人工臓器
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26 巻, 3 号
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  • 岸本 武利
    1997 年 26 巻 3 号 p. 571
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 望月 吉彦, 杉田 洋一, 岡村 吉隆, 森 秀暁, 嶋田 晃一郎
    1997 年 26 巻 3 号 p. 573-576
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高齢者、重症例に対するA-Cバイパス術が増加し、IABPを要する例は依然として減少しない。我々の施設でも、過去5年間で244例のA-Cバイパス術を行ったが、その内49例(20%)にIABPを使用した。内2例は大腿動脈よりの挿入が出来ず、上行大動脈よりIABPを挿入した。IABPは上行大動脈の比較的石灰化の少ない部分を選び、プレジェット付き3-0ネスポーレン糸を用いた巾着縫合を2重に懸けた後、直接挿入した。2例とも、合併症を生じることなくIABPより離脱した。今回我々の用いたIABPの直接挿入法は簡便且つ安全な方法であると思われたが、この様な症例は重症例が多く術後管理には充分な注意が必要であると考える。
  • 安田 利貴, 半田 伸子, 舟久保 昭夫, 福井 康裕
    1997 年 26 巻 3 号 p. 577-580
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環回路および装置内で発生する溶血と物理的要因との関連性について検討を行ってきたところ、溶血の発生原因の一つとして血液が高速(300cm/sec以上)で人工臓器内壁面へ衝突するような流れが溶血を発生させる原因の一つとして考えられる結果を得た1)。そこで、この様に高速な流れが生じる可能性のある人工臓器として遠心ポンプに注目した。実験方法は、流速と溶血の関連性を高流速が予想されるポンプ流出口とインペラーに不均一な表面粗さを施し、in-vitro実験において、ポンプの回転数を変化させ溶血量を調べた。その結果、低回転では、表面粗さの部位および粗さの有無に関わらずポンプの溶血量は同量であった。一方、高回転数では、高流速が予想される血液流出部位に表面粗さを施したポンプのみに顕著な溶血量が得られた。以上より、溶血を生じさせる流れは、ある流速を境にある特定の部位のみで生じていると示唆された。
  • ―左右独立モーター方式の開発と埋め込み実験―
    阿部 裕輔, 鎮西 直雄, 磯山 隆, 小野 俊哉, 望月 修一, 斎藤 逸郎, 和久井 秀樹, 満渕 邦彦, 馬場 一憲, 松浦 弘幸, ...
    1997 年 26 巻 3 号 p. 581-587
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    波動ポンプは、完全人工心臓の小型高性能化を目指して開発している新しい原理の容積型連続流血液ポンプである. この波動ポンプを2個使用し、それぞれの波動ポンプに独立に1個づつ計2個のモーターを接続する方式の波動型完全人工心臓を設計開発した. この波動型完全人工心臓は、コンプライアンスチャンバーや心房中核欠損を必要とせず、また、血液直接駆動による新しい種類の埋込型完全人工心臓である. 開発した波動型完全人工心臓は、直径75mm×長さ80mm、重さ650gとなった. この波動型完全人工心臓を用いて、2頭のヤギに埋め込み実験を行った結果、開発した波動型完全人工心臓は、いずれのヤギの胸腔内にも埋め込むことが出きた. 駆動は、拍動流モードもしくは半拍動流モードで行った. そのうちの1頭は3時間40分生存し、立ち上がり抜管できた. 以上より、波動型完全人工心臓は、埋込型完全人工心臓を開発する上で最大の課題であったサイズの問題を解決できた.
  • 山家 智之, 仁田 新一, 薗部 太郎, 小林 信一, 永沼 滋, 南家 俊介, 柿沼 義人, 秋保 洋, 静和 彦, 福寿 岳雄, 三浦 ...
    1997 年 26 巻 3 号 p. 588-592
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全体内埋め込み型補助人工心臓(VAD)ポンプシステムでは、埋め込んだ後の適切なモニタリングシステムの開発が不可欠となる。本研究では磁気変換技術を応用したバーチャルリアリティの3次元位置センサを応用して、体内埋込み後のVADをモニターするシステムの開発を試みた。VADはサック型とし、ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストを用いて整形し、内面をポリウレタンによってコーティングした。サックに3次元位置測定装置を装着し、サックの収縮を実時間計測する方法論の確立を計った。独自に開発したプログラムによりサックの収縮の実時間計測システムを開発し、埋込み型VADのトータルシステムを試作した。モック循環ではVADとして十分な基本性能を示し、センサの6自由度の精密な実時間計測が可能であった。ベルト装着型のレシーバなどにより、VADを埋め込んだ後の実時間モニターも可能となるが、まだセンサ本体が若干大きめなので、更なる小型化が望まれる。
  • ―α-statとpH-scatの比較検討―
    西沢 孝夫, 碓氷 章彦, 保浦 賢三, 渡邊 孝, 柵木 隆志, 瓦谷 義隆, 小山 富生, 村瀬 允也
    1997 年 26 巻 3 号 p. 593-595
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    逆行性脳潅流中acid-base managementの違いによる脳血流、代謝への影響を検討した。体外循環で鼻咽頭温20℃まで冷却後、下大静脈を遮断し、上大静脈から潅流圧25mmHg前後で逆行性送血し、弓部分枝からの還流血を採血した。α-statで79検体、pH-scatで16検体を得た。pH-statではα-statに比べ有意に潅流量は多く、血管抵抗は低かった。還流血酸素飽和度、乳酸消費量、乳酸/ピルビン酸の差、ブドウ糖消費量に差はなかった。pH-scatではヘモグロビンは有意に低かったが、2群間の範囲での血液粘稠度の相違による潅流量増加の影響は軽度で、潅流量増加はpH-statの高い血中二酸化炭素分圧が強く影響していると考えられた。潅流量の点からpH-statが有利と考えられるが、実際の脳血流量の変化などさらなる検討が必要である。
  • ―2機能を有する新型カテーテルの開発―
    土井 潔, 佐藤 伸一, 平井 二郎, 小野 眞, 圓本 剛司, 戸田 省吾, 相馬 彰, 北浦 一弘, 和田 行雄, 岡 隆宏
    1997 年 26 巻 3 号 p. 596-600
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在我々は、弓部大動脈再建の際の補助手段として内頚静脈穿刺による逆行性脳灌流を行っている。この方法では、送血用カテーテルおよび上大静脈閉塞用バルーンカテーテルを内頚静脈から挿入留置し、逆行性脳灌流時にバルーンを拡張して上大静脈を閉塞することによって、少ない流量で安定した灌流が可能である。術前手技としては繁雑であるため本研究では、1本で送血と閉塞の2機能を備えた新型カテーテルを開発した。新型カテーテルは、先端に上大静脈閉塞用のバルーンが組み込まれ、バルーン近位側に送血用の側孔が開けてある。模擬循環回路を用い常温水を灌流したところ、流量の増加(0-400ml/min)にほぼ比例して送血ライン内圧は上昇(16-118mmHg)した。同じ回路を用い希釈血液を流量400ml/minで120分間灌流したところ、明かな溶血やキャビテーションの発生を認めなかった。臨床応用においては、バルーンと側孔をそれぞれ正確に上大静脈と内頚静脈に位置させるために、カテーテルの側孔の位置およびシースの長さの改良が必要であると考えられる。
  • -拍動流と無拍動流の比較-
    幸島 孝志, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 中田 金一, 秦 光賢, 瀬在 明, 山田 英明, 飯田 充, 柏崎 暁, 根本 光洋, 木下 ...
    1997 年 26 巻 3 号 p. 601-604
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性心原性ショック後の完全拍動流、無拍動流人工循環が、肝内循環、肝組織代謝に与える影響について、実験的検討を行った。ブタを用い、左冠動脈結紮法により急性心筋梗塞を作成し心室細動となった時点で右心は無拍動流ポンプ、左心は拍動流ポンプと無拍動流ポンプを装着、ポンプは3時間駆動し、平均犬動脈圧、門脈圧、肝動脈血流量、門脈血流量、肝臓の組織血流量を測定した。また肝機能の指標としてGOT、GPT、組織代謝の指標としてAKBR、乳酸ピルビン酸比を測定した。今回の実験で、拍動流循環は、肝門脈血流比において前値のバラン堺に近ずく傾向を示し、また肝臓の組織血流量、AKBR、乳酸・ピルビン酸比は拍動流循環群では無拍動流循環群に比し回復過程が良好な傾向を示した。以上より、心原性ショック後の肝循環維持には、拍動流循環が有効である可能性が示唆された。
  • 百瀬 直樹, 前田 孝雄, 安藤 勝信, 又吉 盛博, 北村 麻未, 井野 隆史
    1997 年 26 巻 3 号 p. 605-609
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心肺において循環血液流量と循環血液量を独立して調整できる回路を考案した。本回路の特徴は、従来の人工心肺回路のように主な血液の流れの中に貯血槽を置かないことである。貯血槽は脱血回路から分岐した回路に血液ポンプを介して取り付けてあり、このポンプにより貯血量すなわち循環血液量を調整する。循環血液流量は人工肺の前に位置する送血ポンプにより調整する。本回路には、脱血回路に混入した気泡を貯血槽で除去できない大きな問題点がある。対策として人工肺及びエアトラップにより気泡除去を行うこととした。in vitro testにおいて混入させた気泡は全て人工肺で除去できることが解った。本回路を113例に臨床応用し、安全に体外循環を行うことができた。本回路による体外循環では送血流量を変化させても循環血液量には影響しないため、送血流量と循環血液量を独立した形で調節することが可能であった。本回路は人工心肺操作の自動化にも応用できると考えている。
  • ―ポリミキシン固定化ファイバーのVerotoxinに対する吸着性の基礎的検討も含めて―
    森田 弘之, 佐藤 元美, 天野 泉, 中田 光
    1997 年 26 巻 3 号 p. 610-612
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ポリミキシン固定化ファイバー(PMX)においてファイバーの量とエンドトキシンの吸着量は比例する。エンドトキシン血症の患者に対し、1回のDirect hemoper fusion(DHP)でPMXカラムの2本直列使用群(Double)とDHP1回につき1本のPMXカラム使用群(Single)と成績を比較した。Single群は、13人の患者に18回PMX施行(5人は2回PMX施行)、Doubleは9人であった。両群の不全臓器数は、ほぼ同等であった。エンドトキシンの減少量は、両群とも大きな差はなかった。PMX施行後28日以上の生存率を比較するとDouble群とSingle群で67%対23%でDouble群が有意に高かった。in vitroでPMXファイバーがO157由来のVerotoxin 1, 2を吸着するかどうか実験したが120分間の混和では、PMXファイバーは吸着作用を示さなかった。
  • 山路 健, 山根 伸吾, 新見 能成, 末岡 明伯, 能勢 之彦
    1997 年 26 巻 3 号 p. 613-617
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我凝は既に極細ステンレススチールファイバーを用いた白血球フィルターを開発し, ファイバーの単位表面積あたりの白血球の除去効率がポリエステルファイバーを用いた市販の白血球フィルターと比べ, 有意に優れていることを報告した。今回, さらにステンレススチールフィルターの生体適合性に関して濾過後におけるサイトカイン産生と吸着蛋白によって評価した。TNF-α, IL-1β, IFN-γ, IL-4などのサイトカイン産生について濾過後の血漿および接触培養法にて検討したが, 血漿中濃度は明らかな上昇は認められず, 接触培養法においてもコントロールと比較して差はなかった。血球に対する刺激性の指標と考えられるサイトカイン産生にほとんど影響を与えないことから生体適合性に優れている可能性が示唆された。また, SDS-PAGEによる吸着蛋白の解析では100K dalton以上の高分子量の蛋白が吸着されない傾向力溜められた。Western blotting法においてはアルブミン, IgG γ chain, ファイブロネクチンの吸着量がポリエステルファイバーと比較して少ない傾向にあった。なお今回の吸着蛋白の解析ではステンレススチールファイバーにおける特徴を認め, 抗血栓性を示唆するものと考えられた。
  • 平石 嘉昭, 江嵜 祐造, 小原井 裕樹, 鈴木 敦子, 谷川 隆洋, 藤田 浩一, 石橋 賢一, 高野 良仁
    1997 年 26 巻 3 号 p. 618-623
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、これまでにpolyester製編み管状物にplasmin処理fibrinを被覆した新しい小口径人工血管(plasmin treated fibrin coated vascular graft、以下PF-Vとする)を開発してきた。今回、イヌ頸動脈および大腿動脈を置換したPF-Vについて、最長48ヶ月までの観察を行い、その開存性、組織治癒などについて血管造影、肉眼的および病理組織学的観察により評価した。
    PF-Vの置換48ヶ月までの開存率は68%であった。26ヶ月以上の置換例において、血管造影および摘出標本の肉眼所見から、瘤様拡張は一切認められなかった。病理組織学的観察により、人工血管の良好な器質化を認め、形成内膜の過形成、石灰化がないことが確認された。また長期置換後の構造母体繊維に有意な分子量変化はなかった。
    以上からPF-Vは長期開存が期待できる小口径人工血管となりうることが示唆された。
  • 安達 秀雄, 山口 敦司, 村田 聖一郎, 紙尾 均, 岡田 昌彦, 水原 章浩, 井野 隆史
    1997 年 26 巻 3 号 p. 624-628
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新しい4分枝付きシールドグラフト(4分枝付きゼルシール)を用いて14例の弓部大動脈置換手術を実施した。待機手術8例の成績は良好で、全例が軽快退院した。緊急手術6例の成績は待機手術と比較すると不良で、3例(50%)が死亡したが、死亡原因は破裂による出血や臓器虚血であり、原疾患の重症度が治療成績に関与していることが示唆された。人工血管と死亡原因との関連は認められなかった。長時間の体外循環にもかかわらず、シールドグラフトの分枝縫着部および人工血管壁から臨床的に問題となる出血はなく、使い易い人工血管と考えられた。4分枝付きシールドグラフトの使用は煩雑なプレクロッティング操作を不要にし、弓部大動脈置換手術の出血量減少と手術時間短縮に有用であることが示唆された。
  • 石崎 彰, 久木田 和丘, 高橋 禎人, 柳田 尚之, 岡野 正裕, 須藤 純一, 高橋 昌宏, 田中 三津子, 目黒 順一, 玉置 透, ...
    1997 年 26 巻 3 号 p. 629-631
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管で維持透析を施行している症例はブラッドアクセス歴が多い傾向にあり、トラブル歴も多い。したがって、このような症例のブラッドアクセスの長期維持は重要な課題である。われわれは、人工血管吻合部狭窄を来した6症例に対し、計12回のSimpson catheterを用いたDirectional atherectomy(DA)を行った。2症例ではDAによる吻合部狭窄の改善は得られなかったが、4症例では改善をみた。3症例は上肢の、1症例は大腿部の人工血管移植例であった。DA施行後は狭窄部の十分な拡張が得られ、血流量、静脈圧ともに術前に比較して著明に改善した。経過中再狭窄が認められた場合には繰り返しDAを行い、最多1症例で5回行った。再DAまでの平均期間は8カ月であった。人工血管狭窄例に対し、DAは比較的簡便に、また繰り返し行うことができる有用な対処法である。
  • ~血漿XIII活性を中心として~
    脇山 英丘, 安宅 啓二, 井上 享三, 尾崎 喜就, 中桐 啓太郎, 莇 隆, 芳村 直樹, 山下 長司郎, 岡田 昌義
    1997 年 26 巻 3 号 p. 632-636
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    成人開心術症例12例において, 術中・術後経時的に採血し, 凝固線溶系の動態を解析した. 今回, 従来の凝固線溶分子マーカーに加えフィブリン安定化因子であるXIII因子活性に注目し周術期出血量との関係につき検討した. TAT, PICは体外循環の経過と共に上昇し, 前者の高値例では術後出血量が多かった. さらに, 術前XIII活性値は術中および総出血量と, 体外循環中XIII活性値は術後早期出血量と負の相関を示したことから, XIII活性低下が開心術後出血量増大に関与している可能性が示された.
  • 高橋 恒夫, 仲井 邦彦, 佐藤 典治, 藤川 清三, 田所 憲治, 十字 猛夫, 村田 満, 池田 康夫
    1997 年 26 巻 3 号 p. 637-640
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血小板代替物の開発を目的として凍結乾燥血小板の作成を試みた. 洗浄血小板をバフィーコートより調製したのち, 1.8% paraformaldehydeにて固定後, 5% bovine serum albumin存在下に凍結乾燥した. 凍結乾燥血小板はcollagen凝集能を失うものの, 血小板粘着能の指標であるristocetin凝集能は洗浄血小板に比較して約90%と高度に保存され, 細胞表面膜蛋白のflowcytometryによる解析でもGPIIIaに加えristocetin凝集の受容体であるGPIbがよく保たれていた. 一方, 血小板活性化マーカーであるGMP-140がやや増加し製造工程中における血小板の軽度の活性化が示唆された. 透過型電子顕微鏡による観察では洗浄血小板と凍結乾燥血小板の間に形態学的な明らかな差は観察されなかった. 凍結乾燥血小板は血小板機能の全てを代替するものではないが, 止血の第1段階である血小板粘着を代替でき, 血小板代替物として有望と考えられた.
  • 遠藤 慎一, 川田 忠典, 保尊 正幸, 木村 加奈子, 岡田 良晴, 舟木 成樹, 山手 昇
    1997 年 26 巻 3 号 p. 641-644
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心肺施行時の抗凝固療法には従来よりヘパリンが使用されてきたが、血小板減少、出血傾向などの合併症があり改善が必要である。本実験は抗凝固薬として抗トロンビン剤(アルガトロバン)を使用し成犬を用いて体外循環可能か否かについて検討した。実験群は抗凝固剤非投与群、ヘパリン投与群(2mg/kg一回投与)、アルガトロバン投与群(10μg/kg/minの静脈内持続投与)の3群とし、膜型人工肺、遠心ポンプ、通常の塩ビ回路を用い90分間の体外循環を行い以下の結果を得た。ACTはヘパリン群が延長し、アルガトロバン群は150秒前後となった。血小板数はヘパリン群抗凝固剤非投与群で減少傾向を示したが、アルガトロバン群では有意な減少を認めず、血小板凝集能も抑制され結果として血小板が保護され、溶血についてもアルガトロバン群において少なかった。アルガトロバン10μg/kg/minの持続投与による人工肺を用いた短時間の体外循環において、血小板減少と溶血の阻止の可能性が示唆された。
  • 平井 伸司, 福永 信太郎, 三井 法真, 季白 雅文, 岡田 健志, 田原 浩, 渡正 伸, 森田 悟, 渡橋 和政, 末田 泰二郎, 松 ...
    1997 年 26 巻 3 号 p. 645-649
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    シリコン製の三葉弁とサックを一度に金型で形成し, 安価な人工弁一体型血液ポンプを製作することができたので補助人工心臓に応用する目的でその性能をテストした. 対照として25mmBjörk-Shiley monostrut弁(以下BSV)を用いた. 75mmHgの水圧を加えた逆方向の定圧もれ試験ではBSVに比べ低値であった. 弁前後の圧較差はBSVに比べやや大きくなった. 拍出流量は, 前負荷12mmHg, 後負荷120mmHgとし, 駆動陽圧160mmHg, 駆動陰圧20mmHg, % systole35%とした場合に, 80bpmで最大となり6.3L/minであった. 後負荷100mmHgの耐久性試験では54日間異常を認めなかった. 弁の圧較差を減らすことが必要とも思われたが, 補助人工心臓として流量及び耐久性の点では使用可能であると考えられた.
  • 赤坂 伸之, 郷 一知, 山本 浩史, 東 信良, 内田 恒, 川合 重久, 角浜 孝行, 稲葉 雅史, 笹嶋 唯博, 久保 良彦
    1997 年 26 巻 3 号 p. 650-652
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮的心肺補助装置(以下PCPS)を用い呼吸循環補助を施行した6例(男4例、女2例)の臨床転帰、有用性、合併症について検討した。年齢は53-74歳(平均64歳)であった。PCPS開始の適応は, 急性循環不全2例、非心疾患の開胸手術時の難治性心室細動2例、肺葉切除術後の肺炎による急性呼吸不全と開心術後の体外循環離脱困難例が各1例であった。PCPS施行時間は1-72時間(平均26時間)であった。ヘパリンコーティング回路を用い、ヘパリン又はメシル酸ナファモスタットを投与し、ACTを180-250秒に維持した。急性循環不全の2例、心室細動の2例はPCPSから離脱可能だった。他の2例は呼吸不全、MOFで死亡した。合併症は高度溶血を1例に、下肢虚血を2例に認めた。中枢神経障害、出血は認めなかった。PCPSは開心術後以外の急性呼吸循環不全にも有用と考えられた。
  • 田辺 貞雄, 菅野 隆彦, 片山 康, 松永 裕司, 大河内 康実, 田中 健彦, 向山 美果也, 木山 宏, 大島 永久, 山田 崇之
    1997 年 26 巻 3 号 p. 653-658
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    右肺全摘後肺水腫に対する7日間のv-v ECMOによる救命例を経験した。肺扁平上皮癌の52才男性の右肺全摘後6時間目より、肺水腫を発症し、第2病日、維持困難となったため、右房脱血-上大静脈送血のECMOを導入した。Maxima肺・遠心ポンプ(cameda coating)を使用し、灌流量4.0L/min、酸素100%、2L/min、ヘパリン400単位/hr持続注入で、ACTを200秒前後にした。人工呼吸器はZEEP FiO2 0.21、TV250ml以上、平均気道内圧15cmH2O以下に調節し、bronchialtoiletを頻回実施し肺動脈圧を低下させ、第8病日ECMOより離脱した。経過中の凝固系動態は、血小板数、d-dダイマー、Plasmin-α2 plasmin inhibitor complex (PIC)、Thrombin-antithrombin complek (TAT)など軽度の変動で、出血・血栓塞栓症・回路内血栓などはなかった。呼吸管理には、動脈血・混合静脈血の酸素分圧・飽和度と肺コンプライアンス、肺動脈圧が有用で、胸部レントゲン写真、気管支吸引内容とあわせて自己肺回復とECMO離脱のよい指標になった。
  • 成田 安志, 樗木 等, 古川 浩二郎, 土井 一義
    1997 年 26 巻 3 号 p. 659-663
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    当施設では補助循環症例に対し, その目的や使用状況によって4種類の人工肺を使い分けてきた. 今回, これら人工肺使用の現状と問題点を検討した, 使用人工肺はMERA社製HPO-15H:5例, KURARAY社製MENOX AL-4000:18例, AL-6000:18例, AVECOR社製Ultrox-II:6例. 各人工肺使用時間は, HPO-15H:29分~20時間2分、AL-4000:1時間20分~144時間5分, AL-6000:1時間35分~185時間37分. Ultrox-II:4時間41分~117時間35分であった. PCPSもしくはECMO使用中に人工肺交換を余儀なくされたものは3例で、原因は長時間使用による, 炭酸ガス除去能の低下であった. 人工肺ファイバーに亀裂を生じ、血液漏出をきたした2例、人工肺血液流出部に血栓を生じていたものがみられた. 今後, 生体適合性に優れた長期使用可能な体外循環回路の開発にともない. 長期のPCPSやECMOの使用に耐え得る人工肺の開発が待たれる。
  • ―窒息状態の気管分岐部腫瘍のInterventionに関する2治験例
    菅野 隆彦, 田辺 貞雄, 真栄 城剛, 松永 裕司, 大河内 康実, 田中 健彦, 砂盛 誠, 山田 崇之
    1997 年 26 巻 3 号 p. 664-667
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    通常の麻酔では換気困難な気管分岐部閉塞を呈した進行癌2症例に対してECMO下にIntervendonを施行した。ECMO系は全てMaxima®を含むCarmeda® coatingの回路を使用した。症例1は肺扁平上皮癌の65才男性で、左下葉切除半年後、気管分岐部腫瘍のため右主気管支がほぼ閉塞した。V-V ECMOの補助下に、腫瘍をYAG Laserで蒸散させた。症例2は卵巣癌の65歳女性で、付属器並びに子宮広汎切除後、転移性腫瘍が左主気管支を圧排し、気管分岐部に露出し、左主気管支内腔はほぼ閉塞していた。V-A ECMOの補助下に、左主気管支に胆道用stentを挿入した。ECMOについて症例1では灌流量4.0L/min、潅流時間は174分間であった。症例2では潅流量3.4L/min、潅流時間47分間であった。2例共術中異常出血もなく、安定した管理が行えた。気管分岐部腫瘍による換気障害ではECMO下にInterventionを安全かつ簡便に行うことが可能であった。
  • 今西 薫, 井街 宏, 吉戸 浩, 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 筒井 宣政, 藤正 巌, 須磨 幸蔵
    1997 年 26 巻 3 号 p. 668-675
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今回われわれは経皮的左心補助循環装置(MAD Type-5)を臨床応用に即した型, MAD Type-6に設計改良を行った。今回, MAD Type-5およびType-6を臨床応用するため安全性、有効性について検討を行った。MAD Type-6の設計の主な変更点は1)血液ポンプを球形から楕円形とし, カニューレの外径を7,5mmから7mmに減少させると共に金属製のスパイラルを埋没させ強度を増加させた. 内径は5.5mmとした。最大流量規定部位を検討した結果, 流入弁の抵抗が最大流量に影響を与えていた。耐久性は8例の模擬循環回路による30日間の連続運転でシステムの破損は認めなかった。溶血に関してMAD Type-5の溶血指数はCentrifugal Pumpとほぼ同等の結果を示した。雑種成犬を使用した補助効果の検討ではType-6補助ではIABP補助と比較して、より強力な補助効果を認めた。MAD Type-6は有効性, 安全性の点で臨床的に使用可能と考えられた。
  • 西田 正浩, 山根 隆志
    1997 年 26 巻 3 号 p. 676-680
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心血液ポンプにおけるインペラ後面隙間の血液欝滞部の, 潅流効果による解消を目的とするウォッシュアウトホールの設計指標を得るために, これまで計測が困難と思われてきたホール内流れを可視化解析により計測した. ポンプには流れの可視化のために拡大相似模型を用い, レーザシートおよび高速ビデオカメラを用い, 4時刻粒子追跡法により, 速度ベクトルを得, ホール貫流量を算出した. ホール貫流量はポンプ内流れのレイノルズ数および比速度に依存し, 外部抵抗が一定の場合, ホール貫流量と吐出量との比は, ほぼ一定であるが, 一方で, インペラ回転数が一定の場合, ホール貫流量は, 外部流路抵抗の増加と共に増加し, 外部流路抵抗が最大の時, 通常の2倍に達した.
  • 脇坂 佳成, 妙中 義之, 近成 賢一, 中谷 武嗣, 巽 英介, 増澤 徹, 西村 隆, 武輪 能明, 大野 孝, 高野 久輝
    1997 年 26 巻 3 号 p. 681-686
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は長期循環補助用遠心ポンプ(N2)を開発している。N2の抗血栓性能は、バランス・ホールによるインペラ周囲の血液の澱みを軽減する事で獲得している。N2の抗血栓性能と血球破壊に関する性能と血液の凝固能に与える影響について、成山羊3頭を用いて長期連続駆動を行い検討した。各々の山羊においてポンプの交換は行わなかった。実験中の抗凝血療法は、プロトロンビシ時間が50%になる様にワーファリンを経口投与した。N2の連続駆動日数は、それぞれ50日、200日、381日であった。平均バイパス流量は、6.8、5.0、5.2L/minであった。血中ヘモグロビンは術前値の約70%を保った。血漿遊離ヘモグロビン、血小板数、血小板凝集能、アンチトロンビン3、フィブリノーゲンはほぼ正常値を維持した。以上より、N2は抗血栓性能と血球破壊に関する性能と血液の凝固能に与える影響に関して長期循環補助に有用であると考えられた。
  • 藤本 哲男, 真木 康隆, 和久井 秀樹, 泉佳 友子, 梅津 光生, 苗村 潔, 阿久津 敏乃介
    1997 年 26 巻 3 号 p. 687-690
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    心臓弁膜疾患の手術療法に用いられる機械式心臓代用弁の開放期の動特性を検討した. 実験対象とした単葉傾斜型ディスク弁(Bjork-Shiley Monostrut, φ 23)を模擬回路内の僧帽弁位に設置し, その開放角度の時間的変化を高速ビデオカメラにより測定した. その結果, 弁の開放開始初期0~0.02[sec]における同部位の流速が開放期の動特性に影響することが認められた. ディスクに作用する外力を重力, 流体から受ける抗力および揚力と仮定したモーメントに関する考察から流入開始初期における抗力および揚力値の重要性が示唆された.
  • 中谷 武嗣, 笹子 佳門, 野々木 宏, 宮崎 俊一, 公文 啓二, 小坂井 嘉夫, 高野 久輝, 川島 康生
    1997 年 26 巻 3 号 p. 691-698
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Critical careにおける経皮的心肺補助(PCPS)および補助人工心臓(VAS)の適応について, 我々が緊急対応性を考慮して開発した小型集合型人工心肺システム(CICU)および国循型VASを含む経験について報告する. 1990年以降, 急性重症心不全56例にPCPSを, また, 慢性心不全急性増悪例を含む急性重症心不全12例に対しVASを適応した. PCPS例中, 7例が離脱後, 3例が移行後生存した. VAS例では, 心機能の回復を第1とした管理を行った前期3例では全例心機能の改善はみられず死亡した. 全身状態の改善を第1とした管理を行った後期では, 2例が現在施行中であるが, 急性例3例, 急性増悪例2例で心機能の改善を認め, 2例が退院した. Critical careにおける循環不全治療においては, 循環不全が急激に進行する場合と自己心機能の障害が高度な場合が問題であり, PCPSは簡便な循環補助法として有用で, 我々のCICUはこの要求に沿ったものであった. また, 心機能低下が高度な場合には, 症例によってはVASによる長期補助を行うことにより心機能の改善を期待し得る. しかし, 回復不良心に対しては心臓移植の適応やwearable LVASの導入が必要と考える.
  • 冨澤 康子, 野一色 泰晴, 西田 博, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    1997 年 26 巻 3 号 p. 699-703
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管の内皮細胞による被覆は臨床においてはほとんど起こらず、また動物においても著しく遅延することが知られている。これを改善するのを目的に内因性のサイトカインを活性化させ血管新生を促すことにより人工血管内面の治癒を促進するというin vivo組織培養を動物実験にて実証した。布製人工血管に細切した組織片を播種した(処理群)、およびしないもの(対照群)を雑種成犬計20頭の腹部大動脈に植え込み7日間観察し評価した。処理群では人工血管壁を貫通する新生血管および内皮細胞被覆が観察され、全層にわたってbFGFが陽性であったが、対照群では外側のみ陽性で、人工血管壁および内側は陰性であった。細切した組織片を人工血管壁という基礎構築内においてin situで培養することにより内因性サイトカインを活性化し、創傷治癒促進作用を誘導し、またその技術がハイブリヅド型人工臓器に効果的であることが人工血管を用いた短期動物実験において確認できた。
  • 武田 一人, 中本 雅彦, 安永 親生, 合屋 忠信, 柳瀬 正憲, 山中 邦彦, 泉和 雄
    1997 年 26 巻 3 号 p. 704-707
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは非観血的連続ヘマトクリット(Ht)測定装置(CRIT-LINE)を35症例の安定した慢性血液透析患者に使用しその有用性を検討した。CRIT-LINEから得られるHt値と自動分析機(電気抵抗法)により得られたHt値は非常によく相関した。CRIT-LINEからは3つのパターンのグラフが得られた。A群は26例で、透析時間における循環血液量の変化の近似直線の傾きがすべて負であり、透析時間と共に循環血液量が減少していくグラフであり、B群は5例、その傾きがすべて正のグラフ、C群は4例、その傾きが正から負に変わるグラフであった。B群は体液過剰と考えられ、A群とC群は透析後は比較的適切な体液量と考えられた。全身麻酔下での手術予定の3例においてCRIT-LINEにて血圧低下をおこす-ΔBV%値を術前透析にて決定し、術後は体重測定する事なく、術前に確認した-ΔBV%値を超えないようにモニターし、無症状透析を施行できた。CRIT-LINEは体重測定が困難な症例にも有用と考えられた。
  • 中尾 俊之, 岡田 知也
    1997 年 26 巻 3 号 p. 708-712
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析(HD)での除水効率を安全に上昇させることを目的に、限外濾過時に伴う循環血液量変化[ΔBV(%)]や血管再充満率(VRR)を検討した。外来維持透析患者のうち、27%が限外濾過率(UFR)1.0L/時以上の大量除水を必要とした。HD前に浮腫を認める患者は極めて少数であったが、HDでの除水により腹囲は全例でHD後に減少を認めた。CRIT-LINE™により測定したHD中のΔBVは、0,7L/時のUFRで-32%減少した患者を認める一方、溢水症例では0.8L/時のUFRでもΔBVの変化は-3%以内に留まった。HD開始0.5時間後の平均VRRは638ml/時、同2時間後905ml/時であった。1回のHDでの除水率はVRRおよび腹囲減少率とそれぞれ相関関係を認めた。UFRの高いHDを可能にする因子は、BVの保持に及ぼすVRRであり、CRIT-LINE™によるΔBVの測定は、HDでのUFRとVRRの平衝の評価に有用性が高い。
  • ―人工肝臓装置によるアセトアミノフェン代謝の研究―
    中澤 浩二, 水本 博, 井嶋 博之, 松下 琢, 船津 和守
    1997 年 26 巻 3 号 p. 713-718
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    単層培養およびポリウレタンフォーム(PUF)/スフェロイド培養された初代ラット肝細胞は、静置下でアセトアミノフェンをグルクロン酸および硫酸抱合した化合物に変換した。また、PUF/スフェロイド培養肝細胞のアセトアミノフェン代謝活性は単層培養に比べ約2倍高い値を示し、その活性は培養10日間にわたって維持された。さらに、PLTF/スフェロイド充填層型モジユールを利用した灌流培養系を利用することで、スフェロイド肝細胞のアセトアミノフェン代謝活性は、静置培養系の約2倍に向上した。本モジュールのアセトアミノフェンのクリアランスは0.013±0.0101ml/min/module、抽出率は0.0093±0.0018/108cells(g-liver)と算定された。一方、S. D. Studenbergらは摘出ラット肝臓を用いて行った肝灌流実験より、肝臓のアセトアミノフェンの抽出率は0.016±0.005/108cellsと報告している。本装置によって薬物代謝産物やある程度の肝抽出率を予測できることから、本培養技術は医薬品開発における動物実験代替法である薬物代謝シミュレータとして有望であることが示された。
  • ―システムの最適化による治療効果の向上―
    井嶋 博之, 和田 茂久, 中澤 浩二, 松下 琢, 船津 和守
    1997 年 26 巻 3 号 p. 719-723
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    PUF/肝細胞スフェロイド培養系を利用したハイブリッド型人工肝臓(Type 1, モジュール容積:5.65cm3)を開発し、これを含んだ体外循環システムによりD-ガラクトサミン投与量0.5g-D-GalN/kg-ratの肝不全ラットを救命できた。そこで、より重篤な肝不全ラットの回復を目指してシステムの最適化を試みた。モジュール容積を5.65cm3から18.8cm3(Type 2)へ3.3倍スケールアップし、体外循環血液流量およびモジュール側血漿流量をそれぞれ0.5から1.0ml/minおよび3.0から45.0ml/minへと増加させた結果、Type 1モジュールでは救命が不可能であった0.75g-D-GalN/kg-rat, PT=35.9sec(正常値:20sec)の肝不全ラットでも良好な血中アンモニアの代謝解毒が行われ、5例中4例が回復した(回復率80%)。一方肝細胞を含まない人工肝臓を用いた対照実験では血中アンモニア濃度が急激に増加して4例中3例が死亡した(回復率25%)。以上の結果から、重篤な肝不全ラットの救命に対しても本人工肝臓が有効であることが示唆された。
  • ―ウサギ全肝摘出モデルを用いて―
    山本 拓実, 鈴木 雅之, 仲 成幸, 竹下 和良, 石橋 治昭, 小玉 正智
    1997 年 26 巻 3 号 p. 724-728
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ウサギ全肝摘出モデルに対して、3.5×108個のコラーゲンゲル包埋ウサギ肝細胞含有の人工肝モジュール(宿主肝の約4%に相当)を2本用いて体外循環を施行した。肝細胞の体外循環により、アンモニア上昇、プロトロンビン時間の延長は有意に改善した。体外循環5時間後にフィシャー比、ヘパプラスチンテストは低下の抑制を認め、乳酸値は上昇の有意な抑制を認めた。また、アンモニア処理能、PTの改善は、4%肝細胞充填による体外循環に比べて良好な機能を有しており、肝細胞数の増加に伴いより強力な肝機能補助効果が得られた。また、体外循環後の組織学的検討で、腎臓、肺には組織学的変化は認めず、体外循環による宿主への影響は認めなかった。以上の結果から、8%肝細胞含有の人工肝モジュールによる5時間の体外循環は可能であり、アンモニア解毒、凝固能改善など人工肝補助として有用であることが示唆された。
  • 鈴木 聡, 峰島 三千男, 佐藤 雄一, 廣谷 紗千子, 金子 岩和, 佐中 孜, 阿岸 鉄三, 太田 和夫, 増田 利明, 福井 清
    1997 年 26 巻 3 号 p. 729-733
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    次世代人工腎治療の一つとして再循環腹膜透析(Recirculating Peritoneal Dialysis; RPD)を考案し、現在その開発を進めている。RPDは腹膜透析液をダブルルーメンPDカテーテルを用いて体外ヘ一部再循環し、外部ダイアライザにより積極的に溶質除去を図るPDである。今回、この従来からのRPD(基本RPD)に加え、振動RPD,容量変動RPDの変法RPDを導入し、イヌex vivo実験により、その溶質除去特性について検討した。その結果4時間の治療でUNの除去率は基本RPD 12.7±6.2%, 振動RPD20.5±5.3%, 容量変動RPD20.8±5.5%となり、コントロールとしたCAPD3.3±3.9%との間に有意な差が認められた。 また、容量変動RPDは基本RPDに比べても有意に高値を示し、標準的RPDとしての有用性が示唆された。
  • 大西 豪, 小久保 謙一, 酒井 清孝, 福田 誠, 日吉 辰夫
    1997 年 26 巻 3 号 p. 734-738
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在透析に用いられている高透水性の膜の多くは非対称構造を有しておりこのような膜では透析時に溶質透過方向により透過係数が異なる。この原因は非対称膜に見られる濾過方向による阻止率の差であると予想される。この関係を解明すれば血液からは溶質が抜けやすく、透析液からはエンドトキシンなどが侵入しにくい理想的な透析膜の開発が可能になる。そこで溶質にデキストランを用い数種の対称膜、非対称膜についてその阻止率と総括物質移動係数を測定した。その結果、均質膜では濾過方向による阻止率の差はみられず透析時の溶質透過の異方性もみられなかった。中空糸内側に緻密層を有する膜では外側から内側に濾過を行った方が阻止率が小さく、透過係数は大きくなった。中空糸外側に緻密層を有する膜では阻止率、透過係数の大小とも逆になった。したがって、透析時の溶質透過の異方性は非対称膜のみにみられ、その原因は濾過方向による阻止率の違いに起因する。
  • ―超速効型インスリンアナログを用いたclosed-loopインスリン皮下注入アルゴリズムの開発―
    下田 誠也, 西田 健朗, 榊田 典治, 今野 由美, 一ノ瀬 賢司, 上村 毅郎, 上原 昌哉, 七里 元亮
    1997 年 26 巻 3 号 p. 739-743
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    微小針型ブドウ糖センサを備えた携帯型人工膵島の長期臨床応用には、インスリンは皮下注入とする事が望ましい。だが、携帯型人工膵島による速効型インスリン(REG)皮下注入時に生理的インスリン動態を再現することはできない。そこで、超速効型インスリンアナログ(Insulin Lispro)を用い、インスリン皮下吸収モデルを作成、インスリン皮下吸収時の血漿インスリン動態を数値解析し、血糖値に対する比例・微分動作に基づくclosed-loopインスリン皮下注入アルゴリズムを試作した。さらに、simulationに基づき追究した至適パラメータの選択により、本アルゴリズムの応用は、膵全摘糖尿病犬及び糖尿病患者の血糖応答反応を臨床上、有用な範囲に制御し得た。これらの事実は、超速効型インスリンアナログ(Insulin Lispro)を用いたclosed-loopインスリン皮下注入アルゴリズムが、携帯型人工膵島の長期臨床応用において有用かつ安全であることを示唆した。
  • 星野 正巳, 酒井 基広, 三枝 弘志, 西村 洋一, 林 和城, 大澤 寛行, 原口 義座
    1997 年 26 巻 3 号 p. 744-748
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    【目的】急性膵炎例の脂肪代謝は病態評価に有用と思われるが, 血清脂質は血糖値で変動する為、正確な評価には血糖・栄養投与を安定させる必要がある. この目的で人工膵を用いた. 脂肪代謝の特徴, 人工膵の意義を検討した. 【検討項目】対象は急性膵炎10例臓器障害, 代謝量, 耐糖能, 膵酵素等, 脂肪代謝として血清トリグリセリド(TG), 遊離脂肪酸(FFA)を検討した. 【結果】1)I/E(インスリン/エネルギー(グルコース)投与量)比は78±42mIU/kcalと高度耐糖能障害を認めたが1日平均血糖値は180±25mg/dlと良好であった. 2)代謝量とTGに負の相関, 3)臓器障害の進行に伴うTG増加, 4)血中アミラーゼ上昇に伴うTG低下, 5)I/E比増加に伴うFFA増加を認めた. 【考察】TGは代謝亢進, 臓器不全, 膵酵素上昇で変動し、末梢利用や肝産生, 血中での分解によると考えられた. FFAと耐糖能増悪との密接な関連がみられた. 【結語】急性膵炎では脂肪代謝障害がみられ, 人工膵は血糖制御と脂質代謝の評価に有用と考えられた.
  • 谷山 喜昭, 宮坂 武寛, 吉見 靖男, 酒井 清孝
    1997 年 26 巻 3 号 p. 749-751
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    皮下留置を目的としたグルコースセンサーの抱える最大の問題点は、タンパク質や細胞など吸着による応答電流の変化である。グルコースの酸化反応を断続的に行い、濃度勾配の小さい状態で測定すれば、吸着の影響を小さく抑えて定量できると考えた。本研究では、ウシ血清アルブミンとフェロセンカルボキシアルデヒドの結合体をメディエーターとしたグルコースセンサーを用いた。印加電位をパルス的に変化させることで反応を断続的に行い、非定常状態の応答電流とグルコース濃度の相関を求めた。反応初期の非定常状態では、拡散が律速ではなかった。また、非定常状態のグルコース酸化電流はグルコース濃度に依存した。これらの結果より、本センサーを用いて反応をON-OFF制御しながらの測定が可能であることが示唆され、長期利用の可能性が見いだされた。
  • 脇 雅宏, 野尻 知里, 城戸 隆行, 杉山 知子, 石原 一彦, 中林 宣男, 岸田 晶夫, 明石 満, 酒井 清孝
    1997 年 26 巻 3 号 p. 752-755
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓などの人工臓器に用いられる抗血栓性材料の評価法として、蛍光顕微鏡、ビデオカメラ、パラレル・プレート・フロー・チャンバーからなるepifluorescent video microscopy (EVM)法を用いて、抗血栓性発現機構の異なる4種類の材料(HEMA-styreneプロック共重合体、ポリエチレングリコール誘導体、ヒトトロンボモジュリン、MPC共重合体)の抗血栓性を相対的に評価した。蛍光色素で標識した血小板を含むヒト全血をシリンジポンプにより壁ずり速度100sec-1で20分間流し、1分毎に血小板粘着量を測定した。いずれの材料もコントロールに用いたセグメント化ポリウレタンに比べ、有意に血小板粘着を抑制した。また、これまでに発表されている各材料の特性が本実験の結果にも反映され、本実験方法が抗血栓性材料のin vitroにおける相対的評価法として有用であることを確認した。
  • ―スルホン化ポリスチレンに接触した細胞の反応について―
    白尾 美佳, 鈴木 澄子, 後藤 純雄, 中澤 裕之
    1997 年 26 巻 3 号 p. 756-761
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高分子素材表面に細胞が接触した時の活性化の状態を材料表面の接触角や荷電密度を指標にして検討するとともに、細胞側の機能形態が受ける影響について基礎的検討を行うことを目的とした。まず、化学発光検出器を用いて活性酸素の測定を行ったところ、種々の素材で異なる反応を示したが、接触角との相関性は見られなかった。そこで、ポリスチレンのスルホン化処理を行い段階的な改質を行った。スルホン基の導入により、活性酸素産生量は減少傾向を示した。一方、高分子表面への接着率は、スルホン化の影響は受けなかったが、接着時の形態に差が生じた。即ち、未処理のポリスチレンでは細胞の伸展が見られ、スルホン化ポリスチレン上では、浮遊状態に近い形態で表面に接着していた。この時の膜中フォスファチジルコリンの拡散速度にも違いが認められた。
  • 融合細胞の増殖能と機能性の検討
    板垣 英雄, 土井 秀之, 大河内 信弘, 里見 進, 佐藤 俊一, 田口 喜雄
    1997 年 26 巻 3 号 p. 762-766
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、レーザーのマイクロプロセシング技術を応用し、レーザーを用いて顕微鏡下で無菌かつ非接触操作による、目的の細胞と細胞どうしを選択的に融合させる新しい細胞融合法を開発した。そして、マウスのmyeloma cell (SP2)とマウスの脾臓から分離したリンパ球の細胞融合に成功し、融合細胞がHAT培地でも生存し、増殖し続けることを確認した。さらに、融合細胞がIgGを産生していることを免疫法(オクタロニー法)で検出し、融合細胞がIgG産生hybridomaであることを証明した。本法は、極めて少数の目的細胞の、1対1の選択的な細胞融合が高い効率で可能であるという特徴があり、いままでの細胞融合法では融合が難しいとされていた細胞にも応用可能であると考えられる。
  • 嘉悦 勲, 内田 熊男, 鈴木 義彦, 須谷 康一
    1997 年 26 巻 3 号 p. 767-771
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    複雑な神経回路網の機能を細胞レベルで解明するために、細胞の電気的活動を多点同時に測定する方法を検討した。21種類の多点電極培養皿(MED)を用いて、ラットの大脳皮質および海馬の細胞培養を行った。その結果、MED上で2週間以上にわたって大脳皮質切片を培養することができた。また、このMEDを用いて細胞の周期的な活動電位を検出することができた。この活動電位は、5mMのMg2+や50μMのAPVの添加によって抑制された。また、1mm2程度の範囲において、多くの細胞はほぼ完全に同期した活動を生じており、培養が進むにつれ、細胞の活動電位の発生周期は短くなった。培養4日目から培養9日目の間にシナプス結合が急激に増大し、その後もシナプス結合は増大することが示唆された。また、この時同時に並列分散的に情報処理を行う神経回路網が、形成されていくものと推察された。
  • 松井 理佐子, 石川 啓司, 高野 良仁, 片倉 健男
    1997 年 26 巻 3 号 p. 772-778
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    コラーゲンを原料とした止血性、生体親和性、細胞侵入性に優れたハイドロゲル材料を開発した。この材料を難治性の皮膚潰瘍に適用したときの治療効果を客観的に評価するために、まず、創傷治癒遅延モデルの作製を行った。モルモットの背部皮膚に尾側を基部とした5×5cmの有茎皮弁を骨格筋から挙上し、その底部の疎性結合組織を切除した後、元の位置に戻して周囲を縫着した。作製後7日目の皮弁の中央部に2×2cmの皮弁母床に達する欠損創を作製してこれをモデルとした。また、このとき骨格筋に達する皮弁無しの欠損創を対照として作製した。対照が、21日で創閉鎖するのに対し、モデルは28日目でも初めとほぼ同じ創面積を維持した。このモデルにハイドロゲル材料を1回適用すると、創収縮と表皮伸展により28日で創閉鎖が終了した。一方、モデルにハイドロコロイドドレッシング材料を適用すると創部の面積と深度が増大した。
  • 永沼 滋, 山家 智之, 秋保 洋, 小林 信一, 静和 彦, 仁田 新一, 磯山 隆, 稲垣 芳孝
    1997 年 26 巻 3 号 p. 779-784
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    従来臨床に使用されている血液ポンプにはローラーポンプ、遠心ポンプといったものが挙げられるが、それぞれに欠点を持っており、これを解決する目的で新しい血液吐出機構を持つ血液ポンプの開発を行った。初めにプロトタイプポンプとして外周直径40mm、内周直径20mmのドーナツ状の管状流路を呈するハウジング内に直径10mmの鉄製の球(表面プラスチックコーティング)を配置し、これをドーナツ状の管状流路内を回転させることにより、血液を送出させる。球はハウジング下部に配置した永久磁石で磁気的に保持し、この永久磁石をDCブラシレスモータで回転させる機構とした。プロトタイプポンプでは、模擬循環回路で後負荷30mmHgにて流量は約1L/min(球の回転数:600rpm)であった。そこで血液ポンプとして必要な流量を、後負荷100で流量が約4L/minと設定し、ポンプに改良を加えた。改良したポンプは外周直径:66mm、内周直径:45mm、高さ16mmのハウジングとし、内部には直径20mm、高さ15mmの円柱(ローラ)を2個配置した。模擬循環回路にて後負荷100にて流量は約6L/min(回転数で2000rpm)を得ることができた。本ポンプは血液の吐出機構から分類すると遠心ポンプの範疇に入ると考えられるが、これまでのポンプと異なり、ボンプの構造が簡単であることから、物理的磨耗が少なく、耐久性に優れ、また製作する上でも非常に有効であるものと考えられる。
  • 三宅 仁
    1997 年 26 巻 3 号 p. 785-790
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    理想的なアクチュエータである生体骨格筋をモデルとした形状記憶合金(SMA)人工筋肉の改良と、それのロボットアームおよび外部骨格型人工腕(マスターアーム)への応用を目指した。改良型人工筋肉は、従来型と同長かつより変態温度の低いSMAワイヤを用い、安全性、収縮量の増加と集積性を考慮した。アームシステムは、前腕重量の軽減と、肘関節部の構造を見直し、摩擦による損失を低減した。その結果、従来型に比し、収縮量が1.6~2倍になるなど特性が改善された。最大到達角度、最大呈示力、周波数特性等によりアームシステムの評価を行ない、アームの出力向上を確認した。
  • 石川 啓司, 松井 理佐子, 高野 良仁, 片倉 健男
    1997 年 26 巻 3 号 p. 791-797
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体親和性に優れたハイドロゲル材料の調製を試み、また、その医療用途への応用を検討した。アテロコラーゲン溶液にそれぞれの終濃度が0.1mMとなるようにCuCl2とアスコルビン酸を添加し中性条件下で37℃でインキュベートすることにより、半透明な粘弾性のあるコラーゲンハイドロゲルが得られた。このハイドロゲル材料は自重の20~200倍の水分を吸収でき、高い止血性も有した。また、ラット皮下埋入の結果、生体親和性、細胞侵入性、生体吸収性にも優れた材料であることが明らかになった。生体内への留置が可能な材料として幅広い利用が期待できる。
  • 西田 博, 西中 知博, 富岡 秀行, 外山 聡彦, 小寺 孝治郎, 上部 一彦, 大塚 吾郎, 北村 昌也, 青見 茂之, 八田 光弘, ...
    1997 年 26 巻 3 号 p. 798-802
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症心不全の治療体系に占める流量補助タイプの補助循環装置の現況と問題点を考察した。慢性心不全では、最終的受け皿である心臓移植とその前段階の拍動流補助人工心臓の開発、普及に努めるという方向性は明確である。一方、急性心筋梗塞後などの急性心不全に対しては、現在緊急対応性の観点からはほぼ満足すべき状態にあるPCPSも、長期補助の観点からは、全回路のヘパリンコーティングや人工肺の耐久性の改善などのシステムの改良を行っても、左室補助効果における限界など補助形態がVA bypassであることによる、解決し得ない問題点が存在する。このPCPSと拍動流補助心臓を1本の線として連続したものとし、しかも普遍性の高い治療体系を完成させるためには経皮的挿入可能な左室補助装置の開発が必須であると考えられる。また、本邦の補助循環装置の開発では、内科医も含めた臨床的視点や、プロジェクトの絞り込みの作業を進めることが重要である。
  • 市川 由紀夫, 野一色 泰晴, 相馬 民太郎, 小菅 宇之, 山崎 一也, 矢野 善己, 戸部 道雄, 井元 清隆, 近藤 治郎
    1997 年 26 巻 3 号 p. 803-805
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    臨床において布製人工血管の新生内膜形成は術後数年経過しても吻合部からわずかな距離しか認められていない。今回我々が臨床応用した、自家皮下脂肪組織で繊維間隙をシールした高有孔性布製人工血管では、ヒトにおいても術後4ヵ月で弾性繊維網形成を伴い、平滑筋細胞を主体とした内膜が人工血管全長にわたって形成された。また術後10カ月目の摘出標本では、輪状の弾性板形成を伴った、平滑筋細胞を主体とした新生内膜を認めた。現在までに、臨床例において弾性板形成を伴った新生内膜の形成は報告されていない。
  • 川人 宏次, R. BENKOWSKI, 大坪 諭, 布施 勝生, 能勢 之彦, M. E. DEBAKEY
    1997 年 26 巻 3 号 p. 806-810
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Baylor College of Medicineでは小型軸流型補助人工心臓(NASA/DeBakey axial flow VAD)の開発において, 開発の精度、効率、信頼性を高めるため、CAD/CAM/CAE(Computer Aided Design/Manufacturing/Engineering)を導入している。[方法]溶血と血栓形成を抑制し, ポンプ効率を向上させるために, 1. parametric solid modelerによるデザイン, 2. 溶血を惹起するhigh negative pressure area, ポンプ効率を障害するrecirculation area, 血栓形成を惹起する血流停滞部を同定するためのcomputational fluid dynamics analysisを行った。上記より得られた情報に基づいて, CAM soft wareを用いた4軸computer numerically controlled machine milling machineでプロトタイプを作製した。[結果]total system efficiencyは14%、index of hemolysisが0.002g/100Lと良好なポンプ効率と低い溶血を示し, 2週間のex vivo implantにおいて良好な抗血栓性を不した。[結論]軸流型VAD開発におけるCAD/CAM/CAEの導入は, 血液損傷の軽減, 抗血栓性の向上に有用であった。
  • 末田 泰二郎, 平井 伸司, 福永 信太郎, 松浦 雄一郎
    1997 年 26 巻 3 号 p. 811-814
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    次世代型人工肺の開発を目指して実験的検討を行い、以下のごとくハードの開発に知見を得た。1)落差灌流方式シリコン膜型人工肺は肺内圧損が少なく、脱血側の落差のみで血液の酸素加が可能で、臨床応用可能となった。特に脳分離体外循環や拍動流体外循環に有用であった。血液充填量減少の工夫が更に必要である。2)液化フッ素を用いた液一液型人工肺を開発した。液化フッ素の酸素加と血液との接触法の違う3種類の人工肺を試作して検討した。血液の酸素加は可能であったが、炭酸ガスの排出が悪く、また血液と液化フッ素の分離に難点があった。血液との分離が容易な高効率酸素運搬媒体の開発が必要である。3)ポンプ機能を持った血管内植え込み型人工肺を試作した。血液躯出は模擬循環回路内では有効で、酸素交換も可能であった。シリコン膜の弾性強度を挙げ、酸素加効率を上げる必要があった。
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