日本細菌学雑誌
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56 巻, 2 号
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  • 石原 和幸
    2001 年 56 巻 2 号 p. 413-420
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    成人性歯周炎の病原体である Treponema denticola は菌体表層の outer sheath に proryl-phenylalanine specific protease (dentilisin) を持っている。精製によって本酵素は, 72kDa, 43kDa, 38kDaの3つのタンパクの複合体であることが明らかとなった。この3種のタンパクのうち72kDaと43kDaのN-末端アミノ酸配列を決定し, それに基づいて遺伝子をクローニングし解析を行った。72kDaタンパクは Bacillus subtilis のセリンプロテアーゼ subtilisin の活性中心と相同性を持ち, その欠損株が dentilisin 活性を失うことから72kDaタンパクがプロテアーゼ活性を司っていることを明らかにした。Dentilisin 欠損株では疎水性の低下と, Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum との共凝集性が上昇していた。さらに, major outer sheath protein の oligomer 形成も阻害されていた。マウスの側腹部へ生菌を接種し膿瘍形成能を比較すると, dentilisin 欠損株は親株に比べて膿瘍形成能が低下していた。これらの結果は dentilisin が, T. denticola の病原性に関与していることを示している。
  • 天野 憲一, 横田 伸一
    2001 年 56 巻 2 号 p. 421-433
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pylori は消化性疾患の起炎菌としてコンセンサスが得られており, 最近診断および治療に対して保険適用がなされた。しかしながらこの菌の感染発症のメカニズムはまだ明らかにされていない。様々な病原因子が報告された中で, 今回エンドトキシン (LPS) に焦点を当ててレビューしてみたい。H. pylori LPSは大腸菌のLPSと比べて1/10から1/20,000の低毒性を示し, それはリピドA構造にある。大腸菌との違いは長鎖脂肪酸 (βOHC16, βOHC18, C18) の存在とその数およびグルコサミン二糖の非還元端リン酸の欠損にあり, これが原因となる。一方, LPSのO-抗原多糖部分にはヒト血液型である Lewis 抗原と同一の糖鎖構造が存在しており, ヒト胃上皮細胞との接着および定着に関わっていると考えられている。最近の遺伝子解析からは, この糖鎖構造の容易な変異も推定され, H. pylori のしたたかさも垣間見れる。さらに Lewis 抗原とは異なった強い抗原の存在が明らかになるにつれ, この抗原の疾患との関わりが予想される。
  • 石野 良純
    2001 年 56 巻 2 号 p. 435-454
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    真正細菌, 真核生物と並ぶ第3の生物, 古細菌 (アーキア) は, 形態的に細菌でありながら, その遺伝情報伝達系に関わるタンパク質因子の構造が真核生物で見られる物によく類似しているという事実は, 最近のいくつかの古細菌での全ゲノム配列決定で確実なものとなり, その結果古細菌のセントラルドグマ解析の重要性が再認識されている。また, 好熱性古細菌由来の安定なタンパク質は, 構造生物学の実験材料として大変適しており, 好熱性古細菌を用いたDNA複製, 組換えなどの分子生物学は, 現在急速に進展し始めた。本稿では筆者らの研究を中心に, 古細菌のDNA複製起点の同定, 複製関連蛋白質の生化学的解析について最近の世界の進捗状況を紹介する。
  • 松本 佳巳
    2001 年 56 巻 2 号 p. 455-463
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    特異な蛋白合成阻害作用 (作用点: rho因子) を有する動物用抗菌薬 Bicozamycin (BCM) は腸管出血性大腸菌 (EHEC) に分類されるベロ毒素産生 Escherichia coli (VTEC) O157:H7に対しMICが16∼32μg/mlと中等度ではあるが, 一定の抗菌力を有し, 二種のベロ毒素 (VT1&VT2) の産生も抑制した。このBCMの抗VTEC作用は in vivo で, マウスを用いたVTEC実験感染系において対照とした fosfomycin (FOM), cefixime (CFIX) および norfloxacin (NFLX) より優れた盲腸内生菌数減少効果を示した。マウス盲腸内のVT産生量の増加もなかったことから, BCMはVTECによる感染症の治療及び定着菌の除菌に用い得ることが示唆された。BCMの特徴を以下に記す。
    1. 抗菌スペクトラムが狭く, 腸内フローラを乱しにくい。
    2. in vitro 抗菌力は中等度であるが, 好気条件下より嫌気条件下での抗菌力がやや優れる。
    3. 作用機作が特異であり, 他剤と交差耐性を示さない。
    4. in vitro よりも in vivo の効果が優れる。
    5. 作用機作から選択毒性が高く, 副作用はほとんどない。
    ヒトのEHEC感染症は人畜共通感染症であり, 保菌する家畜に由来する可能性が示唆されている。家畜の除菌は今後の重要な課題であり, 抗菌スペクトラムの狭いBCMは副作用の少ないEHEC除菌薬としての有用性が期待される。
  • 2001 年 56 巻 2 号 p. 465-475
    発行日: 2001/05/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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