育種学研究
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5 巻, 1 号
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原著論文
  • 岡本 和之, 平澤 秀雄, 根本 博
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2003 年 5 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/03/20
    ジャーナル フリー
    陸稲系統関東糯172号の持つ高度餅硬化性について,糊化特性を指標として遺伝様式を明らかにするため,ラピッド・ビスコ・アナライザーにより関東糯172号と水稲糯品種マンゲツモチとのF2個体のピーク温度と糊化開始温度を測定した.関東糯172号並みにピーク温度と糊化開始温度が高い個体(K型),関東糯172号並みにピーク温度が高く,糊化開始温度が両親間の個体(F型),両温度ともマンゲツモチ並みに低い個体(M型)が51 : 121 : 48の比率で分離した.K型とM型のF2個体に由来するF3集団では,それぞれ関東糯172号やマンゲツモチと同程度のピーク温度と糊化開始温度を示した.一方,F型のF2個体に由来するF3集団は,F2世代と同様にK型,F型およびM型の3群に1 : 2 : 1の比率で分離した.従って,両温度についてK型とM型はホモ接合,F型はヘテロ接合であると推定された.マンゲツモチを戻し交雑したBC1F1世代では,F型とM型個体が36 : 29の比率で出現し,K型は出現しなかった.これらの結果から,K型,F型およびM型の分離は一遺伝子座, hhg(t)の対立遺伝子によるものであり,関東糯172号の示す高いピーク温度と糊化開始温度は,対立遺伝子 hhg-k(t)に,マンゲツモチに見られる両温度の低い特性は,hhg-m(t) によるものと推察された.なお,ピーク温度について,hhg-k(t) は完全優性を示すが,糊化開始温度については,不完全優性を示すものと考察した.さらに,この結果は,F5系統群におけるK型とF型の餅硬化性の違いからも確認された.
  • 池上 勝, 吉田 晋弥, 中村 千春, 上島 脩志
    原稿種別: 研究論文
    専門分野: 情報学
    2003 年 5 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2003年
    公開日: 2003/03/20
    ジャーナル フリー
    酒米品種「山田錦」と食用米品種「レイホウ」の正逆組合せ交雑に由来するF2集団の分散およびF2集団に選抜を加えた選抜反応から,心白発現の遺伝率を推定した.F1個体の発現率およびF2集団の頻度分布から,心白発現には,発現を抑制する方向に優性で,2つ以上の遺伝子が関与していると推定された.F2集団の分散から推定した心白発現率の広義の遺伝率は,0.825~0.860とかなり高かった.F2-F3世代間の選抜反応から推定した心白発現率の遺伝率は全体としては0.309~0.447であったが,上位方向で0.588~0.897と高く,下位方向で−0.037~−0.093と低かった.このことから心白発現率の高い方向への選抜はかなり高い選抜効果があり,高心白米育種において初期世代での選抜が可能と考えられる.しかし,F2集団において,「山田錦」と同程度の心白発現率を有する個体の出現頻度は非常に低いので,発現率の高い個体を初期世代で選抜するためには,選抜個体集団を大きくするか,戻し交配などにより心白発現を促進する遺伝子の集積を図る必要があると考えられる.一方,「レイホウ」の有する半矮性遺伝子(sd-1)は心白発現への影響が認められず,酒米育種においても短稈化に寄与する有用遺伝子であると考えられる.
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