人工心臓による循環が腎機能に及ぼす影響を検討することを目的として, 完全人工心臓装着ヤギを用いて, 装着前後における腎機能の経時的な変化の検討を試みた. 腎血流量, 腎血漿流量, 糸球体濾過量, および時間尿量はいずれも術後第1週から減少し, 以後も低値を示した. 一方, 上半身のみを自然心臓で灌流し, 腎動脈を含む下半身の循環系は完全に人工心臓で代行させた分離循環例においては腎機能の低下は認められなかった. 循環動態, 血液検査等に関しては, 完全人工心臓例においてのみ右心房圧が著明に上昇していたが, その他の測定データは基本的に完全人工心臓例と分離循環例との間に差異が認められなかった. 以上の結果から, 人工心臓駆動下における腎機能の低下の成因として, 人工心臓の駆動圧波形, ホルモン等よりも, 主として右心房圧の上昇の関与が考えられた.
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