日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
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69 巻, 2 号
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追悼
総説
  • 天児 和暢
    2014 年 69 巻 2 号 p. 315-330
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    レーウェンフックは細菌の発見者であるが,その名があまり知られていない。何故だろうか。その疑問を解くため,私はイギリスの原虫学者C. Dobell の書いたレーウェンフックの本を読み,次のようなことを知った。彼は研究者ではなくデルフトで衣類の販売をしていた一介の市民であった。彼は自分で作った顕微鏡を使い観察し,その結果を手紙でロンドン王立協会へ送っていたが,論文は書いていない。自分の顕微鏡の作成法や観察法を公表しなかったので,彼の死後再現実験が為されることはなく,やがて忘れ去られていった。この総説では,未だ細菌という言葉もなくその様な微細な生物が居ることさえ知られていなかった時代に,彼が細菌の発見をどの様に記述していたか,また,この様な目に見えない生物の存在を初めて知った彼が,それをどう考えていたのかなどを,Dobellの翻訳した彼の王立協会宛の記述を引用し,彼の観察とその考えを紹介する。彼がどのような人物であったか,各自で想像して頂きたい。
  • 藤澤 倫彦
    2014 年 69 巻 2 号 p. 331-348
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    健常なヒトや動物の腸内には多種多様な細菌が存在している。これら細菌の生態や機能についての検討を行うに当たっては精度の高い検索法を用いる必要がある。現在まで,これら腸内菌叢を検索するための非選択培地や種々の選択培地,ロールチューブ法,嫌気性グローブボックス,plate-in-bottle法といった腸内に優勢に存在する高度嫌気性細菌検出のための手段が開発されてきた。今日広く利用されているプレバイオティクスやプロバイオティクスといった機能性食品の多くはこれら培養法を用いて評価されてきた。また,その他にも多くの有用な知見が培養法によって明らかにされてきた。一方,最近では分子生物学の進展に伴い,FISH(fluorescence in situ hybridization)法,定量的PCR(quantitative (q) polymerase chain reaction)法,クローンライブラリー法,DGGE(denaturing gradient gel electrophoresis)法,TGGE(temperature gradient gel electrophoresis)法,T-RFLP(terminal-restriction fragment length polymorphism)法,メタゲノム解析といった細菌遺伝子を標的とした腸内菌叢検索法が広く用いられてきている。通常,培養法において細菌の同定は表現形の検索により,また,分子生物学的手法ではrRNAの解析によりそれぞれ行われる。本稿では,培養法を中心に各種腸内菌叢検索手技とそれらを用いて得られる腸内菌叢情報について触れた。
微生物学の進歩
  • 飯島 義雄, 坂本 裕美子, 綿引 正則, 大西 貴弘, 五十君 靜信
    2014 年 69 巻 2 号 p. 349-355
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    感染症や食中毒研究の原点は,様々な事例の解析にある。事例を学ぶことで,発症メカニズムの解明や予防対策の確立などが期待できる。ここでは,最近世間を騒がせた1)北海道での白菜浅漬による腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli, EHEC)O157食中毒事例,2)富山県を中心に発生したユッケによるEHEC O111/O157食中毒事例,3)西日本で多発したヒラメの喫食に伴う寄生虫性食中毒,4)鳥取県での真空パック食品によるボツリヌス食中毒事例およびこれらの事例から得られた知見を紹介する。
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