1969年4月頃から新潟県下に発生した,豚の慢性下痢症の原因について検索した結果,
Vibrio coli(豚赤痢菌)の感染による豚赤痢であることを確認した。
1. 発生は白根市,小千谷市,長岡市および南蒲原郡下田村の4ヵ市町村,13戸の養豚場でみられ,517頭に本症の感染を確認した。下痢は体重15kg∼90kgのものにみとめたが,とくに15kg∼50kgの子豚に集中してみられた。
2. 臨床所見としては糞便に粘液,血液を含み,赤褐色のゼリー状感を有する下痢便の排出が主にみられたが,単に軟泥状便を排出するものなどもあり,さまざまであつた。しかし,これらの糞便は潜血反応では陽性を示した。
3. 病理解剖学所見の主病変は消化器系,とくに大腸のカタール性出血性炎を主徴とした。
4. 発病豚からの
Vibrio coliの分離は10%ヒツジ血液加寒天培地をもちい,N
2: 85%, CO
2: 10%, O
2: 5%混合ガス下で72時間培養で非溶血性,透明小集落としてみとめられ,21例の下痢材料中18例(85.7%)から分離された。
5. 分離菌(
Vibrio coli) 36株の発育に関しては,血液寒天培地のほか,trypticaseとcysteineの存在する半流動培地(CTA培地)での発育が,他の培地より優れていることが知られ,H
2S産生能も種々の培地で検討することにより,すべての株に陽性となることが知られた。
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