日本アスレティックトレーニング学会誌
Online ISSN : 2433-572X
Print ISSN : 2432-6623
7 巻, 2 号
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提言書
特集
  • 小笠原 一生
    2022 年 7 巻 2 号 p. 173
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    本特集では,2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピック大会においてアスレティックトレーナー(AT)として活躍された先生方に執筆の労をお願いし,大規模国際スポーツ大会における活動内容を学術的レガシーとして残すことを目的とした.

    まず,玉置龍也先生(横浜市スポーツ医科学センター)から,大会全体にわたる医療サービス体制構築について,保有資格による役割や呼称の定義から,スタッフ確保,教育にいたるまでを包括的にご報告いただいた.続いて,鈴木岳.先生には,選手村フィットネスセンターにおける,医療とトレーニングの連携に基づく包括的なアスリートサポートを具現化された一連の活動について,ハード・空間を含む環境づくりから人材・サービスに至るソフト面までを詳しくご報告いただいた.

    競技会場における活動として,清水結先生(バスケットボール会場,とつか西口整形外科)と鈴木龍大先生(ウェイトリフティング会場,トヨタ記念病院)から,競技会場の医療サービスを統括する立場としての活動をご報告いただいた.バスケットボールでは,特に新競技である3×3では参考となるマニュアルがない状態からの体制構築であり多くの試行錯誤があった.しかし結果的として以降の五輪でのレガシーとなる様々な知見が得られた.一方ウェイトリフティングでは,競技特性を熟知したスタッフやスポーツ現場の経験を持つスタッフが少ないところから体制構築であったが,周到な準備と事前トレーニングにより競技の安全が支援されたことが紹介された.

    夏季五輪での最大の関心事の一つは暑熱対策である.細川由梨先生(早稲田大学スポーツ科学学術院)にはプレホスピタル対応に重点化した東京オリパラにおける労作性熱射病対策の体制構築,スタッフ教育,そして実践を非常に詳しくご説明いただいた.

    選手団の一員としてのAT活動として,岩谷美菜子先生(公益財団法人日本ハンドボール協会,ながい接骨院)にはハンドボールでの活動をご報告いただいた.女子ハンドボールでは,地の利を活かし,選手団内のATと,団外のATの役割を機能的に分け,大会期間中の重篤外傷に対応した事例が紹介された.また,前田准谷先生(国立スポーツ科学センター)にはパラリンピック車椅子テニスでの活動を報告いただき,選手個別の身体状態に合わせたコンディショニングや,用具を含めた個別環境への対応など,パラ競技特有の配慮事項に対するATとしての役割をわかりやすくご紹介いただいた.

    新型コロナ感染症の影響下で,かつ開催が1年延期となった東京オリパラ2020であった.依然として高度な感染症対策が求められる中での活動は本邦のアスレティックトレーニングの歴史に残るものであり,極めて貴重な資料である.本特集が今後の大規模国際スポーツ大会におけるAT活動に貢献することを祈念する.

  • 玉置 龍也, 遠山 美和子, 片寄 正樹
    2022 年 7 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    オリンピック競技大会及びパラリンピック競技大会では,大会施設においてすべてのステークホルダーに対する医療サービスの提供が求められる.特に選手向け医療サービスでは,通常の医療に加えて,競技エリア(FOP)における適切な救急対応,あるいは選手のパフォーマンスをサポートするサービス内容の提供が必要となる.東京大会では,多様な職種が連携してこれらのサービスを提供し,選手の包括的サポートを実現した.

  • 鈴木 岳.
    2022 年 7 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    東京オリンピック・パラリンピックおける選手村内フィットネスセンターは,「医療連携によるトータルコンディショニングサポート」を実現すべく,下記3つの取り組みを行った.

    ・ポリクリニックとの連携

    ・円滑なトータルコンディショニングオペレーションを考慮したトレーニング機器選定と空間デザイン

    ・アスレティックトレーナー(AT),およびストレングスコーチ(SC)によるアスリートサポート

    本講義では,この取り組みの具体的活動報告とATの新たなプロフェッショナリズムについて述べる.

  • 清水 結, 中田 周兵
    2022 年 7 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    本稿では,東京2020オリンピック競技大会におけるバスケットボール(5人制・3×3)競技会場での活動を報告する.トレーナーとして本大会に参加したのは54名で,多くは国内トップリーグなどに所属し,英語スキルや医療資格を有していた.5人制と3×3で競技ルールは異なり,特にFOP内でメディカルスタッフに求められる役割は大きく違った.そのため,3×3の準備段階でドクターやトレーナーが様々な場面を想定しながら人員や備品の配置,緊急時の対応計画などを構築した.

  • 鈴木 龍大, 平山 邦明
    2022 年 7 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    本稿では東京オリンピックウエイトリフティング競技会場における選手用医療について報告する.本大会に向けた準備や実際の指揮系統,会場レイアウト,資機材についてまとめた.大会期間中,参加選手の重篤な外傷や救急搬送事例は生じなかったが,132名の選手と大会役員に医療サービスを提供した.

  • 細川 由梨
    2022 年 7 巻 2 号 p. 201-207
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    労作性熱射病の予後は中枢神経障害を伴う深部体温40°C以上の状態が30分以上続くと悪化するとされている.そのため病院搬送前から積極的な治療をすることが望ましいが,日本においては医療制度の観点から病院外での治療の実践が極めて困難な実態がある.他方で大型スポーツ大会においては本邦においても医療者が現場に配属していることから,その特性を活かせば労作性熱射病のプレホスピタル対応の実践が可能な場合もある.

  • 岩谷 美菜子, 小笠原 一生, 高野内 俊也
    2022 年 7 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    東京オリパラ期間中のアスレティックトレーナーらによる女子代表ハンドボールチームへのサポート活動を報告する.コンタクトスポーツというハンドボールの競技特性上,日々のコンディショニングと急性外傷対応が課題であり,これに組織力で対応するため,工夫を凝らしたメディカルスタッフの配置と連携を実施した.東京オリパラでの経験はこれからのハンドボール国際大会のサポートモデルケースとして機能すると考えられた.

  • 前田 准谷
    2022 年 7 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    スポーツ庁の受託事業であるハイパフォーマンス・サポート事業ではメダルの獲得が期待される競技をターゲットとして,多方面から専門的かつ高度な支援を戦略的・包括的に行うハイパフォーマンス・サポート事業を実施し,(1)強化合宿や競技大会における動作分析,ゲーム分析,情報収集,栄養サポート,コンディショニングサポート,心理サポートなど,各分野の専門スタッフによる,スポーツ医・科学,情報等を活用したアスリート支援,(2)オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたサポート体制の準備等を行っている」としている.

    また,パラアスリートは様々な障害を持ち合わせているため,サポートするにあたり選手の身体面だけでなく義足や車いすなどのマテリアルの特徴を理解し,選手の残存機能に合わせたトレーニングプログラムを作成し,パフォーマンスアップに繋げなければならない.

原著
  • 二瓶 伊浩, 仁賀 定雄
    2022 年 7 巻 2 号 p. 219-226
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    Groin pain症例(GP)においてMRI所見のsuperior cleft signまたはsecondary cleft signは復帰が長引くことに有意に関連する独立因子である.本研究はMRIを撮像した16〜40歳のGPでpelvic mobilityテスト(PM)を実施した300例(股関節関連GPは除外)を対象とし,GPの臨床所見評価においてPMの有用性を1.cleft sign(CS)の有無におけるPM陽性率 2.疼痛部位とPM陽性側のlaterality関連性 3.PM陽性が復帰までの期間に及ぼす影響の3点から検討した.CSを認めた群は認めない群よりPM陽性率が高かった(p<0.01).疼痛部位とPM陽性側のlaterality関連性は認めなかった.CSを認めたPM陽性例はCSを認めたPM陰性例,CSを認めなかったPM陽性例と陰性例の3群に対して復帰までの期間が有意に長かった(p<0.05, p<0.001, p<0.01).GPの臨床所見評価としてPMは有用であると考える.

  • 加治木 政伸, 箱﨑 太誠, 刑部 純平
    2022 年 7 巻 2 号 p. 227-234
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    本研究は,足関節底屈筋群へのフォームローリング(FR)実施時の振動の有無が,荷重位および非荷重位における足関節背屈可動域,腓腹筋の硬さに及ぼす影響を比較検討した.また,介入後の筋の硬さの経時的変化を調査した.その結果,3分間の介入によって,荷重位での背屈可動域は介入前後で有意に増加したが(P<0.05),非荷重位での背屈可動域および筋の硬さは介入前後で有意に変化しなかった(P>0.05).また,全ての測定項目において,条件間(振動の有無)に有意差はなかった(P>0.05).足関節底屈筋群へのFRは,荷重位における足関節背屈可動域の改善に効果的であるが,振動刺激の付加的な効果はないことを示唆した.

原著
  • 萩原 麻耶, 眞下 苑子, 吉井 大樹, 本間 崇教, 白木 仁
    2022 年 7 巻 2 号 p. 235-242
    発行日: 2022/04/30
    公開日: 2022/06/05
    ジャーナル フリー

    アマチュアサッカー選手の股関節痛の調査は少なく,発生状況が明らかではない.本研究ではアマチュア選手における股関節痛の実態調査を37週間行い,股関節痛の発生数がプロ選手と同様であるのか,またtime lossに至る股関節痛がどの程度あるのかを明らかにすることを目的とした.調査期間は2017年1月から10月までとし,その期間を準備期と試合期に分け検証した結果,股関節痛の発生件数が50件(4.36/1000 player hours)で,time lossに至った股関節痛は11件(22.0%)であった.また,疼痛発生数が準備期の終盤から試合期にかけて増加傾向にあり,股関節痛の既往歴のある選手だけに股関節痛が確認された.その結果,アマチュア選手でもプロ選手と同程度の股関節痛の発生数が示された.

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