本研究は,硬脆材料への小径穴あけ加工技術の構築を目的にしており,高加工品位,高加工能率および低加工コストの実現を目指している.工具形状およびク-ラントに関する検討を実施し,加工抵抗の挙動および切りくず付着の課題を解決してきた.本報では,水に光触媒の二酸化チタン粉末を添加した液体をク-ラントとし,この液体に紫外光を照射して発現する光触媒反応を利用して,切りくず付着の抑制に及ぼす効果について調査した.以下に結果を示す.二酸化チタン懸濁液に紫外光を照射すると,光触媒反応が発現し,二酸化チタン懸濁液の親水化が確認できた.この懸濁液に紫外光を照射しながら加工を実施した場合,工具への付着物はほとんど見られなかった.二酸化チタン懸濁液の親水化によって,付着物の量は少なく,スラスト力は小さくなった.
本研究では,地球規模の環境問題や石油資源の枯渇に対応するため,持続可能な原料である竹から形状や成分を高度に制御したファイン竹繊維を作製し,それを用いて高性能で複雑形状の製品を製造することを目指している.ファイン竹繊維(竹切りくず)はマシニングセンタにより竹筒を切削することで作成するが,その際に竹筒の固有振動に起因する強制びびり振動が生じ,繊維形状がばらつく.そして,そのばらつきが製品成形時の加熱ムラにつながり,製品の機械的強度のばらつきや低下を引き起こす.竹筒の強制びびり振動を抑制するためには,竹筒の固有振動数に基づき,主軸回転数と工具の刃数により決定される断続切削周波数を適切に設定する必要がある. ただし,竹筒は楕円断面なため異方性が存在し,エンドミル加工が進むにつれて全高も変化するため,繊維形状に影響する固有振動モ-ド・振動数は逐次変化する.そこで本報では,竹筒の断面の異方性や竹筒の高さ変化を考慮して切削時の音の3要素に基づき固有振動数の推定を試み,強制びびり振動を回避するための指針を考察した.