(1) 昭科21年九州各地で分離された異型菌と推定される111株のコレラ菌を用い, 之の諸性状の相関を檢した
(2) 各反應の発現頻度は次の通りである。カタラーゼ作用89%, コレラ赤反應71%, インドール反應72%, 硫化水素産生46%, 乳糖分解性40%。
(3) コレラ赤反應とインドール反應の発現は大体一致し, 更に両者とカタラーゼ作用とは逆相関の発現傾向を示すが, 例外がある。
(4) 免疫凝集反應と酸凝集反應も逆相関的であるかにみられるが, これも亦例外が多い。
(5) 総体的に今回の蒐集菌株は高山の保存菌の性状態度に近い。
(6) 靜態観察によると高山の謂う相関性状は嚴密には認められない。
(7) 海猶全血液, 血清共にコレラ菌発育阻止能無く, アルバジールは200倍, ネオアルバジール400倍, 石炭酸400倍, 過酸化水素100倍のペプトン水稀釈度で完全阻止する。
(8) コレラ菌のカタラーゼ作用及びコレラ赤反應は体液, サルフア剤殊にネオアルバジール通過継代によつて前者は増強, 後者は弱化せしめられ, 清毒剤殊に過酸化水素通過によつて前者は弱化, 後者は強化せしめられる。
(9) 酸凝集性及び免疫凝集性も対蹠的に移変し, 同時に上記両性状と或る程度の関耶を示す。これも亦, 通過用培養液の種類に関係がある。
(10) 硫化水素産生及び乳糖分解性も変化しつゝ移変するが, 他の性状との関係は一律でない。
(11) 菌形態及び集落性状も上記と関耶して変化する。特にネオアルバジール, 過酸化水素含有培地間の差異が著しい。
(12) 動態観察によると, 高山の謂う相関性状は主要部分に於て認め得る。但し, 菌株と通過條件の種類には嚴重な選択を要する。
(13) ネオアルバジール通過菌の中には, その継代期間に高山の謂う毒力増強菌と全く同一の主要性状間の相関を示すものがある。
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