日本細菌学雑誌
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50 巻, 2 号
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  • 林 哲也
    1995 年 50 巻 2 号 p. 391-401
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    緑膿菌は広い細胞毒性を示す蛋白質毒素サイトトキシンを産生する。本毒素は菌体内にプロトキシンとして産生され,溶菌に伴って菌体外に放出される。その後,C末端のプロセッシングにより活性型毒素となる。本毒素はpore-forming toxinの1つとされ,細胞膜上で5量体のオリゴマーを形成することにより毒素活性を示すと考えられる。本毒素遺伝子は溶原ファージのゲノム上に存在し,ファージ変換によって毒素産生性が伝達される。サイトトキシン変換ファージの1つφCTXは,ユニークなサイトトキシン遺伝子の存在部位など特徴的なゲノム構造を有し,染色体上のセリンtRNA遺伝子上に溶原化する。また,φCTXは一定のLPSコア構造をレセプターとして認識し,この性質を利用して緑膿菌LPSコア構造を規定する遺伝子座が初めて同定された。これまでに分離したサイトトキシン変換ファージはいずれもRピオシン関連ファージと呼ばれる緑膿菌ファージ群に属し,サイトトキシン遺伝子はこのファージ群の進化過程で緑膿菌以外の菌種よりファージゲノム上に取り込まれたものと考えられる。
  • 染谷 雄一, 山口 明人
    1995 年 50 巻 2 号 p. 403-421
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    近年,数多くの薬剤排出系が様々な菌種に見いだされ,有力な化学療法剤耐性機構として認識されつつある。特に,臨床上問題視されているMRSAや緑膿菌などの多剤耐性菌に薬剤排出蛋白が多く存在することは注目すべきである。遺伝子解析により多くの排出蛋白のアミノ酸配列が明らかにされた。薬剤排出蛋白はいずれも細胞質膜に存在するが,薬剤排出のエネルギー源として,H+の電気化学的勾配を用いるものと,ATPを用いるものと2種類ある。また,構造上関連性のない多種の薬剤を認識し排出する多剤排出蛋白の存在が排出による薬剤耐性のひとつの特徴であるが,特異性の高い排出蛋白との間で一次配列の相同性が高く,多剤排出蛋白がどのように基質を認識しているのか興味が持たれる。抗生物質を生産する放線菌に見いだされた薬剤排出蛋白は細菌の排出蛋白と類似し,その起源のひとつと考えられる。一方,緑膿菌や大腸菌などは染色体上に内在性多剤排出蛋白をもち,これらの発現量の増加も排出耐性の一因である。今日,哺乳動物などの高等生物においても,P糖蛋白質や生体アミン輸送体といった,細菌,放線菌の薬剤排出蛋白と高い相同性をもつ薬物輸送体が普遍的に存在することが知られてきている。このように,生物に普遍的に存在する薬剤排出蛋白は,生体における異物の認識排除機構の担い手であると考えられる。
  • 平山 壽哉, 和田 昭裕
    1995 年 50 巻 2 号 p. 423-434
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    細菌性下痢毒素による水様性下痢の発症メカニズムについて,とくに腸管上皮におけるCl-の分泌促進に嚢胞性線維症遺伝子由来蛋白質(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR)Cl-チャンネルが関与する成績が集積されつつある。すなわち,毒素作用によって生じた環状ヌクレオチドに応答してAキナーゼがCFTR Cl-チャンネルをリン酸化し,Cl-の流出を促すものである。コレラ毒素や毒素原性大腸菌耐熱性エンテロトキシンは,毒作用の初期効果としてそれぞれサイクリックAMP,サイクリックGMPを増加させる。コレラ毒素がガンゲリオシッドGM1に結合し,ADP-リボシルトランスフェラーゼ活性によってアデニル酸シクラーゼを活性化される詳細はよく解明されている。毒素受容体と活性化される酵素が一体となっている膜結合型グアニル酸シクラーゼが毒素原性大腸菌耐熱性エンテロトキシンによって活性化されるしくみも明らかにされようとしている。
  • 松浦 基博
    1995 年 50 巻 2 号 p. 435-449
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンドトキシンは生体にとって有益な作用から障害的な作用にまで及ぶ,極めて多彩な活性を示す。その活性発現には,生体細胞より産生放出される種々の仲介物質の作用が介在していることが明らかになってきている。その仲介物質として,エンドトキシンの主要な標的細胞であるマクロファージ系細胞から産生放出される,TNFαやIL-1を始めIL-6,IL-8,IFNα/γ,CSFなどのサイトカイン類が大きな位置を占めていると考えられ,その役割の解明が進められている。これらサイトカインは各々が複数の活性を発現し,相互に関連し合うため,活性の発現が複雑多岐にわたり,また,活性が過剰に発現された場合には障害的な活性を発現することになると考えられている。サイトカインの産生や作用を抑制することによって,エンドトキシンショックの治療を目指す研究も進められている。また,エンドトキシン刺激によるサイトカイン産生のための細胞レベルでの刺激伝達機構に関する研究も急速に発展している。
  • 川原 一芳, 一色 恭徳
    1995 年 50 巻 2 号 p. 451-469
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    グラム陰性細菌のLPS(内毒素)の構造については古くからよく研究されてきたが,近年の機器分析技術の発達によりLPSの化学構造にはこれまで考えられていた以上に多様性があることがわかってきた。内毒素の活性中心であるリピドAについては脂肪酸の種類や結合位置およびバックボーンのアミノ糖の種類などに菌種による違いがみられる。特にProteobacteriaのα-2グループに属する細菌群ではこれまでの概念を大きく変えるようなリピドAが見出されている。これらのリピドAをアンタゴニストとして利用するための研究も行なわれている。一方,コア部分の糖鎖構造についても新しい知見が蓄積されてきた。リピドAとコアを結合する内部コアにはKDOとその誘導体や類縁糖から成る新しい糖鎖構造が見つかっており,それらが種あるいは属特異的抗原性を発現している。また細胞内寄生性細菌のLPSコア糖鎖の中には宿主の細胞表面の糖脂質と同一の構造と抗原性をもつものがあることが明らかになってきた。
  • 下田 雅子, 大木 一憲, 小橋 修
    1995 年 50 巻 2 号 p. 471-480
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    食細胞の示す酸素非依存性殺菌に関与するペプチドの1つであるデフェンシンは好中球一次顆粒の主要構成成分である。デフェンシンはウサギ肺胞マクロファージ,ヒトおよびマウスの小腸Paneth細胞にも存在し,局所における防御機構にも貢献していると考えられている。デフェンシンは細菌・真菌・マイコバクテリア・ウイルス・スピロヘータをはじめ正常細胞および腫瘍細胞に対して殺滅作用を示す。デフェンシンはイオンチャンネルを標的細胞膜上に形成し膜透過性を変える。その細胞膜障害機構は仮説の域を出ないが,基本的に二量体構造をとり,1)二量体が直接膜に障害を与える,または2)標的細胞膜内に複数の二量体一二量体複合体から成る孔(pore)を形成し透過性を亢進する等のモデルが提唱されている。また,デフェンシンに対する感受性と菌の病原性との関係,各炎症疾患とデフェンシン血中濃度との関係なども近年明らかにされつつある。
  • 喜多 英二
    1995 年 50 巻 2 号 p. 481-490
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 松山 東平, 松下 貢
    1995 年 50 巻 2 号 p. 491-500
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 新しい細菌性スーパー抗原を中心に
    三好・秋山 徹, 内山 竹彦
    1995 年 50 巻 2 号 p. 501-508
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • ストレプトリジンOにより形成される赤血球膜の孔
    関矢 加智子
    1995 年 50 巻 2 号 p. 509-517
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 福長 将仁
    1995 年 50 巻 2 号 p. 519-524
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 金井 興美
    1995 年 50 巻 2 号 p. 525-536
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 吉田 孝治, 高橋 勇, 澤田 拓士
    1995 年 50 巻 2 号 p. 537-545
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    豚におけるサルモネラの保菌率は,家畜の中でも高いといわれており,公衆衛生上からも問題視されている。しかし国内における豚のサルモネラ保菌に関し,長年にわたり多数の検体を調査した成績はない。著者らは,東京都,埼玉県および茨城県の3ヶ所の食肉衛生検査所において豚のサルモネラ保菌調査を1975年∼79年(70年代後半期)と1984∼89年(80年代後半期)の延べ11年間にわたり行った。採材は出荷業者毎に区分したグループ単位で行い,1グループから健康な個体を対象として4∼5頭を無作為に選出した。調査は70年代後半期に計271グループの1,341頭,80年代後半期に計345グループの1,717頭で,総計616グループ,3,058頭の盲腸内容からサルモネラの検出を試みた。その結果,13.3%(408頭)からサルモネラが検出された。検出期間別でみると,70年代後半期には23.1%であったが,80年代後半期には5.7%と明らかに検出率の低下が認められた。また,グループ別での検出率をみても70年代後半期には52.0%であったが,80年代後半期には17.1%と,ほぼ3分の1に減少した。検出されたサルモネラの合計は1,037株で,血清型は28種であった。それらのうち主な型はSalmonella typhimuriumが26.1%,S.derbyが25.4%,S.londonが9.5%であった。しかし,各血清型の検出率は調査年次により変動がみられた。また,1頭から複数の血清型が分離された例は2種が37頭(9.1%),3種が1頭(0.2%)であったが,これらの38頭中S.typhimuriumあるいはS.derbyが含まれていたものが27頭であった。以上のように,豚におけるサルモネラの検出率は,70年代後半期には比較的高かったが,80年代後半期には急激な減少が認められた。これらは全国的な豚のサルモネラ保菌の傾向の一端を示しているものと考えられた。
  • 天野 憲一, 京野 かおり, 柴田 淑子
    1995 年 50 巻 2 号 p. 547-550
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    主要な食中毒原因菌であるCampylobacter jejuniの血清型別に用いられているLior血清型標準株30株及び臨床分離株17株の持つLPSの分子量を比較するために,SDS-PAGEで泳動し,銀染色を行った。その結果,使用した全菌株のLPSは腸内細菌のR変異株のLPSと同様に低分子領域に1本のバンドとして泳動されており,高分子領域に階段状のバンドは示されなかった。Salmonella minnesota R変異株のLPSとの比較で,C.jejuniのLPSは3900∼5300の間の分子量を示した。同一血清型の臨床分離株との比較では,8種類の血清型を比較した中で,2種のみが標準株と臨床株のLPSの移動度が一致しており,他の6種は異なっていた。この結果より,Lior血清型別で分類された臨床株は標準株のLPSとは必ずしも同一のLPSを持っていないことが明らかになった。この事実は,以前から言われているLior法とPenner法の間には関連性がないことを支持する結果となった。
  • 中澤 宗生, 片岡 康, 大宅 辰夫
    1995 年 50 巻 2 号 p. 551-555
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ブタの浮腫病の原因菌である腸管毒血症性大腸菌O群139のHEp-2細胞への付着性を検討した。その結果,供試したO群139の計101株すべてにマンノース耐性の細胞付着性が認められた。この付着性は,F107線毛保有の有無に関係なくみられた。また,菌体の熱処理の成績から,熱安定性の高い抗原の付着への関与が示唆された。さらに,抗体を用いた付着阻止テストにより,付着にかかわる抗原を調べたところ,供試大腸菌O139:K12:H1:F107の付着性は,抗K12抗体処理により付着率,付着菌数とも有意に低下した。以上の成績から,莢膜K12抗原が本菌型の培養細胞付着性に関与しており,腸管毒血症性大腸菌O群139の付着に関連する病原因子の一つであることが示唆された。
  • 1995 年 50 巻 2 号 p. 557-567
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 50 巻 2 号 p. 568-570
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 50 巻 2 号 p. 571-580
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 50 巻 2 号 p. 581-582
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 50 巻 2 号 p. 583-600
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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