日本細菌学雑誌

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多くの運動性細菌は運動器官としてべん毛を持ち, べん毛はその根元の細胞表層に埋まっているイオン駆動型モーターによって回転する。べん毛モーターの回転機構の解明に向けて, 多くの研究者が長きにわたり取り組んでいるが, そのエネルギー変換機構の多くの点がまだ謎に包まれている。我々はエネルギー変換の心臓部を担う固定子に焦点を当て, 固定子がモーターの回転子周囲に組込まれ, 細胞壁に固定されて活性化する際に, ペリプラズム側で大きな構造変化を引き起こすことを見出した。また, 細胞は生理機能に重要な超分子構造（器官）を適切な時間・場所に, 適切な数だけ形成・配置し, はたらきを最適化している。その分子メカニズムの解明は生命現象の基本課題であり, 我々は海洋性ビブリオ属菌のべん毛が細胞の極に1本だけ形成されるしくみを調べることで, この課題の解明に取り組んでいる。本稿では, 我々の研究を中心に, べん毛が特定の位置に決められた本数だけ形成され, 最終的に固定子が組み込まれてモーターが回転するまでの, 一連のメカニズムを概説する。

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