臨床分離のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) から選択したリファンピシン耐性株をマウスに静脈内接種し, その腸管内定着性について検討した。マウスに約10
7cfuを接種した場合, 試験した4株のうち3株が80%以上のマウスの盲腸内に定着することを認めた。これら4株の病原性を比較すると, マウスにおける腸管内定着性の強さと致死活性の強さの程度は各菌株で並行し, その強さはメチシリンの耐性度とも関連した。すなわち, 中等度耐性株 (MIC: 12.5μg/ml) は強い病原性を示し, 高度耐性株 (MIC: ≧100μg/ml) の病原性は弱い傾向であった。次に, 病原性の強い
Staphylococcus aureus 1-6 RFP
r の約10
7cfuをマウスに静脈内接種し, 体内における菌の分布経過を全身オートバクテリオグラフィー (ABG) により観察した。感染初期には菌はマウス全身に分布し, とくに, 肝臓と脾臓に集積した。3日後には肝臓と脾臓の菌はほとんど消失したが, 代わって腸管内に多数の菌が検出された。腸管内の菌は14日後まで認められた。大腸菌を接種したマウスのABGではこのような菌の腸管内定着は認められなかった。
S. aureus 1-6 RFP
r の約10
7cfuをマウスに静脈内接種して盲腸内容物中の生菌数推移を検討したところ, 盲腸内容物中には接種3時間後から菌が検出された。その後, 内容物中の菌数は徐々に増加し, 7日後以降には4logs/g以上に増加した。大腸菌を接種したマウスの盲腸内には感染初期で一過性に少数の菌が検出されたが, 菌数の増加は認められず, 3日後には消失した。これらのことから, MRSAをはじめとする黄色ブドウ球菌のマウス腸管内定着は菌種特異的な現象であると考えられた。
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