今世紀初め (1916年) にE. Weil とA. Felix によって提案されたリケッチア症診断法 Weil-Felix 反応はプロテウスの特定株を用いる非特異的凝集反応である。リケッチア症患者血清のうち, 発疹チフス群患者は
Proteus vulgaris OX19株を, 紅斑熱群患者は
P. vulgaris OX2株を, 恙虫病患者は
P. mirabilis OXK株をそれぞれ凝集させる。この反応はリケッチア及びプロテウス両細菌に共通構造を持つ成分の存在を予想させたが, その成分の正体は不明であった。最近になり, ようやく両細菌のリポ多糖 (LPS) 構造が明らかとなり, 互いにその構造を照らし合わせてみると, 共通エピトープ部分の存在が見えてきた。共通エピトープ部分を持つ両細菌のLPSについて, リケッチア症患者血清及び家兎ポリクローナル抗体との反応性を検討した結果, Weil-Felix 反応のメカニズムは患者血清中のIgM抗体と相当するプロテウス各株のLPS O-抗原多糖との反応によって起こることが明らかになったため, 本稿ではその研究について解説する。続いて構造決定されたプロテウスLPSのO-抗原多糖の構造を示し, リケッチアとの共通エピトープ部分について予想される構造を推定してみる。
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