育種学研究
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4 巻, 2 号
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原著論文
  • 肖 秋濱, 陳 利萍, 保木 祐樹, 野口 貴, 平田 豊
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2002 年 4 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/03/28
    ジャーナル フリー
    異種細胞·組織間の形態的, 生理的, 遺伝的相互作用を調べるため, in vitro寄せ接法によりダイコン“美緑菜”と赤キャベツ“ルビーボール”との属間キメラを合成し, これらキメラ植物の外部形態, 生理的特性を詳しく調べた. その結果, 種々の形態的, 生理的相互作用が認められた. V1世代(最初のキメラ世代V0から腋芽を培養して得られた栄養繁殖世代)で, 形態的にはダイコンの復帰型と同定された植物のなかで, その植物の葉の表層にワックスを強く発現する, 新しいタイプのキメラの出現が認められた. このタイプの植物は抽苔した花茎の分枝数や花の数が増加し, 開花日は対照植物や通常のダイコンの復帰型より遅かった. またダイコンをこのタイプのキメラ植物に戻し交配した場合の着莢率は高かった. さらにこの新タイプの葉の横断切片の観察から, 柵状組織には通常のダイコンの細胞層より厚い部分が認められ, キャベツの細胞を含む層構造をとっていることがわかった. これを確認するために, アイソザイム分析を行ったところ, やはり両親のバンドを有しており, さらにこのタイプのみに特有の新規バンドが現れたので, この層はキャベツの細胞·組織を部分的に有するだけでなく, 何らかの相互作用をしている可能性が考えられた. また花粉稔性を調査した結果, MRR(ダイコン型をM, キャベツ型をRとし成長分裂組織の起源層構成として表層から内層へ, LI層-LII層-LIII層として表す)タイプが最も低く, 戻し交配によって種子は得られなかった. 一方, MMRのように生殖細胞形成層であるLII層がダイコンの場合には花粉稔性も高く, ダイコンを花粉親として戻し交配すると正常な“美緑菜”型種子が得られた. この属間キメラの栄養世代(V0, V1, V2)3世代に戻し交配して得られた種子後代の諸形質を調査したが, 現在まで明瞭な遺伝的変異は認められていない.
  • 張 斌, 柿原 文香, 加藤 正弘
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2002 年 4 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/03/28
    ジャーナル フリー
    Brassica rapa var. pekinensis(2n=20, AA)とB. oleracea var. capitata(2n=18, CC)との複二倍体系統(2n=38, AACC)および二基三倍体系統(2n=29, AAC)を用いて, 諸形質の発現様式および雑種系統に対するCゲノム全染色体の添加による遺伝的効果を解析した. 株形, 草丈, 球高, 球形, 葉形, 外葉のワックスおよび中肋の形などの形質については, 二基三倍体系統はよりAゲノム種系統の形質に, また, 複二倍体系統はよりCゲノム種系統の形質に近く, これらのCゲノム種系統の遺伝諸形質は累積的効果を持つと考えられる. 外葉の葉柄および葉の切れ込みについては, 二基三倍体系統と複二倍体系統はCゲノム種系統の形質を示した. 地上部全重および球葉重についても, 種間交雑系統の優勢的効果が認められ, しかも, これらCゲノム種系統の遺伝的形質は累積的効果を持つと考えられる. また, 種間交雑系統は結球性の弱化によって, 外葉数および外葉重が増加し, 球葉重の割合が低くなった. 可食部位の可溶性糖含量についても, Cゲノム種の遺伝形質は累積的効果を示した. これら諸形質の全体的特性を明らかにするために主成分分析法を行ったところ, 結球型系統の19形質を第1主成分と第2主成分に要約できた. 第1主成分は主に形態形質から構成され, 第2主成分は主に収量に関わる形質から構成された. 第1主成分と第2主成分から見ると, これらCゲノム種の遺伝諸形質は累積的効果を持つと考えられる. また, 第2主成分(主に収量に関わる形質)では種間交雑系統の優勢的効果が現れた.
  • 大潟 直樹, 田口 和憲, 田中 征勝
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2002 年 4 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/03/28
    ジャーナル フリー
    テンサイは地下部のショ糖を利用する糖原料作物であるが, 一方, 地上部は畦間被覆による雑草の生育抑制及び糖生産に対するT/R比の改良の観点から育種的改良が求められている. そのため, 育成テンサイ自殖性O型系統5材料の親系統及び片側ダイアレル交配をしたF1系統10材料を用い, 地上部形質に関するダイアレル分析を行い, 地上部形質改良の育種方向を検討した. 収穫期における葉数に関しては, 広義の遺伝率及び狭義の遺伝率は, それぞれ85.2%及び49.2%と推定された. 調査期別では, 生育初期よりも収穫期の方が相加分散及び狭義の遺伝率が高く, また, 有効因子数は最低3個と推定された. なお, 葉数の相加的効果には, 葉数が最も多い「NK-185BRmm-O」の関与が大きいと考えられた. 草丈に関しては, 優性分散が大きく, 超優性が発現する形質であることが明らかとなった. 茎葉重では, 優性分散が相加分散を大きく上回り, 狭義の遺伝率は15.4%と推定された. 各形質のエピスタシスに関しては, 統計的に有意な影響は認められず, 相加·優性モデルが適合すると推察された. また, 形質間の相関関係では, 収穫期の葉数と茎葉重, また, 初期生育時と収穫期の葉数の間に正の相関関係が示された. 地上部形質と根重の間には, 負の相関関係が多く認められたが, 統計的に有意性は認められなかった. これらのことから, テンサイの地上部形質に対する育種的改良は, 第一段階として, 遺伝性が高い葉数を対象とし, T/R比の改良に対しては, 多数の育成系統を評価·組合せることにより, 根重との負の相関関係を打破する必要が考えられた.
  • 高津 康正, 眞部 徹, 霞 正一, 山田 哲也, 青木 隆治, 井上 栄一, 森中 洋一, 丸橋 亘, 林 幹夫
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2002 年 4 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2002年
    公開日: 2003/03/28
    ジャーナル フリー
    21種のグラジオラス野生種について特性調査および育種素材としての評価を行ったところ, 草丈, 葉数, 葉·花の形態, 小花数および開花期等には種によって大きな違いがみられた. また草丈が10cm程度で鉢物に利用可能なもの, 現在の栽培種にはみられない青色の花被片を有するものなど, 育種素材として有望な野生種が見出された. 香りを有する種は全体の52.3%を占め, 香りのタイプもチョウジ様, スミレ様などさまざまであることが示された. さらにこれらの野生種について到花日数, 小花の開花期間, 稔実日数および1さや当たりの種子数を調査し育種上重要な情報を得ることができた. フローサイトメトリーによる解析の結果, 野生種においては細胞あたりのDNA含量が多様で, 種によってイネの0.9∼3.5倍のゲノムサイズを有するものと推定された. 本法による倍数性の判定は困難であるが, 種の組合せによっては交雑後代の雑種性の検定に利用可能であることが示唆された.
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