現在わが国で一般的に使用されている人工心肺システムの凝固線溶系に与える影響を成人開心術症例13例(人工心肺時間106±21分)で検討した. 測定項目は諸因子活性(第XII~II凝固因子, AT III, プラスミノーゲン, プロテインC, vWF), 諸因子濃度(TAT, PIC, FDP, フィブリノーゲン), 血小板数, PT, APTTで, 術前, 術後, 第1病日に測定した. APTT以外は有意な経時的変化を示したが, 第XII, 第X, 第II因子, プロテインC活性は正常範囲内の変動であった. その他の因子は正常範囲外への有意な変動を示したが, 第1病日には第VII, XI因子以外は正常化あるいは回復傾向を示した. この術後の異常値も出血傾向を起こすほどではなく, 本人工心肺システムによる有意な凝固線溶系の活性化も臨床的に許容できる程度であると考えられた. また, 本データは現在の人工心肺システムの血液適合性を示すデータベースとして資するものと考えられる.
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