CNx膜は優れた機械的および化学的特性を有しているために,工具や摩擦摺動部材などへの適応が期待されている薄膜であるが,作製法および作製時の種々のパラメータに大きく影響をうけてその性質は大きく変化してしまうため,系統だった研究が必要である.本研究はCNx膜を比較的膜質制御の容易である反応性スパッタリング法によって作製する時のN
2分圧と試料台電位が膜の構造と機械的特性に与える影響について検討した.その結果,スパッタガス中へのN
2の添加により,生成物中へのCとNの結合と柱状構造の導入が確認され,N
2の増加に伴い,硬度が低下し,試料台電位をアースにした条件では柱状構造が微細化し,グラファイト成分が増加した.一方,試料台電位をフローティングした場合は,柱状構造が不明瞭になったが,硬度の著しい変化は認められなかった.また,同じスパッタガスを用いた場合,試料台電位をアースした場合において,高い硬度を示した.
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