育種学研究
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6 巻, 4 号
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Research Papers
  • 大江 夏子, 田原 誠, 山下 裕樹, 丸谷 優, 蔵之内 利和
    2004 年 6 巻 4 号 p. 169-177
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/21
    ジャーナル フリー
    蒸切干し用に開発されるサツマイモ新品種の不正使用や海外流出に対抗する手段を確立するため,加工品である蒸切干し製品から,その原料となった品種を,DNAの多型を基に高精度に判定する技術を開発することとした.転移因子であるレトロトランスポゾンは,植物のゲノムに多数の複製配列が散在している.サツマイモのレトロトランスポゾン Rtsp-1のゲノム挿入部位を,葉から抽出したDNAを用い,蒸切干し用新品種候補を含む12品種についてS-SAP(Sequence-Specific Amplification Polymorphism)法により分析した結果,多数の複製配列の挿入と挿入部位の品種間の多型が検出された.品種間で違いが見られた Rtsp-1挿入部位の塩基配列を調べ,挿入を受けた宿主側の配列とRtsp-1の末端反復配列間のPCRによって,それぞれの品種について様々な挿入部位における挿入の有無を調べた.その結果,最少5カ所の挿入部位のPCRにより,上記12品種の区別が可能であった.蒸切干しイモのDNAは,イオン交換樹脂カラムを用いて抽出することができたが,加工による断片化が進んでいた.断片化した蒸切干しイモのDNAを鋳型にしたPCRにおいても,明瞭な結果が得られ,原料品種の識別が可能であった.染色体の特定部位におけるレトロトランスポゾン挿入の品種間多型をPCRにより判定し品種識別を行う方法は,DNAが断片化した加工品の分析に適する,再現性が高く操作が容易,マーカー数の確保が容易などの利点があり,高次倍数性の作物や加工品などにおける優れた品種識別マーカーとなる.
  • 田口 和憲, 六笠 裕治, 阿部 英幸, 田中 征勝
    2004 年 6 巻 4 号 p. 179-185
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/21
    ジャーナル フリー
    近年,テンサイの栽培において,作付けの約95%を占める紙筒移植栽培にかわり,省力・低コスト化の図れる直播栽培が見直されている.直播向けテンサイ品種の育成は,初期生育と密接に関係している真正種子重の大きい品種が有効である.しかし,従来の真正種子重の測定は,全て手作業に依存していたため,検定に多大な労力と時間を伴うものであった.そこで,近赤外分光法により,簡便かつ効率的な真正種子重の推定方法を検討した.その結果,粉砕したテンサイ果実の1100 nm~2500 nmのスペクトルのうち,2310 nm~2346 nmなどの脂質に帰属されるスペクトルを中心に定量分析を行うことにより,果実に占める真正種子の比率を求める検量線を作成することができた.作成した検量線はPLS回帰分析の結果,要因数を5とすることで,標準誤差(SECおよびSEP)2%程度の推定が可能となり,実測値と近赤外分光法による推定値との相関係数は0.81であった.さらに,この推定した比率と果実重の積から算出した真正種子重は実測値と高い相関関係(r = 0.91)を示した.以上のことから,テンサイの真正種子重は,近赤外分光法により効率的かつ実用上問題の無い精度で推定できることが明らかとなり,直播向け品種の育成に応用することができる.
  • 野澤 樹, 中井 弘和, 佐藤 洋一郎
    2004 年 6 巻 4 号 p. 187-193
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/21
    ジャーナル フリー
    日本産ヒエ属5種を用い,ヒエ属で同定されているマイクロサテライトおよびInter simple sequence repeat(ISSR)領域の多型を調査した.日本産ヒエ属で多型を示す3つのマイクロサテライトマーカ(EC1,EC3およびEC5)を選抜し,検出された合計16アレルの塩基配列を決定した.これらのアレルの組み合わせによって供試170系統を14のタイプに分類した.ヒエにみられたタイプはイヌビエにみられた11タイプのうちの2タイプに限定され,4倍性であるタイヌビエは6倍性の他の種と明確に区別することができた.またISSR領域の多型の解析でもヒエ属5種143系統を14のタイプに分類できた.ここでもヒエでみられたタイプがイヌビエ9タイプの中の1タイプに限定された.これらの結果からヒエがイヌビエのタイプの限られた一部から栽培化されたと考えられる.
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