Escherichia albertiiは2003年に新たに命名された新興人獣共通腸管感染症細菌である。近年国内では,患者数100名を超える規模の集団食中毒事例が複数報告されている。本菌は腸管病原性大腸菌と同様,付着因子インチミンをコードするeae遺伝子を保有するが,一部の菌株が腸管出血性大腸菌(EHEC)の主要病原因子である志賀毒素2(stx2a, stx2f)遺伝子を保有することも明らかになったことから,注意を要する細菌であると言える。しかしながら,本菌の基本性状についての情報は乏しく,検査法も確立されていなかったため,本菌感染症の発生状況,感染源,感染経路など未だ不明な点が多い。著者は,継続的に行ってきた細胞膨化致死毒素産生大腸菌の分子疫学研究の中での偶然の発見がきっかけで本菌の研究を始めることとなった。これまでの研究では,本菌の検出,分離,同定を高精度に行える方法を構築し,この方法を用いて本菌の自然宿主の同定を目的とした保菌動物の調査を行ってきた。本稿では,これらの成果について紹介したい。