Bacillus cereus の芽胞表面に存在するフィラメント状アペンデジを, チオグリコール酸ナトリウムにより未断片のまま芽胞より分離し, ガラス線維滬紙とメンブレンフィルターを使った滬過により精製した。本標品は電子顕微鏡による観察, SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE), アミノ酸分析による検討から, アペンデジの基本構造には影響なく分離され, 純度もかなり高いことが示された。この未断片化アペンデジについてNaOHでの断片化と可溶化を試み, アペンデジの構造と特徴について調べた。
アペンデジは, SDSや2-メルカプトエタノール (ME) では溶解されなかったが, 2N NaOHにより30Cで処理した場合には, 処理時間に応じてアペンデジの断片化が進んだ。断片化アペンデジは直線状の管状構造を呈し, らせん状またはディスク状のサブユニット配列を示した。2∼10時間の処理では断片化と同時に可溶化がおこり, サブユニットたんぱくはゲル内沈降反応で抗アペンデジ抗体に対して1本の沈降線を形成した。また, SDS-PAGEから推測したサブユニットの分子量は約10kDaであり, 免疫電顕法による検索では, それはアペンデジ全体に分布していた。24時間処理した場合, サブユニットたんぱくの抗原性は消失した。アペンデジや未処理芽胞は, ヒツジやモルモットの赤血球に対して凝集活性を示さなかった。
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