 岡野 光夫, 桜井 靖久, 片岡 一則, 井上 祥平
    1990 年19 巻3 号 p. 1239-1242
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    異なる2成分より成るブロックコポリマーを担体とし、それに疎水性の抗ガン剤アドリアマイシンを結合させ、全体を高分子ミセルとすることにより新しいタイプの薬物複合体を合成し、ミセル形成能とin vivo抗ガン活性を評価した.
    ブロックコポリマーの構造はポリエチレングリコールとポリアスパラギン酸から成り、アスパラギン酸残基の側鎖カルボキシル基にアドリアマイシンをアミド結合を介して導入した。合成した薬物複合体はpH7.4の緩衝液中で平均粒径50nmの単一分散のミセルを形成する。また、そのP388マウス白血病細胞に対するin vivo抗ガン活性は、高い延命率(T/C>488%)をアドリアマイシンよりも少ない体重減少の範囲内で得ることができた。
  • 吉田 亮, 酒井 清孝, 岡野 光夫, 桜井 靖久
    1990 年19 巻3 号 p. 1243-1246
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    温度により膨潤性を著しく変化させるイソプロピルアクリルアミドとメタクリル酸エステルのコポリマーを用い、薬物放出の量的制御およびON-OFF制御を試みた。ポリマー膜を合成した後インドメタシンをloadingして放出デバイスを作製し、リン酸緩衝溶液中で薬物放出パターンを調べた。一定温度下では、ポリマーの膨潤度が大きくなるほど0次放出に近づいた。これは疎水性薬物の場合薬物消失領域の透過性が増加するためであり、モデルによるシュミレーション結果と一致した。また温度を20℃と30℃の間で段階的に変化させて放出実験を行った結果、表面収縮層の生成により薬物放出の完全なON-OFFが得られた。このパルス型放出パターンは、OFF状態が長いほど0次放出が長く保たれ、OFF状態の間に薬物がポリマー内で再分布することが示唆された。感温性ポリマーゲルの膨潤-収縮特性を変化させることで温度変化に伴う薬物放出のON-OFFおよび放出速度の制御が可能である。
  • 山田 明夫, 山田 則子, 桜井 靖久, 岡野 光夫, 嘉悦 勲, 吉田 勝
    1990 年19 巻3 号 p. 1247-1251
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今回侵襲を少くする方法でウサギの肝臓の一葉に局所的に肝臓癌を作製し、その肝臓癌に上記のカプセルを移植した。移植カプセルの分析ではMMCのカプセルの断面写真では表面に近い薬物から順に放出しており、5-Fuの電顕写真では断面全体に細かいPoreが観察され、薬物はほとんど放出された。
    5-Fuの単剤移植では癌組織の方へ壊死が広がり、全体に凝固壊死を形成している。MMC単剤移植では長期に持続的に薬物放出が見られ、凝固壊死と核破壊が共存している。三剤併用力プセルでは核破壊→凝固壊死→融解壊死のような特徴的な壊死形成を示している。
  • 藤原 俊義, 阪上 賢一, 松岡 順治, 塩崎 滋弘, 内田 晋, 羽井 佐実, 折田 薫三
    1990 年19 巻3 号 p. 1252-1256
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    マウス大腸癌肝転移モデルを用いて, IL-2mini-pelletを肝循環系に局所投与した場合の抗腫瘍効果について検討した。IL-2mini-pellet単独でもLAK細胞を同時に投与したときと同様に著しい肝転移抑制効果が認められた。また, 平均生存日数も有意に延長していた。IL-2mini-pelletを脾臓内に投与することにより, 投与後1日目より脾細胞のNK活性およびColon-26細胞に対する特異的細胞障害活性が上昇しており2日目に最高値に達していた。一方, LAK活性の上昇は顕著ではなかった。IL-2mini-pellet投与後の肝組織のmonoclonal抗体を用いた免疫組織学的染色では, 肝転移結節周囲にThy1.2+細胞とLyt2+細胞が集積してかた。IL-2mini-pelletは局所に投与することにより単独でも有効であり, 肝転移抑制効果のeffectorはThy1.2+・Lyt2+の特異的キラー細胞ではないかと推定された。
  • 林 紘三郎
    1990 年19 巻3 号 p. 1257
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―DacronグラフトとPTFEグラフトの対比―
    太田 稔明, 岡田 昌義, 小寺沢 俊洋, 西脇 正美, 山本 信一郎, 小沢 修一, 中村 和夫
    1990 年19 巻3 号 p. 1258-1261
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管別にaxillofemoral bypassの術後遠隔成績を検討した。対象は1977年より1988年までの11年間の手術症例37例で、これをDacronグラフト群(Sauvage Dacron、17例22グラフト)、PTFEグラフト群(externally supportd PTFE、20例24グラフト)の2群に分けた6術前において、Fontaine分類による臨床症状、血管造影所見等に両群間で差はなかった。術後遠隔成績をみると、Dacron群では術後11年でも開存例は認められたが術後10本のグラフトが閉塞、うち4本で血栓摘除により再開通が得られた。グラフトの閉塞時期は平均術後1.5年、その開存率は術後1年91%、5年67%、10年62%となった。一方PTFE群では最長6年の追跡で5本のグラフトが閉塞したが、うち2本で血栓摘除により再開通が得られた。その術後開存率は1年95%、5年86%となり、4年以降6年までの開存率はDacronグラフトに比し有意に良好であった。
  • 浦山 博, 坪田 誠, 品川 誠, 三崎 拓郎, 渡辺 洋宇, 岩 喬
    1990 年19 巻3 号 p. 1262-1265
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    過去16年間に施行した大動脈領域のwoven Dacron人工血管移植例198症例を対象とし、その臨床成績を病理学的検索を含めて検討した。使用された人工血管はporosity 50ml/min/cm2のwoven Dacron直管が61個、130の直管が17個、200のY字型が120個であった。Preclottingは血液、血液熱処理、albumin熱処理にて111例に行ない、また、術後抗凝固療法は73例に行なった。人工血管の観察期間は最長16年、平均55.3ヵ月であった。人工血管に関係した合併症としては、術中に制止し難い漏血を2例、人工血管周囲の血漿腫を2例、晩期吻合部出血を1例、人工血管の感染を1例、人工血管の閉塞1例、末梢側吻合部の狭窄を1例に認めた。病理学的検索では移植後1ケ月目の人工血管の内面はfibrin血栓の膜に覆われるかDacronの繊維が露出しており、所々に赤色血栓の付着を認めた。移植後1年目以降では吻合部にpannus形成をみその他の内面はfibrin血栓かcollagen線維を主とする仮性内膜に覆われているが、人工血管によっては赤色血栓の付着も認めた。
  • 境 普子, 笹嶋 唯博, 小窪 正樹, 和泉 裕一, 堀尾 昌司, 久保 良彦
    1990 年19 巻3 号 p. 1266-1269
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Biograftと、一端を1%Glutaraldehydeで術中固定を行なった自家静脈を連結したmodified composite graftを考案し、雑犬の腎動脈下腹部大動脈に移植した。連結部は外周からの組織の侵入を阻止するため、Biograft片で被覆した。最長33か月の観察では、中枢吻合部にみられたBiograft特有の著明な吻合部内膜肥厚は、連結部では全く認められず平滑であり、縫合線上の少量のフィブリンは器質化されなかった。固定された自家静脈領域はほぼcollagenのみとなり、平滑筋細胞や結合織の侵入、増生はみられなかった。末梢吻合部から進展した薄い内皮細胞層が、連結部を覆い、Biograftまで進展する所見が得られた。MCGでは連結部での宿主の反応を制御し、吻合部内膜肥厚を消去できたことより長期成績を改善しうる可能性があり、自家静脈の不充分な小動脈血行再建例に対し、人工血管の適応を拡大することが期待される。
  • 臼井 由行, 内田 發三, 寺本 滋
    1990 年19 巻3 号 p. 1270-1274
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    市販されている種々の人工血管の3次元的構造とそれらの器質化とを比較検討した。transillumination methodを用いて、Microknit、Bionit II、Vasculour II、Microvel、DeBakey Woven、Cooley Woven、Meadox Woven Double Velour、Gore-Texの各種人工血管を観察した。また、それらを、雑種成犬の胸部下行大動脈に移植し、2か月後に摘出して器質化を調べた。Dacron人工血管では、wovenでもknittedでも概して良好なグラフトを貫通する器質化が認められた。それに対して、Gore-Texではグラフト内側1/3の部分には全く細胞成分が存在せず、フィブリン様物質で満たされていた。Thrombus free surface score、Cell coverage scoreは有意差はないものの、双方ともGore-Texで最低で、Bionit IIで最も優れていた。小口径の人工血管では外面ベロアで内面が平滑なDacron人工血管が望ましいと考える。
  • 高倉 宏充, 杉田 洋一, 松井 道彦, 宮沢 総介, 原崎 弘章, 能勢 之彦, 新井 達太
    1990 年19 巻3 号 p. 1275-1277
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    PTCA後の再狭窄予防を目的とした形状記憶合金によるCoronary Stentを開発し, 10個のStentをウサギの大動脈内にX線透視下でカテーテル法にて挿入した。Stentのサイズは内径3mm, 長さ5mm, 厚さ0.15mmであり, これを5Fのバルーン付挿入用カテーテルに巻きつける事により, 内径を1.7mに縮小する事が可能になる。40℃の温生食水をカテーテルの側管より急速注入すると, Stentは直ちに内径1.7mmから元の3mmに拡張し, その拡張する力で血管を内膜から押し拡げる形で血管内に固定する事が可能であった。又形状記憶合金の生体適合性を調べる目的で内径5mmのStent 22個を犬の総腸骨動脈にカテーテルにて挿入した実験では, 最高2年まで観察した結果22個中21個開存と非常に良好な結果を得た。
  • 松本 博志
    1990 年19 巻3 号 p. 1278
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 松本 淳, 井川 哲, 西原 勝紀, 小山田 香, 片倉 健男, 野一色 泰晴
    1990 年19 巻3 号 p. 1279-1282
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    多孔質人工血管の治癒性を、埋入の場合及びシリコーンフィルムを内面被覆し血流の影響を遮断した場合において比較した。その結果、移植初期の基材内への炎症性細胞浸潤は埋入の場合よりも遅く、シリコーンフィルムの内面被覆により基材内への組織侵入性が改善されることがわかった。多孔質基材内に滞留する創傷液と血中液性成分との相互作用が考えられることから、組織培養により調べた結果、創傷液-血清混合培地中で血清比率の高い場合ほど線維芽細胞の増殖性が低く、また創傷液に起因する線維芽細胞走化性が血清によって阻害されることがわかった。以上より、吸収性材料の内面被覆により、移植初期の外側からの組織侵入を安定に促進し、長期的には被覆材の分解吸収により基材内外面が連通し安定開存の可能な人工血管を作製できると考える。
  • 車谷 元, 山田 京子, 渡辺 幸二, 佐藤 伸一, 丹生 智史, 岡 隆弘, 野一色 泰晴
    1990 年19 巻3 号 p. 1283-1286
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は小口径人工血管用の結合織管に抗血栓性を付与する方法として、所要時間が短くかつ簡便にヘパリンの固定化が可能な“迅速抗血栓性付与法”を開発してきた。本法では結合織管に固定化されたプロタミンにイオン結合したヘパリンが、埋め込み後徐放化されることによって、人工血管表面でのフィブリンの形成が抑制される。今回、結合織管を処理する際の諸条件を変化させ、結合織管に固定化されたヘパリン量および血しょう中へ溶出するヘパリン量の経時変化をin vitroで検討した。結合織管に固定化されたヘパリン量と溶出量は必らずしも一致せず、処理時のプロタミン濃度の上昇と共に固定化量は増すものの溶出量は逆に低下した。本検討の結果、結合織管処理時のヘパリンおよびプロタミンの濃度をかえることで、ヘパリンの固定化量、溶出量の異なる種々の結合織管を作成可能であることが明らかとなった。
  • -超極細ポリエステル繊維によるAngiogenesis-
    丹生 智史, 佐藤 伸一, 白方 秀二, 大賀 興一, 岡 隆宏, 野一色 泰晴, 車谷 元, 渡辺 幸二
    1990 年19 巻3 号 p. 1287-1291
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    細胞親和性に優れた超極細ポリエステル繊維(UFPF)を用いて高有孔性人工血管(SS-G)を作製し、その早期における治癒促進性を検討した。対照群(市販中有孔性、高有孔性人工血管)とともに、イヌ胸部下行大動脈に移植した。移植後14日目のSS-Gにおいて光沢のある新生内膜を認め、内皮細胞のコロニーであることを確認した(走査電顕)。線維芽細胞は繊維間隙を越え既に内腔面のフィブリン層にまで侵入していた。このフィブリン層は結合組織に置換されつつあり人工血管の器質化が進んでいた(光顕)。UFPFにより線維芽細胞の侵入増殖が促進される結果、結合組織が早くから形成される。この時多数の線維芽細胞の活動を支えるべく毛細血管新生(Angiogenesis)が誘導され、内腔面に開口し内皮細胞のコロニーをもたらしたと考えられた。このようにUFPF製人工血管は治癒促進型の人工血管であると言えた。
  • 野一色 泰晴, 山根 義久, 佐藤 伸一, 丹生 智史, 村山 祐一郎, 富澤 康子, 大越 隆文, 小柳 仁
    1990 年19 巻3 号 p. 1292-1296
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    患児の成長に合わせて徐々に口径が太くなり, 成長してゆく人工血管の開発を行ない, 動物実験にて長期例の経過を観察し, 臨床応用への可能性を検討した。素材にヒト大伏在静脈を用い, 浸透圧と超音波処理して膠原線維および弾性線維からなる管を作成した。これを親水性エポキシ化合物(デナコール)で架橋し, 外側を太い口径のポリエステルメッシュチューブで覆った。15頭の小犬胸部下行大動脈に内径4mm, 長さ3.5~4cmの人工血管を植え込み, 1年後に内径9.5mmに成長するのを確認した。成長後の長期例8頭の観察では, 2年11ヶ月後も期待した口径を維持し, 動脈瘤様変化が生じていないこと, および石灰化などの, 乳幼児へ植え込んだ生体由来材料を用いた人主臓器に生じやすい変性が全く生じていないこと等を明らかにした。この結果臨床応用上からみて問題がないことが明らかとなった。
  • 白川 元昭, 進藤 俊哉, 江上 純, 古屋 隆俊, 高山 豊, 宮田 哲郎, 佐藤 紀, 高木 淳彦, 多田 祐輔, 出月 康夫, 車谷 ...
    1990 年19 巻3 号 p. 1297-1300
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高濃度の内皮細胞浮遊液を, 超極細ポリエステル繊維で密に織った起毛織布人工血管の内腔からフラッシュして, 細胞をgraft壁に物理的に捕捉させた後, 静置培養する方法を用いて一種のprelined graftを作成し犬の大動脈において2週までの短期移植実験を行い, 組織学的に検討した。なおgraftを鉗子で挾み細胞浮遊液が流れ込まない領域を設けこの部分を対照とした。seeding部には非常に早期から広範囲に内皮化が生じたのに対し, 対照部には外部からの進展以外には内皮による被覆は生じなかった。seeding部の内皮化にはgraft内面に直接内皮細胞がのる領域とfibrin層を介して内皮化される領域の区別がみられた。前者には強い細胞反応がみられ, 後者の方が安定した組織像を呈した。inner capsuleの厚い部位や, outer capsuleにseeding部に一致して豊富な新生血管の形成がみられた。以上より, この新しい内皮の撒き付け法は内面の早期の内皮化に有効である事が示唆された。
  • 久保 良彦
    1990 年19 巻3 号 p. 1301
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 長末 正己, 松原 純一, 清水 健, 新保 實
    1990 年19 巻3 号 p. 1302-1305
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管の開存性向上の1つに、宿主血管と人工血管のcomplianceを近づける問題がある。人工血管移植後における生体内でのcompliance計測を目的としたcantilaver型変位計を試作し、in vitroにおける各試料(ゴムチューブ、シリコンチューブ、Gore Tex人工血管)の静的・動的complianceを測定し、また雑種成犬の腹部大動脈、Dacron人工血管移植時の状態について、生体での計測を行い以下の結果を得た。compliance (%/mmHg) :ゴムチューブ0.012、シリコンチューブ0.008、Gore Tex人工血管0.014。生体内における腹部大動脈0.319、Dacron人工血管0.083、吻合部0.082であり、両者間でのcompliance mismatchを認めた。手術時のcomplianceは、宿主血管では、吻合部に近い程小さく、人工血管では、吻合部に近い程大きく、中心程小さい。吻合部では小さい。という傾向を示した。今回、試作したcantilever型変位計は、遠隔操作可能で、滅菌処理にて手術時の計測を容易にした。
  • 内貴 猛, 松本 健郎, 林紘 三郎
    1990 年19 巻3 号 p. 1306-1309
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管と生体血管の吻合部の流れの様子を、モデルを用いた流れの可視化法により観察した。動脈を模擬した弾性管モデル、人工血管を模擬した剛体管モデル、吻合部を模擬したモデルを作製し、生体内類似の流量波形を有する拍動流を流し、各モデルの内部の流れを水素気泡法と固体トレーサ法により可視化観察して比較、検討した。末梢側吻合部を模擬したモデルでは、収縮期に吻合部から流れの剥離ど、渦の発生が観察され、また、擾乱が大きかった。壁剪断率の変動幅は、中枢側の吻合部を模擬したモデルで大きく、末梢側モデルで小さかった。これらの結果は吻合部における弾性管の変形が大きいほど、すなわちコンプライアンスミスマッチが大きいほど顕著に現れた。この様な流れの異常が吻合部における血栓形成や内膜肥厚を誘発する一因であると考えられる。
  • 西岡 洋, 笹嶋 唯博, 直江 綾子, 久保 良彦
    1990 年19 巻3 号 p. 1310-1313
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    吸収性縫合糸polydioxanon (PDS) 糸をePTFE人工血管のイヌ腹部大動脈移植に用い, 吻合部の治癒状況を検討した。対照にはpolypropylene (PP) 糸を用いた。PDS使用吻合部では, 移植後5ヵ月より縫合糸の宿主圧迫所見である硝子様変性が消失し始め, 7ヵ月で完全に消失したが, ePTFEのporosity圧迫像は8ヵ月までの観察では消失しなかった。移植後2年ではePTFEのporosityも一部回復し, 良好な治癒が達成された。ePTFEの吻合部内膜肥厚を減少させる一助として吸収性縫合糸の有効性が示唆された。
  • ―透析用AVシャントとしての基礎実験―
    中川 芳彦, 太田 和夫, 大島 直, 寺岡 慧, 阿岸 鉄三
    1990 年19 巻3 号 p. 1314-1317
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    弾力性に富むポリウレタン人工血管は透析用ブラッドアクセスとして有用な点が多いが, 吻合部内膜肥厚が未解決の問題として残されている。そこでグラフト内表面に粗面化処理を施し動物実験で検討した。内径5.5mm, 全長13cmのグラフト内面を全面滑面(A群), 吻合部粗面(Pore size 30μm:B群100μm:C群), 全面粗面(D群)の4種類に処理し, 雑種成犬25頭の頸部に移植しAVシャントを作成した。術後適時摘出し吻合部の変化を観察した。開存性はC群が最も良好で14ヶ月以上の開存例もあった。摘出標本の観察では, A群に比べB, C群では動, 静脈側とも内膜肥厚は軽微で, グラフト内面への新生内膜の固着は良好であった。以上よりグラフト吻合部の粗面化処理は内膜肥厚を軽減し開存性を高める可能性が示唆されたが, その至適pore size, porosityの必要性についてはさらに検討を重ねる必要があろう。
  • 斉藤 大, 井島 宏, 村井 正, 筒井 達夫, 三井 利夫, 堀 原一
    1990 年19 巻3 号 p. 1318-1321
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    fibril length (internodal space) 80μmのexpanded polytetrafluoroethylene (EPTFE) を新しく試作し, 6本の口径6mm, 長さ5cmの人工血管とし, 主としてイヌの頸動脈に1~6ヶ月間植込み, それらこの仮性内膜形成状態をほぼ同長同径の, 30μm EPTFE 4本, Sauvage EXS knitted Dacron (k-D) 6本, UBE woven Dacron (w-D) 4本と肉眼的かつ走査電顕的に観察し比較した。
    k-Dの1本を除いて全例が開存し, いずれの材質でも6ヶ月以内では吻合部内膜肥厚はなかった。
    内皮細胞様細胞の増殖は, すべての材質で吻合部近傍のみに限局していたが, その形態はk-Dと80μm EPTFEが酷似し, かつ正常内皮細胞に近似し, w-Dと30μm EPTFEは歪んでいた。
  • 秋本 文一, 江里 健輔, 竹中 博昭, 西山 利弘, 大原 正己
    1990 年19 巻3 号 p. 1322-1326
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    吻合部仮性内膜形成に及ぼすPancreatopeptidase E (エラスターゼ) の影響を知るため雑種成犬の腹部大動脈にEPTFEグラフト及びDouble velourグラフトを移植し、それぞれをエラスターゼ投与群とコントロール群にわけ4ヶ月飼育した後、屠殺し各群にっいて摘出標本を組織学的に比較し、以下の結果を得た。EPTFEグラフト移植群ではエラスターゼ投与により有意に吻合部仮性内膜の厚さが抑制されたのに対しDouble velour移植群ではエラスターゼ投与による明らかな効果は見られなかった。
    エラスターゼはEPTFEグラフト移植後の吻合部仮性内膜肥厚の予防に、有効な薬剤と考えられた。
  • 前田 肇, 今脇 節朗, 白石 恭史, 渡邊 幸二, 森 有一, 堀 原一
    1990 年19 巻3 号 p. 1327-1330
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    短軸方向にのみ約25%の伸展性を有する人工血管を試作し, その特性と, 長期植込み後の生体への適合性や特性の変化を調べた。試作人工血管は緯糸に伸縮性を有する細糸を芯糸とし, SAMを巻きつけたコアーヤーンを用いて, 平織り構造とした。犬の大動脈間のbypassにおいて, 従来のwoven Dacron人工血管がComplianceを有していなかったのに対し, 試作人工血管は(5.3±1.1)×10-2のComplianceが認められた。犬大動脈への植込み8ヵ月後の例では炎症反応が強く, 人工血管外に厚い瘢痕組織が発育し, Complianceを失っていた。内膜の形成も不充分で, 血栓の付着が著明であった。しかし, 植込み2年後の例では一層の内皮を有する薄い内膜と, 内膜内に平滑筋細胞の発育が認められた。人工血管線維間には線維芽細胞が適度に侵入しており, 良好な生体適合性を認めた。Complianceも(4.1±1.0)×10-2と保たれ, 瘤形成は認められず, compliant graftの可能性を示した。
  • 辻 隆之, 今西 薫, 宗岡 克樹, 戸川 達男, 今井 庸二, 須磨 幸蔵, I KAN
    1990 年19 巻3 号 p. 1331-1334
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    一カ所の大動脈切開のみで大動脈瘤内に人工血管を挿入留置できる完全内挿型人工血管とダブルバルーンカテーテルを開発し, イヌで実験的に検討した. すなわち, ハイドロキシアバタイト(アパタイト), グラッシーカーボン, ポーラスガラスおよびアパタイトコーティッドチタンなどのチューブをリングとし, ポリプロピレン外部支持体付きのテーパー型ポリエチレンテレフタレート人工血管を開発してその両端に結紮固定した. それを大動脈内に血管内膜の損傷なく挿入するためダブルバルーンカテーテルを開発した. すなわち, 大動脈心臓側を遮断し, 1カ所を切開し大動脈内にカテーテルをターニケットで締めて挿入留置し, 先端側バルーンで逆流を阻止しターニケットを解除した. 手前のバルーンを膨らませつつ大動脈を拡張し, 人工血管を大動脈内に挿入留置した. 切開部に縫合糸をかけ, 逆流を噴出させつつカテーテルを抜去し, 縫合を閉じた. 両端の剛管チューブ部分で完全に内装した人工血管を大動脈に結紮固定した. 本完全内挿型人工血管は超高齢者やプアリスクの大動脈瘤患者の破裂防止のために有用と考えられた.
  • 勝本 慶一郎, 新堀 立
    1990 年19 巻3 号 p. 1335-1338
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ガラス状カーボンパイプを活性化処理して作成したリング付き人工血管を動物実験的に植え込み、300日に及ぶ生存実験を行い検討した結果、臨床応用の可能性があることが分かった。4名の手術危険因子をもった患者に対して、腹部大動脈瘤を切除して、この人工血管を植え込み救命し得た。術後早期のグラフト造影にて、宿主血管とよく結合されており、外来フォローアップでは、開存もよく、またCTスキャンでも特に問題を生じていない。しかし現段階では、poor riskな患者やemergentなケースにのみ使用するべきであると考える。
  • ―ヘパリン化polyurethaneの応用―
    田村 康一, 河原崎 茂孝, 水野 浩, 人見 滋樹, 夏目 徹, 奥村 典仁, 池 修, 清水 慶彦
    1990 年19 巻3 号 p. 1339-1344
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    静脈用人工血管の開発を目的としてpolyurethane (PU)チューブおよびヘパリン化PUチューブを用いて, 雑種成犬の胸部大静脈への移植実験をおこなった。末梢側は連続縫合による端々吻合をおこない, 中枢心臓側は挿入法により移植した。開存率は昨年開存の得られなかったPUでは2/3。ヘパリン化PUは1週目に5例全例が開存し, 2週目まで経過をみた2例中1例が開存した。肉眼的, 光顕および走査型電顕所見より, PUでは末梢吻合部に赤色血栓の付着がみられ, 中央・中枢側にも少量の血栓をみとめた。チューブと生体血管との間にも少量の血栓をみとめた。ヘパリン化PUでは末梢側吻合部の一部に血栓をみとめたが, それ以外の中央・中枢の内腔表面には血栓はみられなかった。
    高度の抗血栓性を有するヘパリン化PUは静脈用人工血管の材料として理想に一歩近づいた材料と考えられ, また中枢心臓側への挿入法は人工血管を静脈移植する場合の有用な手技と考えられた。
  • 高山 崇, 須田 匡, 赤池 敏宏, 松田 武久, 小林 一清
    1990 年19 巻3 号 p. 1345-1348
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    糖側鎖を有するポリスチレン誘導体、(PVLA、PVMA、PVMTA)(図. 1)などを合成した。これらのポリマーと血小板との相互作用を血小板粘着率など様々な観点から解析したところ、ある一定ポリマー濃度以上でコートしたポリスチレン表面は血小板粘着や活性化を強く抑制することが明らかになった。ESCA等を用いたポリマーのポリスチレン表面への吸着状態の解析から、吸着したポリマーはその吸着形態からハイドロゲル状の性質を持ち合わしていると推察された。そのため、血小板がポリスチレン表面を認識せず粘着しないと考えられる。水溶性ポリマーで大変扱い易く簡単にプラスチックにコートするだけで安定に吸着し効果的な抗血小板粘着性を得られることから、血液バッグや人工透析器のコート剤としての応用が今後期待される。
  • 塩野谷 恵彦
    1990 年19 巻3 号 p. 1349
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 伸一, 丹生 智史, 岡 隆宏, 車谷 元, 渡辺 幸二, 野一色 泰晴
    1990 年19 巻3 号 p. 1350-1352
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    結合織管は人工血管として理想的な治癒を歩む。しかし小口径となれば、強い抗血栓性が必要である。我々は超極細ポリエステル繊維を用いてその支持体を作成し、またヘパリンを利用する抗血栓性賦与法を独自に考案し、これらを組み合わせて研究を続けてきた。そして雑種成犬で口径3mmの結合織管め開存率は50%であった。今回は抗血栓性の向上のため、より多くのヘパリンを結合織管から放出させる研究に加えて、実際の臨床を考慮して抗血小板療法を行った。その結果、63%と開存率の向上は認められた。また抗血小板剤の大量投与は、結合織管の治癒に不利であるとわかった。
  • 岡野 和雄, 内田 發三, 三井 秀也, 寺本 滋
    1990 年19 巻3 号 p. 1353-1356
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬を使って蛋白分解酵素阻害剤のメシル酸ガベキサート(FOY), メシル酸ナファモスタット(FUT, フサン)およびBiscoclaurine alkaloidであるセファランチン(CE)の小口径静脈再建後早期における抗血栓効果を比較検討した。実験では雑種成犬の頸静脈に内径5mmのSauvage EXS Dacron人工血管を移植し, 後耳介静脈より各薬剤の持続投与を行った。3時間後, 人工血管を摘出し血栓付着の状態を観察した。実験は対照群(5%グルコースのみ), FOY投与群, FUT投与群, CE投与群, FOY+CE投与群, FUT+CE投与群に分けて行った。血栓形成は蛋白分解酵素阻害剤およびCE群では有意に減少した(P<0.05)。そして蛋白分解酵素阻害剤とCEを併用した群ではさらに血栓形成は減少した。特にFUTとCEを併用した群では全例で血栓形成が抑制され, かつ血液凝固能の変動も軽度であった。
  • 冨澤 康子, 野一色 泰晴, 大越 隆文, 森島 正恵, 小柳 仁
    1990 年19 巻3 号 p. 1357-1360
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    動物の頸動脈を化学的に処理することにより、生体特有の柔軟性を維持させつつ抗血栓性を賦与することのできる小口径代用血管を開発した。生体材料を医用材料として用いる場合、生体内での吸収性及び抗原性をおさえると共に強度を持たせるための処理を行う。現在多用しているグルタールァルデヒド(GA)処理は軽度の抗血栓性を付与するが生体材料特有の柔軟性及び親水性を失わせる。そのため我々はGA処理の欠点を補う架橋剤として親水性エポキシ化合物を導入した。ヒツジ頸動脈を処理して作成した代用血管は生体血管に似た柔軟性と強度をもち、内径3mmといった小口径にもかかわらず開存は良好であった。組織学的検討では植え込み後7日目には内皮細胞が吻合部をのりこえて代用血管上に認められた。走査電顕では血管内面への血球成分の付着は少なく内弾性板の起伏が明瞭に観察された。作成した代用血管は抗血栓性に優れ、植え込み早期に治癒が始まっていた。
  • 進藤 俊哉, 白川 元昭, 宮田 哲郎, 江上 純, 高山 豊, 佐藤 紀, 高木 淳彦, 多田 祐輔, 出月 康夫, 長岡 昭二, 車谷 ...
    1990 年19 巻3 号 p. 1361-1364
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    内脛4mm以下の小口径人工血管を開発するために、イヌ自家静脈内皮細胞をseedするハイブリッド人工血管の移植実験を行った。超極細ポリエステル繊維にて作成した、内径4mm長さ10cmの人工血管に、filtration法にて内皮細胞をtrapさせることにより植え付け、細胞を用いないコントロールとともにイヌ頸動脈へ長さ6cm移植した。2週間後の回収時には、対照群では8本全例が閉塞したのに対し、seed群では、移植直後に閉塞した1本をのぞく7本中3本が開存していた。移植前の組織所見では、内皮細胞はポリエステル繊維間に生着していたが、回収時開存例では、グラフト吻合部のみならず中央部でも内腔面で敷石状の一層構造がみられた。このfiltration法と超極細ポリエステル繊維を用いることにより、内皮細胞seedの操作が単純化し、生着率も高くなつた。また、内皮細胞は面を形成する前に植え付けられても、抗血栓性を示し、in vivoで一層構造を形成することが判明した。
  • 福島 洋行, 曲 惠介, 矢尾 善英, 藤川 正, 首藤 裕, 長田 一仁, 末定 弘行, 石丸 新, 古川 欽一, 高野 達哉
    1990 年19 巻3 号 p. 1365-1368
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血管結合織と血管壁細胞を有する新しい生体代用血管の作成を目標として, 血管結合織の素材となる異種血管の処理方法を検討するため, ブタ血管壁を, (1)蒸留水処理, (2)glutaraldehyde処理, (3)Denacol処理, (4)塩酸グアニジン処理, (5)ギ酸処理の5種類の処理群に分け, ウサギ平滑筋細胞およびブタ内皮細胞を培養し, 細胞親和性について検討した。また, 各処理血管壁の断裂強度を測定した。細胞の接着性はglutaraldehyde処理群以外は比較的良好であったが, 平滑筋細胞の壁内侵入に関してはギ酸処理群を除いては, ほとんど認めなかった。断裂強度はglutaraldehydeおよびDenacol処理血管で強化されたが, 塩酸グアニジンおよびギ酸処理血管ではやや減弱した。また, ブタ大動脈壁をギ酸処理後, 平滑筋細胞と内皮細胞を培養して血管壁を再構築させ生体材料由来の血管壁モデルを作成した。以上より生体血管とほぼ同様の構造と機能をもった生体代用血管作成の可能性が示唆された。
  • 野一色 泰晴, 山根 義久
    1990 年19 巻3 号 p. 1369-1372
    発行日: 1990/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    布裂人工血管の治癒を促進させるための一方法として, 血管小片を細切し, これを人工血管布の網目にからませた後に植え込むという新しい方法を考案した。この方法を用いて動物実験を行なった結果, 人工血管は急速な治癒を示し, 短期間のうちに内皮細胞によって内面は覆われた。具体的方法としては, 末梢静脈小片を剪刀にて細切したのち, 約20ccの生理的食塩水に入れて静脈組織細切片浮遊液を作った。次に高有孔性人工血管の一端を結紮し, 他端より吸引管を挿入し, これを作成した液に入れ, 吸引によって組織片を外側から人工血管壁にからませた。次に新鮮な血液を注ぎ, 組織片をさらに固着させた。成犬胸部下行大動脈へこのような処理をしたポレエステル布製人工血管を植え込んだところ, 植え込み5日目に新生血管壁内部に無数の内皮細胞の増殖像がみられ, 35日目の例では吻合部はもとより, 人工血管の中央部ですら内皮細胞による完全な被覆を認めた。
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