日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
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70 巻, 2 号
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追悼
微生物学の進歩
  • 四宮 博人, 勢戸 和子, 川瀬 遵, 有川 健太郎, 舩渡川 圭次, 鈴木 匡弘, 久保田 寛顕, 調 恒明
    2015 年 70 巻 2 号 p. 309-318
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    地方衛生研究所(地衛研)は, 都道府県・政令指定都市等に設置され(現在80 か所), 地域における感染症発生動向調査及び食中毒の原因究明等において中心的な役割を担うとともに, 国立感染症研究所や国立医薬品食品衛生研究所等との緊密な連携により, 感染症・病原体監視の全国的なネットワークを形成している。各種感染症や食中毒等の細菌学的検査・研究は, 地衛研の基幹的業務であり, その活動から重要な細菌学的知見が見出されることも多い。本稿では, 地衛研を中心とした研究機関における細菌学的検査・研究及び事例経験, 特に, 食中毒・感染性胃腸炎, 結核, 薬剤耐性に関して, それぞれの地衛研の研究者から最新知見を報告する。
  • 清水 健, 藤永 由佳子, 高屋 明子, 芦田 浩, 児玉 年央, 畠山 昌則
    2015 年 70 巻 2 号 p. 319-328
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    病原細菌は多様なエフェクター分子や毒素分子を産生し, 宿主生体内の標的臓器/組織の摩耗・機能障害を引き起こす。さらに一部の細菌エフェクター・毒素は, 免疫に代表される生体防御系を鈍化あるいは暴走させ, 結果としてより複雑な感染病態を作り上げていく。これら細菌性病原因子は, 宿主との相互作用を介した進化圧・淘汰圧の下, 標的細胞の構造的・機能的脆弱性を巧妙に利用する姿へと変容し作り上げられてきたのであろう。それゆえ, 細菌毒素・エフェクターの標的となる分子やシグナル伝達系を網羅的に解明する作業は, 高等真核生物が築いてきた一見精緻な生体システムが持つ予期せぬアキレス腱を暴き出す結果につながる。そこで本稿では, こうした視点に立ち, 宿主生体システムに潜む疾病感受性・疾病脆弱性の分子基盤を細菌エフェクター・細菌毒素研究を通して論じた6 つの最近の知見を紹介する。
  • 妹尾 充敏, 森田 昌知
    2015 年 70 巻 2 号 p. 329-332
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    多くの人々が世界中を往来する現代において, 感染症をコントロールするには, 全世界における感染症の現状を把握し, 対策を講じなければならない。そのためには, 正確な情報が必要となるが, 日本に入ってくる情報だけでは充分とは言えず, 実際に感染症が流行している国の国内情報を得ることが必須である。そのような情報を得るためには, 現地の研究機関や大学と共同研究を行うなど, 積極的に行動しなければならない。本稿では, アジアの開発途上国の研究機関や大学との共同研究プロジェクト, およびアジアの開発途上国に日本人研究者が常駐し, 現地の研究機関と共同研究を行っているプロジェクトについて紹介する。
  • 庄子 幹郎, 竹下 徹, 丸山 史人, 稲葉 裕明, 今井 健一, 松尾 美樹
    2015 年 70 巻 2 号 p. 333-338
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    口腔には600 種以上の細菌が常在し, 各々の細菌はお互いに均衡を保ちながら口腔に定着している。また, 生体の門戸である口腔にいる細菌は, 生体の免疫機構による攻撃を受けたり, 飲食に伴う栄養状態の変化・温度やpH の変化など非常に過酷な環境で存在している。う蝕や歯周病に関与する病原細菌においても, これら種々の過酷な環境に曝されつつ, 口腔に定着し, 病態を惹起している。このように, 口腔が細菌にとって非常に過酷な環境であることを鑑みると, 口腔細菌研究は, これまでの個々の細菌の持つ病原因子の研究のみならず, 細菌の環境応答や細菌- 生体免疫との相互作用, またゲノム解析による細菌の派生の比較検討や口腔フローラ解析等, より多様化した解析への展開が期待されている。本稿では, 細菌学, 免疫学, ゲノム学の各領域の口腔細菌研究における広範かつ最新の情報を提供し, 口腔細菌研究の今後の展開について述べる。
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