日本細菌学雑誌
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50 巻 , 4 号
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  • 前田 浩
    1995 年 50 巻 4 号 p. 921-936
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    古くより細菌や真菌の菌体外に産生されるプロテアーゼが感染宿主の組織破壊と病原性微生物の体内への侵襲に関与することは知られていたが,その分子レベルでの作用は明らかでなかった。また,感染局所の痛みや浮腫といった宿主の感染における基本的な徴候が如何なるメカニズムによるかも不明であった。更にまた,細菌とウイルスの複合感染系における重篤化のメカニズムも充分には理解されていなかった。著者らはこれらの問題の背景には微生物の産生するプロテアーゼが深く関わっていることを明らかにした。そのうち最も重要なものとして,炎症反応のメディエーターであるブラジキニン産生カスケードが誘起されることがあげられる。ブラジキニン産生は,微生物プロテアーゼによって宿主体内で間接的に引き起こされる普遍的な事象の一つであることがわかってきた。これは,また,エンドトキシンショックや菌血症の成因にもなっていることも明らかになった。本稿では,このような微生物プロテアーゼによって,直接的,間接的に宿主のプロテアーゼが活性化され,そのことにより多面的に感染症の病態が増悪する例を中心に記した。
  • 菅井 基行
    1995 年 50 巻 4 号 p. 937-946
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ブドウ球菌性熱症様皮膚症候群の患者から得た黄色ブドウ球菌の培養上清より表皮ケラチノサイトの分化を抑制する因子を見出し,epidermal cell differentiation inhibitor (EDIN)と名付けた。EDINは分子量27,000の蛋白質で培養ヒト表皮ケラチノサイトの分化を抑制し,増殖を促進した。またEDINはマウス皮内投与により,表皮の-過性の過形成を引き起こした。EDINは遺伝子クローニングの結果,Clostridium botulinumの産生するADP-ribosyltransferase C3と相同性があることがわかった。EDINはC3と同様,動物細胞に広く分布する低分子量G蛋白質RhoをモノADP-リボシル化することが明らかにされた。C3はEDINと同様に培養ヒト表皮ケラチノサイトの分化を抑制し,マウス表皮の過形成を誘導した。このことから,EDINは表皮ケラチノサイトのRhoあるいは類似の蛋白質をADP-リボシル化することにより表皮ケラチノサイトの分化を抑制し,増殖を促進させることが示唆された。EDINやC3は細菌が産生する低分子量G蛋白質Rhoを修飾する病原因子のスーパーファミリーに属すると考えられる。
  • 津田 雅孝
    1995 年 50 巻 4 号 p. 947-959
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    多彩で強力な物質分解能を持つシュードモナス属細菌は,分解遺伝子群を大規模に再編成化させることで分解能をさらに多様化・強化させる。本属細菌の3種のプラスミド上でこのような再編成化現象を示す難分解性化合物分解遺伝子群はトランスポゾン上に担われ,いずれの分解トランスポゾンとも,ある種の薬剤・重金属耐性トランスポゾンと祖先を共通にするII型のトランスポゾンであることを述べる。さらに,これら分解トランスポゾンの成立機構と生物学的意義について考察する。一方,トランスポゾンを用いたシュードモナス属細菌の各種遺伝解析系を構築し,緑膿菌の病原因子である鞭毛や鉄獲得系の遺伝子群の構成や発現制御機構などを検討してきた。この中でも,緑膿菌が鉄獲得のために菌体外に放出するシデロフォアであるピオベルジンの産生について,環境中鉄濃度による制御機構を述べる。最近の研究により,ピオベルジンの菌体外放出系が本菌の多剤耐性を司る薬剤排出系に関わることが指摘され,また,ピオベルジンを介した鉄獲得系の発現制御は,他の病原因子の発現制御と相互作用を持っていることが明らかになってきた。
  • 長田 久美子, 高木 絵理子, 田村 俊秀
    1995 年 50 巻 4 号 p. 961-970
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    H.pyloriは極めて多量のウレアーゼを有しており,ウレアーゼの尿素に対する親和性は強く,その細胞内局在性は他の腸内細菌と異なり細胞質内だけでなく外膜にも存在する。ウレアーゼの遺伝子は9つの遺伝子群によって支配されており,その遺伝子のDNA配列には株間でバラツキが見られ,そのことは疫学的研究に応用されている。プロトンポンプ阻害剤(PPI)は,H.pyloriのウレアーゼ活性を阻害し,その阻害作用はウレアーゼの活性中心に関与するシステインのSH基のブロックによるものと考えられる。PPIはH.pyloriの増殖を特異的に阻害するが,その増殖阻害とウレアーゼの阻害には関連がない。H.pyloriのウレアーゼは病原因子の一つであり,産生されるアンモニアは胃粘膜に障害をあたえたり,菌の定着に重要な役割をしている。H.pyloriのウレアーゼ活性を中和する抗ウレアーゼモノクローナル抗体について述べ,ポリクローナルな抗体と比較した。
  • 岡部 昭延, 松下 治, 南 純三朗
    1995 年 50 巻 4 号 p. 971-989
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    亜鉛結合性メタロプロテアーゼの研究は近年めざましい進歩を遂げた。構造遺伝子の塩基配列の情報からメタロプロテアーゼが予測され,メタロプロテアーゼとしての機能が浮き彫りにされてきたことが飛躍的な発展の原動力となっている。本酵素は原核生物,真核生物いずれにも幅広く存在している。構成タンパク,機能タンパクを特異的に分解する真核生物のメタロプロテアーゼはそれぞれの個体において重要な生理的役割を果たしている。一方細菌の産生するメタロプロテアーゼは宿主の構成タンパク,あるいは感染防御上重要なタンパクを分解し,病原因子として働くものが多い。その基質特異性は非常に厳密なものもあるが,真核生物のものに比べると一般にかなり幅広い。このことは病原因子としてはむしろ適していると考えられる。しかし,細菌自身の生命現象にとって重要な触媒作用を有する酵素が存在している可能性もある。今後の細菌性メタロプロテアーゼ研究の進展にとって多面的な視点とアプローチが必要と考えられる。
  • 結城 伸泰
    1995 年 50 巻 4 号 p. 991-1003
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    自己免疫性神経疾患ギラン・バレー症侯群,フィッシャー症候群の先行感染の病原体として,下痢症の起因菌Campylobacter jejuniが知られている。著者らは,C.jejuni腸炎後ギラン・バレー症侯群患者の急性期の血清中にGM1ガングリオシドに対する自己抗体を見いだした。ギラン・バレー症侯群患者から分離されたC.jejuniのリポ多糖が,GM1ガングリオシドと共通する[Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ1-]構造を有することを明らかにした。また,フィッシャー症候群患者の血清中には抗GQ1bガングリオシド抗体がみられるが,フィッシャー症侯群患者由来のC.jejuniのリポ多糖がGQ1bエピトープを有することを示した。C.jejuni腸炎後ギラン・バレー症侯群,フィッシャー症候群の発症機序として,GM1,GQ1b様リポ多糖を有するC.jejuniに感染し,抗GM1抗体,抗GQ1b抗体が産生され,神経系に存在するGM1,GQ1bエピトープに自己抗体が結合し,ニューロンの機能が障害され,発症に至ると考えられる。
  • 島田 俊雄, 荒川 英二, 竹田 美文
    1995 年 50 巻 4 号 p. 1005-1017
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1992年10月,インドの南部マドラスにおいて,Vibrio cholerae non-O1によるコレラ様下痢症の大流行が発生した。この流行はまたたく間にベンガル湾沿いにカルカッタへも波及し,同年12月から翌年1月にかけて,隣国のバングラデシュにおいても同様のnon-O1コレラ菌によるコレラ様下痢症の大流行が起こった。カルカッタのNational Institute of cholera and Enteric DiseasesとダッカのInternational Centre for Diarrhoeal Disease Research, Bangladeshの要請を受けた国立予防衛生研究所・腸管系細菌室で調べた結果,このnon-O1コレラ菌は新しい血清型に属することがわかり,筆者らはこの菌にVibrio cholerae O139 Bengalという名称を与えた。本総説では新型コレラ菌V. cholerae O139 Bengal(O139ベンガル型コレラ菌)誕生の経緯と,この新型菌によるコレラ流行の状況を概説すると共に,O139ベンガル型コレラ菌の性状および同定法について概説した。
  • 日本細菌学会
    1995 年 50 巻 4 号 p. 1019-1031
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 池脇 信直
    1995 年 50 巻 4 号 p. 1033-1037
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    モノクローナル抗体(mNI-58)の単球系細胞株(U937細胞)に対する形態変化について検討し,以下の結果を得た。本抗体は細胞の分化調整剤であるPMAで刺激されたU937細胞に対して著明にマクロファージ様の形態変化(spread形成)を誘導した。このspread形成はサイトカラシンD,サイクロヘキシミドで完全に,また,LFA-1β(CD18)に対するmAbで部分的に阻害された。以上の結果はmNI-58が結合した細胞膜表面レセプーからのシグナルトランスダクションがPMA刺激U937細胞の細胞骨格の調整およびspread形成に密接に関与していることを示唆している。
  • 1995 年 50 巻 4 号 p. 1039-1092
    発行日: 1995/10/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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