テンサイは地下部のショ糖を利用する糖原料作物であるが, 一方, 地上部は畦間被覆による雑草の生育抑制及び糖生産に対するT/R比の改良の観点から育種的改良が求められている. そのため, 育成テンサイ自殖性O型系統5材料の親系統及び片側ダイアレル交配をしたF
1系統10材料を用い, 地上部形質に関するダイアレル分析を行い, 地上部形質改良の育種方向を検討した. 収穫期における葉数に関しては, 広義の遺伝率及び狭義の遺伝率は, それぞれ85.2%及び49.2%と推定された. 調査期別では, 生育初期よりも収穫期の方が相加分散及び狭義の遺伝率が高く, また, 有効因子数は最低3個と推定された. なお, 葉数の相加的効果には, 葉数が最も多い「NK-185BRmm-O」の関与が大きいと考えられた. 草丈に関しては, 優性分散が大きく, 超優性が発現する形質であることが明らかとなった. 茎葉重では, 優性分散が相加分散を大きく上回り, 狭義の遺伝率は15.4%と推定された. 各形質のエピスタシスに関しては, 統計的に有意な影響は認められず, 相加·優性モデルが適合すると推察された. また, 形質間の相関関係では, 収穫期の葉数と茎葉重, また, 初期生育時と収穫期の葉数の間に正の相関関係が示された. 地上部形質と根重の間には, 負の相関関係が多く認められたが, 統計的に有意性は認められなかった. これらのことから, テンサイの地上部形質に対する育種的改良は, 第一段階として, 遺伝性が高い葉数を対象とし, T/R比の改良に対しては, 多数の育成系統を評価·組合せることにより, 根重との負の相関関係を打破する必要が考えられた.
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