ストローマフリーヘモグロビン(SFH)をアロステリックエフェクターとともにリポソームにカプセル化したネオレッドセル(NRC)は, 生理条件下において十分な機能を有した人工酸素運搬体である. 家兎に対して潟血, 代用血漿投与を行い出血ショックモデル家兎(Hb濃度=1.6g/dl, Hct=5.0%)を作製した. この家兎に対してNRC(Hb濃度=6g/dl, P
50=44mmHg)を40ml/kg投与し, 85%以上の血液をNRCと置換した. その結果, NRC投与後4~5時間で出血ショックからの回復が観察され, 20時間以上にわたり状態は安定していた. また, 心拍出量は血液交換後若干増加するが(0.6~0.8l/min), その後は安定しており, 心機能も20時間以上にわたり正常に保たれた. 酸素運搬速度(OTR)は, 交換直後で10.5ml/minで, その後は20時間以上安定していた. 兎は血液交換後特に呼吸等のサポートを行わずにそのまま正常に生存し, 6ヵ月以上にわたり犠牲死させるまで生存を続けた. 高度血液交換においてNRCの酸素運搬力の半減期は約48時間と見積もられたが, 24時間後には自己の赤血球の回復がみられ, さらに赤血球は2週間で完全に回復し, 兎はNRCの酸素運搬によらず生存可能となった. また, 血液交換後, 犠牲死させた家兎による, 組織病理学的検索から, 肝臓のKupffer細胞および脾臓のマクロファージにおいてNRCの貪食像が観察されるほかは, 特に毒性的な変化は見られず, NRCの重要臓器に対する毒性も低いことが確認された. これらの結果より, NRCは安全性の高い有効な酸素運搬体であることがわかった.
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