北海道のイネ在来系統‘赤毛’の自殖後代から新規な表現型を呈する自然突然変異体が選抜された.貫性変異を示す
ectopic palea dwarf(
epd),小穂のサイズが先端に向かって減少する
decreasing hull size(
dhs),直立葉半矮性を示す
degraded auricle and semi-dwarf(
das)ならびに色素異常変異を示す
chlorina-Akage(
chl-Akage)は全て劣性の変異であった.
epdは育成環境により表現度が変わり,夏季栽培では第I節間の矮化,不稔性,異所的な穎の形成および二重外穎などの多面発現を示した.冬季では,貫性を示す小穂が増加した.連鎖分析の結果,
epdは第2染色体
OsMADS6座近傍に座乗することが判明した.さらに,
epdは同遺伝子座内において欠失が見出された.
dhsは夏季において1次枝梗の先端に向かって小穂サイズが減少する変異を示したが,冬季にはほぼ正常な穂型を示した.
dasは稈長が67 %の矮化率を示したものの,穂長は‘赤毛’と同程度であった.さらに,葉耳が退化することにより葉身が直立した.色素異常変異体,ならびに大黒変異体(
d1)と類似の表現型を示す極矮性変異体など多数の変異体が選抜されたことから,‘赤毛’は自然環境下で突然変異体を生じる易変異系統であると推定された.
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