SUS316は耐食性や耐孔食性に優れており,食品加工設備や医療機器,半導体製造装置,各種分析機器の配管部材として広く用いられている.SUS316への流路加工は,一般的にドリル加工によって行われている.近年,配管部品の小型化が進み,SUS316への小径交差穴加工の需要が高まっている.ドリル加工によって穴交差部に生じたバリは管内を流れる流体のコンタミネ-ションの原因となる.そのため,バリが生じにくいドリル加工が強く求められている.本研究ではSUS316に対して超音波振動援用ドリル加工を行い,超音波振動によるバリ抑制効果を確認した.また,超音波振動によるバリ抑制のメカニズムを明らかにするため,超音波振動が加工穴周辺の金属結晶構造や硬さ分布に与える影響を調べた.その結果,超音波振動によって加工穴底部の金属結晶が微細化して硬さが大きくなり,バリの成長が抑制されることが明らかになった.
紫外線照射や各種研磨条件下で,4H-SiCを研磨したとき,研磨面に生成する酸化物類の相対成分割合をXAFS分析により明らかにするとともに,反応生成物の除去を行うことができる技術的方策を検討した.ここでは,研磨面粗さをRaで0.5 nm,Rzで2 nm以下くらい,酸化物類の残留量を相対成分割合で 1 %以下を最終目標とし,紫外線励起下で4H-SiCの研磨現象を追究し,化学状態の分析を行った.最小の研磨面粗さの追究と最少の酸化物類の生成に対して,技術開発的な知見を得ることを目的とした結果,次のような結言を得ることができる.砥粒が研磨作用面に達しないとき,紫外線を照射すると,SiCの酸化膜ができる.28.8 nmのダイヤモンド砥粒を用い,パッドを網目状にして,硬くすると,酸化物類の相対成分割合の合計が,10 %以下の平滑な研磨面が得られる.砥粒粒径を小さくすると,酸化物類が少なくなるので,5 nmダイヤモンド砥粒や0.5 μm CeO2を用いて研磨すると,研磨面粗さが0.5 nm以下と小さく,界面酸化物が1 %以下,SiO2が0 %の,酸化物類が極少ない研磨面が得られる.
微細ファイバ-を製作できるPELIDを利用してナノダイヤモンド含有ファイバ-ボンド砥石を製作した.製作した砥石の摩擦係数を調査した結果,ナノダイヤモンドを含有させることにより摩擦係数が低減する効果を確認した.また,SD#2000砥粒を用いたナノダイヤモンド含有ファイバ-砥石を製作した.