育種学研究
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10 巻, 4 号
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原著論文
  • 佐藤 裕, 横谷 砂貴子
    2008 年 10 巻 4 号 p. 127-134
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    イネは自殖性作物ではあるが,冷害年に他殖率が上昇し,周囲の他品種との交雑率が上昇することが経験的に知られている.しかしながら,低温による雄性不稔化が交雑率を上昇させることを実証するデータは,これまでに得られていない.そこで本研究では,低温によるイネ花粉の雄性不稔化が交雑率に及ぼす影響を明らかにするために,穂ばらみ期の小胞子初期に低温処理したイネと無処理のイネにおける交雑率の違いを調べた.種子親としてモチ品種「はくちょうもち」,花粉親としてウルチ品種「ほしのゆめ」を供試した.種子親に稔実した種子について,キセニアの観察とSSRマーカーにより交雑の確認を行った.花粉親区の規模を大きくした圃場試験では,花粉親由来のウルチ花粉と種子親由来のモチ花粉をヨード・ヨードカリ溶液染色により識別して空中花粉密度を調べた.人工気象室内での試験では,対照区の交雑率が0.19%であったのに対し,低温処理区では1.28%と6.7倍にまで高まった.圃場試験では,低温処理区における種子親由来の空中花粉密度が,対照区比で約40%にまで減少した.交雑率は,花粉親からの距離1 mの対照区では0.02%であったのに対し,低温処理区では5.55%と278倍にまで高まった.花粉親からの距離5 mの対照区では,交雑が全く認められなかったのに対し,低温処理区では2.96%の交雑が認められ,花粉親から5 m離れていても低温処理により大幅に交雑率が高まることが明らかとなった.さらに,低温処理による稔実率の変化と交雑率との間には,花粉親からの距離1 mの低温処理区でr=−0.653***,同5 mの低温処理区でr=−0.462**と有意な負の相関関係が認められた.以上の結果により,低温による雄性不稔化で自花の花粉密度と稔実率が低下したイネでは,交雑率が大幅に高まることが実証された.
  • 今井 克則, 千葉 悠貴, 田村 優佳, 竹谷 敦子, 村井 正之, 佐藤 洋一郎, 石川 隆二
    2008 年 10 巻 4 号 p. 135-143
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    北海道のイネ在来系統‘赤毛’の自殖後代から新規な表現型を呈する自然突然変異体が選抜された.貫性変異を示す ectopic palea dwarfepd),小穂のサイズが先端に向かって減少する decreasing hull sizedhs),直立葉半矮性を示すdegraded auricle and semi-dwarfdas)ならびに色素異常変異を示すchlorina-Akage(chl-Akage)は全て劣性の変異であった.epdは育成環境により表現度が変わり,夏季栽培では第I節間の矮化,不稔性,異所的な穎の形成および二重外穎などの多面発現を示した.冬季では,貫性を示す小穂が増加した.連鎖分析の結果, epdは第2染色体OsMADS6座近傍に座乗することが判明した.さらに, epdは同遺伝子座内において欠失が見出された.dhsは夏季において1次枝梗の先端に向かって小穂サイズが減少する変異を示したが,冬季にはほぼ正常な穂型を示した. dasは稈長が67 %の矮化率を示したものの,穂長は‘赤毛’と同程度であった.さらに,葉耳が退化することにより葉身が直立した.色素異常変異体,ならびに大黒変異体(d1)と類似の表現型を示す極矮性変異体など多数の変異体が選抜されたことから,‘赤毛’は自然環境下で突然変異体を生じる易変異系統であると推定された.
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