ブドウ球菌L-form STA-EMT-1株の増殖および集落形態に及ぼす馬血清,NaClおよび白糖の影響を,大腸菌L-formとの比較のうえで,固形培地上で検討した。
1. 馬血清については,5%以上の添加で増殖はもつともよく,1∼3%の添加では増殖は悪くなり,添加しないとさらに悪くなるが,なお増殖可能であつた。これを形態学的に観察すると,10%添加では定型的な集落形態を示したが,5%添加では,暗い中心部がやや縮小する傾向があり,3%にすると中心部はさらに縮小すると同時に,その境界が不鮮明となり,1%にすると中心部はほとんど消失し,まつたく添加しないと,集落周辺は不定形となり,中心部はまつたく消失した。
2. 白糖については,検討した5∼15%の濃度の範囲では,まつたく増殖不可能であつた。
3. NaClについてみると,3%以上の添加では,増殖はもつともよく,2%に濃度を下げると増殖は悪くなり,1%以下ではまつたく増殖不能であつた。これを集落形態のうえから観察すると,3%以上添加の場合はほぼ定型的な集落形態を示したが,2%添加では,暗い中心部が縮小する傾向を示した。
以上の成績より,ブ菌L-formの培養には,brain heart infusionを基礎培地として,これに馬血清を10%,NaClを5%,中外特殊寒天を1%に加えることが,もつとも好ましいと考えられる。
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