日本細菌学雑誌
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64 巻, 3 号
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追悼
平成21年小林六造記念賞受賞論文
  • 富田 治芳
    原稿種別: 平成21年小林六造記念賞受賞論文
    2009 年 64 巻 3 号 p. 343-355
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/29
    ジャーナル フリー
    腸球菌Enterococcusにはグラム陽性菌では一般的でない高頻度接合伝達性プラスミドの存在が知られている。これまでに2種類の腸球菌高頻度接合伝達性プラスミドの報告があり,一つはE. faecalisのフェロモン反応性プラスミド,もう一つはE. faeciumのpMG1型フェロモン非反応性プラスミドである。フェロモン反応性プラスミドは受容菌の生産するペプチドフェロモン(性フェロモン)に供与菌が反応し,プラスミド上にコードされる凝集物質の誘導発現により供与菌と受容菌との安定な接合対が形成され高頻度で接合伝達が行われる。これまでに複数種類のフェロモンとそれぞれに特異的なフェロモン反応性プラスミドが報告,解析されているが,その複雑な接合伝達調節機構はプラスミド間でほぼ類似の調節機構の遺伝子群から成っていることが示されている。一方,pMG1型高頻度接合伝達性プラスミドは私達が日本の臨床分離株から発見した高度ゲンタマイシン耐性プラスミドで,フェロモンを介さない新規の接合伝達調節機構を持つ。このpMG1型プラスミドはVREをはじめE. faecium株に存在し,バンコマイシン耐性などの薬剤耐性遺伝子の拡散,伝播に関与している。これまでの解析からpMG1型プラスミドの接合伝達には複数の調節遺伝子が関与し,複雑な調節機構を持つことが明らかとなりつつある。
平成21年黒屋奨学賞受賞論文
  • 和知野 純一
    原稿種別: 平成21年黒屋奨学賞受賞論文
    2009 年 64 巻 3 号 p. 357-364
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/29
    ジャーナル フリー
    大腸菌や肺炎桿菌に代表される腸内細菌科のグラム陰性病原細菌はプラスミド上に様々な薬剤耐性遺伝子をもち,それらを巧みに利用することで抗菌薬の攻撃を回避している。近年,新規抗菌薬の開発が滞る一方で,医療環境より分離される細菌から次々と新しい薬剤耐性機構が報告されている。我々は,臨床分離株のプラスミド上に新たなアミノ配糖体耐性メカニズムとして16S rRNA methyltransferase(以下16S rRNA MTase)遺伝子を発見した。16S rRNA MTaseはアミノ配糖体の標的部位である16S rRNA A-site内の塩基を一部メチル化することで,アミノ配糖体の親和性を低下させることにより耐性を付与するものである。また,アミノ配糖体耐性に関与する16S rRNA MTaseには二種類あることを明らかにした。一つは16S rRNAの1405G-N7位をメチル化するもので,もう一つは1408A-N1位をメチル化するものである。これら修飾部位の違いにより,耐性を付与できるアミノ配糖体の種類に違いが見られた。本稿では上記16S rRNA MTaseの機能解析の結果を述べるとともに16S rRNA MTase遺伝子の転位機構についても一部紹介したい。
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