人工臓器
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20 巻, 3 号
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  • 進藤 剛毅
    1991 年 20 巻 3 号 p. 661
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―その開発と性能評価―
    田中 弘之, 舟波 誠, 高場 利博, S.g. KOVACS, L.e. ONDROVIC, 饗場 正宏, P.p. MCKEOWN, R ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 663-665
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小型軽量で, 単純なシステムを持つ磁力駆動型左心補助ポンプの開発を進めた。このポンプは大きさ32.5cm3の電磁石よりなるアクチュエイター, 永久磁石を植え込んだプッシャープレートダイアフラム, VIVATHANEよりなるポンプチャンバーと, それらを支持するインターフェィスマウントよりなる。流入, 流出弁には直径25mmのMedtronic Hall弁を使用した。1回拍出量は62mlで, 出力は7.8~11.2wattsである。循環シュミレーターでの駆動テストでは, 120mmHgのポンプ流出抵抗に対し8~12mmHgのポンプ流入圧で, 駆動数を80~120bpmに変化させ3.2~5.8l/minの拍出量を得た。
  • 福永 信太郎, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 林 載鳳, 伊藤 孝, 石原 浩, 松浦 雄一郎
    1991 年 20 巻 3 号 p. 666-669
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全植え込み型を目指して、リンク機構を用いた振子式駆動装置と両凸レンズ形のサツクを組み合わせた人工心臓を試作、改良し、ドノバンモツクサーキユレーシヨンによる駆動テントを行なつた。ギヤヘツドを取り付けたモータでリンク機構を駆動し、プツシヤを振子のように揺動させる。ポリウレタン製の左右2個のサツクがこのプツシヤの揺動によつて交互に圧縮される。パーセントシストルは左右共に約50%であり、左右の拍出の位相は互いに逆になつた。サックの中央付近にタブを取り付け、サツクへの血液流入を促進した。後負荷が100mmHgに対し前負荷が0のときに、サツク容積の83%の血液が拍出できた。両心完全人工心臓の接続によるモツクテストの結果、拍動数が110bpmのときに6.2L/minの流量が測定され、モータ消費電力は8.7Wであつた。測定された人工心臓の効率は拍動数によつて変勤し24ないし32%であつた。
  • 薗部 太郎, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 永沼 滋, 秋保 洋, 林 博行, 田中 元直, 三浦 誠, 佐藤 尚, 毛利 平, ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 670-675
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓の小型軽量化を目的として電磁駆動振動ポンプ(VEEP: vibrating electro-magnetic pump)を開発してきた。VEMPの発生する高頻度の振動流は従来のポンプより高い周波数であり、生体にとっては未知のものである。VEMPの血液ポンプとしての可能性を考える上で、高頻度振動流の血行動態に与える影響を解明することは極めて重要である。VEMPを成山羊の左心バイパスに用い、5Hz、10Hzおよび20Hzの各高頻度振動流下における血行動態について解析を行った。駆動直後には大動脈圧が2相性に変動し、VEMP駆動下の大動脈圧、左総頸動脈流量の各波形には自然心拍動波形との相違が確認された。しかし、VEMP駆動直前と駆動開始後の安定期における血行動態の検討では、駆動開始前後および各駆動条件間に有意差を認めなかった。VEMPの血行動態に与える影響は十分に生体の適応範囲内であると考えられ、人工心臓としての使用は可能であると思われた。
  • 武内 俊史, 伴 敏彦, 岡本 好史, 岡林 均, 赤松 映明, 城山 友廣, 湊谷 謙司
    1991 年 20 巻 3 号 p. 676-679
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本実験の目的は歳差式遠心ポンプ、所謂Tea Spoon Pumpの左心補助(Bridge-Use)における有用性と安全性を動物実験により実証することであった。6頭の成羊を用い、4頭は完全左心補助、2頭は部分左心補助を行った。その結果ポンプ機能としては容易に4L/min以上の流量が維持でき、また、血液損傷も軽微で満足すべきものがあった。しかし、1)極度のhypovolemiaの状態で心室細動が起こると流量維持が困難であった。2)GOT、CPKの上昇、クレアチニン上昇例が見られ、立位を維持できたのは部分左心補助の1例のみであった等の問題があり非拍動流ポンプによる左心単独補助の再検討が必要と考えられた。
  • 岡本 英治, 三上 智久, 三田村 好矩
    1991 年 20 巻 3 号 p. 680-686
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮的エネルギー伝送装置とモータ駆動補助人工心臓より構成する体内埋込型補助人工心臓システムの開発を行った。今回は、小型のボールねじの開発とチタン材料を応用し、モータ駆動補助人工心臓の小型・高効率化を図った。人工心臓アクチュエータは、アタッチメントの交換で、補助人工心臓と全置換型人工心臓を駆動できる。ポンプ一回拍出量は60mlで、大きさは補助人工心臓として使用時312ml、全置換型人工心臓として使用時497mlである。経皮的エネルギー伝送装置は、近赤外光を用い周波数分割方式で多重化した経皮的光通信系を内蔵し、体内出力電圧信号とポンプストローク信号の経皮的通信を実現した。開発した体内埋込型補助人工心臓システムをin vitro実験にて評価した。経皮的エネルギー伝送装置にて14Wの電力を伝送し、後負荷110mmHg, 拍動数80bpmにて4.61/minのポンプ拍出量を得た。モータ駆動補助人工心臓のエネルギー変換効率は、最高15%, 平均13%であった。
  • 仁田 新一, 永沼 滋, 片平 美明, 山家 智之, 薗部 太郎, 秋保 洋, 田中 元直, 三浦 誠, 佐藤 尚, 毛利 平, 永瀬 敏夫 ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 687-692
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓(VAD)は、重症心不全の治療法として、臨床的評価を受けつつあるが、量産化に対応し難い、高価格であるという問題が残されている。われわれはこれらの問題を解決するために、VADを本体と送脱血カニューレ及び人工弁付コネクタにパーツ化し、万一臨床例で不都合が生じた場合、その部分のみ交換し得て、しかも量産化に適した、より実用的なVADの開発を試みた。人工弁はBjörk-Shiley弁(BS弁)と今回試作したシリコンボール弁(SB弁)を用い、模擬循環回路と22頭の成山羊を用いた動物実験で評価を行った。以上の結果、われわれのパーツ化した人工心臓は安定した水力学的特性と耐久性及び抗血栓性を持つ普及型臨床用VADとして充分に臨床応用可能と判断された。またVADのパーツ化は、それぞれのデザイン・材料等の選択改良を独立して行えるため、量産化と経費削減に適し、しかも科学技術進歩に対応し得るシステムとして大きな意義があると思われた。
  • 林 博行, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 田中 元直, 本郷 忠敬, 佐藤 尚, 三浦 誠 ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 693-698
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓用カニューラ内壁に装着した圧力センサの特性評価を行なった。圧力センサは、構造、製作プロセスを改善しパイレックスガラスによってパッケージされた構造の半導体圧力センサを使用した。この圧力センサは絶対圧型であり、拡散抵抗は密閉された基準圧室内にあるため、外部の雰囲気にさらされずに済み、センサの安定性が保持される。このカニューラ装着後のセンサをモック循環回路中において補助人工心臓を駆動させることにより圧力をかけ長期ドリフト特性を測定した。また圧力センサを含んだ計測システムの電気的安全性、特にカニューラ装着後の電気的絶縁性に関する安全試験を行なった。その結果漏れ電流は10μA以下であった。さらに、圧力センサの周波数応答特性を測定したところ体外式圧力トランスジューサを越える応答特性を持ち、成山羊を用いた急性実験に使用した結果、制御システムの入力として有用であり、その臨床応用の可能性が示された。
  • 今西 薫, 井街 宏, 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 満渕 邦彦, 米沢 卓実, 藤正 巌, 須磨 幸蔵
    1991 年 20 巻 3 号 p. 699-704
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1986年以来東京大学医用電子研究施設で井街らは、胸腔内埋込型人工心臓の開発に着手し、ポンプの設計試作、動物実験による評価を行ってきた。その結果、試作した人工心臓ポンプはヤギの胸腔内によくフィットし十分な拍出能力を示した。しかし動物実験では感染や、血栓形成などの問題に加えて、手術中のポンプ装着の困難さが指摘された。われわれはこうした問題点を踏まえて、完全埋込型人工心臓ポンプを改良し、それにともない装着時の手術手技にも改良を加えた。本研究では、東大型埋込型完全人工心臓の改良点と装着手術時の技術的要点を提示する。ヤギを用いた動物実験による評価では、心臓移植の手技を用いて改良型ポンプを簡便に3例のヤギに装着することが出来た。
  • 山崎 健二, 北村 昌也, 椎川 彰, 江石 清行, 川合 明彦, 野尻 知里, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    1991 年 20 巻 3 号 p. 705-710
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小型軸流ポンプを用いたシンプルな左室腔内植え込み型の新しい補助人工心臓を考案した。ポンプは左室心尖部より左室腔内に挿入して使用する補助人工心臓であって、左室腔内にあるポンプ部と、心尖部の外側に位置する駆動部とから構成される。ポンプ部はモーター軸と直結する螺旋状のスクリューと円筒状の外筒部分からなる。外筒の基部には血液取り入れ口が開いている。血液流出口の先端はやや細くなり、大動脈弁を貫通し上行大動脈に開口している。ポンプはスクリュー回転の推進力により、血液を左室腔より吸入し上行大動脈に吐出する。ポンプ機能試験では電圧4Vで100mmHgの後負荷に対して2.21/minの流量を得た。成犬を用いた動物実験ではポンプ挿入にて左室-大動脈間に圧較差は生じず、ポンプを作動させることにより不全心の心拍出量を0.401/min→0.641/minに改善させた。左室切開による解剖学的検討ではポンプ流出管はスムーズに大動脈弁を貫通し、ポンプ本体もmitral complexの機能にはほとんど影響しないことが示唆された。
  • 小野口 勝久, 川田 光三, 四津 良平, 南雲 正士, 高橋 隆一, 志水 秀行, 川田 志明
    1991 年 20 巻 3 号 p. 711-714
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    シャントチューブ法により手術を行なった胸部下行大動脈瘤18例に対し心機能に影響を及ぼす術前の危険因子につき検討した。心機能に与える影響として1)シャント開始後から術後にかけてのST-T変化, 2)シャント中持続する低心拍出状態(CI<2.0l/min/m2)を仮定したところ、年齢が65歳以上であること、有意の冠動脈病変が存在すること、の2者を危険因子と見なせることが分かった。この経験をふまえ胸部下行大動脈瘤17例に対し遠心ポンプを補助手段として手術を行なった。17例中65歳以上は6例冠動脈病変を有するものはなかった。この中で有意のST-T変化を認めたものはなく、心拍出量を測定し得た6例(65歳以上4例)に低心拍出状態は認めなかった。17例を脱血経路の違いから3群に分けたが(左房、上行大動脈、下行大動脈)何れの手段も前負荷または後負荷の調節から血行動態の維持は容易であったものの左房脱血群におけるバイパス終了時の心不全傾向、上行大動脈脱血群における大動脈遮断中の拡張期動脈圧の低下には注意を要すると考えられた。
  • 池内 克彦, 数井 秀器, 保坂 実, 近藤 三隆, 太田 敬, 野垣 英逸, 永田 昌久, 加藤 量平, 土岡 弘通
    1991 年 20 巻 3 号 p. 715-720
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    下行大動脈遮断中の部分体外循環を, 遠心式血液ポンプを使用し, 血液酸素化装置は用いずに静脈血を環流させるveno-arterialバイパスにて実験的研究を行い, さらに臨床例を経験した。実験では雑種成犬を用い, veno-arterialバイパスを10例, 対照に左心バイパスを5例に行った。大動脈遮断は2時間行い, 遮断中枢側, 末梢側の動脈圧測定, 血液ガス分析を行い, 血清生化学検査値の推移を経時的に測定した。1~2週で犠牲死させ, 肝, 腎の組織虚血の有無を検索した。veno-arterialバイパスの送血血液の酸素飽和度は左心バイパスに比して低値であったが, 術後に対麻痺等の合併症の発生もなく, 血清生化学検査値の推移に差を認めず, 組織学的に虚血変化も認めなかった。臨床例においては胸部下行大動脈手術の2例に, 人工肺を用いない経大腿静脈右房脱血, 大腿動脈送血によるveno-arterialバイパスを補助循環として用い, 術後重篤な合併症もなく経過した。
  • ―至適側孔分布の検討―
    押山 広明, 黒尾 毅, 野川 淳彦, 深沢 弘道, 堀内 邦雄, 木島 利彦, 島根 博, 高橋 晃
    1991 年 20 巻 3 号 p. 721-726
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮的V-Aバイパス(Percutaneous V-A Bypass)のためのカニューレを開発し, 脱血カニューレの流体力学的検討を行った。カニューレ材質はポリエステルエラストマーで送脱血管とも18Frで、外径6.0mm、内径5.2mmとした。脱血カニューレは大腿静脈から右心房まで位置させるように長さを50~60cmとした。また、効果的な脱血を行うために側孔を設けた。In vitro流量特性試験により、血液流量と圧力損失の関係式を求めた。さらに脱血カニューレに設けられた側孔からの流入量を求めた。この結果、側孔分布を脱血量分布に合わせて設計することが可能となった。このようなカニューレを用いることにより大腿静脈から経皮的に挿入することが可能となり、圧力損失が低く、大静脈内からより効果的に脱血することが可能になると思われた。
  • 佐藤 尚司, 小林 亨, 筆本 由幸
    1991 年 20 巻 3 号 p. 727-731
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後重症心不全5例にIABPを併用した遠心ポンプ(CFP)による左心補助(LVS)を行った。5例中3例において離脱に成功し、その内2例の長期生存を得た。1例は離脱後遷延する心不全より腎不全を併発し術後30日目にMOFにて死亡した。2例はLVS中にMOFに陥り死亡した。最大補助流量は3-4L/minの範囲であった。
    LVSの装脱着の簡便さを考慮し、経皮的左心補助システムの臨床応用を想定した場合の、至適送脱血カニューレサイズとポンプ流量につきmock circulationを用いて基礎的検討を行った。内径5-6mmの送脱血カニューレでは、CFPの回転数2500RPMにおいて、臨床例における最大補助流量に匹敵する3-4L/minの流量が得られた。補助流量から見ると、内径5-6mmの70cm脱血カニューレ、20cm送血カニューレを使用することにより、CFPを用いた経皮的左心補助システム(Percutaneous LVS)は充分臨床応用が可能であると考えられた。
  • 笹木 秀幹, 清水 健, 坂本 滋, 金戸 善之, 白川 尚哉, 阿久津 哲造, 大海 武晴, 土本 勝也
    1991 年 20 巻 3 号 p. 732-735
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    教室における11例の補助人工心臓(VAD)装着例のうち, VADから離脱できなかった3例と離脱後遠隔死した4例の反省から, VAD適応のタイミングと適切な駆動条件の設定に再検討が求められた。開心術後のVAD適応時における自己心の左室圧容積線図の有用性を, リニアアクチュエーター式人工心臓を用いた成山羊の左心補助(LVAD)モデルから検討した。このモデルにおいて, コンダクタンスカテーテルを用い自己心の左室圧容積線図を描出し, VADのコントローラーに描出される血液ポンプの圧容積線図と同時記録した。大動脈部分遮断によって後負荷を上昇させながら得られる左室圧容積線図からVADの適応或は離脱を考慮すべき自己心の前負荷効果と後負荷効果が定量的に評価された,またVAD駆動中の自己心の拍出特性, 流入弁と流出弁の開閉もまた自己心の圧容積線図によって得られた。自己心の心室圧容積線図は, 開心術後のVADの適応・離脱の決定, 適切な駆動条件設定に有用と思われた。
  • 村上 泰治, 石野 幸三, 中山 裕宣, 中山 頼和, 紀 幸一, 山本 典良, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋, 土肥 俊之, 川上 俊爾
    1991 年 20 巻 3 号 p. 736-740
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後原性ショック7例に対し, 補助人工心臓を用いた補助循環を行ったのでその結果を報告する。症例は, 弁膜症6例, 冠動脈疾患1例で, 4例に二弁置換, 1例にAVR, Cabrol手術1例, 冠動脈三枝バイパスを1例行った。6例に左心バイパス, 1例に両心バイパスを行った。5例に空気駆式ポンプ, 3例に遠心ポンプを用いた。7例全例が補助循環から離脱し, 3例が退院した。術後合併症は, 出血3例, 敗血症3例, 腎不全3例, 腸閉塞1例であった。腎不全と敗血症を合併した3例をすべて失った。術後合併症として腎不全と重症感染は危険因子と考えられ, これらの合併症を防ぐことが救命への鍵と思われる。
  • ―経大動脈弁的左室脱血法―
    下山 嘉章, 四津 良平, 川田 志明
    1991 年 20 巻 3 号 p. 741-745
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心ポンプを用い, Seldinger法に準じて経皮的に動脈脱血カニューレを挿入後, 経大動脈弁的に左室脱血し, 経皮的に末梢動脈より送血する, 簡便で新しい左心補助循環システムを開発した。本法はカテーテル操作に習熟した内科医, 放射線科医にも装着可能であり, CCU, ICU, 心カテーテル室などでの使用も可能である。
    本法では心係数で1.0l/min/m2前後の補助流量を得られると考えられ, 心筋梗塞犬の実験では特に左心室の減圧効果が著名であった。しかし完全バイパスを必要とするような症例には限界があると判断された。
    本方法はIABPと従来のLVBとの中間的な存在として臨床応用が期待される有用な方法であると考えられた。
  • 佐々木 栄作, 中谷 武嗣, 高野 久輝, 妙中 義之, 巽 英介, 赤城 治彦, 関井 浩義, 矢倉 明彦, 後藤 昌弘, 増澤 徹, 榊 ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 746-751
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    適切な補助循環法をより安全で効率的に実施するため、補助人工心臓(VAS)とIABPの両方を駆動できる多機能補助循環駆動装置を開発し、評価を行った。また本装置には、LVASからIABPへの円滑な離脱を行う目的で、新たに考案した心電同期交互駆動法(ASD)を搭載した。ASDは、LVASとIABPの1対1の交互駆動から、自己心の回復に従い徐々にIABPの拍数を増やしつつバイパス流量を減らして、自己心に急激な負担をかけずにLVASより離脱せしめる方法である。模擬循環回路及び動物実験での検討で、本装置はLVASあるいはIABP駆動装置として従来機種と同等以上の基本性能を有し、またASDもLVASとIABPの能力格差を埋める力法として有効であることが確認された。本装置を巨大左室瘤切除後の62歳男性患者のLVASからの離脱に適用したが、ASDにより循環動態を悪化させる事なくバイパス流量を減らし得た。本装置は円滑な補助循環の運用を可能にし、救命率向上に寄与すると考える。
  • ―Skeletalmuscle応用からの検討―
    築部 卓郎, 岡田 昌義, 向井 友一郎, 辻 義彦, 吉田 正人, 森本 真人, 中村 和夫
    1991 年 20 巻 3 号 p. 752-755
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心臓を広背筋でwrappingし循環補助を行うcardiomyoplasty時の至適刺激法、被覆方法及び広背筋組織血流量に関し雑種成犬24頭を用い実験的に検討した。広背筋の電気刺激はmulti-programmable-stimulatorにて心拍同期収縮、心収縮/広背筋収縮比2:1としたところR波からのdelay-time-100msec, 及び刺激時間(pulse-duration)-100~125msecにて最大の補助効果が得られた。そこでこの刺激条件下にて左右広背筋を用い心表面を時計周りまたは反時計周りにwrappingし、動脈圧、左心室圧、心拍出量、および左室造影法によるCOntractilityの変化を比較したところ左側広背筋による時計周り被覆にて最大の補助効果が得られた。Cardiomyoplastyによる循環補助法に際しては広背筋の刺激方法、被覆方法が重要であり、広背筋グラフトの筋線維方向及び組織血流量の維持が重要であると考えられた。
  • ―広背筋グラフトの組織血流量計測―
    磯田 晋, 近藤 治郎, 井元 清隆, 梶原 博一, 田村 功, 鈴木 伸一, 山崎 一也, 石井 正徳, 矢野 善己, 松本 昭彦
    1991 年 20 巻 3 号 p. 756-760
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心機能補助を目的に広背筋グラフトを作成するさいに生ずる虚血は, グラフトの耐疲労性や高出力の獲得に対する一つの大きな障害である。雑種犬を用いて心機能補助を目的とした広背筋グラフトを作成し, レーザー組織血流量計および針型のプローブを用いて, 広背筋グラフト作成の急性期における, 非駆動時および電気刺激による駆動直後の組織血流量測定を行い, 急性期に心機能補助に供しうる範囲の評価を試みた。組織血流量はグラフト先端部において明らかに減少し, 駆動直後の血流量増加が認められなかつたことから, グラフト先端部における血管床の低下が示された。グラフト先端部の心機能補助能力はグラフト茎部, 中間部と比較して相対的に低下していると推定された。またレーザー組織血流量計を用いた計測は心機能補助を目的とした広背筋グラフトの血行のネットワーク形成期間決定の指標となると考えられた。
  • 成瀬 好洋, 幕内 晴朗, 柳生 邦良, 松永 仁, 進藤 剛毅, 古瀬 彰, 高浜 龍彦, 金井 福栄, 大西 清
    1991 年 20 巻 3 号 p. 761-766
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬9頭を用い、心外周に縫着した広背筋による血行動態の変化、及び広背筋の同期収縮がもたらす効果について実験的に検討した。外科的な縫着操作の後、左室収縮期圧(LVSP)は109±21mmHgから93±16mmHgへ、maxdp/dtは761±211mmHg/secから642±234mmHg/secへと各々有意に低下した。左室一回拍出量(SV)、左室maximum elastance(Emax)、下行大動脈血流量(AOF)には明らかな変化は認められなかった。広背筋の同期収縮によりSVは11.4±3.4mlへ著明に増加し、AOFも1.79±0.371/minから1.08±0.301/minへと有意に増加した。LVSPおよびmaxdp/dtには有意の変化が認められなかったものの、Emaxは71±1.6mmHg/mlから9.1±3.0mmHg/mlへと明らかに上昇した。これらの結果より縫着した広背筋の同期収縮は心機能補助に有効であり、また広背筋の縫着操作そのものが自己心機能を阻害する可能性のあることが示された。
  • 妙中 義之, 増澤 徹, 中谷 武嗣, 矢倉 明彦, 巽 英介, 関井 浩義, 佐々木 栄作, 赤城 治彦, 後藤 昌弘, 榊 雅之, 松尾 ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 767-771
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全体内埋込型全置換型人工心臓システムとして、胸腔内に血液ポンプを植え、腹腔内にアクチュエータを置くエレクトロハイドロ-リック式のシステムを試作した。本システムに用いる血液ポンプを、まず、空気駆動式として成熟動物である成山羊4頭(体重54kg~59kg、平均55.8±1.9kg)に植え込んで血液ポンプのみの生体内評価を行なったところ、最長40日間の生存例を得ることができ、エレクトロハイドローリック式のシステムを組み上げた際の長期評価への発展性が示唆された。次にアクチュエータと血液ポンプを組み合わせて模擬回路を用いたin vitro評価を行なった。アクチュエータは、ローラスクリュ機構により軸を往復運動させるDCブラシレスモータを、左右の血液ポンプとそれぞれ結合したプッシャープレートを有するポンプを用いた油室で挟み込んだ形式のもので、約6L/minの心拍出量を得ることができ、良好な拍出性能を示した。
  • 松尾 義昭, 矢倉 明彦, 妙中 義之, 高野 久輝, 中谷 武嗣, 巽 英介, 赤城 浩彦, 関井 浩義, 佐々木 栄作, 後藤 昌弘, ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 772-776
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    従来から開発してきたリニアアクチュエータを用いたエレクトロハイドローリック方式補助人工心臓システムの駆動性能を、成山羊4頭(54~68kg)を用いた慢性実験により評価した。併せて新たに開発した吸引圧自動調節機構(ANPC)の心房壁の吸い付きを防止する効果を検討した。血液ポンプの抗血栓性の問題で、術後5日目に実験を中止せざるを得なかった1頭を除いて、実験動物の血行動態は良好に維持された。4頭での最大バイパス流量は5.8L/minであり、21~42日間充分な流量を安定して維持する駆動性能を示した。ANPCを使用しなかった成山羊ではアクチュエータの吸引により左房圧は、瞬時圧で最大-80mmHgの陰圧を示したが、ANPCの使用により-10mmHgに維持された。またANPCを使用した実験動物の左房内壁には吸い付きの所見を認めなかった。ANPCにより心房壁の吸い付きは防止され、改良された本システムは長期携帯可能な補助人工心臓システムへ発展可能であると考える。
  • 壁井 信之, 飯田 浩道, 菅野 亮, 桜井 靖久, 土屋 喜一
    1991 年 20 巻 3 号 p. 777-782
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    植込型人工心臓で大きな障害となっているポンプ容積を大幅に削減できる遠心ポンプは回転部のシールが問題となっていた. そこでこれを解決すべく新たに揺動円板型遠心ポンプを提案し, その性能の基本的検討を行なった. このポンプはポンプハウジング, シール膜, 揺動運動をする円板, 円板の中心に垂直に取り付けられた揺動軸, 揺動軸を揺動運動させる揺動機構, 揺動機構を動かす回転軸および回転軸に直結されたモータから成り立っている. シール膜の一端は揺動軸に固定され,他端もハウジングに固定されているので完全なシールが可能となる. 試作したポンプの円板直径は39mm, 血液室の最大内径は40mmである. 円板の揺動角を15, 25, 35度とすると血液室容積はそれぞれ約12, 17, 21mLとなった. 回転数3000rpmの時, 平均大動脈圧100mmHgの条件下で流量はそれぞれ約2, 14, 17L/minとなり15度以外は満足のいく結果が得られた.
  • 山田 一, 苅田 充二, 三田村 好矩, 阿久津 哲造
    1991 年 20 巻 3 号 p. 783-788
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    筆者らは, リニアパルスモータを人工心臓用アクチュエータとして基礎研究を続けてきた。今回, 試作したリニアパルスモータ(LPM-S90)の両側にそれぞれ血液ポンプを取り付けた両心式人工心臓を開発した。リニアパルスモータは, 2相励磁, 2(A)において107(N)の静推力を発生し, 65(N)の動推力を得た。本両心式人工心臓は体積520(mL), 質量1.2(kg)であり, 一回拍出量は60(mL)である。また, 人工弁にはオムニカーボン弁を用いている。本人工心臓の模擬循環試験の結果, 拍動数100(bpm), 大動脈圧80(mmHg)において5.3~5.7(L/min)の分時流量が得られた。
  • 井街 宏, 満渕 邦彦, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 今西 薫, 鈴川 正之, 米沢 卓実, 渥美 和彦, 藤正 巌
    1991 年 20 巻 3 号 p. 789-794
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓血液ポンプと継目なく一体化できる高分子製人工弁としてJellyfish弁を考案し、その実用化モデルの設計、試作を行ない模擬循環装置、およびヤギによる動物実験でその性能、流れの状態、耐久性、抗血栓性、血行動態などについての検討を行なった。その結果、本弁は、1)同径のB-S弁より流体抵抗が小さい、2)弁閉鎖途上の逆流量はB-S弁の1/4で閉鎖後の漏れはない、3)弁の中心部をはじめ弁には流れの淀む点がない、4)八か月以上の耐久性を有するなどの優れた性能を有することがin-vitroの試験で明らかになった。いっぽう、in-vivoの試験は、最長125日まで行なわれたが、満足な性能を発揮し、優れた抗血栓性を有した。ことに、いままでB-S弁使用下でほぼ必ず見られた種々の病態像が一切見られなくなるなど人工心臓装着ヤギは良好な血行動態を示した。本弁は今後、人工心臓用弁として大いに期待しうるものと考えられる。
  • 薦田 烈, 字山 親雄, 前田 肇
    1991 年 20 巻 3 号 p. 795-801
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    摘出心2例のMR横断像またはMR左室長軸断層像をもとに, 完全埋込み式全置換型人工心臓の残余心臓との接続部位, 即ち, 房室弁輪・上行大動脈・肺動脈をコンピューター上で立体的に再構築し, 弁輪の形と大きさ・両弁輪の重心間の距離(DG)・僧帽弁輪と三尖弁輪を通る2つの平面が互いになす角度(RT)・僧帽弁輪を通る平面を基準とした大動脈と肺動脈のそれぞれの方位角(RA, RP)について, 摘出心の房室弁輪と上行大動脈・肺動脈を型どったシリコーン模型にもとづく再構築像と比較検討した。MR左室長軸断層像をもとに描出した房室弁輪の像は, MR横断像を用いたそれに比べて輪郭点を多くとれることにより, 変形を少なく描出できる可能性がある。さきの2例を含む32例について, 前記の測定項目をシリコーン模型をもとに同様に測定して統計量を求め, 2例の背景とした。結果はDG:4.17±0.43cm, RT:22.1±11.3度, RA:54.9±15.3度, RP:30.8±17.1度であった。
  • 吉岡 行雄, 筒井 宣政
    1991 年 20 巻 3 号 p. 802-805
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IABPによる合併症のひとつである下肢の血行障害を予防する目的で、シースに関する二種類の方法を考案した。1. Implant Aid lead Introducerを通常の方法で大腿動脈に挿入し、バルーンを挿入後シースを二つに裂いてカテーテルから抜去すると、カテーテルのみが動脈内に留置された。13例の使用経験では下肢動脈の合併症の発生はなかった。2ヘパリン注入用側管付きシースを通常の方法で大腿動脈に挿入し、バルーン挿入後、側管よりヘパリンを注入した。ヘパリンはシース先端から血中に入るため、下肢動脈に選択的に投与された。側管からの造影剤注入により下肢血行は保たれていることが確認された。硬化性病変が強く、バルーンにより血行が途絶され足背動脈の触知不能となる症例では1の方法が病変が軽度で、大腿動脈は触知するが血流が減少し血栓形成が予想される症例には、2の方法が推奨されると考えられる。
  • 後藤 昌弘, 中谷 武嗣, 妙中 義之, 巽 英介, 赤城 治彦, 佐々木 栄作, 増澤 徹, 榊 雅之, 松尾 義昭, 高野 久輝
    1991 年 20 巻 3 号 p. 806-810
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心房とポリウレタン製人工弁を有する, ABIOMED社製補助人工心臓BVSシステム5000(落差脱血, 空気圧駆動, ポンプ充填量550ml)について, 模擬循環回路および動物実験により, その性能と本邦での臨床応用の可能性について検討を行った. 模擬循環回路においてABIOMED社製駆動装置を用いた場合, 最大拍出量は5.3L/minで, 東洋紡社製駆動装置VCT30を用いると, 最大拍出量は5.8L/minであった. 模擬循環回路による左心不全モデルにおいては, 前負荷に応じて, 十分な循環補助が可能であった. さらに, 体重57および60kgの成山羊を用いた動物実験では, 左心補助のみでは最大4.3L/minの循環補助が, また, 両心補助では左心5.0L/min, 右心4.8L/minの循環補助が可能であった. BVSシステム5000は補助人工心臓として十分な循環補助能力を有していることが確認されたが, 日本人にとっては初期充填量が多いことなど改良の必要があると考えられた.
  • 杉田 洋一, 松井 道彦, 森田紀 代造, 望月 吉彦, Stewart ROBERT, 能勢 之彦, 新井 達太
    1991 年 20 巻 3 号 p. 811-816
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今回我々は、完全肺逆循環というユニークなアイディアに基づくSingle Pump Artificial Heart(SPAH)を開発した。この概念は、心機能不全に陥った両心室を切除し、次に心房中隔を切除し、残存する両心房を吻合しCommon atrium(CA)を作成し、このCAが肺循環を維持する。この時血流は上下大静脈→CA→肺静脈→肺→肺動脈となり肺血流は完全逆循環となる。そして人工心臓を肺動脈と大動脈の間に接続し、肺動脈からの血液を大動脈に駆出する。体循環はこの人工心臓が維持する。このSPAHは従来の完全人工心臓(TAH)に比べて、人工心臓が1個ですむという利点がある。動物実験にてSPAHの手術手技の確立、急性期の血行動態及び完全肺逆循環が生理学的に可能かどうかを肺機能及び血行動態の面から検討した結果、完全肺逆循環を利用したSingle Pump Artificial Heart(SPAH)は技術的、生理学的に可能である事が示唆された。
  • ―V-Aバイパス法での急性実験の検討―
    折目 由紀彦, 原田 泰, 山本 知則, 栗原 和直, 鈴木 修, 塚本 三重生, 井上 龍也, 中沢 直, 佐久間 佳規, 三室 治久, ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 817-822
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は右心補助にローラーポンプ, 左心補助に拍動型血液ポンプを用い, この間に外部灌流型膜型人工肺を組み込んだ補助人工心臓装置を試作し, ブタの呼吸及び心不全モデルに対して適用し, その効果を実験的に検討した。
    この装置の補助により, 右房圧, 右室圧は有意に低下し, 大動脈圧, 総心拍出量も有意に上昇し, 血行動態の改善を示し, 右心不全状態から脱して全身循環維持も充分可能であった。また, PaO2, SaO2の上昇, PaCO2, pHの低下と血液ガス分析データの著明な改善がみられた。以上の結果より, 今回試作した装置は心と肺に対する負荷を軽減することにより, 血行動態と血液ガスデータを改善し, 流量補助作用とガス交換能を合わせ持つ優れた補助循環法となり得, 呼吸不全を合併した心不全症例などに臨床応用できる可能性が示唆された。
  • 妙中 義之, 巽 英介, 榊 雅之, 佐々木 栄作, 中谷 武嗣, 赤城 治彦, 関井 浩義, 矢倉 明彦, 後藤 昌弘, 増澤 徹, 松尾 ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 823-828
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    無拍動流体循環への動物の生理学的適応過程を検討するために、成山羊5頭を用いて慢性動物実験を行なった。国立循環器病センター型補助人工心臓を左房左室脱血、大動脈送血による100%バイパスができるように装着し、2週間後に覚醒下に遠心ポンプ(MD-10、イワキポンプ)にすばやく取り替え、平均大動脈圧を無拍動流化前後で一定に保つように駆動した。その結果、体循環を無拍動流化しても拍動流時と比較して、右房圧、灌流量、全末梢血管抵抗、全身酸素消費量、血清乳酸値、血中カテコラミン値(アドレナリン値およびノルアドレナリン値)、血漿レニン活性、血漿アンギオテンシンII値、血漿アルドステロン値、には変化はみられず、また、volume負荷の必要もなかった。以上より、体循環の無拍動流化に対して、動物は速やかに生理学的に順応すると考えられた。
  • 下岡 聡行, 浦島 智史, 本田 禎二, 三田村 好矩, 勇田 敏夫
    1991 年 20 巻 3 号 p. 829-834
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助心臓駆動下において補助停止時の循環動態を駆動したままで推定することが出来れば離脱時期の判断等のための血行動態の監視に有用であると考えられる。我々は時系列モデルで表現した平均補助流量と平均動脈圧、平均左房圧の関係をパラメータ同定で求め、補助流量が零のときの血圧の定常状態値を算出する手法を検討している。本研究では基礎検討としてコンピュータシミュレーションで動脈圧、左房圧の予測値と補助心臓停止後の真値を比較した。予測誤差値は左室収縮力が低下すると大きくなり、平均動脈圧の場合で約40mmHgに達したが、左房圧の上昇を考慮すると誤差は大幅に改善された。また、動脈圧、左房圧、補助流量の間の相互作用は同定を困難にする要因の一つで、補助流量を定値制御して影響を抑えた結果、左房圧の予測誤差がかなり軽減された。シミュレーションの段階では、本手法は予測可能と判断でき、さらに検討を進める予定である。
  • ―循環系薬物投与時の外仕事量の変化について―
    秋保 洋, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 薗部 太郎, 永沼 滋, 林 博行, 田中 元直, 三浦 誠, 佐藤 尚, 毛利 平, ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 835-840
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心室圧-容積曲線から得られる外仕事量及びPVAの変化から、VAD駆動下に自然心機能の評価を行なう方法の確立を試みた。成山羊6頭にLVADを装着し、左室内に容量計測用のコンダクタンスカテーテルとカテ先圧力センサーを留置し、左心室圧-容積曲線を得て、種々のVAD駆動条件下での自然心の外仕事量、Emmax及びPVAを独自に開発した自動制御システムと血行動態推定監視システムを用いて計算した。その結果、拡張期駆動から収縮期駆動への変化による左室流出路負荷の増加に対して、自然心の外仕事量が有意に減少し、PVAが有意に増加した。また、今回開発したシステムにより変力作用をもつ薬物を投与した際の心機能を評価したところ、心機能の変化が鋭敏に反映されることが証明された。従って、VAD駆動位相制御による自然心機能の検討は、VAD駆動中及びVADからの離脱時の心機能の評価に有用な方法であると考えられた。
  • 加藤 雅明, 大谷 正勝, 大久保 修和, 高野 弘志, 安田 治正, 大西 健二
    1991 年 20 巻 3 号 p. 841-847
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬6頭を用いUA-Ao BypassとW-Ao Bypassの心補助効果の相違を圧容積図より比較検討した。バイパス前後およびバイパス中の圧容積図, ESPVRの計測には左室内に挿入したコンダクタンスカテーテルおよびカテ先マノメーターを用いた。丑A-Ao Bypassではバイパス流量の増加とともに前負荷(EDV)および外的仕事量(EW)の軽減効果を認めたが, 後負荷(R, EST)および心収縮に必要な内的エネルギー(PE)の軽減効果は認められなかった。LV-Ao Bypassではバイパス量の増加とともに前負荷(EDV), 後負荷(R, EST), 外的仕事量(EW), および内的エネルギー(PE)のすべてに軽減効果が認められた。心筋酸素消費の指標であるPVAは, 同流量のM-Ao Bypass,LV-Ao Bypass間で有意差こそ認めなかったが, bV-Ao Bypassにて著明に軽減される傾向を認めた。
  • 吉澤 誠, 蔵本 健一, 竹田 宏, 三浦 誠, 山家 智之, 片平 美明, 仁田 新一
    1991 年 20 巻 3 号 p. 848-857
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心室用補助人工心臓(LVAD)装着時循環系の血行動態推定監視システムを時系列モデルに基づいて開発した. 本システムは, 末梢血管抵抗や動脈コンプライアンスなどの血行力学的パラメータを拍数単位で同定する機能と, LVADによって補助された自然心臓の心拍出量の瞬時値を推定する機能を有する. 本システムが必要とする計測量は大動脈圧と生体外部から電磁流量計によって計測されるLVADの拍出流速だけである. 血行力学的パラメータの同定と自己心拍出流速波形の推定が, オンライン・リアルタイムで実行できる. このため, LVAD装着時循環系の血行動態の監視や, 推定した自己心拍出量に基づいてLVADの駆動条件の変更を自動的に行うような自動制御系を開発するのに有用である.
  • 片平 美明, 仁田 新一, 山家 智之, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 林 博行, 田中 元直, 佐藤 尚, 三浦 誠, 毛利 平, ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 858-864
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓(VAD)駆動の最適性を評価するために、自律神経の活動性を反映するとされる心拍変動のスペクトル解析を行なうシステムの開発と、動物実験による基礎的データの検討を行なった。その結果、非同期駆動ではMayer wave、respiratory arrhythmiaの2つの心拍変動のピークが明瞭に認められたのに対して、遅延時間300~500msの同期駆動では、Mayer waveのみが減弱していた。このMayer waveの減少は、β遮断剤投与による交感神経活動の低下とは異なり、平均心拍数の低下を伴わず、同期駆動が交感神経系の反応性に変化を与えていると考えられた。また、心拍変動を自動制御の情報とするために、最大エントロピー法での処理を試みたが、スペクトルのピークを定量化することが可能であった。これらの結果は、心拍変動のパワースペクトル解析がVAD駆動下の循環状態の把握および自動制御のための情報として有用である可能性を示すものと考えられた。
  • 高浜 龍彦, 金井 福栄, 大西 清, 平石 守, 成瀬 好洋, 古瀬 彰, 吉竹 毅
    1991 年 20 巻 3 号 p. 865-868
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓は有用な補助循環法であるが、駆動陰圧の調節により補助循環流量を変化させて、左房圧を一定に保つには相当の熟練を要する。左房圧を検知し、これを予め設定した左房圧設定値と等しくなるように、駆動陰圧を自動制御し補助循環流量を自動的に変化させる空気圧駆動システムを開発し、実験的検討を行なった。駆動装置は自動制御モードとして、生体から検知した左房圧を予め設定した左房圧と比較し両者が等しくなるように、駆動陰圧の減圧弁の調節により駆動陰圧を増減させ補助循環流量を自動制御する機構を有する。モックサーキュレーションを用いたIN-VITRO実験でも、大型犬を用いたIN-VIVO実験においても、左房圧を予め設定した値に一致させること、血行動態の変化に対して左房圧を元の設定値に戻すことが自動制御により可能であることが明らかになり、補助人工心臓駆動の簡便化に有用と考えられた。
  • 鈴木 修, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 山本 知則, 栗原 和直, 塚本 三重生, 羽賀 直樹, 井上 龍也, 中沢 直, 佐久間 佳規, ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 869-874
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    RVADにウリナスタチンを併用した場合の肺および全身臓器に及ぼす影響について実験的に検討した。血行動態的には、ウリナスタチン併用の有無にかかわらず心不全作成により低下した大動脈圧、心拍出量はRVADにより回復した。しかしながら細胞破壊にともない逸脱してくる穎粒球エラスターゼは、ウリナスタチン併用時にはRVAD駆動3時間後も対象値と同じレベルまで抑制されたのに対して、非使用時には上昇し続け、細胞破壊が進行していることが示唆された。また、心不全時にうっ血、浮腫が著明になった肺組織像はRVADを単独に使用すると血行動態の安定と共にうっ血所見は若干軽減するも正常化するには至らなかった。しかし、ウリナスタチンを併用すると肺はほぼ正常像を呈し、これらは血管外肺水分量の検討からも明らかになった。RVAD時に起こりうる肺うっ血ならびに末梢臓器の虚血性変化はウリナスタチンでかなり抑制できることが示唆された。
  • 小山 富生, 高須 昭彦, 伊藤 健, 寺西 克仁, 村上 文彦, 冨田 康裕, 山崎 嘉久, 坪井 英之, 前田 正信, 曽根 孝仁, 田 ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 875-882
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮的体外循環用カニューラを利用した心肺補助(Percutaneous Cardiopulm onary Support, PCPS)は、心原性ショックに対する循環補助、心停止に対する心肺蘇生として、迅速かつ簡便に流量補助が可能である。我々はこの利点を生かすべくシステムを考案し、今回、IABPに対しても抵抗性の循環不全を呈した2例と、cadioversion不応性の心室粗細動に対し心肺蘇生を施行した1例、計3例の劇症型心筋炎に対してこれを応用し、救命することができた。
    重篤な循環不全、および致死的な不整脈を発生するような急性心筋炎においては、短期間で心筋病変の回復する可能性が大きいため、薬物、IABPに対しても抵抗性を示すようであっても、PCPSで極期を乗り切れる場合がある。経皮的体外循環用カニューラは出血も少なく、挿入部末梢側の血流も保たれ、十分な脱血量が得られた。
  • 丹治 雅博, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 阿部 俊文, 萩原 賢一, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 高瀬 信弥, ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 883-886
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    教室及び関連施設において施行された左心補助人工心臓(LVAD)症例10例のうち、離脱に成功し生存退院した心室中隔穿孔(VSP)3例、左心室瘤(LVA)1例の計4例について遠隔期における問題点を検討した。VSPの2例およびLIVAの1例は術後24~41ケ月の現在、NYHAはI度と良好な経過であったが、縦隔炎を併発したVSP例は術後24ケ月仮性上行大動脈瘤及び感染性心内膜炎による大動脈弁閉鎖不全症となり死亡した。LVAD施行例ではIABPの他、各種ラインが必要で、それらより感染をおこす機会が多く、また疾患の重症性から易感染性の状態にあるため、細心の術後管理が必要と考えられた。さらにLVAD離脱時には可及的に人工物を残さず大動脈壁を一次的に閉鎖することが重要で、CT-scan及び心エコーなどで感染や血栓の有無についての長期の経過観察が必要と考えられた。
  • 高木 啓之, 高木 登志子
    1991 年 20 巻 3 号 p. 887-892
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心臓のStarlingの法則を人工の血液ポンプに導入するための制御器は、次の4メカニズムから成立している。
    1)空気駆動のポンプを並列に接続し、交互にパンピングさせる。2)センサーの電圧でfilling、compressionの程度を規定し、デジタル化して電磁弁と連動させる。但し、1)により、電磁弁を開くサインは先着優先とし、同時に開となることを禁止する。3)センサーのデジタル化の出力信号と電磁弁の開動作との時間的差で拍出力の不適正度を計測し、空気圧を調整する。以上の方式により、静脈圧や動脈圧の変化に自動対応していつも流入量=拍出量となる。4)トリガー点をfilling側にして1サイクル中での空気圧の増減には増を禁止する事で、低静脈圧、低流入量時も安定し、陰圧発生を減少させ、心室壁と人工のチャンバー壁との差をより少なくする事が出来た。
  • 山家 智之, 仁田 新一, 片平 美明, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 林博 行, 田中 元直, 三浦 誠, 佐藤 尚, 毛利 平, ...
    1991 年 20 巻 3 号 p. 893-898
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    交感神経活動の心拍性リズム発現に、左心補助人工心臓(LVAD)駆動による血行動態の変化がどのような影響を与えているのかを検討するために、LVADを装着した雑種成犬を用い、腎交感神経活動(RSNA)中の心拍性リズム成分とLVAD拍動リズム成分をスペクトル解析法を用いて定量的に評価した。心拍リズムの周波数におけるRSNAのパワースペクトルのピークの帯域パワー値及び動脈波とRSNAのコヒーレンスはLVAD心電図非同期駆動及び同期駆動のうちcounter-pulsationにては有意に減少し、またcopulsationにては若干増加した。これらの結果は、LVAD駆動下の圧反射システムでは、最も強い線形性を示す周波数が移行していることを示し、交感神経系の中枢における発振機構が、圧受容体よりの入力に引き込まれるというGebberらの仮説を支持するものと考えられた。以上のような圧反射システムの検討により、より生理的なWAD駆動条件設定が可能になるものと期待される。
  • 古賀 正之, 原 洋, 麻生 公, 瀬戸 島謙三, 山名 一有, 青柳 成明, 小須 賀健一, 大石 喜六
    1991 年 20 巻 3 号 p. 899-903
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今回我々は雑種成犬15頭を用い、術後体外循環離脱困難にてventricular assist system(以下VASと略)を必要とするような不全心のモデルとして、常温下45分間大動脈遮断による重篤な虚血心を作成し両心補助を行い、左心機能及び左室心筋ミトコンドリア機能の検討を行った。常温下45分間の完全な虚血により重篤な両心不全に陥ったが、両心補助循環にて全身の循環の維持は可能であった。虚血後の血行力学的左心機能は、虚血解除後1時間にて有意な回復を認めたが、2時間、3時間後の回復は有意なものでなかった。左室心筋の2種類のミトコンドリアの生化学、形態学的機能は45分間の虚血により有意に低下し、BVAS (Biventricular assist system)2時間40分間の補助により回復傾向にあった。従って、VASはエネルギー産生源であるミトコンドリアの機能回復に寄与していると思われた。
  • 宮本 裕治, 松田 暉, Bp GRIFFITH
    1991 年 20 巻 3 号 p. 904-908
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    米国ピッツバーグ大学において、1987年7月より1990年7月までの間に心移植待機中の患者20人に対しNovacor LVADを埋め込んだ。この際、患者の血行動態の変化と共にNovacor LVADの駆動状態が、充填量では24-70ml、残存血液量では1-18ml、ポンプ拍出量では2.8-8.2 l/minuteと大きく変動することを観察した。Novacor LVADは駆動条件が流入および流出部の血行動態に大きく依存するという特徴を有しており、右心系および体循環のいかなるパラメーターが本LVADの駆動状態に影響するのかを検討した。重回帰分析を用いた結果、充填量はPVR, RVSWI, PCWPと、残存血液量はSVR, CVPと、またポンプ拍出量はRVSWI, PVR, SVRと有意な関係があった。一方、大動脈圧, 肺動脈圧, RVEFは各指標とも有意の関係を認めなかった。以上より、Novacor LVADの駆動状態はPVR, SVRおよび右室仕事量に依存していると考えられた。
  • 朝田 政克, 中村 孝夫, 松不 健郎, 林紘 三郎, 酒井 圭輔, 田辺 達三, 増田 春彦
    1991 年 20 巻 3 号 p. 909-914
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    6頭の雑種成犬の左冠動脈前下行枝を結紮して急性虚血心を作成、IABPを挿入、駆動した。左室仕事量(BMW;mW/100gLVW)と虚血部の左室局所心筋仕事量(RMWi;mW/cm3)及び非虚血部の局所仕事量(RMWn;mW/cm3)を測定するために、左室内腔面と心内膜直下に計7対の超小型超音波変位センサを埋め込んだ。得られた結果を以前行なった補助心臓(LVAD)による同様の実験結果と比較した。
    BMWはLvADを駆動すると44~63%減少するのに対して、IABPでは約7%低下したのみであった。RMWiはIABPを駆動すると35~52%減少した。逆にRMWnはIABP駆動により10~23%増加した。LVADではRMWi、RMWnのいずれも55~150%と大きく減少した。これらから、IABPは、仕事の代償能力のある部分の仕事量を増加させることにより、補助効果を得るものと考えられる。
  • ―実験及び臨床的検討―
    藤田 康雄, 林 純一, 諸 久永, 斉藤 憲, 上野 光夫, 江口 昭治, 堀 潤一, 斉藤 義明
    1991 年 20 巻 3 号 p. 915-918
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    シミュレーターを用いてSJM弁閉鎖音の周波数特性を検討し、臨床例と比較した。録音した閉鎖音はデジタル化、FFT処理を行いパワースペクトル曲線で表わした。正常のSJM弁閉鎖音は0.6KHz付近にピークを有し、7KHz付近まで徐々に減衰した。また1.2、1.8、2.4、3.6KHz付近等に小さなピークを有し、SJM弁閉鎖音の固有周波数0.6KHzの高調波が現われると考えられた。正常と考えられる臨床例でも、小さなピークは認めないものの、0.6KHz付近にピークを有する同様の波形を呈した。疑血栓としてフィブリン糊を付着させたSJM弁閉鎖音のスペクトル曲線では、正常弁に比べ0.6~3KHzのパワーの減衰を来した。臨床例では、肺動脈弁位血栓弁の閉鎖音や、脳血栓症を来した僧帽弁位SJM弁の閉鎖音でも同様の所見が認められた。この領域のパワーの減衰がSJM弁の血栓付着を予測する指標になると考えられた。
  • 五味 昭彦, 竹内 靖夫, 岡村 吉隆, 森 秀暁, 長嶋 光樹, 服部 淳, 大野 義明
    1991 年 20 巻 3 号 p. 919-923
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    人工弁機能不全の早期診断・治療には遠隔地診断用の電話伝送による人工弁音図法は有効であった。今回、新しく開発されたデジタル伝送用のINS回線を使用し、人工弁音の周波数分析を電話伝送と組合わせることを試みた。(方法)人工弁音分析は心音増幅器の2kHzフィルタを使用し、シグナルプロセッサにて周波数分析を行なった。デジタル伝送はSB-ADPCM(帯域分割適応差分PCM)方式でINS-64に0.05-7kHz間の信号を帯域圧縮し伝送した。(結果)(1)直接分析例と伝送後の周波数分析を比較検討した結果、従来のアナログ伝送では周波数分析は不可能であるが、デジタル伝送では直接分析例と比較しても極一部を除き人工弁音の周波数成分を良好に分析した。(2)かっての症例を検討すると、血栓弁の診断には4-7kHzまでの分析が重要で、デジタル伝送による診断は可能であった。(結語)デジタル伝送による人工弁音の波形・周波数分析は機能不全のより早期の診断を可能にした。
  • ―超音波ドプラー法との比較―
    芝田 貴裕, 松井 道彦, 宮沢 総介, 鈴木 和彦, 小柳 勝司, 新井 達太
    1991 年 20 巻 3 号 p. 924-927
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    Ionescu-Shiley弁を使用して, 僧帽弁置換術を施行した25例を対象として心音図, 断層心エコー図, ドプラー法を用いて, 弁の機能不全について検討を加えた。弁尖の肥厚が3mm以下のものをA群, 3mm以上のものをB群とした。1)II-OS/RRはA群で0.14±0.03, B群で0.11±0.04であり弁尖の肥厚硬化の強い例ほど短縮した。2)PHTはA群で97±30, B群で192±82msecであり弁尖の肥厚硬化の強い例ほど延長した。3)II-OS/RRとPHTとの間にはr=-0.68の負の相関関係を認め, PHTが長い例では, II-OS/RRの短縮することがわかった。Ionescu-Shiley弁において, その再弁置換の時期決定には断層心エコー図, ドプラー法の有用性が言われている。今回我々は心音図法を用いII-OS/RRを計測することにより弁の肥厚硬化を推定した。II-OS/RRを測定する事は断層心エコー図, ドプラー法と同様に弁の機能不全の診断に有用であると考えられた。
  • 田中 良昭, 奥森 雅直, 松本 博志, 太田 裕治, 堀内 孝, 土肥 健純, 長谷川 嗣夫, 井手 博文, 川瀬 光彦
    1991 年 20 巻 3 号 p. 928-931
    発行日: 1991/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工弁運動解析装置を用いてBjork-Shiley弁によるAVR20例, MVR20例の解析を行い, 開放角, 開放に要する時間, 最大開放速度, 閉鎖に要する時間, 最大閉鎖速度, 弁座の動揺を求めAVR, MVR, 血栓弁で比較を行った。また, 同時記録された心電図との対比からR波からの弁の開閉までの時間を測定し, この装置による心機能評価の可能性について検討した。この結果, 人工弁運動解析装置は血栓弁予知に有用でありかつ心機能評価に活用しうると考える。
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