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矢田 公
1995 年24 巻3 号 p.
629
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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猿橋 誠, 渡辺 秀樹, 佐々木 正富
1995 年24 巻3 号 p.
631-636
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
中空糸内表面に抗酸化作用を有するビタミンEを固定化したビタミンE改質セルロース膜は、セルロース膜の透析性能及び合成膜の生体適合性を有し、さらにはビタミンEの生理活性作用を保持した透析膜である。本研究では、ビタミンE改質セルロース膜の生体適合性評価を、血小板・凝固系、白血球接着分子、膜付着蛋白及び過酸化脂質について検討した。in vitroにおける血小板拡張能試験、接触相活性化試験、白血球接着分子(CDllb、CDllc)はいずれも軽度の活性化に抑えられていた。また、臨床使用後の膜付着蛋白量は、セルロース膜の1/2以下であり、フィブリノーゲンの付着もほとんど認められなかった。in vitroによる過酸化脂質への影響は、ビタミンE改質セルロース膜にのみ著明な減少が認められた。以上から、ビタミンE改質セルロース膜は、優れた生体適合性を示し、また、抗酸化作用は他の透析膜にはみられない、ビタミンE改質セルロース膜に特有な性質であることが確認された。
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佐藤 宜伯, 森本 嘉純, 伊藤 克佳, 西堀 英城, 雨宮 均, 奥山 寛, 小林 力, 秋澤 忠男, 出浦 照國
1995 年24 巻3 号 p.
637-642
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
セルロースジアセテート(CA)を膜素材としたAltrex膜は、Duo-fluxに用いられたCA膜の孔半径を50Åから70~80Åに拡大し、膜厚を40μmから30μmに菲薄化している。本膜よりなるH-150X透析器について、溶質除去性能生体適合性をポリスルホン膜透析器(PS-1.6UW)を対照に、長期透析患者6名で4週間のクロスオーバー試験にて検討した。小分子量物質の除去性能に両透析器間で差は認められず、低分子タンパクではβ2-MGのクリアランス、除去率、SCでPS-1.6UWが有意の高値を示した。一方Myo、α1-MGの除去率、SCにおいてはH-150Xで有意の高値を示したが、これら低分子タンパクの透析液中への除去量に両透析器間で差はなかった。UFRの経時的低下はH-150Xで軽度であった。治療中の活性化補体の上昇はH-150Xで高度であったが、白血球、血小板、顆粒球エラスターゼの変動は両透析器間で差は認められなかった。以上よりH-150Xはより分子量の大きい低分子蛋白領域に高い除去性能をもっ透析器といえる。
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内藤 秀宗, 宮崎 哲夫, 藤森 明, 田熊 淑男, 鈴禾 正司, 秋澤 忠男, 友 雅司, 松本 賢, 小島 弘栄, 似鳥 嘉昭
1995 年24 巻3 号 p.
643-648
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
今回、新しく開発されたAPS-16(旭メディカル社製)を慢性透析患者20症例に使用した。
臨床使用の結果では、小分子物質の除去は従来のポリスルホン膜と変わらなかったが、β2-MGを含む1~3万ダルトン領域の中高分子物質除去能に優れた性能を発揮した。このことは濾液のSDS-PAGE結果よりも明らかであった。また、白血球変動や補体活性などは少なく、生体適合性にも優れていた。SEM観察や共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡観察の膜付着蛋白は、軽度であった。
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吉武 理, 水口 潤, 川島 周
1995 年24 巻3 号 p.
649-653
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
長期透析患者にみられる、アミロイド骨関節症をはじめとした透析合併症の進展に、サイトカインの関与する可能性が示唆されている。今回血中濃度の測定が可能であるM-CSFと透析膜素材について検討した。対象は健常者(I群)10例、保存期腎不全患者(II群)6例、CAPD患者(III群)5例、血液透析患者(IV群)264例とした。II群、III群、IV群の血中M-CSF濃度はI群の血中濃度に比べてあきらかに高値を示した。透析膜素材別に血中M-CSF濃度を見ると、銅アンモニウムレーヨン膜、酢酸セルロース膜、ヘモファン膜に比べ、テルモSS膜使用例で有意な上昇が認められた。血液透析前後での血中M-CSF濃度の変化をみるとPMMA膜およびヘモファン膜に比較して銅アンモニウムレーヨン膜で有意な上昇がみられた。またハイパフォーマンスメンブレンを使用することにより、血中M-CSF濃度は低下した。
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山下 明泰, 熊野 和雄, 酒井 糾, 中西 光, J.W. MONCRIEF, R.P. POPOVICH
1995 年24 巻3 号 p.
654-658
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
腹膜での溶質の移動速度について、家兎、小型犬、大型犬を用いた
in vivo実験を行い、ヒトの結果と比較した。溶質移動速度の指標となる腹膜ダイアリザンスの値は、実験動物の体重のべき乗で表現できた。また腹膜血流量のラット、家兎およびヒトにおける文献値、犬における推定値と、腹膜ダイアリザンスとを比較することにより、ラットや家兎のような小動物では腹膜血流量は十分に大きく、物質移動は腹膜自身の抵抗に支配されるものと思われた。これに対して体重が大きな大型犬やヒトでは、腹膜の有効血流量は十分に大きいとはいえず、腹膜での物質移動には血流量が影響を与えると思われた。
家兎壁側腹膜の
in vitro透過実験より、家兎腹膜の透過特性は市販の血液透析膜などより、遥かに優れていると思われた。
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熊野 和雄, 呉 幹純, 何 寧, 酒井 糾
1995 年24 巻3 号 p.
659-663
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
腹膜透析においてリンパ、および非リンパ系の腹腔内水分吸収率を種々の実験モデルを用いて棟討し、これらの関与の割り合い、臓器部位によるそれらの関与の違いについて調べた。横隔膜・肝癒着術、腸管摘出術、両手術併用、無処理の4群ラット(各6匹)に5%ウシアルブミン(BSA)添加Krebs Ripger液にて180分の透析を行った。tracer(
125I-BSA)の透析液よりの消失率から腹膜総水分吸収率(PNFAR)、血中への出現率よりリンパ吸収率(LAR)を数理式を用いて求めた。PNFARは平均36μl/min、LARは7.7μl/minであり、両者の間には大きな差があった。即ち、PNFARの78%は非リンパ系吸収であり、これには腹壁、腸管(特に前者)の関与が大であり、横隔膜の関与は非常に小さかった。LARは55%が横隔膜下で、23%が腸管で、9%が腹壁で行われていた。今回のラットモデルは腹腔内の水分、溶質の移動を詳細に部位別に検討するのに適したモデルと思われた。
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佐々木 淳, 峰島 三千男, 金子 岩和, 佐中 孜, 阿岸 鉄三, 太田 和夫, 小野 信行, 今村 和夫, 酒井 清孝
1995 年24 巻3 号 p.
664-669
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
One Bag方式のPush/Pull HDF (P/P HDF)における溶質除去特性を水溶液系実験および理論解析を通じ明らかにし、最適操作条件の確立を目的とした。定常状態のpush phase、pull phaseでの濾過流量(QPull、QPush)とクリアランス(CL)の関係を求めた結果、myoglobinではQPullの増加に伴いCLは急激に増加し、QPushの増加に伴い緩やかに減少した。ureaでは逆の、vitamin B12では両者の中間的な傾向を示した。時間平均クリアランス(CLav)はureaで若干HDが、myoglobinでP/P HDFが高値を示した。さらに、浄化器内物質移動非定常モデルを用い検討した結果、非定常の影響によりmyoglobinのCLはpush phaseで負の値を有することが明らかとなった。本モデルを用いmyoglobin除去に関して最適操作条件を検討した結果、QPull、QPushおよびBag容量が大きいほどCLavが上昇することが明らかとなったが、現実的には患者血流量など安全面でのかねあいで設定されるものと思われた。
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峰島 三千男, 星野 敏久, 寺岡 慧, 阿岸 鉄三, 太田 和夫
1995 年24 巻3 号 p.
670-675
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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エンドトキシンフィルタの開発等浄水化技術の進展により未滅菌透析液を置換液として使用する大量濾過HF, HDFが臨床応用されるに至っている。本研究ではこれら治療法の溶質除去特性の解明, とくに除去効率に及ぼす希釈方式, 濾液流量の影響を明らかにすることを目的とした。水溶液実験ならびに臨床を通じ検討した結果, 以下の結論が得られた。(1) HFにおけるクリアランス
(CL)は濾液流量で
(QF)とふるい係数の積に等しい。(2)同じ
QFのHFでは, Post-dMon法(Post法)の方がPre-dilution法(Pre法)よりも高い
CLをもつが, 前者は患者血流量に強く規定されるのに対し, 後者は理論的には無限に増大させることができる。(3) Post法HDFでは
QFとともに
CLは増大するが, その傾向は拡散のみによ。る
CLが比較的小さい大分子溶質ほど顕著である。(4) Pre法HDFでは
QFとともに
CLは, 大分子溶質で増加, 中分子溶質でほぼ不変, 小分子溶質で若干減少する傾向をもつ。
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藤森 明, 内藤 秀宗, 宮崎 哲夫, 長坂 肇, 吾妻 眞幸, 橋本 幸枝, 堀川 聖三郎
1995 年24 巻3 号 p.
676-679
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
臨床使用により、トリアセテート膜の物質透過性がどのような影響を受け、また、それは細孔構造にどのような変化が生じたからなのかを明らかにする為に、DSC法で、HD、HDF (10L補液)使用前後でのトリアセテート膜(FB-170E、FB-170U)の細孔径解析を行ない、同時に吸着蛋白分析や物質透過性の変化についても検討した。透水性やβ2-MGのSCは臨床使用、特にHDFで著しく低下した。吸着蛋白量は10μg/cm
2以上と多く、HDよりもHDFで更に増加した。2次元電気泳動およびSDS-PAGEの結果、トリアセテート膜には血漿蛋白の非選択的吸着が認められた。一方、臨床使用後に細孔径が縮小する事は無かった。以上の結果より、アルブミン単分子吸着層の形成により細孔径が縮小するのでは無く、血漿蛋白がトリアセテート膜の細孔内部に付着し、細孔を閉塞させることにより物質透過性が低下するものと推測された。
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山本 浩靖, 川崎 忠行, 芝本 隆, 秋葉 隆, 前田 貞亮
1995 年24 巻3 号 p.
680-684
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
新たに開発されたポリスルフォン膜ダイアライザーAPS-16 (APS)および既存の同膜材質のダイアライザーPS1.6UW (PS)を透析患者12名に使用し、溶質除去性能を中心に比較検討した。同一症例に対しPS, APSの順にそれぞれ3回使用し、各使用最終日に採血、測定を行った。デキストランによるin vitroの分画分子量曲線は両ダイアライザーでシャープな曲線が得られ、APSで高分子側にシフトしていた。低分子量物質(UN, Cr, UA, IP)の除去率(RR)、クリアランス(CL)は、両ダイアライザーで差はなかった。β2MGのRRおよびCLはAPSがPSに比し高値を示したが、SCは両ダイアライザーで差はなかった。またβ2MGの膜への吸着では両ダイアライザーで差はなかった。プロラクチンのRRおよびSCはAPSがPSに比し高値を示した。APSは低分子量蛋白の高い除去性能とアルブミン阻止可能な分画特性を備えたダイアライザーである。
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青池 郁夫, 寺邑 朋, 恵 以盛, 鈴木 靖, 下条 文武, 荒川 正昭
1995 年24 巻3 号 p.
685-689
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
東レ社製ポリスルホン膜血液透析器FS-105の臨床検討を行った。新潟大学第二内科にて維持透析を行っている非糖尿病性慢性腎不全8例を対象に、計146回の血液透析を行った。尿素窒素の除去率は69.6±10.5%、β2-MGは50.9±10.7%であった。また、除去率より求めた総括物質移動係数(Ko)は尿素窒素0.0189±0.0058cm/min、β2-MGO.00217±0.00092cm/minであった。透析開始1時間後および3時間後での尿素窒素Koは、それぞれ0.0462±0.0045cm/min、0.0409±0.0063cm/minと、経時劣化は僅かであった。また、透析中の除水性能劣化はみられなかった。透析開始15分後の白血球減少は、前値の70.5%と軽微であった。C3aのダイアライザー出口/入口比は、約1.9と低値であった。さらに、透析膜刺激による顆粒球ラジカル産生も極僅かであった。以上より、FS-105は低分子量物質、低分子量蛋白の安定した除去能および良好な生体適合性を有する透析器であると考えられる。
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芝田 正道, 星野 敏久, 金子 岩和, 佐中 孜, 峰島 三千男, 佐藤 雄一, 阿岸 鉄三, 太田 和夫
1995 年24 巻3 号 p.
690-693
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
今回、新たに開発したポリスルホン膜ハイフラックス型ダイアライザFS-105を臨床使用し、BK-Pシリーズ(PMMA膜)と溶質透過性能および好中球接着分子について比較検討した。また、ヒト血漿を用いた吸着実験によりFS-105の小分子量蛋白の吸着特性について検討した。
尿素のクリアランス(ml/min)はBK-1.6P, BK-2.1P, FS-105それぞれ、171.7±2.7, 182.2±1.2, 188.5±1.5であり、β
2-MGのクリアランス(ml/min)は、BK-1.6P, BK-2.1P, FS-105それぞれ、30.3±2.0, 34.2±8.4, 43.2±5.7であった。
好中球接着分子の発現は、透析前動脈側値を100とした時の相対値により検討した。PMMA膜, PS膜ともダイアライザ通過による接着分子の発現が認められたものの、両者に差は見られなかった。
実験による小分子量蛋白の吸着は、RBP, α
1-MG, Albではほとんどみられず、β
2-MGに関しては、120分後で前値の約57%まで低下し、緩やかな吸着または捕捉が認められた。
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丹羽 利充, 宮崎 高志, 前田 憲志
1995 年24 巻3 号 p.
694-696
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
透析患者で著明に血清濃度が増加している3-カルボキシ-4メチル-5-プロピル-2-フランプロピオン酸(CMPF)はアルブミンと強く結合しており、従来の透析膜を用いたHDでは全く除去されず、血中に蓄積することになる。そこで大孔径膜を用いたHDによる血清CMPF濃度への影響を検討した。エリスロポエチンを投与していないHt27%以下の患者で再生セルロース膜を使用していた8例に、大孔径膜(BK-F; 東レ)を用いたHDを4ヵ月間行い、CMPF濃度、貧血に対する影響を検討した。その結果、BK-Fを用いたHDを4ヵ月間行うことにより、血清CMPF濃度は約50%減少した。これは主として、漏出したアルブミンと共にCMPFが除去されたためと考えられた。また、BK-Fを用いたHDにより貧血の改善が認められた。
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岡田 篤, 小久保 謙一, 酒井 清孝
1995 年24 巻3 号 p.
697-701
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
高性能透析膜の多くは非対称膜であるが、膜の非対称構造とその溶質透過性の関連は明らかになっていない。膜に吸着する溶質では、膜の半径方向の位置によって膜内拡散係数および平衡吸着量が異なるため、非対称膜の膜内への移動速度が、溶質の移動方向(内側→外側, 外側→内側)により異なる。これを利用して、非対称構造の評価を試みた。中空糸透析膜に吸着するタンパク質あるいは染料を用い、膜内部への溶質の移動速度を測定し移動速度曲線の移動方向による差異を溶質により比較した。その結果、非対称構造に起因すると考えられる移動速度曲線の違いが現れた。移動速度曲線の形状は、緻密層の構造が非対称であることに起因して移動初期に差が大きく現れるもの、膜全体の非対称構造に起因して中心部で差が現れるものがあった。これより、吸着を利用して透析膜の溶質透過性に影響を与える非対称構造の評価が可能であると考えられる。
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中村 友一, 小久保 謙一, 酒井 清孝
1995 年24 巻3 号 p.
702-706
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
中空糸透析膜におけるイオンの透過機構の解明には荷電状態の評価が必要である。その指標として以前より流動電位の測定から算出されるゼータ電位が検討されている。しかし、中空糸形状の膜に対して標準的な測定方法が確立されていないために、測定者により異なる値が報告されている。そこで我々は、中空糸透析膜の流動電位の値が安定かつ再現性よく得られるように測定法を検討した。50~100本の中空糸内側のみに0.001Nまたは0.01NのKCl溶液を流動させ、両端に生じる流動電位の値を銀-塩化銀電極で測定した。膜の長さが短く、流動液の電解質濃度が希薄であるほど流動電位が早く定常に達し、定常値は再現性良く得られた。この方法でPAN膜とRC膜の流動電位を測定してゼータ電位を算出した結果、-26mVと-5.5mVであり、これらの値は再現性よく得られた。よって、この方法を用いることにより中空糸透析膜の荷電状態を評価できるものと考えられる。
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国分 孝幸, 小久保 謙一, 酒井 清孝
1995 年24 巻3 号 p.
707-712
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
イオンの膜透過は、透析膜の荷電と構造の両方に依存する。しかし、実際の透析においては、膜に血漿タンパク質が吸着し、膜構造と膜荷電の双方が変化する。そこで、透水性の異なるPS-600とPS-620からなるダイアライザ(有効長25cm、中空糸本数700本)に、水溶液中で正に荷電するチトクロームCあるいは負に荷電するα-ラクトアルブミンを平衡吸着させ、吸着前後における尿素の溶質透過係数から膜構造の変化を、有効荷電密度の変化から膜荷電の変化を評価した。その結果、いずれのタンパク質吸着後においても尿素の溶質透過係数は減少し、膜構造の変化が示唆された。また、有効荷電密度はチトクロームC吸着後には減少し、α-ラクトアルブミン吸着後にはあまり変化しなかった。これより、タンパク質の吸着により膜構造、膜荷電が変化し、膜荷電の変化はタンパク質により異なることが分かった。
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宮崎 哲夫, 長坂 肇, 藤森 明, 内藤 秀宗, 吾妻 眞幸, 橋本 幸枝, 堀川 聖三郎
1995 年24 巻3 号 p.
713-716
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
PMMA膜BK-1.6U(BK-U), Polysulfone膜PS-1.6UW(PS)の2膜について、膜吸着蛋白および濾過液中蛋白を分析することにより、各膜の蛋白除去特性について検討した。さらにHD, HDFの治療モードの異なりによる差異についても比較検討した。BKUは、蛋白領域の除去に関しては、透過と吸着の特性を合せ持つ。PSで透過していた特異蛋白を吸着で除去する可能性が認められた。PSは、主に透過による除去膜であり、分子量が約30kd程度で等電点がアルブミンと同程度の蛋白が特異的に透過された。なお、今回の検討では蛋白の膜吸着機序は明確にすることが出来ず、膜吸着蛋白の分析手技は、今後さらに改良する必要があると考えられた。
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小久保 謙一, 黒田 茂, 酒井 清孝
1995 年24 巻3 号 p.
717-720
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
低分子量タンパク質は、透析膜を吸着しながら拡散する。したがって、その除去に適した膜について考察するためには、吸着を考慮した溶質の膜内移動現象を明らかにする必要がある。そこで、ポリアクリロニトリル膜(PAN-CX2, -DX)、ポリスルホン膜(PS-UW)からなる透析器を作成し、チトクロームCの除去量の経時変化を測定し、物質取支より各時間における除去量および膜内の蓄積量を算出した。チトクロームCの除去速度は初期において人きく、ある時間ののち一定速度となった。特に、吸着量が多いPAN膜は、初期における除去速度が大きく、また、初期における除去量は、そのほとんどが吸着による膜内への蓄積量であった。以上の結果より、膜への吸着量が多く、吸着速度が速いタンパク質は、特に初期において除去速度が速く、その膜によって効率よく除去されると考えられる。
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―第一報動静脈回路内圧差から―
長見 英治, 斎藤 晃, 堀 和芳, 山崎 英隆, 市川 久志, 川崎 忠行, 堀川 哲彦, 犬丸 達也, 新井 貴士, 百瀬 卓志, 生方 ...
1995 年24 巻3 号 p.
721-726
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
今回我々は透析施行時における血液回路の動脈および静脈の圧差(以下動静脈回路内圧差)の変化率を連続モニターし、その臨床使用での有用性を検討し、以下の知見を得た。
1、動静脈回路内圧差の変化率と、ヘマトクリット(以下Ht)値および血液粘度の変化率との間に有意な相関が認められた。
2、動静脈回路内圧差の変化率と、体重減少率との間に有意な相関が認められた。
3、動静脈回路内圧差の変化率と、平均血圧の変化率とでは、10症例中、人工血管使用例および、メチル硫酸アメジウム内服例以外の6例で有意な相関が認められた。以上より、動静脈回路内圧差の変化率は、血液濃縮に依存することがわかり、透析中の過除水による血圧低下を事前に感知できる可能性が示唆され、動静脈回路内圧差の変化率を連続モニターすることは、臨床上有用であると思われた。
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樋口 輝美, 久野 勉, 山元 智衣, 水野 真理, 浦江 淳, 柴原 宏, 矢内 充, 岡田 一義, 奈倉 勇爾, 高橋 進, 上松瀬 勝 ...
1995 年24 巻3 号 p.
727-731
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
慢性血液透析患者を対象に、polyamide膜dialyzer (polyflux-130)の臨床的性能評価をcut off pointの類似する再生セルロース膜dialyzer (AM-FP-15)をコントロールとし、溶質除去能、生体適合性の両面より比較検討した。溶質除去能として除去率、クリアランスまた全透析液回収により積算クリアランスを算出した。生体適合性の面ではABC、β-TG、C3aの変動をマーカーとした。小分子量物質の溶質除去は、対照のAM-FP-15に比しpolyflux-130でほぼ同等の除去性能を示し、またβ
2-MGの除去能に優れていた。またpolyflux-130で透析経過中のWBCの減少は軽度であり、β-TGは透析後有意に低下し、またC3aの透析開始15分値はAM-FP-15に比しその上昇は軽度であった。さらに観察期間中、dialyzerに起因すると思われる合併症の出現はみられなかった。以上より生体適合性にも優れた有用なdialyzerであると考えらえた。
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川西 秀樹, 山中 健司, 土谷 太郎
1995 年24 巻3 号 p.
732-735
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
血液透析中の血圧低下の主原因の一つは除水量がplasma refilling capacityを上回ることによる循環血液量(BV)の低下であり、そのBVの変化(BV%)はHematocrit (Hct)の連続的な計測によりモニターできる。本研究では分光法的な非観血式連続的Hct測定装置GRIT-LINE
TMを血液透析患者に使用し有用性を検討した。BV%は次式より算定した。BV%=100×(BV-BVinitial)/BVinitial=(Hctinitial/Hct-1)×100。CRIT-LINE Hctと遠沈法Hctとの問には良好な相関性が認められ(r=0.99)、19症例の経験で除水速度に相関してHctの上昇、BV%の低下を認め体液バランスのモニターとしての有用性が示された。さらに血圧低下症候を示すときのHct値、CRASH CRITを決定することにより血液透析中の血圧低下を未然に防ぐことが可能となった。
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絵野 沢伸, 鈴木 盛一, 掛札 敏裕, 雨宮 浩, 岩田 博夫, 伊藤 尚史
1995 年24 巻3 号 p.
736-739
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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急性肝不全時や移植前後の肝機能補助など体外型人工肝の臨床応用への期待は大きい。我々は入手、培養の容易な異種細胞を用い解毒機能に重点を置いたハイブリッド人工肝について研究を進めた。即ち異種由来細胞の免疫隔離を最終目的としてアガロースゲル封入法を試行している。今回の研究では球状カプセル化した肝細胞について解毒機能の一つであるアンモニア除去能を検討した。
in vitroでアンモニアを添加した後6時間で非カプセル化及びカプセル化肝細胞のいずれも良好にアンモニアを除去した。カプセル化肝細胞では除去能が培養2日目より急速に低下した。カプセル化の前処置として細胞をセルロースマイクロキャリアに接着培養すると少ない細胞数で比較的高い除去能が得られた。また
in vivoの評価系においてアンモニアを投与したラットでは麻酔からの覚醒時間が延長するが、これに遊離肝細胞を腹腔内投与すると回復する傾向があることがわかった。
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白羽 英則, 小出 典男, 真治 紀之, 中路 修平, 林 伸幸, 辻 孝夫
1995 年24 巻3 号 p.
740-743
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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Bioreactorとしてアガロースのマイクロビーズにカプセル化したラット肝細胞spheroidを用いた生物学的人工肝臓モデルを作成した。Bioreactor槽にはhollow fiberカートリッジを用いた。9×10
7個のラット肝細胞をspheroid化してbioreactorとして使用し、装置全体で150mlのホルモン添加Williams'E培地を循環液として用いた。装置全体を37℃に保ち、培養液中のpH、溶存酸素濃度(DO
2)をセンサーでモニターしながら自動制御した。12時間おきに培養液を採取し、albmnin、transferrinの産生を酵素抗体法で評価した。72時間の培養の間、pH、DO
2は、それぞれ7.25±0.10, 35±10%に保った。培養液中のalbuminは2.0mg/l/hourで増加しつづけ、transferrinは24時問後まで0.84mg/l/hourで増加し、その後プラトーに達した。培養後もspheroidの形態はよく保たれており、viabilityは86%あった。肝細胞spheroidをカプセル化しhollow fiber 培養槽に充填することにより高密度で取り扱いの容易なハイブリッド型人工肝臓用bioreactorを構築することが可能であった。
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三好 浩稔, 柳 健一, 大川 敬子, 大島 宣雄
1995 年24 巻3 号 p.
744-748
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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Polyvinyl formal (PVF)樹脂多孔質体を担体として、肝細胞の長期培養実験を行った。実験は、平板状の担体を用いた静置培養、細切した担体を充填した充填層型リアクターによる灌流培養、および対照であるコラーゲンコートディッシュを用いる単層培養の3種類の条件下で行い、肝細胞の活性の維持能を評価、比較した。培養肝細胞の活性は、アンモニア代謝能、尿素合成能およびアルブミン分泌能から評価した。培養実験の結果、アンモニア代謝能と尿素合成能に関しては、培養条件の違いによる明確な差異は認められず、いずれの培養法においてもこれらの活性は急激に低下した。一方、アルブミン分泌能については、単層培養では活性は低下したものの、PVF樹脂を用いた静置培養や灌流培養では良好に維持され、とりわけ静置培養では20日間の長期にわたり充分なアルブミン分泌能が維持された。以上の結果から、PVF樹脂を担体とする肝細胞培養法は、肝機能補助装置の開発に有用であることが示唆された。
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榊田 典治, 一ノ瀬 賢司, 西田 健朗, 下田 誠也, 上村 毅郎, 梶原 研一郎, 宮田 高雄, 七里 元亮, 石原 一彦, 中林 宣男
1995 年24 巻3 号 p.
749-753
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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マイクロダイアリシス・サンプリング法による血糖モニター・システムのホローファイバー・プローブへの蛋白付着を回避すべく、生体膜構造類似の2-メタクリロイルオキシエチル・フォスフォリルコリン(MPC)膜被覆のホローファイバー・プローブを作製、in vitro、in vivo系で検討した。1) in vitro系:MPC膜被覆ホローファイバー・プローブのブドウ糖回収率は34.3±0.8%、90%応答時間はブドウ糖濃度上昇、下降時で6.2±0.5、8.1±0.7分、蛋白付着にともなう回収率の変化は、既存のホローファイバー・プローブで5日目以降有意な低下を見たが、MPC膜被覆ホローファイバー・プローブで7日目まで低下しなかった。2) in vivo系:MPC膜被覆ホローファイバー・プローブを用いた血糖モニターシステムにて計測した皮下組織ブドウ糖濃度は7日目まで血糖値によく一致、8日目以降14日目まで出力較正にて血糖値によく追随した。MPC膜被覆ホローファイバー・プローブの応用は、連続計測期間を延長させた。
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西田 健朗, 榊田 典治, 一ノ瀬 賢司, 下田 誠也, 上村 毅郎, 梶原 研一郎, 宮田 高雄, 七里 元亮, 石原 一彦, 中林 宣男
1995 年24 巻3 号 p.
754-759
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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著者らは既に2-metacryloyloxyethyl phosphorylcholine (以下MPC膜)被覆フェロセン付加微小針型ブドウ糖センサが、長期にわたりその機能の安定性、信頼性を保証することができることを既に報告した。今回は本センサを組み込んだ携帯型人工膵島の長期臨床応用を試みた。(日)“みかけ上の”センサ出力は1日目104.0±1.4%、7日目96.7±3.9%と差を認めなかった。回帰検定においても、1日目Y=1.04X+3.6(r=0.99)、7日目Y=0.99X+1.8(r=0.98)と差を認めなかった。7日目以降14日目まで、“みかけ上の”センサ出力の有意な低下を認めたが、一点較正の導入により、14日間にわたる連続計測が可能であった。(月)インスリン治療中の糖尿病患者に本センサを組み込んだ携帯型人工膵島を適用することにより、血糖値の最適制御が可能であった。以上、MPC膜被覆フェロセン付加微小針型ブドウ糖センサは、携帯型人工膵島の長期臨床応用にきわめて有用であることが示された。
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ボロン酸基を糖鎖認識部位として有する新規水溶性高分子の固定化によるリンパ球.の増殖誘導
宮崎 浩明, 池谷 武志, 片岡 一則, 岡野 光夫, 桜井 靖久
1995 年24 巻3 号 p.
760-764
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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これまでに我々は, 細胞表面の糖鎖認識部位として, ボロン酸基を高分子鎖中に導入したアクリルアミド型ボロン酸ポリマーによって, レクチン様のリンパ球凝集が誘起され, さらにリンパ球の増殖誘導が引き起こされることを明らかとしてきた1)。この様なボロン酸ポリマーの人工レクチン活性を詳細に検討するために, 水溶性ならびにボロン酸残基含量, 分子量を増加させたボロン酸ポリマー(ジメチルアクリルアミドとボロン酸モノマーとの共重合体)を新たに合成し, マウスリンパ球の増殖評価をしたところ, 特に分子量および高分子鎖中のボロン酸残基含率がリンパ球の増殖誘導に対して重要な効果を示すことが判明した。またボロン酸ポリマーを培養床にコートしてもリンパ球は, 増殖誘導されることが判明し, ビーズにコートするなど安全で有効な利用法が期待される。またIL-2とのアジュバント活性も認められ, 新しい癌免疫療法剤への展開も示唆された。
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福田 収, 横山 公要, 井澤 裕, 谷津 勲, 高橋 伸治, 小島 弘栄, 畑中 美博, 似鳥 嘉昭, 朝倉 伸司, 坂田 洋一, 松田 ...
1995 年24 巻3 号 p.
765-769
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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血液透析時のDialyzer内残血現象と、Fibrinogen (Fbg)、Fibronectin (FN)をはじめとするMatrix蛋白質の動態、及び血液凝固反応の関与を既に検討し報告した(透析会誌27:1159-1167, 1994)が、今回、透析膜とVitronectin (VN)との関係について蛍光抗体法を用いて検討した。再生cellulose膜による血液透析(HD)を施行している慢性腎不全患者(残血症例6例と非残血症例6例)12名についてHD終了後に生理食塩水にてDialyzer内を洗浄し、膜内面を蛍光抗体法により観察した。その結果、残血症例では、膜内面に沿ってVNのlinear-patternが明瞭に認められ、また、血栓内にもVNが認められた。非残血症例とは異なり、残血症例のDialyzerの1モルNaCl溶出液中に多くのVN-multimerが認められたことと今回の検討結果よりVNが残血現象の原因に関与していることが示唆された。
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米川 元樹, 高橋 昌宏, 久木田 和丘, 目黒 順一, 玉置 透, 川村 明夫, 柳田 尚之, 倉内 宣明, 岡野 正裕, 今井 政人, ...
1995 年24 巻3 号 p.
770-774
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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Cryofiltration施行中に血中EDA(+)フィプロネクチン(EDA(+)FN)は一過性に上昇するが、その血中変動に及ぼす、疾患、体外循環、抗凝固剤の影響を検討した。Cryofiltrationを行った種々の疾患における血中EDA(+)FN上昇の比較では自己免疫疾患以外の疾患でも上昇するものの、自己免疫疾患の方が上昇率は高かった。Cryofiltration、ヘパリン透析、低分子ヘパリン透析、メシル酸ナファモスタット透析の4群でEDA(+)FNの経時変動を比較すると、いずれの群もEDA(+)FNは上昇し、Cryofiltration群とメシル酸ナファモスタット透析群でより顕著であった。体外循環をせずにヘパリン投与のみで経時変動をみると、EDA(+)FNは投与後急速に上昇して15~20分で最高値、逆に血漿型FNは最低値となり、両者の変動は対称的であった。以上から、体外循環中のEDA(+)FNの上昇は抗凝固剤によるものであり、ヘパリンのみならず低分子ヘパリシやメシル酸ナファモスタットでもみられる現象であることが判明した。
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金井 美紀, 山路 健, 津田 裕士
1995 年24 巻3 号 p.
775-779
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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慢性関節リウマチ患者5例に対し二重膜濾過血漿交換療法(以下DFPP)とリンパ球除去療法(以下LCP)を試み、血液および血漿粘度の変化を検討した。LCPは白血球除去フィルター(セルソーバ、旭メディカル社製)を用いた方法および自動連続遠心式細胞分離器(スペクトラ、COBE社製)を用いた遠心法を行い、血液および血漿粘度は円錐-平板型回転粘度計(Brookfield社製)、微量毛細管粘度計(磯貝式)で測定した。DFPPでは治療前後の血液粘度に有意な変化は認めず、血漿粘度は有意な低下を認めた。セルソーバによるLCPでは前後で血液粘度の低下傾向を認め、血漿粘度は逆に上昇した。スペクトラによるLCPでは血液粘度の低下傾向が認められ、血漿粘度には変化が認められなかった。血液および血漿粘度を低下させることが治療の目的であるとするとDFPPおよびLCPの併用療法の試みが考えられた。
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―活性化補体, ブラジキニンの検討―
小野 裕逸, 百川 健, 鈴木 宗平, 鯉江 久昭
1995 年24 巻3 号 p.
780-783
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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自己血輸血に供するため, 膜型血漿分離器を用いた自己血漿貯血(DP)を12例に行った。separatorとしてポリスルフオン膜を用い, 抗凝固剤としてヘパリンを用いた7例(H群)とメシル酸ナフアモスタットを用いた5例(NM群)についてDP施行中の活性化補体・ブラジキニン(BK)産生について検討した。両群ともC3a・C5aの活性化を認めたが, NM群において顕著であった。C4aはほぼ変化がなく, この補体活性化はalternative pathwayを介するものといえた。BK産生に関しては両群とも異常高値を示すことはなかったが, NM群では前値より低値となった。NM単独では補体活性は高度であるが, BK産生を減少させる可能性もあり, donorであり受血者でもある患者の安全性を考慮すれば, 抗凝固剤としてヘパリンとNMの併用も有用ではないかと思われた。
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雪田 かおり, 仁田 新一, 小林 信一, 布田 有司
1995 年24 巻3 号 p.
784-787
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
近年、LDLアフェレーシス中の低血圧発作が問題にされており、その原因として血中ブラジキニン濃度上昇が報告されている。その予防にメシル酸ナファモスタット(NM)が有効であることが知られている。本研究においては、抗凝固剤としてヘパリンとNMを併用し、血中ブラジキニン濃度、総コレステロール、中性脂肪を指標に用いて、それぞれヘパリン単体、NM単体使用時と比較検討した。
その結果、ヘパリン・NM併用法を用いることにより血中ブラジキニン濃度はヘパリン単体使用時と比較して有意に低値を示し、かつ、中性脂肪の減少率はNM単体使用時と比較して有意に良好な成績を示した。また、総コレステロールに関しては、各方法ともに有意差はみられなかった。従って、ヘパリン・NM併用法は血中ブラジキニン濃度を抑制し、高い脂質減少率が得られる有効な方法であると考えられた。
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岡樹 一郎, 中路 修平, 井手 芳彦, 奥村 誠一, 佐野 正登, 高守 正治
1995 年24 巻3 号 p.
788-791
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
我々は重症筋無力症(MG)の病因物質である抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体の中の阻止型抗体が標的としているAChR上の部分を合成ペプチドとして不溶性担体に固定化した吸着器メディソーバMGの開発を行ってきた。今回、メディソーバMGの持つ吸着特性を明らかにする目的で、臨床で治療に用いたカラムに吸着された血漿成分について、総タンパク量、構成タンパク質成分、抗AChR抗体価、抗合成ペプチド抗体価の4点から分析、検討した。結果、カラム1本あたりのタンパク吸着量は7-18mgと極めて少なく、その主成分はIgGであった。また抗AChR抗体価および抗ペプチド抗体の測定結果より、抗AChR抗体中の阻止型抗体を有効に吸着していることが明らかとなった。これらの結果より、本吸着器は当初の設計コンセプト通り、病因物質である抗AChR抗体の中の阻止型抗体に対して高い特異性を有する吸着器であることが示された。
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山路 健, 津田 裕士, 小林 茂人
1995 年24 巻3 号 p.
792-794
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
IgG-RFは慢性関節リウマチの疾患活動性と有意に相関を示すことなどから、RAの病態を把握する指標としての重要性が示唆されている。今回、我々は酵素免疫測定法(ELISA法)によりIgG-RF高値を示したリウマチ性疾患患者7例に対してデキストラン硫酸をリガンドとした吸着剤(鐘淵化学社製)を用いた免疫吸着療法を施行し、IgG-RFの変化について検討した。7例中5例において免疫吸着療法施行後、IgG-RFは低下し、IgM-RF、IgA-RFは明らかな変化を示さなかった。また、血漿処理量毎にみたIgG-RF値は血漿1000ml、1500ml処理時に有意に低下を示していたが、1000mlをこえると除去効率が鈍る傾向にあった。これらの結果より、IgG-RFの除去には免疫吸着療法が有効と考え、特に血漿処理量が1500ml以下で、この傾向は著明であった.
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宮本 啓一, 中村 崇人, T MATSUNAGA, 鴇田 昌之, 駒井 喬, 岩田 博夫, 鈴木 祐征
1995 年24 巻3 号 p.
795-799
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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細胞をハイドロゲルに包埋し, 生体内の刺激に応答して必要物質の放出を調節するハイブリッド型人工臓器の開発には, ゲル中での物質の輸送現象を解明することが必須となる. 本研究では細胞包埋用として応用が期待されているアガロースゲルの輸送物性をタイムラグ法を用いて評価することを試みた. 透過実験のプローブとしてグルコース, ビタミンB12, 牛血清アルブミンを用いゲル中での拡散係数, 透過係数を求めた. さらにゲルの網目サイズとプローブの分子サイズの比に依存するスケーリング関数f(x)を設定し解析した結果, グルコースと牛血清アルブミンでは良い相関が見られた. ビタミンB12については他のプローブと一致しなかったが, これはゲルとプローブとの間に相互作用が働いていることを示唆した結果と考えられた. 本研究で用いた手法によるゲルを介した物質の輸送現象の解析は, 今後ハイブリッド型人工臓器開発の材料評価法として有用であると考える.
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木村 元彦, 杉浦 敏文, 木村 泰三, 原田 幸雄
1995 年24 巻3 号 p.
800-804
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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心臓手術後の右心負荷の軽減を目的として、手術時にフイブリン糊で横隔神経に接着固定して使用し、使用後に体外から安全に抜去できる刺激電極を用いた、体外式横隔膜ペーシングを提案した。2頭の雑種成犬の両側の横隔神経に、試作した刺激電極を埋め込んだ。刺激電極埋め込み直後から、連続ペーシングを7日間行なった。定期的に、電極間インピーダンス、刺激閾値、ペーシング電流値および一回換気量の測定をした。電極間インピーダンスは、800Ω以下の良好な値を示した。刺激閾値は、2.14mA以下であり、ペーシング電流値は6.79mA以下の比較的良好な値を示した。一回換気量は、13.6ml・kg
-1~27.7ml・kg
-1の良好な換気が得られた。連続ペーシング終了時に、電極の抜去に必要な力は、平均171gwであった。電極の抜去に伴う出血や横隔神経の損傷は無く、安全かつ容易にリードの抜去ができることが判った。
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北村 昌也, 小寺 孝治郎, 勝間田 敬弘, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 小柳 仁
1995 年24 巻3 号 p.
805-808
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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光ファイバー式光電スイッチによる植え込み型補助人工心臓の制御駆動システムを開発した。光ファイバーユニットは反射型で, 通常の血液ポンプ外側壁に固定した。増幅器は遠距離型で, 信号伝達ラインにより制御駆動装置に接続した。血液ポンプの駆動開始の信号は, 血液ポンプの充満があらかじめ設定した位置に達した時に発っせられた。植え込み型に準じたmock回路において, 本システムによる補助心臓の完全充満―完全拍出駆動の制御が十分に可能であった。光ファイバー式光電スイッチを用いた植え込み型補助人工心臓の制御駆動システムは有効であり, 臨床応用可能な方法と思われた。
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朴 昌禧, 西村 和修, 野本 慎一, 松田 捷彦, 岡本 好史, 伴 敏彦, 赤松 映明, 築谷 朋典
1995 年24 巻3 号 p.
809-814
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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我々は現在、長期使用を目的とした、新しい遠心ポンプ“磁気浮上ポンプ(Magnetically Suspended Centrifugal Pump: MSCP)”を開発しているところである。このポンプでは、インペラーがポンプ内で磁気的に完全に浮上、回転し、ポンプ内には回転軸が全く存在しない。今回、MSCPの溶血試験を施行し、血液ポンプとしての有望性を検討した。ポンプ流量、5L/min、揚程は100, 150mmHgの2つの条件を設定し、Biopumpと比較した。MSCPはBiopumpに比して、いずれの揚程においても、溶血は有意に少なく、血小板の破壊も少なかった。さらに、MSCPでインペラーとポンプケーシングの間隙(gap)を変化させての溶血試験では、gap 0.25mmよりも0.15mmのほうが回転数は有意に少なく、溶血も血小板の破壊も有意に少なかった。以上、in-vitroの検討では、MSCPのおいては、血球成分の破壊はBiopumpよりも少なく、血液ポンプとして非常に有望であることが証明された。
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松下 琢, 井嶋 博之, 和田 茂久, 船津 和守
1995 年24 巻3 号 p.
815-820
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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D-ガラクトサミンで誘発した肝不全ラット(正常PT値;19~20秒に対し、27~43秒まで上昇)5例に対して、頸動静脈を用いた3時間の体外循環によって多細管型PUF/スフェロイド充填層人工肝臓(PUF体積;4.4cm
3, 細胞密度;1.14×10
7cells/cm
3-PUF)を適用したところ、5例中4例は血中アンモニア濃度の上昇が肝性昏睡発症領域(196N-μg/dl)以下に抑えられ約40時間で正常値まで戻った。また上昇した他のPT値・GPT・GOT・総ビリルビン・総胆汁酸濃度も4日以内に正常値まで回復し、4例とも生存した。一方対照として、同様な実験を肝細胞を含まない人工肝臓を用いて行った(3例)ところ、全例とも体外循環中及びその直後に血中アンモニア濃度が急激に上昇して死亡した。以上の結果から、人工肝臓内のスフェロイドは血中アンモニアの解毒代謝を良好に行い、肝不全からの回復に対し何らかの重要な役割を果たしたことが示唆された。
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成瀬 勝俊, 酒井 康行, 長島 郁雄, 鈴木 基之, 武藤 徹一郎
1995 年24 巻3 号 p.
821-826
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ハイブリッド型人工肝臓の実用化においては、良好な物質交換能を持つバイオリアクターの開発が必須である。このため、我々はまず細胞として遊離肝細胞ではなくその集合体である肝細胞スフェロイドを浮遊懸濁培養槽にて作成し、その上で次のような2つのタイプのモジュールを検討した。すなわち、1つは肝細胞スフェロイドをポリエステル不織布に固定化してカラムに充填したモジュールであり、もう1つは浮遊培養槽をそのままモジュールとして用いるものである。ブタの全肝から肝細胞を分離し、1Lの浮遊培養槽でスフェロイドを形成させた後、一部を容積50ccの上記不織布充填型モジュールに固定化し、一部は100ccのスピナーフラスコで浮遊培養して両者の肝機能を比較検討した。アンモニア除去能、尿素合成能、およびアルブミン分泌能は経過を通じて不織布充填型モジュールの方が良好であった。
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松下 通明, 内野 純一, 田口 宏一, 西川 眞, 小池 雅彦, 蒲池 浩文, 今 裕史, 高橋 学, 能登 啓光, 松江 弘一, 長谷 ...
1995 年24 巻3 号 p.
827-830
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
初代培養肝細胞を充填した積層型ハイブリッド人工肝の開発状況とbioreactorとして使用する各種の培養肝細胞機能及び臨床応用面での課題について検討した。肝全摘動物を用いた同種並びに異種灌流では、人工肝群の平均生存時間は、対照群に比し有意に延長した。培養ブタ肝細胞は、L-15培地中および100%血漿中で2週間の培養が可能で良好な各種肝細胞機能の発現とアミノ酸是正能を示した。103名の健常成人には、7例(6.8%)に毒性の抗ブタ肝細胞抗体を認めた。ゲル間培養法は、灌流下で肝機能の発現に優れていた。ヒト肝細胞の単離には、混合酵素灌流法が有効で、120分の温阻血肝組織から単離・培養が可能であった。以上より、積層型ハイブリッド人工肝は、肝不全の有力な治療システムと考えられ、bioreactorとして、ブタ肝細胞が、また、将来的にはヒト肝細胞の応用が期待される結果であった。
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真弓 久則, 川内 義人, 河野 博之, 森田 茂樹, 益田 宗孝, 戸嶋 良博, 安井 久喬
1995 年24 巻3 号 p.
831-833
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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フリー
人工弁置換手術を受けた成人患者160名に外来アンケート調査を行い、患者のquality of life(QOL)につき調査した。人工弁置換術後には、NYHA、仕事や日常生活での疲労度、睡眠、食欲などの大幅な改善がみられたにもかかわらず、就職率の低下、閉経率増加、性欲減退、服薬数増加などの悪化項目がみられ、禁酒、禁煙率も明らかに増加した。現在生体弁使用中の患者で次回手術に対する強い不安が認められた。一方、機械弁使用中の患者の満足度は高かった。
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林 衆治, 横山 逸男, 高木 弘
1995 年24 巻3 号 p.
834-837
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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血管内皮細胞をseedingして作成するいわゆるハイブリッド型人工血管は小口径人工血管として有望であるが、最も大きな問題はドナーソースである。今回我々は、ヒト補体制御因子遺伝子と治療用遺伝子をひとつのレトロウイルスベクターに挿入することによりヒト補体反応を受けずに治療用物質を産生する治療用遺伝子導入異種血管内皮細胞の作成に関して検討を行った。その結果、ヒト補体制御因子遺伝子導入により、ヒト補体反応は抑制されること、またこの遺伝子導入細胞より治療用物質が産生されることが確認された。以上より、治療用遺伝子導入異種血管内皮細胞は、新しいハイブリッド人工血管作成に有用であると考えられた。
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仁科 健, 岡林 均, 嶋田 一郎, 大野 暢久, 湊谷 謙司, 亀山 敬幸, 曽我 欣治, 松林 景一
1995 年24 巻3 号 p.
838-840
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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コラーゲン加工にてゼロポロシティーとした人工血管(ヘマシールド)を平成4年12月から平成5年11月までの腎動脈下腹部大動脈瘤15例(H群)に使用し、その前年使用したゲルシール人工血管(G群)及びウーブン人工血管(W群)と比較検討を行った。従来の人工血管に比べ平均輸血量は有意に少なく、プレクロッティングなしでも人工血管からの出血を認めなかった。炎症所見の再上昇率は33%にみられ、H群とG群・W群間に有意差はなかったが、G群より少なくW群より多い傾向にあった。炎症所見の中では再発熱・WBC再上昇に有意差はないが、G群に比べ少なくW群より多い傾向にあった。CRP再上昇においてG群より有意に少なかったが、W群間に有意差はなかった。ヘマシールドは人工血管自体からの血液の漏れを認めず、人工心肺症例や出血傾向症例に適しているが、術後コラーゲンにより炎症所見再上昇をきたす可能性は否定できなかった。
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江本 秀斗, 堀越 茂樹, 金沢 俊行
1995 年24 巻3 号 p.
841-844
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
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Knitted Dacron人工血管の遠隔期における拡張に対し、経時的な変化をCTにて観察し、その臨床的意義について検討した。使用された人工血管はSauvage Bionit II 9例, Hemashield Microvel Double Velour 14例でいずれも腹部大動脈瘤に植え込まれたYグラフトであった。術後1ヶ月の平均拡張率はSauvage(7例)で中枢側(大動脈側)7%、末梢側(腸骨動脈側)2%であったのに対し、Hemashield(10例)では中枢側24%、末梢側22%と有意に(p<0.01)高かった. 遠隔期ではSauvageの中枢側の平均拡張率は術後1年で9%、2年で20%、3年で21%、4年で23%と2年以降での拡張は認めなかった。一方、Hemashieldでは術後1年で中枢、末梢側共約25%の拡張を認めSauvageに比べ高かったが、術後1ヶ月と比べると差はなかった。Hemashield Graftは、Sauvage Graftに比べ拡張傾向が強く、臨床的には現在まで問題がないが、今後の経過観察が必要と思われた。
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三宅 仁
1995 年24 巻3 号 p.
845-848
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
形状記憶合金(SMA)人工筋肉搭載の力覚呈示マスタアームの力覚呈示機能が、定量的な力覚情報を呈示可能かを確認するため、腕が負荷を保持している状態を想定し、重りと開ループ制御によるSMA人工筋肉により、負荷を与え、それぞれの場合における筋電図を測定し、両者の比較を行った。その結果、本マスターアームは約30%誤差で重りの負荷を再現可能であることが明らかとなった。この誤差の原因は、個体毎の心理的要因によって重りとSMA人工筋肉の刺激に感覚・知覚上の差異が生じたものと考えられた。これにより、閉ループ制御系を採用し、あらかじめ校正曲線を求めることにより、重量感を表現可能であることが明白となった。
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深江 宏治, 徳永 滋彦, 中島 淳博, 久原 学, 鐘ヶ江 靖夫, 宮本 和幸, 西田 誉浩, 落合 由恵, 田ノ上 禎久, 富永 隆治, ...
1995 年24 巻3 号 p.
849-851
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
IABP駆動時の腎機能に関する研究は多くなされてきたが、主として液性因子からの検討であり, 神経性循環調節に関する報告は少ない. 今回我々は, IABP駆動時の大動脈神経活動(ADNA), 腎交感神経活動(RSNA)を直接測定してIABPが神経性循環調節に如何に影響を与えるかを検討した. 雑種成犬を用い, IABP中枢側圧. 末梢側圧, 腎血流量, ADNA, RSNAをIABP駆動の前後で測定した. IABPの駆動により, IABP末梢側圧は有意に低下した. ADNAは128.6%と増加しRSNAは83.5%と有意に抑制され, また腎血管抵抗も減少した. 腎血流はIABP駆動によって変化しなかった. このことからIABP駆動は圧受容器反射を介して腎交感神経活動を抑制し. その結果, 腎血管抵抗を減少させ, 灌流圧が低下したにもかかわらず腎血流を維持したと考えられた.
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山家 智之, 南家 俊介, 薗部 太郎, 永沼 滋, 柿沼 義人, 小林 信一, 秋保 洋, 井筒 憲司, 永沼 徹, 大沢 上, 仁田 新 ...
1995 年24 巻3 号 p.
852-857
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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非線形数学理論の発展に伴い、フラクタル的な構造や時系列曲線の持つロバスト性や柔軟性が注目されている。本研究では人工心臓循環が本当に生理学的なものかについて全体論的な観点から解析を加えることを目的としてフラクタル理論による検討を行った。成山羊を用い両心バイパス方式に補助人工心臓を2つ装着し、同じ動物で覚醒下において自然心臓循環と人工循環の比較検討を行った。得られた血行動態時系列曲線は高次元位相空間内へ埋め込んだ後、相関次元の計算を行って検討を加えた。その結果、人工心臓循環においては血行動態時系列曲線はフラクタル的な特徴を保持しているが、そのフラクタル次元は有意に減少しており、低次元のカオス的ダイナミクスを形成しているものと推定された。フラクタル構造を持つ時系列曲線は、外乱に対してロバストな性質を保持することが報告されており、人工心臓循環にもこのような性質が期待できる可能性が示唆されたものと考えられた。
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山田 一, 小林 学, 渡辺 充昭, 山口 昌樹, 苅田 充二, 松浦 雄一郎, 福永 信太郎
1995 年24 巻3 号 p.
858-863
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
リニアモータ駆動型全人工心臓(TAH)を試作し, 羊を用いた急性動物実験による性能評価を実施した。TAHの拍動数(流量)を変化させて血行動態を測定し, 2時間の循環代行を行った。しかし, 急性動物実験における下行大動脈流量は, mock試験で得られた流量特性4.8[L/min]からの予想に反して, control dataの3.1[L/min]の約50%, すなわち1.5[L/min]しか得られなかった。今後, より長時間の循環代行を実現するためには, 送血カニューレの流体抵抗の減少, およびリニアモータのより一層の推力増加が必要であるということが明らかとなった。また, これらの知見に基づいて改良を加えたリニアモータ駆動型TAHを新たに試作し, その基本的な特性について述べた。
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