日本細菌学雑誌
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62 巻, 4 号
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平成19年浅川賞受賞論文
  • 平山 壽哉
    2007 年 62 巻 4 号 p. 387-396
    発行日: 2007/11/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    細菌毒素は宿主の代謝異常を引き起こし細菌感染成立と病態形成に寄与する。ヘリコバクター ・ ピロリには, 細胞を空胞変性させて死に至らしめる蛋白毒素, 空胞化毒素 (vacuolating cytotoxin A, VacA) が知られている。この毒素の発見当初, 本毒素の著明な生物活性である空胞形成能に基づき上記のように空胞化毒素VacAと命名された。しかし, 最近の研究成果からVacAは空胞形成とは独立した宿主転写機能の撹乱を介した広範多岐な生物活性を示すことが明らかになってきた。VacAが胃粘膜上皮の受容体と特異的に結合することによって引き起こされる胃粘膜障害の詳細な機序の解明が進むとともに, 除菌によって改善される疾患とVacAとの関係が指摘されるなど, 今後明らかにしなくてはならない新たな課題も生じている。
総説
  • 和地 正明, 岩井 伯隆
    2007 年 62 巻 4 号 p. 397-404
    発行日: 2007/11/25
    公開日: 2008/02/15
    ジャーナル フリー
    細菌感染症の化学療法において薬剤耐性菌の出現が大きな問題となっている。この問題に対抗する手段の一つは, 新規作用標的を有する薬剤の開発であろう。我々は, 細菌の染色体分配を阻害する薬剤のスクリーニングを行い, 大腸菌細胞を球菌化し高頻度に無核細胞を放出させる化合物A22 (S-(3,4-dichlorobenzyl) isothiourea) を見いだした。遺伝学的な解析から, A22の作用標的は細菌のアクチン様細胞骨格タンパク質MreBであることが示された。さらにA22を用いた解析から, MreBタンパク質は細菌染色体の娘細胞への分配に機能していることが明らかとなった。これらのことは, これまで有糸分裂装置を持たないと考えられてきた細菌にもアクチン様細胞骨格を用いた有糸分裂装置が存在することを強く示唆するものである。本稿では, 細菌のアクチン様細胞骨格を標的とした薬剤の可能性について議論したい。
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