育種学研究
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12 巻, 1 号
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原著論文
  • 竹内 徹, 宗形 信也, 鈴木 孝子, 千田 圭一, 堀田 治邦, 荒木 和哉, 浅山 聡, 佐藤 導謙
    2010 年 12 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/31
    ジャーナル フリー
    コムギ縞萎縮病は,コムギ縞萎縮ウイルス(Wheat yellow mosaic virus: WYMV)を病原とする土壌伝染性の病害である.本病は東北以南では古くから発生の報告があったが,北海道では1991年に初めて発生が確認され,本病害に対する抵抗性を持たない北海道の優良品種「ホクシン」の普及に伴い被害が拡大した.本研究では,1995年から5カ年にわたってWYMV発生圃場においてコムギ品種・系統の抵抗性検定を行い,本病害に対する抵抗性が“強”の遺伝資源としてアメリカの品種「Madsen」を見出した.また,Madsen/ホクシンのF2集団を用いた検定において,「Madsen」由来のコムギ縞萎縮病抵抗性の遺伝様式は優性の1遺伝子によるものと推定した.一方で「Madsen」は,成熟期が遅く,穂発芽しやすく,雪腐れ病の発病も多いなど育種素材として利用しづらい形質を有していた.そこで,2001年から2005年の5カ年にわたり圃場検定による選抜を利用した反復戻し交配を5回行い,「ホクシン」に「Madsen」の縞萎縮病抵抗性を導入することにより,縞萎縮病抵抗性以外の特性が「ホクシン」に近い育種素材を4系統作出した.さらに,得られた反復戻し交配系統と「ホクシン」を用いて,SSRマーカーによるDNAの多型を調べることによって,「Madsen」由来のコムギ縞萎縮病抵抗性遺伝子YmMDが座乗している染色体領域を2DL上のwmc041gwm349の間と推定した.
  • 田口 和憲, 大潟 直樹
    2010 年 12 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/31
    ジャーナル フリー
    圃場抵抗性の異なる5つのテンサイ自殖性O型系統の親および片側ダイアレル交配したF1を用い,黒根病の圃場抵抗性に関するダイアレル分析を行った.2年間にわたり同じ実験計画のもとに抵抗性検定を実施した.両年の分析結果は概ね一致し,ダイアレル分析における分散分析では,a項(相加効果)ならびにb項(優性効果)は1%水準で有意であった.次に,(Vr,Wr)グラフを用いて分析の妥当性を調べたところ,2004年はVrとWrの一次回帰式の傾きが1に近く,相加・優性モデルに適合したが,2005年は傾きが0.5と小さく,エピスタシスの存在が疑われた.そこで,回帰直線から離れた1系統(「NK195」)の系列を除き,4系統で分析しなおしたところ,回帰式の勾配は1に近くなり,相加・優性モデルに適合した.広義の遺伝率(h2B)は,両年とも約0.95,狭義の遺伝率(h2N)は2004年の実験では0.66,2005年では0.83と推定された.分析の結果,優性分散(H1)に対し相加分散(D)が大きく,平均優性度(√H1/D)2004年では0.776,2005年では0.523と不完全優性を示した.優性対立遺伝子の平均的作用方向(h)はいずれも負値を示し,発病指数が低下する方向,すなわち,抵抗性の強い方が優性であった.これは,一代雑種育種を基本とするテンサイでのF1品種育成に有利な結果である.
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