これまでに,光学ガラスBK7の延性モード研削加工において,単位時間当たりの材料除去量が0.075 mm
3/sec以下で研削抵抗が一定となる条件を見出している.定常的な抵抗が得られる場合,加工に作用する砥粒数は巨視的にみて一定であるとみなすことができる.それゆえ,作用砥粒数を概算して延性モード研削加工における砥粒単体の負荷を評価した.その結果,1) 接線研削抵抗は0.18 mN以下であり,とくに切込みを変化させた場合は約0.13 mNでほぼ一定であった.2)比研削エネルギは減少傾向を示した.3) 平均切りくず厚さは最大でも4 nm以下と概算された.以上の結果より,0.075 mm
3/sec以上の条件でも延性モード研削加工は可能であると考えた.しかし,実際には加工面に熱損傷が生じて加工できなかった.したがって,延性モード研削加工の加工能率の向上を妨げる主要因は,加工に作用する砥粒の切削能力ではなく,工具と被削材の連続接触によるものと考察した.以上より,工具-工作物間に断続的な接触をうながす背分力方向振動の援用が,延性モード加工における加工能率の向上に有効であるとの考えを論じた.
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