特異な蛋白合成阻害作用 (作用点: rho因子) を有する動物用抗菌薬 Bicozamycin (BCM) は腸管出血性大腸菌 (EHEC) に分類されるベロ毒素産生
Escherichia coli (VTEC) O157:H7に対しMICが16∼32μg/mlと中等度ではあるが, 一定の抗菌力を有し, 二種のベロ毒素 (VT1&VT2) の産生も抑制した。このBCMの抗VTEC作用は
in vivo で, マウスを用いたVTEC実験感染系において対照とした fosfomycin (FOM), cefixime (CFIX) および norfloxacin (NFLX) より優れた盲腸内生菌数減少効果を示した。マウス盲腸内のVT産生量の増加もなかったことから, BCMはVTECによる感染症の治療及び定着菌の除菌に用い得ることが示唆された。BCMの特徴を以下に記す。
1. 抗菌スペクトラムが狭く, 腸内フローラを乱しにくい。
2.
in vitro 抗菌力は中等度であるが, 好気条件下より嫌気条件下での抗菌力がやや優れる。
3. 作用機作が特異であり, 他剤と交差耐性を示さない。
4.
in vitro よりも
in vivo の効果が優れる。
5. 作用機作から選択毒性が高く, 副作用はほとんどない。
ヒトのEHEC感染症は人畜共通感染症であり, 保菌する家畜に由来する可能性が示唆されている。家畜の除菌は今後の重要な課題であり, 抗菌スペクトラムの狭いBCMは副作用の少ないEHEC除菌薬としての有用性が期待される。
抄録全体を表示