歯周疾患と口腔内細菌叢に関する研究では, 培養可能な口腔内細菌のみに着目して研究が行われ, 口腔内細菌叢の全容解明と疾患という観点からの研究は, ほとんど行われていないのが現状である。本研究では, まず, ヒト口腔スピロヘータの一種である
Treponema socranskii のPCR法による迅速な検出・同定系を確立した。つぎに, 世界に先駆けてリアルタイムPCR法を利用して, 前述の
T. socranskii を含む代表的な歯周病原性細菌 (
Actinobacillus actinomycetemcomitans, Porphyromonas gingivalis, Tannerella forsythensis (旧名
Bacteroides forsythus) および
Treponema denticola) 5種の迅速な検出・定量系を確立した。一方, 16S rRNA遺伝子クローンライブラリー法によって, 歯周病患者の口腔内は, 代表的な歯周病原性細菌が生息するとともに, 歯周疾患に関連している未分類の (培養困難な) 偏性嫌気性菌の生息しやすい環境になっていることを明らかにした。また, 培養困難であると考えられるファイロタイプを標的として, PCR法による検出を試みた結果, 特定の1種が歯周疾患と関連性があることを明らかにした。さらに, 歯周疾患と口腔内細菌叢に関する研究の初めての試みとして, T-RFLP (terminal restriction fragment length polymorphism) 法を応用して, 口腔内細菌叢の迅速な解析法を確立した。
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