Staphylococcus aureusとその類縁菌を用いてDNA-DNAハイブリッド形成の測定を行い,それぞれの菌の全DNAの類縁関係を検討した。
まず
Staphylococcusと
Micrococcusとの間の全DNAの対合相同性は,
S. aureus209pを基準(100%)とした場合,
Micrococcus luteusは6%のDNA相同値を示し,
S. aureus S-6を基準とした場合は28%であつた。したがつて,この2菌属間のDNAの類縁性はきわめて低いと判断された。
さらに
S. aureusと
S. epidermidisの同属の異種間においても,
S. aureus 209pを基準とした場合,
S. aureus 9株が52%以上のDNA相同値を示したのに対し,
S. epidermidis 5株は25∼43%の相同値を示し,これら2菌種間の類縁性は低いことが認められた。
一方,
S. aureusの同一種内においては,Enterotoxin産生株と非産生株との間にある程度の相同性の差異が認められた。すなわち,Enterotoxin産生株である
S. aureus S-6 (Enterotoxin type B産生)を基準とした場合,Enterotoxin産生株
S. aureus 100, 196E, S-6, 243, 137, 361, 472(それぞれEnterotoxin type A, A+B, B, B, C
1, C
2, D産生)はいずれも80%以上のDNA相同値を示したのに対し,非産生株
S. aureus 209p, 184はそれぞれ69, 63%の相同値であつた。一方,Enterotoxin非産生株である
S. aureus 209pを基準とした場合,
S. aureus 209p, 184の100, 87%の相同値に対し,上記Enterotoxin産生7株はいずれも52∼75%の範囲に入る相同値を示した。したがつて,DNAの相同性はEnterotoxin産生能と関連性を持ちえることが推定された。
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