日本のオオムギ育種への利用が急がれる重要なうどんこ病抵抗性遺伝子
mloを海外品種から効率的に交配導入するため,うどんこ病抵抗性
mlo品種Alexis,Chariot,Pallas (mlo5)と国内の主要オオムギ品種について,
Mlo遺伝子近傍領域の塩基配列多型を調査するとともに,既往の
Mlo遺伝子型判別DNAマーカーのうち,日本品種への利用に適したDNAマーカーとその効率的な利用のための留意点を明らかにした.
Mlo遺伝子近傍の3領域計1779 bpの塩基配列を比較した結果,供試35品種・系統間には合計33個の1塩基置換変異(SNPs)あるいは欠失・挿入変異(In/Del)が見出され,変異の組合せによって8種のハプロタイプ(A~H)に分類できた.日本品種・系統と海外の
mloを持つ3品種との間に共通する特異的な変異は見出されなかったが,Alexis,Chariot(タイプA,B)に限定すれば日本品種・系統との間に特異的に異なる2つのSNPsが見出された.供試した
mloを持つ3品種のなかでChariotのみは既往の
Mlo遺伝子型判別CAPSマーカーom6が供試したすべての日本品種・系統とは異なり,DNAマーカー選抜に有利な抵抗性遺伝子供与親であることがわかった.さらに,制限酵素処理を必要としない省力・効率的なPCRマーカーom2については,二条オオムギを中心としたハプロタイプHの日本品種・系統であれば,供試した抵抗性
mlo品種のいずれともマーカー型が異なり,選抜利用できることが明らかとなった.実際にAlexis × ハルヒメボシのF
2 80個体について,うどんこ病幼苗検定とom2マーカー型の調査を行った結果,抵抗性の有無とマーカー型判定結果が完全に一致し,Alexisの持つ抵抗性
mlo遺伝子が日本品種との交配後代においても有用であること,om2マーカーによる抵抗性
mlo遺伝子の選抜が可能であることが実証できた.これらのことから,日本でのオオムギ育種においても,om2あるいはom6マーカーを利用することにより,
mlo遺伝子を導入したうどんこ病抵抗性新品種の開発を効率的に進めることができると考えられた.
抄録全体を表示