日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
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76 巻, 3 号
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2021年黒屋奨学賞受賞論文
  • 竹原 正也
    2021 年 76 巻 3 号 p. 149-160
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    A型ウエルシュ菌は,創傷感染して重篤な疾患であるガス壊疽を引き起こす。本菌によるガス壊疽には,主要な病原因子として同定されているα毒素が関与する。これまでに,α毒素は宿主免疫機構や末梢循環を障害して組織障害を誘導することが提唱されているが,本菌の高い病原性を説明する十分な知見は得られていない。著者はこれまでに,A型ウエルシュ菌による病原性メカニズムの解明を目的として,本菌による宿主免疫回避,筋組織障害,造血阻害,筋組織修復阻害,敗血症の発症などに着目し,検討を行った。本総説では,α毒素の作用を中心に,本毒素による骨髄好中球の分化抑制,血管内皮細胞の細胞死,赤芽球の分化抑制,筋芽細胞の分化抑制,Toll-like receptorsの過剰な活性化などについて,最新の研究成果とともに解説する。これらの機構は,α毒素が複数のステップで作用して宿主防御を撹乱し,A型ウエルシュ菌が極めて巧妙な機構で宿主を攻撃することを示しており,一連の研究成果により,本菌によるガス壊疽の発症メカニズムの解明や,新たな治療戦略の創出が期待される。

  • 佐藤 豊孝
    2021 年 76 巻 3 号 p. 161-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー

    細菌感染症における抗菌薬耐性の問題は医療現場にとって大きな問題である。特に現在の医療現場で使用頻度の高い第3世代セファロスポリン系抗菌薬やフルオロキノロン(FQ)系抗菌薬に対して,基質拡張型β-ラクタマーゼ産生(ESBL)およびFQ耐性大腸菌が我が国でも近年増加傾向である。一方で,多剤耐性菌への切り札や最終選択薬となるタゾバクタム-ピペラシリンやコリスチン,チゲサイクリンといった抗菌薬も医療上重要である。頻用性の高い抗菌薬耐性と比較すると耐性菌の分離率は低いながらもこれらに耐性を示す腸内細菌科細菌の報告がなされている。著者はこれまでに臨床現場から分離された細菌の薬剤耐性と多剤耐性化に関する研究を行ってきた。特に上記のような治療上重要となる抗菌薬耐性に関する細菌学的解析を札幌医科大学および札幌市内の医療施設の臨床検体から分離された大腸菌を中心に行なってきた。本稿ではこれまでに著者が得てきた知見を紹介させていただく。

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