人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
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21 巻, 2 号
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  • 井村 慎一
    1992 年 21 巻 2 号 p. 345
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 許 俊鋭, 野田 裕幸, 元山 猛, 見目 恭一, 会田 治男, 関口 敦, 今福 博司, 松村 誠, 横手 祐二, 尾本 良三
    1992 年 21 巻 2 号 p. 347-352
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮的左心バイパス(AAB)法を簡便に施行するためにX線透視を用いないで経食道心エコー(TEE)ガイドにより経心房中隔左房脱血管の確実な左房への挿入・留置法を考案した。先端50mmの位置で45°~90°の湾曲を持つ左房脱血管(外径φ12~18Fr、長さ70cm、先端35mmの範囲にφ1.5mmの20個の多側孔を持つ)を試作した。(1)実験的検討:雑種成犬4頭(8~13kg)に遠心ポンプ(Sams社製)を用いAAB補助効果を検討し、autopsyにて脱血管の左房内位置を確認した。(2)臨床的検討:経皮的僧帽弁交連裂開術24例(平均年齢48.6±10.9才、男:女=8:16)でTEEガイド下による井上バルーンカニューレ(14Fr.)の安全確実な左房内挿入を試み、全例で迅速・安全な挿入が可能であった。Brockenbrough針と心房中隔の位置関係はbiplane経食道心エコー図の縦断面により確実に把握できた。(3)臨床例3例で同方法により安全に左房脱血管を挿入し、左心バイパスを施行した。
  • 山口 敦司, 井手 博文, 川人 宏次, 水原 章浩, 安達 秀雄, 井野 隆史, 松本 博志, 藤正 厳
    1992 年 21 巻 2 号 p. 353-356
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Integrated Cardioassist Catheter (ICAC)は, 経皮的(経大腿動脈)経大動脈弁的に左室内に挿入する脱血カニューレとIABPとを1本のカテーテルにあわせもつ拍動流左心バイパス装置として開発された。挿入に際しては, 脱血管内にてガイドワイヤーを通したビッグテイルカテーテルを先行させ, これをガイドに脱血管を透視下で左心室内に至らしめる。犬の腹部大動脈より挿入を行ったところ, 血管確保から装置駆動までに要した時間は, 平均約3分30秒であり, ビッグテイルとX線透視を用いることで挿入のための合併症を予防することができた。模擬回路にて回路内圧流量特性を求めたところ, 全長90cmで9・10.5・12・15Frのそれぞれの内径で0.8・1.4・2.3・3.1l/minの流量が得られた。本装置は, 経皮的に挿入する左室補助循環装置で, 開胸などの煩雑な手技を必要とせず安全迅速に挿入可能でICU/CCU内での緊急時などでも十分に対応できるものである。
  • ―電気的処置前骨格筋の刺激周波数変化による段階的疲労と筋内電極を用いた誘発筋電図の関係―
    磯田 晋, 梶原 博一, 矢野 善己, 神 康之, 山崎 一也, 石井 正徳, 田村 功, 鈴木 伸一, 星野 和実, 井元 清隆, 近藤 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 357-361
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    骨格筋による心機能補助(cardiomyoplasty)においては、電気刺激や負荷の条件をコントロールする為に骨格筋を心筋から独立させて監視することが必要である。本研究は電気的前処置(preconditioning)をおかず血行ネットワーク形成期間(vascular delay)をおいた広背筋グラフトを用いて、10分間の電気的駆動の刺激周波数を変化させることで段階的な疲労状態を作成し、電気刺激で誘発された筋電図を評価する為の急性動物実験である。筋電図変化を筋内電極を用いて導出し、シグナルプロセッサーで解析した。誘発された筋電図は広背筋の疲労に応じて明らかに変化した。本研究により、骨格筋による心機能補助において、限られた条件下ではあるが筋電図を用いて骨格筋を疲労監視することが可能であることがわかった。
  • 榊原 直樹, 手取 屋岳夫, 竹村 博文, 川筋 道雄, 三崎 拓郎, 渡辺 洋宇, 能勢 之彦
    1992 年 21 巻 2 号 p. 362-366
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    骨格筋駆動型人工心臓をカウンターパルセーション(CP)と心室バイパス(VB)として使用した場合、どちらへの応用が適性であるか模擬循環回路を用いて検討した。ポンプ拡張機能をみると、前負荷が高いCPではポンプ流入特性がよく骨格筋の拡張弛緩を促進し、結果的により大きなエネルギー出力が得られた。さらにポンプ拡張末期容量が多いため、ポンプ拍出容量(SV)も多かった。VBは心房脱血程度の前負荷では流入特性が悪くなり、心室脱血程度の前負荷では流入時間が短縮したものの、毎分60回以上の駆動ではSVは充分ではなかった。一方駆出機能では右心系レベルの後負荷であればSVは良好であったが、左心系レベルではSVがCPの68%に減少し、1回拍出仕事量は35%に低下した。以上から出力的にVBでは右心補助までが限界で、左心系の補助循環にはCPの方が血行動態への効果も良好でより適性であると思われた。
  • ―慢性期の問題点に関する実験的検討―
    田原 稔, 細田 泰之, 弘岡 泰正, 渡部 幹夫, 数井 学, 佐藤 健志, 高澤 賢次, 後藤 昌弘, 工藤 英範, 南 茂, 斉藤 司
    1992 年 21 巻 2 号 p. 367-371
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬7頭を対象として慢性実験により、広背筋を利用した心筋補強術(Cardiomyoplasty)に関する検討を行った。Cardiomyoplasty用刺激装置として、携帯可能なサイズの体外式刺激装置(順天堂型骨格筋刺激装置:型式MC4102)を作成した。左第5肋間開胸下に有茎剥離した左広背筋を反時計回りに両心室表面にラッピングした。手術から2~4か月間慢性電気刺激を行った後の血行動態の変化は、刺激周波数50Hz、パルス幅4ms、出力電圧2.5v、刺激時間100msの条件でRVp:28±2.5→41±2.6mmHg、LVp:178±14→195±14mmHgであった。電磁血流計による内頸動脈血流は波形の変化を認めるものの血流量の有意な上昇は見られなかった。心室内圧上昇効果は壁の薄い右室で著明であったが左心系に対しては十分な効果が得られなっかた。また、刺激電極間インピーダンスの経時的上昇が認められ、ペーシングワイヤー電極に関する特別な工夫が必要であると考えられた。
  • ―動脈間バイパスと左心バイパスの比較―
    首藤 裕, 四方 達郎, 東 理佐子, 清水 剛, 小櫃 由樹生, 福島 洋行, 長江 恒幸, 秋元 直人, 平山 哲三, 石川 幹夫, 石 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 372-375
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    胸部大動脈手術の補助手段としての遠心ポンプ体外バイパス法について, 動脈間バイパスと左心バイパスの比較を中心に検討を行った。バイパス流量, 下肢平均動脈圧/上肢平均動脈圧比, 大動脈遮断中尿量は両群間に有意差はなく, ともに単純バイパス法に比し有利であったが, 動脈間バイパスの方がバイパス流量のばらつきが少なく, 遮断中尿量も多い傾向にあった。しかし, 動脈間バイパスは病変占拠部位により使用に制限を受ける問題点がある。左心バイパスは病変の占拠部位による制限は少ないが, 左房への到達が必ずしも容易な症例ばかりではない。また, 左心バイパスにて循環動態が不安定で, 動脈間バイパス法に変更して安定した症例もあり, 遮断末梢臓器への至適還流量維持には遮断中枢側の血圧が主に流量を規定し, ポンプの回転が補助的役割を行っている動脈間バイパスの方が生理的に近く, 流量の調節が容易ではないかと考えられた。
  • 末田 泰二郎, 浜中 喜晴, 林 載鳳, 石原 浩, 川上 恭司, 金広 啓一, 松浦 雄一郎
    1992 年 21 巻 2 号 p. 376-379
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    最近3年間に遠心ポンプによる左心バイパス下に胸部下行大動脈瘤の人工血管置換術を12例(破裂例3例)行った。左心バイパス方法は脱血は左房10例、上行大動脈1例、左鎖骨下動脈1例で、送血はいずれも左大腿動脈であつた。手術成績は病院死2例(17%)で、1例は破裂例であつた。左鎖骨下動脈と左内頸動脈との間で大動脈遮断を行った3例中1例に術中脳塞栓を合併した。遠位弓部に病変が及ぶ真性瘤は、左心バイパスでは手術に限界があつた。術後のビリルビン上昇例4例の術中の大動脈遮断時間、バイパス流量は、肝機能正常群と変りなかつた。長時間大動脈遮断中の血中ケトン体比は大腿動脈血圧と相関して低下したが、遮断解除後は正常に復した。術後腎機能に影響を与えるのは腎血流の遮断であつた。胸部下行大動脈瘤手術では、遠心ポンプによる左心バイパス法は簡易で安全な補助手段と思われた。
  • 舟波 誠, 村田 升, 成澤 隆, 久米 誠人, 賀嶋 俊隆, 数馬 博, 森保 幸治, 田中 弘之, 横川 秀男, 山田 眞, 高場 利博
    1992 年 21 巻 2 号 p. 380-384
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    胸部下行大動脈瘤手術の循環補助手段として遠心ポンプ(Bio-pump: BioMedicus社製)に自己血回収輸血システムを併用した左心バイパス法(BIO法)を14例に施行し血行動態的, 臨床的検討を行った。左心バイパス回路は塩化ビニールチューブを用い, 軽度全身ヘパリン化による自己血回収輸血法の3方式を粗み合わせることで血液回収率の増加と輸血量の削減が可能となり, 無輸血症例は3症例となりその有効性を認めた。自己血回収返血の迅速化によりバイパスポンプ流量の安定化が得られた。そのため適正な中枢側血圧の維持や末梢側血圧の調節が可能となり左心機能, 腎機能保持の観点からも優位性が認められた。以上の成績から, Bio-pumpに3方式の自己血回収輸血法を併用した左心バイパス法は胸部下行大動脈瘤手術の補助手段として主要臓器機能保持, 輸血削滅に有効であり, 現在最も安全で有用性の高い方法と考えられた。
  • 折目 由紀彦, 長谷川 隆光, 北村 信三, 進藤 正二, 塩野 元美, 秋山 謙次, 原田 泰, 鈴木 修, 塚本 三重生, 大畑 正昭, ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 385-389
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    当科で過去15年間に開心術症例に適用した補助循環症例215例(IABP: 199例, 補助人工心臓: 16例)の経過を多方面から詳細に検討し, 長期生存のための問題点とその対策について考察した。
    補助開始が早い症例は生存率が高く, MOFを合併した症例は補助中から心機能が低く, 右心不全の程度が強い程, MOFも重症化することが示された。また, MOF症例は補助循環離脱前に心以外の重要臓器機能が低下している場合が多かった。VAD症例では離脱後に弱毒菌が検出された。
    以上の結果より, 補助循環適用症例の長期生存のための問題点として, 適用時期, MOF, 感染があげられ, これらに対する対策として, 1. 早期適用, 2. 駆動中の良好な心機能の維持と離脱時の重要臓器保護, 3. 離脱後の感染防止対策の徹底などが必要であると思われた。
  • 上床 邦彦, 永田 昌久, 塩井 健介, 三枝 裕幸, 加藤 真司, 間瀬 武則, 岡崎 信彦, 土岡 弘通
    1992 年 21 巻 2 号 p. 390-393
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)の駆動時相の相違による末梢循環への影響を調べるため、肝、腎の血流量および組織血流量を測定した。拡張期駆動5例(I群)、収縮期駆動5例(II群)、固定レート駆動5例(III群)にてそれぞれ2時間駆動した。さらに腎皮質組織血流量、腎髄質組織血流量を測定し、腎組織血流分布について検討した(5例)。総流量(自己心拍出量+補助流量)は3群間で有意差は認めなかった。肝動脈血流量、肝組織血流量は3群ともLVAD駆動前後では有意差はなかった。腎血流量は3群間に有意差はみられなかった。腎皮質組織血流量はI群、II群では安定していたが、III群では不安定で有意に低下した。それに比べ腎髄質組織血流量はI群、II群よりIII群では有意に増加した。LVAD駆動前後に測定したEmaxにて3群間の心機能に変化がみられなかったことを確認した。LVADは各群とも全身循環も良好に保たれるが、組織レベルでは腎循環は駆動法の相違による影響が考えられた。
  • 中沢 直, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 山本 知則, 鈴木 修, 塚本 三重生, 井上 龍也, 佐久間 佳規, 三室 治久, 大畑 正昭, ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 394-399
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、拍動流を有する補助人工心臓と、ガス交換能を有する膜型人工肺の両者の利点を合わせ持つ補助循環装置を考案試作し、ブタの呼吸不全及び心不全モデルに対して、その効果を検討した。この装置の補助により血行動態の改善を示し、心不全状態から脱し、全身循環維持が充分可能であった。またPaO2, SaO2の上昇等の血液ガス分析データの改善もみられた。さらに、ヤギを用いた40時間の慢性実験においても、著明な溶血、血栓は認めなかった。以上より、この装置は、拍動流を有する補助人工心臓とガス交換能を有する人工肺の両者の利点を合わせ持つ補助循環法となり得、呼吸不全を合併した心不全症例などに臨床応用できる可能性が示唆された。
  • 瀬戸 島謙三, 原 洋, 古賀 正之, 鈴木 重光, 麻生 公, 熊手 宗隆, 青柳 成明, 山下 正康, 桃崎 雅弘, 安永 弘, 小須 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 400-404
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Ca2+代謝と密接に関連し、エネルギー産生利用系に必要とされるCa2+-ATPaseに着目し、クエン酸鉛法を用いてBVAS効果と関連して重症心不全の回復過程に於ける心筋細胞内Ca2+-ATPase活性の変化について実験的に検討した。雑種成犬15頭を用い、体外循環を行い45分間常温下大動脈遮断し、心筋虚血による高度両心不全モデルを作成。この不全心に対してBVASを3時間駆動させ左室心筋生検を行い、心筋細胞内のミトコンドリア、筋小胞体、myofilamentでのCa2+-ATPase活性を透過電顕にて比較検討した。
    BVASにて全身の循環維持は可能であった。左心機能はBVAS開始1時間にて有意な回復を認めた。不全心群のCa2+-ATPase活性は、筋小胞体、myofilamentでは消失したが、ミトコンドリアでは活性の残っているものも認められた。BVAS 3時間使用による急性期のCa2+-ATPase活性の回復はミトコンドリアが早く、myofilament及び筋小胞体などは遅く、局在による差異が認められた.
  • 柿沼 義人, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 薗部 太郎, 永沼 滋, 松澤 浩, 秋保 洋, 井筒 憲司, 菅原 重生, 田中 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 405-408
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    短時間一過性心筋虚血からの回復過程に与える左心補助人工心臓(LVAD)の影響を評価するために、成山羊を用いた虚血モデルにおいて左心バイパスの急性実験を行なった。一過性心筋虚血モデルは左前下行枝を3~7分間の各時間で閉塞した後再灌流して作成した。LVADは、サック型人工心臓(TH-7B)を使用し、counter pulsation modeで駆動した。われわれの開発した循環動態推定監視システムを用い、P-V curveおよびEmaxを求め回復過程を評価した。その結果、LVAD駆動下では非駆動下に比べ回復時間の有意の短縮が認められた。従って、短時間の一過性心筋虚血に対するLVADの有効性が示唆された。
  • 勝間 田敬弘, 吉岡 行雄, 根本 慎太郎, 小柳 俊哉, 西田 博, 中野 清治, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 小柳 仁, 鈴木 進
    1992 年 21 巻 2 号 p. 409-411
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    日本人の体格に適合すべく当教室で開発したIABP用大動脈内バルーン(東海メディカルプロダクツ社製: TMPと略す)の安全性、使用バルーンサイズと体格に関する臨床的検討を、Datascope社製バルーン(DSと略す)を対照として行った。バルーン総数はTMP: 145本、DS: 109本で、総作動時間は、TMP: 10793時間(1本平均74時間、最長672時間)、DS: 8668時間(1本平均81時間、最長430時間)であった。胸腹部大動脈主要分枝の塞栓例は両群とも臨床的には認められなかった。
    挿入後24時間以内のバルーン破裂はTMP: 0例、DS: 1例、24時間以後ではTMP: 0例、DS: 5例であり有意差(χ2=6.03, p<0.025)を認めた。挿入側下肢の阻血症状は、TMPを用いた2例で認めたが、動脈硬化症を合併しており、うち1例は両側の閉塞性動脈硬化症を合併していた。TMPバルーンの安全性が確認された。
  • 中山 裕宣, 村上 泰治, 石野 幸三, 泉本 浩史, 寺岡 広道, 山田 真人, 菅原 英次, 森本 徹, 久持 邦和, 山本 典良, 川 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 412-416
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Independent variable rate modeの両心バイパスにて心室細動羊11頭の体循環及び肺循環を完全代行し、その循環動態、内分泌動態を検討した。羊は2~48日(平均11日)生存し、循環動態では中心静脈圧が軽度上昇したが、平均大動脈圧、ポンプ流量はともに良好に維持された。内分泌動態では、アドレナリンは一定の傾向を示さず、レニンはやや低下する傾向を示した。トリヨードサイロニンおよびサイロキシンは有意に低下し、手術侵襲の影響、低蛋白血症の影響、自己心拍欠如の影響等が考えられた。心房性ナトリウム利尿ポリペプタイドはCVP上昇の数日後より有意に上昇した。抗利尿ホルモン、コルチゾル、インスリンも有意に変化したが、手術侵襲、疼痛などのstressがその主因と考えられた。以上より心室細動下の両心バイパスは循環動態をほぼ良好に維持し得たが、内分泌動態には変化を認めた。
  • 下岡 聡行, 浦島 智史, 本田 禎二, 三田 村好矩, 勇田 敏夫
    1992 年 21 巻 2 号 p. 417-422
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助心臓駆動下での血行動態の予測器を急性動物実験で検討した。補助流量の変化と平均動脈圧、平均左房圧の変化の関係を逐次的に同定することができれば、補助流量の制御や離脱時期の判断等に有用であると考えられる。同定には、時系列モデルと逐次最小自乗法を用いる。実験には雑種成犬を用い、駆動陰圧を周期的に変化させ、その後で補助心臓を一時的に停止した。その間の補助流量、動脈圧、左房圧の推移を記録した。停止前のデータを用いてパラメータを同定し、補助流量ゼロのときの平均動脈圧、平均左房圧を予測して停止後のデータと比較した。平均左房圧は大部分のデータで1mmHg以下で予測された。平均動脈圧は補助流量に依存して変化するデータは少なかったが、その場合、数mmHgの誤差で予測された。予測値の収束性はローパスフィルタの使用等で改善することができた。本論文の予測器は補助心臓駆動下の血行動態の予測、監視等に有効である。
  • 三田村 好矩
    1992 年 21 巻 2 号 p. 423-428
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓用磁性流体アクチュエータの可能性について検討した。磁性流体アクチュエータは、ベアリングなどの摩耗部品を必要とせず、磁界を加えるだけで直接磁性流体を動かすことができる。ガラス製U字管中の磁性流体をソレノイドのギャップ中においた。0.32Tの磁束を加えたところ、磁性流体は移動し、7.58kPa (57mmHg)の圧が得られた。ガラス管のまわりに4個のソレノイドを並べ、ソレノイドを2づつ交互に励磁したところ、8.65kPa (65mmHg)の圧が得られた。理論計算より13.3kPa (100mmHg)の圧を得るには0.49Tの磁束密度で十分であることがわかった。磁性流体アクチュエータは、埋込型人工心臓アクチュエータとして有望といえる。開心術後の重症心不全8例に遠心ポンプ(Bio-Pump)による補助循環を行なった。離脱3例と脳死のため補助を断念した1例の4(A群)と離脱不可能の4例(B群)を血行動態, 主要臓器障害について比較した。補助時間はA群115.5時間, B群45.5時間とA群が長かった。補助流量はA群3.4L/min, B群3.8L/minで差はなかったが, B群の平均動脈圧(m-Aop)は1例を除き60mmHg以下で推移し, 全身血管抵抗(SVRI)も低値であった。B群では混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は低値で推移し, 原因として心拍出量の低下のほかに全身酸素摂取量(VO2I)の異常高値が考えられた。腎機能では尿量が維持できたのはA群の3例のみで, 呼吸機能(Respiratory index)もA群では3例が2以下に改善した。動脈血乳酸値, 中枢-末梢温度較差は補助循環の良い指漂であった。B群は代謝の亢進したhyperdynamic shock類似の血行動態にあり, この時期に至る前の補助循環が末梢循環代謝, 重要臓器機能の改善に必要である。
  • 大島 永久, 山田 崇之, 中原 秀樹, 田辺 貞雄, 入江 嘉仁, 佐野 英基, 片山 康, 木山 宏, 村井 則之, 横田 洋, 向山 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 429-434
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開心術後の重症心不全8例に遠心ポンプ(Bio-Pump)による補助循環を行なった。離脱3例と脳死のため補助を断念した1例の4(A群)と離脱不可能の4例(B群)を血行動態, 主要臓器障害について比較した。補助時間はA群115.5時間, B群45.5時間とA群が長かった。補助流量はA群3.4L/min, B群3.8L/minで差はなかったが, B群の平均動脈圧(m-Aop)は1例を除き60mmHg以下で推移し, 全身血管抵抗(SVRI)も低値であった。B群では混合静脈血酸素飽和度(SvO2)は低値で推移し, 原因として心拍出量の低下のほかに全身酸素摂取量(VO2I)の異常高値が考えられた。腎機能では尿量が維持できたのはA群の3例のみで, 呼吸機能(Respiratory index)もA群では3例が2以下に改善した。動脈血乳酸値, 中枢-末梢温度較差は補助循環の良い指漂であった。B群は代謝の亢進したhyperdynamic shock類似の血行動態にあり, この時期に至る前の補助循環が末梢循環代謝, 重要臓器機能の改善に必要である。
  • ―補助循環とその限界―
    村瀬 允也, 前田 正信, 村上 文彦, 寺西 克仁, 水口 一衛, 高須 昭彦, 小山 富生, 伊藤 健, 佐々 寛己, 曽根 孝仁, 坪 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 435-438
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に対する治療体系は、緊急冠動脈撮影、再開通療法により急性期治療が一応の確立をみている。循環不全を合併する場合には、機械的補助を必要とする。IABPにより改善しない場合には、経皮的心肺補助(PCPS)が有効であり、再開通療法との組み合わせにより従来救命不能の症例も救命可能となった。心肺蘇生を必要とした5例中2例を救命した。緊急手術を必要とする病態には蘇生までの間に脳障害が発生して救命できない症例も多く、このような症例にも適用されることにより成績の向上が期待できる。緊急、早期手術を31例に施行した。CABG 17例、心臓破裂11例、MVR+CABG 2例、VSP 1例であったが、25例を救命した。しかし、2例では左心バイパスを必要とし、救命できなかった。37歳の左主幹部完全閉塞の症例は、置換外科の適応と考えられた。
  • 合田 俊宏, 朝田 政克, 佐々木 重幸, 郷 一知, 松居 喜郎, 佐久間 まこと, 安田 慶秀, 田辺 達三
    1992 年 21 巻 2 号 p. 439-443
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症心不全や呼吸不全に対する遠心ポンプを用いた左心補助及びVAB症例16例の成績を基に、その有用性と問題点について検討した。左心補助群は冠動脈疾患4、弁膜症2の6例で、適応はECC離脱困難5、術後LOS 1であった。補助時間は6.4~144時間であった。VAB群は先天性心疾患3、冠動脈疾患5、大動脈弁輪拡張症1、肺梗塞1の10例で、適応はECC離脱困難7、術後LOS 1、呼吸不全1であった。補助時間は12~200時間であった。左心補助群では離脱2例、長期生存1例であり、離脱不能の原因は右心不全の進行や出血による流量低下であった。VAB群では離脱4例、長期生存2例であり、特にPCPSによるVABの3例では出血量も少なく、全例離脱でき、2例が長期生存であった。遠心ポンプによる補助循環は耐久性と抗血栓性の問題があるが、短期間の補助には有用であり、特に右心不全合併例ではVABが有効であった。
  • 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 小野 隆志, 高瀬 信弥, ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 444-447
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓駆動開始から48時間までの血行動態より、補助人工心臓機能を評価した。自己心機能が早期回復した症例の総心拍出量(TF)は3l/min/m2以上を示すことが多く、そのような症例では平均肺動脈楔入圧(PWP)、平均右房圧(RAP)も10mmHg以下を保つことが出来たが、回復遅延症例では有意のTFの低下、PWP、RAPの上昇がみられた。サック型4例の補助流量はfull-stroke駆動にもかかわらず平均2.47±0.3l/minであり、この値は、駆動条件、両側心房圧、自己心拍出量が変化してもほぼ一定であった。回復遅延群では補助人工心臓離脱後も多臓器不全が遷延し、人工心臓の補助流量不足も回復遅延の一因と考えられた。補助人工心臓使用により良好な循環動態を得る為にはTFは3l/min/m2以上を得ることがのぞましく、その為には4l/min以上の補助能力を有する補助心臓が必要と考えられた。
  • 北村 昌也, Vaughn A. STARNES, Philip E. OYER
    1992 年 21 巻 2 号 p. 448-452
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    末期的な重症心不全の治療体系における人工心臓と心臓移植の相互補完の関係の中で、スタンフォード大学の移植医療の実際から、急性発症例に対する救命手段として心臓移植への緊急ブリッジがいかに適応され、どのように行われているかを検討した。4例全例が心原性ショックまたは致死性心室性不整脈の重積を伴った不可逆性・進行性の重症心不全であり、集約的な薬物治療に反応しないため、基礎心疾患及びその重症度を考慮した上で、4例とも入院から数日以内に緊急ブリッジの適応となった。
    Novacor LVASによるブリッジの期間は26~62(平均41.3)日であった。ブリッジの合併症として、血液凝固系の障害、LVADポケット部の感染、下肢の虚血、多臓器不全などがみられた。全例で心臓移植へのブリッジに成功し、移植後3~4週で退院して、術後2~27(平均10.3)ヵ月の時点で4例とも健在である。
  • 中谷 武嗣, 佐々木 栄作, 穴井 博文, 妙中 義之, 木下 正之, 巽 英介, 増澤 徹, 赤城 治彦, 後藤 昌弘, 松尾 義昭, 榊 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 453-458
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    VAS及びIABPの駆動が可能な小型多機能補助循環駆動装置を開発した。システムの概要は、1. 空気によるVASあるいはヘリウムガスによるIABPの駆動が可能である、2. コンプレッサー、バキュームユニット及びバッテリーを内蔵し、外部空圧源や電源がなくても作動可能である、3. 流量及び左房圧による定値制御が可能である、4. アラーム・バックアップ機構を有する、5. 空気流速計によるfull-fill to full-empty駆動(F/E駆動)が可能である。本装置について、モック、成山羊による慢性実験及び臨床例において評価を行った。その結果、VAS機構は、最長8週間の使用において特に問題を認めなかった。また、F/E駆動は、駆動圧の設定のみでマニュアル操作とほぼ同等のバイパス流量が得られた。IABP機構は、改良した心電トリガーにより不整脈への追従性は良好で、各種バルーンの特性にあわせた駆動条件の設定が可能であった。今回開発した駆動装置は、VAS及びIABPの駆動を良好に行い得、臨床上有用と考える。
  • ―慢性期、覚醒状態下において―
    榊 雅之, 妙中 義之, 巽 英介, 中谷 武嗣, 赤城 治彦, 増澤 徹, 後藤 昌弘, 佐々木 栄作, 井上 和重, 松尾 義昭, 馬場 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 459-463
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    覚醒動物の肺循環を拍動流から無拍動流へ迅速に転換させた時の肺循環動態および肺機能の変化を観察した。成山羊4頭に右心房右心室脱血, 肺動脈送血の国循型空気駆動式右心補助人工心臓(RVAS)を装着し, 肺循環を拍動流にて2週間維持した後, 覚醒状態下にRVASから遠心ポンプへ迅速に交換した。肺循環が無拍動流化することを確認し, 平均大動脈圧が拍動流肺循環時と等しくなるよう遠心ポンプのバイパス流量を設定した。この実験モデルにおいて, ポンプ交換前から交換後2週間目までの平均肺動脈圧, 肺血管抵抗係数, 動脈血ガス, 血中アンギオテンシン転換酵素濃度, 肺血流量分布(Colored Micro-sphere法)および肺の組織学的変化について検討した。ポンプ交換後2週間目までの検討では, いずれのパラメータも交換前と比較して有意な変化を認めなかった。以上より無拍動流肺循環は, 肺循環動態および肺機能に影響をおよぼさないと考える。
  • 薗部 太郎, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 松澤 浩, 永沼 滋, 柿沼 義人, 秋保 洋, 井筒 憲司, 菅原 重生, 田中 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 464-471
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    定常流に対する拍動流の優位性は灌流量によって差があり、低灌流量においては末梢血管抵抗の減少、主要臓器血流量の増加などといった拍動流の効果が失われると言われている。拍動流の効果が流れを構成する各周波数成分と生体血管の周波数特性の相互関係において生ずるものと仮定すると、流れの周波数成分を変化させれば低灌流量においても前述の効果を得られる可能性がある。本研究では低灌流量条件の完全左心バイパス実験に、電磁駆動振動流ポンプ(VEMP)の心拍数より高い基本周波数成分を持つ高頻度振動流を用いて拍動流と比較検討した。その結果、低灌流量条件における高頻度振動流下では末梢血管抵抗や頸動脈流量、鎖骨下動脈流量が駆動周波数に依存して変動した。特に頸動脈流量は7Hzと15Hzの高頻度振動流下において拍動流の場合より有意に増加した。従って低灌流条件では流れの周波数成分によって末梢血管抵抗や臓器血流量が変動することが判明した。
  • 三浦 誠, 佐藤 尚, 毛利 平, 山家 智之, 仁田 新一, 小林 英樹, 竹田 宏, 吉澤 誠
    1992 年 21 巻 2 号 p. 472-476
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓の駆動時には、循環動態のモニタや異常の検出が迅速かつ連続的に行なわれる必要がある。我々は、左心補助人工心臓(LVAD)の拍出時間区間にパラメータ推定によって拍出流量を入力、大動脈圧を出力として2要素windkesselモデルで表わした血管系のシステム同定を行い、ついで自然心の拍出時間区間で入出力関係を逆にしてリアルタイムで連続的な自然心拍出流量の推定を行なう方法を開発した。動物実験では心拍出量を急速な容量負荷によって変動させ、推定値と実測値を比較検討した。推定された流量波形は、実測と比較しやや振動がみられるものの、LVAD駆動のタイミングを心電図R波より約50%遅れとすること、モデルにパラメータとして電圧減を附加し、さらに流量と圧測定の間に存在する時間遅れを考慮することにより、流量波形の積分値として得られる一回拍出量は実測値ときわめて良好な相関を示した。
  • 片平 美明, 仁田 新一, 山家 智之, 和泉 恭一郎, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 柿沼 義人, 松澤 浩, 井筒 憲司, 佐藤 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 477-483
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓(VAD)による循環補助が、自律神経活動に及ぼす影響を把握するために、圧受容体に直接影響を与える大動脈圧と心拍変動の相関スペクトルを解析、検討した。その結果、非同期駆動、同期駆動を問わず、0.1および0.3Hzを中心とする心拍変動に対する大動脈圧の高い相関を認めた。特に、収縮期圧、脈圧については、すべての駆動条件下で極めて高い相関を示し、収縮期圧、脈圧の情報が自律神経中枢に伝達され、心拍変動の発生に関わっている可能性が示唆された。同時に解析した体血管抵抗の変動の解析では、心拍変動、大動脈圧と高い相関を持つ0.05Hzを中心としたスペクトルのピークのみが認められた。今後さらに検討が必要であるが、心拍変動と大動脈圧の相関スペクトルの解析が、VAD駆動下の、自律神経系を介した心拍変動の発生メカニズムを明らかにする可能性を持つことが示唆されたと考えられる。
  • 佐々木 栄作, 中谷 武嗣, 妙中 義之, 穴井 博文, 広瀬 一, 高野 久輝
    1992 年 21 巻 2 号 p. 484-488
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在、臨床応用されている空気圧駆動ダイアフラム型人工心臓のポンプ内血液量をリアルタイムで計測するシステムを開発した。本システムはポンプ血液室両端に設置した電極間の電気インピーダンス(Z)が、ポンプ内血液量により変化することを利用する。国循型補助人工心臓の流入、流出側の金属コネクタを電極として使用し、この間に50kHz、0.4mAの電流を通電し、Z値を計測した。基礎実験より求めたZとポンプ内血液量の関係式は、種々の血液電気伝導率下で高い相関を示した(r>0.99)。模擬循環回路と山羊を用いた動物実験における検討で、本法による拍出量計測値と電磁流量計による計測値は良い直線相関を示した(r=0.98、p<0.01)。さらに8週間を越える動物実験の期間中、電極の変化等を生じず安定して計測し得た。またfull-fill to full-empty駆動にも適用できた。本法はポンプの駆動状態や拍出量のリアルタイムでの把握に有用で、実用上充分な信頼性を示した。
  • 山家 智之, 仁田 新一, 片平 美明, 薗部 太郎, 永沼 滋, 松澤 浩, 秋保 洋, 桁召 義人, 井筒 憲司, 菅原 重生, 田中 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 489-495
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全人工心臓(TAH)の神経生理学的な最適駆動条件について検討するため、交感神経活動電位を直接計測して検討を加えた。自然心臓動物とTAH動物の交感神経活動を比較するためTAHは両心バイパス方式とした。雑種成犬を用い、静脈麻酔下に補助人工心臓を、両心バイパス方式に装着し、血行動態及び交感神経活動電位を記録した。圧受容体反射系における各周波数成分の伝達特性について検討を加えるため、関連度関数の手法を用いて動脈圧とRSNAのコヒーレンスを求めた。TAHの分時拍動数を変更したところ、心室細動以前の自然心の心拍数でTAHを駆動した時に最も大きなコヒーレンスが認められた。この結果は圧反射系がこの周波数帯域のリズム成分を伝達するようにsettingされていることを示すものと推測され、従ってこのTAH分時拍動数が、圧受容体反射系にとっての最適値になるものと推測された。
  • 福永 信太郎, 浜中 喜晴, 末田 泰二郎, 松島 毅, 村上 博宣, 渡橋 和政, 林 載鳳, 大野 祥生, 伊藤 孝, 松浦 雄一郎
    1992 年 21 巻 2 号 p. 496-501
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    これまでに製作した人工心臓について、その性能を比較検討した。ブラシレスモータ、ハーモニックドライブ減速機、円筒カムを用いるもの、超音波モータとクランク機構を用いるもの、ウオームギヤあるいはギヤヘツドとブラシレスモータにリンク機構を用いるものとの三機種である。血液ポンプはバイオマで製作し、形状はプツシヤにあわせて円筒型および凸レンズ型の二通り製作した。超音波モータは低速高トルク回転を特徴とするが、テストの結果現状の超音波モータでは人工心臓駆動に十分なトルクが得られないことがわかつた。円筒カムではカムフオロワに磨耗がみられた。クランク機構と円筒カムではプツシヤの運動が直線往復運動になり、リンク機構では円弧状の往復運動になつた。アクチユエータとしては40~150rpmで運転できる15W程度の強力で小型のモータが必要であつた。
  • 湯澤 安宏, 増澤 俊也, 越地 耕二, 周 英明, 宇都宮 敏男, 丹羽 真一郎, 増澤 徹, 妙中 義之, 高野 久輝
    1992 年 21 巻 2 号 p. 502-506
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    埋め込み型人工心臓の駆動エネルギーの供給方法としては、体外から経皮的に電磁エネルギーの形で伝送するのが最も有力である。エネルギーの伝送は、皮膚を介して置かれた2つのコイル間の電磁誘導作用を利用している。しかし、体動等によるコイルの位置ずれなどがエネルギーの伝送量や効率に影響を与える。体外結合型経皮コイルシステムは、体内コイルの一部が皮膚で覆われた状態でアーチ状に体外に突き出し、その半円形空孔の部分に体外コイルを密着させて巻きつけたコアを挿入し結合させる方式である。この方式は体動に対して安定でかつ大きな結合が得られるのが特長である。In vitroでの測定の結果、エネルギー伝送効率は5~50Ωの負荷変化に対して平均79% (DC to DC)を得た。また、体動等に対して無調整で使用することが可能であり、位置ズレに対する効率の低下は1%以下である。従来の空芯笠型コイルなどに較べてコイルの位置ずれに強く、アライメントをせずに使用することができることが確認できた。
  • 壁井 信之, 飯田 浩道, 菅野 亮, 桜井 靖久, 土屋 喜一
    1992 年 21 巻 2 号 p. 507-513
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    植え込み用の揺動円板型遠心ポンプの流体力学的特性検討, および人工心臓としての開発の成否を決定する大きな要因となるシール部の耐久性に関する材料力学的検討を行うことを目的とした.
    流体力学的検討では, ポンプ出口幅も流入口径も従来より狭くなるほど, ポンプ出力特性曲線は立つようになり最高圧力は上昇し, 最大流量は低下した. それにより人工心臓とし使用する範囲内では出力特性が向上し, 流入口径12mm, 出口幅5mmで最高の出力が得られた. 材料力学的検討ではシール部の最大応力の発生部位は, 引張, 圧縮ともシール形状によらず揺動軸の固定部であること, また, 本ポンプは揺動軸の回転方向の動きをシール膜により抑える構造となっているが, そのために生じる応力は全体の20%の大きさとなり, 当初問題としていたほど大きくないこと, さらにポンプ内圧による影響は1%と低く無視できることなどが分かつた.
  • 水口 一三, 西岡 彰宏, 曲 波, 河内 寛治, 谷口 繁樹, 原 文彦, 北村 惣一郎
    1992 年 21 巻 2 号 p. 514-519
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    広背筋を使用したcardiomyoplastyにおいてpreconditioningや不全心に対する長期補助効果を検討する目的で小型(大きさ115×60×23mm, 重さ197g)の刺激装置を作成した。今回は本装置の機能試験を行うために雑種成犬7頭を用いて左広背筋で健常心にcardiomyoplastyを行い, その心補助効果を検討した。測定項目は駆動前後の動脈収縮期圧(AP-S)・拡張期圧(AP-D)・平均圧(AP-M), 肺動脈収縮期圧(PAP-S)・拡張期圧(PAP-D)・平均圧(PAP-M), 肺動脈楔入圧(PCWP), 右心房圧(RAP), 心拍出係数(CI), 心拍数(HR)である。本装置のテタヌス刺激による広背筋の収縮は良好で, 心臓との同期収縮にも問題なかった。測定結果をpaired wilcoxon法で検定し, p<0.05をもって有意差があると判定したところ, AP-S・-D・-M, PAP-S・-D・-M, PCWP, RAP, CI, HRのいずれもが有意に上昇あるいは増加した。今回作成した小型刺激装置は動物実験用として充分小さく, また広背筋によるcardiomyoplastyを目的とした使用にも耐え得るものであった。
  • ―骨格筋による心機能補助の基礎的研究―
    矢野 善己, 磯田 晋, 神 康之, 小菅 宇之, 山崎 一也, 石井 正徳, 鈴木 伸一, 星野 和実, 梶原 博一, 井元 清隆, 近藤 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 520-523
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    骨格筋による心機能補助(Cardiomyoplasty)では, 主として有茎広背筋で心を直接wrappingする方法(Dynamic cardiomyoplasty)が用いられている。広背筋グラフトを作製する際には胸背動脈を温存し, 肋間動脈・腰動脈の分枝はすべて切離する。我々は胸背動脈のみでグラフト全体の血流が維持され得るかどうかを検討した。血管造影剤を動脈に注入した解剖実習用遺体3体の広背筋を用い, 軟線撮影により動脈造影像を得た。動脈走行より胸背動脈・肋間動脈・腰動脈を鑑別し吻合の有無を調べた。各動脈の支配領域をプラニメーターで計測して広背筋総面積に対する各々の面積比を測定した。造影所見上胸背動脈と肋間動脈との間には吻合を認めたが, 胸背動脈・肋間動脈と腰動脈との間には吻合を認めなかった。胸背動脈の支配領域は広背筋の停止側約25%, 吻合を持った肋間動脈領域を合わせると約50%であり, 残り50%の領域の血流の維持は不十分と考えられた。
  • 後藤 昌弘, 中谷 武嗣, 榊 雅之, 妙中 義之, 巽 英介, 赤城 治彦, 増澤 徹, 佐々木 栄作, 馬場 雄造, 松尾 義昭, 井上 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 524-527
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Cardiomyoplasty法(CMP)の左心補助効果について, 左室圧-容積関係を用い実験的検討を行った. 左側広背筋(LDM)に電気的トレーニングを行った正常心の成山羊5頭を用い実験を施行した. 左第5肋骨床開胸後, 心尖部よりvolume conductance catheterおよびcatheter-tip pressure transducerを左室に挿入し, 左室圧-容積曲線を描出させた. LDMを時計回りに心室の全周性に縫着し, CMPを行った. 圧-容積曲線群から, 左室のEes(左室収縮末期圧-容積関係)を求め, LDMの刺激による変化を検討した. また, 左室の拡張末期圧, 収縮末期圧, 一回拍出量, 拡張末期容積について同様の検討を行った. 今回の検討では, 左室圧-容積関係は, CMP時の左室機能の評価およびwrapping時の拡張障害回避に有用であったが, Eesおよびその他の測定項目においてCMPの明らかな左心補助効果を認めなかった. この結果より, 正常心成山羊を用いた急性実験ではCMPの左心補助の有効性を認めなかった.
  • 竹村 博文, 榊原 直樹, 渡辺 剛, 手取 屋岳夫, 川筋 道雄, 三崎 拓郎, 渡辺 洋宇
    1992 年 21 巻 2 号 p. 528-532
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬5頭を用いて右室自由壁梗塞を作成し、左広背筋を用い右心室Cardiomyoplastyを行い、その後6ヵ月間耐疲労性獲得のためにpreconditioningした。6ヵ月後、自己心拍に対し2:1で広背筋をburst刺激し血行動態の変化を検討した。骨格筋駆動により左室圧、右室圧、心拍出量、右室仕事量は有意に上昇し右室補助効果を認めた。左室拡張期末期圧、右室拡張末期圧、中心静脈圧は低下傾向を示した。また骨格筋の長時間連続駆動による左室圧と右室圧の変化の検討では骨格筋駆動による血行動態の改善効果は4時間まで変わらず認められ、骨格筋も良好に収縮した。組織学的には右室自由壁心筋の菲薄化と空胞壊死ならびに繊維化を認めた。また広背筋に筋萎縮、筋細胞壊死などの所見は認めなかった。右室自由壁Cardiomyoplastyの臨床応用の可能性が示された。
  • 薦田 烈, 宇山 親雄, 前田 肇, 佐能 量雄
    1992 年 21 巻 2 号 p. 533-540
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓接続部位の評価を目的として、核磁気共鳴四腔断像をもとに房室弁輪の3次元再構築を行ってきたが、さらに胸郭との関係を明らかにするために、脊柱管を基準にした座標系の設定を行った。この座標系では、脊柱管に沿って頭側にZ軸、前方に向けてY軸を設定した。弁輪を通る平面について、X-Y平面とつくる交線がX軸となす角をα、X-Z平面とつくる交線がZ軸となす角をβ、前胸壁となす角をγとした。4人の正常被検者において、僧帽弁輪(MVA)・三尖弁輪(TVA)について、心収縮初期における値を求めたが、以下に示す範囲にあった。即ち、α-MVA: 20.5-39.5度、α-TVA: 26.1-43.5度、β-MVA: 4.7-49.4度、β-TVA: 4.4-40.9度、γ-TVA: 35.2-44.1度であった。
    人工心臓を埋め込む空間を考える場合は、心横隔面を基準にして胸壁や房室弁輪を表すことで、考察が容易となることが示唆された。今後、新たに座標系を心横隔面に設定した上で検討を行いたい。
  • ―特にJellyfish弁近傍の流れについて―
    松澤 浩, 仁田 新一, 片平 美明, 山家 智之, 薗部 太郎, 永沼 滋, 秋保 洋, 柿沼 義人, 井筒 憲司, 菅原 重生, 田中 ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 541-545
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々の開発した電磁駆動式人工心臓(Vibrating Electro Magnetic Pump: VEMP)は、ソレノイドにより振動管が振動し液体の駆出力を発生するという極めて特徴的な動作原理を持つ。今回VEMPに井街らの開発したJellyfish弁(以下JF弁)を装着したシステムを用い、固体トレーサー法にて弁室内部およびJF弁近傍の流れ、弁自身の動作を可視化することにより、その流線および動作様式の定性的な分析・評価を行なった。実験より、弁室内部には大きな旋回流が発生し弁室壁およびJF弁が効果的にwash outされ、血栓形成が低く押えられているものであることが予想された。またJF弁を用いることにより溶血性の低下も考えられた。弁の連続写真からは特徴的な動作様式が確認された。
    これらの結果より、JF弁を装着したVEMPは、人工心臓として有用性が高いと考えた。
  • 岸田 晶夫, 松田 武久, 中谷 武嗣, 後藤 昌弘, 榊 雅之, 高野 久輝
    1992 年 21 巻 2 号 p. 546-551
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々はトレーニングされた骨格筋の電気刺激による収縮力と、自己の組織と細胞で構築された人工心室から構成されるバイオメカニカルポンプシステムの開発を進めている。これは骨格筋を外側に、ハイブリッド人工心内膜を内側に有する二層構造体である。本研究では、バイオメカニカルポンプの構成要素である人工心内膜の設計概念を提出し、人工心内膜用構造支持体としてのセグメント化ポリウレタン多孔質膜を試作した。また、コラーゲン溶液に微小血管片を分散してゲル化させ、これを培養して経時的に光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡により観察し、in vitroでの組織再構築の過程を観察した。その結果、21日目までに組織片から細胞が遊走し、ゲル表面では内皮細胞様の細胞による血管内膜様構造が、またゲル内部では平滑筋細胞様の細胞による配向形態がそれぞれ観察された。以上より、本システムはハイブリッド人工心内膜の構築技術として適当であると考えられた。
  • 佐藤 尚司, 桜井 温, 平石 泰三, 大畑 俊裕, 筆本 由幸, 小林 亨, 市毛 紀行
    1992 年 21 巻 2 号 p. 552-555
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心ポンプを用いた補助循環はset upの容易さや, 操作の簡便性より臨床例が増加してきている。しかし, 遠心ポンプを用いた補助循環においては専用に開発されたカニューレはなく拍動型補助人工心臓や一般体外循環用の送脱血カニューレを流用しているのが現状である。今回遠心ポンプを用いた補助循環での使用を目的とした送脱血カニューレを日本ゼオン社の協力に製作した。送脱血カニューレは抗血栓性で内径6mmであり, 臨床例においてBio-pump (BP-80)の回転数1500-2750RPMの範囲で1.3-4.2L/minの流量が得られた。小口径の本カニューレを使用することにより, 4L/min前後の高流量域のみならず, 2L/min前後の低流量域でも安定した流量維持が可能であった。より迅速な補助循環への導入, 安定した流量維持が可能となり, 今後補助循環における成績の向上に有用であると考えられた。
  • 矢野 光洋, 荒木 賢二, 矢野 裕士, 中村 都英, 鬼塚 敏男, 古賀 保範
    1992 年 21 巻 2 号 p. 556-560
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    開胸を要しない右心補助の方法を考案し、その可能性と有効性について雑種成犬を用いた急性期実験を行って検討した。右心補助は頚静脈より挿入した脱血管にて右房より脱血し、大腿静脈から肺動脈まで挿入した送血管によって肺動脈へ送血することにより、全て末梢静脈からのアプローチにて行った。血液ポンプには遠心ポンプを使用した。送血管の挿入に際しては、スワン-ガンツカテーテルをガイドに、圧モニターのみで肺動脈まで誘導する方法を考案した。本法に、拍動型補助人工心臓による左心補助を併用して両心補助とし、心室細動下に上行大動脈を30分間遮断して両心不全を作成した。心不全作成後、左心補助のみ行った場合に比べ、本法を併用した場合では、心拍出量は平均50.4%上昇、平均大動脈圧は28.8%上昇し、良好な体循環を維持できた。また、軽度の肺動脈逆流を生じた場合も、右室収縮期圧および拡張末期圧は有意に低下した。
  • 木島 利彦, 堀内 邦雄, 押山 広明, 野川 淳彦, 深沢 弘道, 天野 暢彦, 島根 博
    1992 年 21 巻 2 号 p. 561-566
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮的V-Aバイパス(Percutaneous V-A Bypass)のためのマグネットカップリング型遠心ポンプを開発し、IN VITRO及びEX VIVOの評価を行った。開発した遠心ポンプは、カップリングマグネットを内蔵する外径78mmの回転円盤を使用し、回転円盤の6本の血液通路はほぼ直線状とした。この様な形状とすることで、プライミングボリュームは46ccと小容量ながら、回転数2500rpmで約560mmHgの吐出圧が得られた。また、200mmHgの陰圧に対してもガスキャビテーションの発達は見られなかった。400mmHg 3L/minの条件で、牛新鮮血を用いた溶血比較試験を実施したところ、製作したポンプの遊離ヘモグロビン値は、従来のコーン型遠心ポンプより約30%低い値を示した。試作したポンプにより、成犬を用いた29時間のV-Aバイパス(ポンプ回転数1430rpm, 循環流量1.4±0.4L/min)を実施したが、ポンプ内に血栓は見られなかった。
  • 山崎 健一, 岡本 英治, 山本 克之, 三田村 好矩, 四津 良平, 田中 隆
    1992 年 21 巻 2 号 p. 567-571
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心臓弁位置に埋め込まれ循環を行う, 無拍動性の軸流型血液ポンプ(Valvo-Pump)を開発した. Valvo-Pumpは円筒形のハウジング内に収められたインペラと小型モータで構成される. インペラには外径22mmの5枚羽根のものを用いた. インペラは小型DCブテシレスモータ(外径21.3mm, 長さ24.9mm, サマリウムコバルト希土類磁石をロータに使用)に接続した. 回転軸まわりのシールには液体用に開発された磁性流体シールを用いた. 模擬循環回路を用いた特性試験により, 差圧7.7kPa(58mmHg)に対して流量16.1L/minが得られ, 差圧18.4kPa(138mmHg)に対して流量5.0L/minが得られた. 磁性流体シールは, 回転数9000RPMのとき, 29.3kPa(220mmHg)以上の耐圧性能が認められた.
  • 高浜 龍彦, 金井 福栄, 大西 清, 平石 守, 山崎 善弥, 成瀬 好洋, 金子 幸裕, 古瀬 彰, 吉竹 毅
    1992 年 21 巻 2 号 p. 572-574
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助人工心臓(LVAD)による補助循環はその強力な循環補助効果により、従来救命困難であった重症心不全の治療に成果をあげているが、出血、血栓形成による合併症は感染と並んで未だ未解決の問題として残っている。LVAD施行に際する抗凝固療法としては、ヘパリン投与、PROTEASE INHIBITOR投与などが行なわれているが、血栓形成の防止という観点から、ウロキナーゼを推奨する意見がある。
    ウロキナーゼの血栓防止作用は、そのプラスミン増生作用による線溶亢進にある。このウロキナーゼ投与の血液凝固線溶系に及ぼす効果をPROTEASE INHIBITORと比較検討し問題点を明らかにした。
    ウロキナーゼ単独投与は、血栓形成は防止するものの、フィブリノーゲンの著明な減少、α2-プラスミンインヒビターの有意な減少を招き、血液凝固系の賦活化の抑制作用に欠け、適切な抗凝固療法とはいえないことが明らかとなった。
  • 杉木 実, 村上 新, 湖東 慶樹, 高道 昭一, 上山 武史
    1992 年 21 巻 2 号 p. 575-580
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心バイパスに際し、血球の損傷防止対策としてeicosapentaenoic acidを利用することを考案し、実験的検討を行った。実験は、1)閉鎖回路実験と2)雑種成犬を用いて遠心ポンプ使用下の左心バイパス実験を施行した。各々に、eicosapentaenoic acid ethyl emulsion(以下EPA-Eと略記)を静脈内投与する群と、しない群とを設定し、経時的採血を行い、赤血球凝集能と、遊離Hb、ヘマトクリット、血小板数等を測定するとともに、イヌでは回路内血流量、時間尿の測定を行った。その結果1)短絡回路実験においては、EPA-Eにおける有意差は認められなかった。2)イヌ左心バイパス実験では、赤血球凝集能は、EPA-E投与群は非投与群に較べ有意に低値を維持し、赤血球凝集の抑制が認められた。また遊離Hb、血小板数、などもEPA-E投与群において変動が少なかった。また時間尿については、バイパス開始後にも変動が少ないのみならず、大動脈遮断解除後の回復が速やかであった。
  • 福村 文雄, 富永 隆治, 中島 淳博, 栗栖 和宏, 鶴原 由一, 久原 学, 鐘ヶ江 靖夫, 白石 公徳, 安井 久喬, 徳永 皓一
    1992 年 21 巻 2 号 p. 581-583
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    補助循環施行時の左室内血栓形成は, 全身性の血栓塞栓症を引き起こす極めて危険な合併症である. 我々は開心術後補助循環を施行した16例中, 左室内血栓を合併した3症例について検討を加えた. 1例は国循型LVASを用い, heparin間欠投与でACT 150秒前後とし, 2例は遠心ポンプと膜型人工肺によるV-A bypassを行い, heparin及びFUTの持続投与を施行したが左室内血栓を防げなかった. 補助循環中の左室内血栓には, 人工弁, パッチなどの人工物使用, 高度の左心機能低下による血流停滞が大きな要因と考えられた. 左房内または左室内へのlocal heparinization, 及び自己心の拍出促進が予防に肝要であると考えられた. また心エコーによる経時的観察が有用であると考えられた.
  • 安永 弘, 青柳 成明, 鈴木 重光, 溝口 照章, 平野 顕夫, 山下 正康, 熊手 宗隆, 原 洋, 小須賀 健一, 大石 喜六
    1992 年 21 巻 2 号 p. 584-587
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体弁を用いた人工弁置換例症例では、術後経過年数と伴に弁機能不全による再弁置換が必要とされる症例が増加し、慎重なfollow-up必要となることが知られている。今回我々は、僧帽弁位生体弁置換症例に対し再弁置換時期を知る目的で1988年3月から1991年6月まで当科外来にて心エコードプラー法にてfollow-up行ない得た僧帽弁位生体弁置換例15症例(n=52)と、その期間にPTF発生により再弁置換を行なった憎帽弁位生体弁置換症例の術前心エコー値(n=15)の比較検討を行なった。再弁置換を必要とされた症例の生体弁のドプラー血流波形のpeak-flow値は1.95m/s以上に分布した。Peak-flow値が1.95m/sec以上をしめす症例ではPTFにより弁機能の劣化が進行していると考えられ慎重なfollow-upが必要と考えられた。
  • ―10年以上の遠隔予後―
    川内 義人, 富永 隆治, 松崎 浩史, 坂本 真人, 河野 博之, 中島 淳博, 久原 学, 安井 久喬, 徳永 皓一
    1992 年 21 巻 2 号 p. 588-591
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1975年2月から1981年8月までに19例にHancock豚大動脈弁で三尖弁置換を施行し, 平均9.0±4.6年追跡した. 年齢は34.8±13.0歳, 15歳以下の小児が3例あった. 9歳男児の1例が40ヵ月でprimary tissue failure (PTF)をおこしたが, 成人例16例には平均104±53ヵ月間にPTFはなく, PTF非発生率は10年で94±6%であった. 三尖弁位Hancock弁に関連した合併症は5例(血栓弁・脳出血・PTF・人工弁心内膜炎・弁周囲逆流)に発生し, その非発生率は10年で78±10%であった. 18個のHancock弁を摘出し, このうち左心系弁位と三尖弁位から移植後平均136±25ヵ月間に同一の患者から5対摘出されたが, 三尖弁位のほうでPTFが有意に少なかった(p<0.03). 三尖弁位Hancock弁では抗凝血薬療法は不要であり, 人工弁関連合併症は少なく, 成人ばかりでなく小児例でも耐久性に優れているという結果が示された. これらは三尖弁位での生体弁使用の利点を示しているものと考える.
  • 猪狩 次雄, 岩谷 文夫, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 佐戸川 弘之, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 小野 隆志, 高瀬 信弥, ...
    1992 年 21 巻 2 号 p. 592-595
    発行日: 1992/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Medtronic Hall弁(MH弁)を1982年以降の約8年間に117例に126個使用した。117例中102例は初回弁置換術に、15例は再弁置換術に使用した。初回手術の102例中早期死は10例、9.8%であり、遠隔死は4例、3.9%であった。再手術は5例で代用弁感染性心内膜炎、血栓弁、open stuck, closed stuckなどであった。再弁置換手術の15例では6例が早期死で、遠隔死も1例あった。塞栓症は初回例に4例認め、全例脳血管で、1例に視野欠損を残した。アンケート調査は73%の回答率で、St. Jude Medical弁(SJM弁)使用の回答と対比した。手術の結果に満足は62.5%(SJM弁使用は66.7%)であった。手術後の就労状況は66.2%で手術前より軽労働化していた。塞栓症に関する調査では医師の診断症例数よりも多くなっていた。スポーツ参加はMH弁SJM弁ともに20%であった。MH弁は比較的良い遠隔期の成績を示していた。
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