育種学研究
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7 巻, 2 号
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原著
  • 藤井 潔, 早野 由里子, 杉浦 直樹, 林 長生, 井澤 敏彦, 岩崎 眞人
    2005 年 7 巻 2 号 p. 75-85
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/14
    ジャーナル フリー
    インド型イネ「Modan」に由来する穂いもち圃場抵抗性遺伝子Pb1の発病抑制効果を定量的に評価する目的で,「黄金晴」(Pb1-+) / 「月の光」(Pb1)の交配後代に由来する約2,000のF7組換え型近交系(RILs)から作出したPb1座に関する3種のF8準同質遺伝子系統(NIL)ペアと, Pb1座およびイネ縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-i座に関する「コシヒカリ」のNILとを用いて2ヶ所の検定地で2ヶ年にわたりいもち病抵抗性検定を行った.Pb1遺伝子の発病抑制効果は,葉いもち<止葉葉いもち<穂いもちの順に高く,イネの発育ステージの進展に応じてより強い圃場抵抗性を発現した. Pb1の罹病籾率低減効果を示す「防除価」は,2 ヶ年ともに平均93で極めて高い値を示し, Pb1は,幅広い穂いもち発生条件下において高い発病抑制効果を発現した.Pb1座に関する3種のNILペア内で Pb1を持つNILと持たないNILとの精玄米収量比は,穂いもち少発生条件では0.78 ~ 1.29(1.07±0.18)と1に近かったが,多発生条件では2.40~16.22と大きく,穂いもち多発条件ほど減収軽減効果は高かった.また,穂いもち多発生条件下で, Pb1を持つNILは,持たないNILより精玄米歩合が有意に高く,千粒重が有意に重く,玄米蛋白質含量が有意に低く, Pb1の穂いもち発病抑制効果により,品質および食味低下を軽減する二次的効果が認められた.
  • 新村 和則, 金川 寛, 三上 隆司, 福森 武
    2005 年 7 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/14
    ジャーナル フリー
    本研究では日本国内で栽培されている水稲うるち品種の中から,作付け面積の約99%のシェアを有する130品種(好適酒造品種は12品種)を供試品種とし,これらの品種をすべて判別できるマルチプレックスPCRプライマーセットの開発を試みた.供試した原種または原々種について,供試品種間での多型DNA断片の塩基配列を決定し,15組のSTS(Sequence Tagged Sites)化プライマーを設計した.これらのプライマーを1組ずつ用いて130品種それぞれについてPCRを行ない,品種特有のバンドについて確認した.設計した15組のプライマーが互いに干渉しないよう塩基配列やプライマーの組み合わせ,PCR条件などを検討し4セットに集約した.マルチプレックスPCRを行ない,すべての品種を判別できることを確認した.次に,複数の都道府県で栽培されている12品種を用いて,「コシヒカリ」,「ひとめぼれ」,「ヒノヒカリ」,「あきたこまち」,「キヌヒカリ」,「日本晴」,「ササニシキ」,「ハナエチゼン」,「祭り晴」,「あさひの夢」について,これら4つのマルチプレックスPCRプライマーセットを用いてPCRを行ない,それぞれの品種において品種内変異が生じないことを確認した.以上の結果から,本研究に用いたマルチプレックスPCRプライマーセットは,日本国内で栽培されているイネの品種判別に有効であると考えられる.
  • 永畠 秀樹, 山元 皓二
    2005 年 7 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/14
    ジャーナル フリー
    温度勾配ビニルハウス(Temperature Gradient Chamber: TGC)を利用し,温度上昇に伴う品質低下程度の品種間差異について検討した.TGCを用いることで,登熟期の温度条件のみが異なる条件を設定することが可能であった.5品種について,高温登熟性の指標として,白未熟粒発生率,乳白粒発生率,基白粒・背白粒発生率と登熟期間の平均気温の関係について調査したところ,「ひとめぼれ」は乳白粒,「新潟早生」は基白粒・背白粒の発生率が他の品種よりも特異的に高く,多発する温度域も低いことが示された.また,設定した作期によって,白未熟粒の発生率や白未熟粒の種類は,高温に遭遇する時期や検定の温度条件で変化し,高温登熟性の評価に影響を与えることが示された.
  • 木下 厚, 岡本 吉弘, 石村 櫻, 佐竹 徹夫
    2005 年 7 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/14
    ジャーナル フリー
    イネの浮遊葯培養において,カルス誘導時の葯密度(培地1 ml当たりの置床葯数)がカルス形成率におよぼす影響,およびカルスに付着した液体培地の除去が植物体再分化率におよぼす影響を明らかにした.生理的に均質な葯を供試するため,ポットに密植栽培したイネの主稈穂の特定位置の穎花から1核中期~後期の花粉を含む葯を採取した.1区当たり1000葯前後を供試し,カルス誘導(液体培地で35日間),カルス増殖(寒天培地で7日間),植物体再分化(寒天培地で60日間)の三段階培養法で培養した.水稲品種「キタアケ」の葯を,0.9葯/ml ~ 12葯/mlの範囲で5段階の密度で液体培養しカルスを誘導した.カルス形成率は,0.9葯/ml ~ 6葯/mlの範囲では葯密度の低下に伴ない増加したが,6葯/mlと12葯/mlとの間では明らかな傾向が認められなかった.カルス誘導時の葯密度は緑色植物再分化率に影響しなかった.次に,水稲品種「キタアケ」および「きらら397」の葯を供試し,液体培地で誘導したカルスを寒天培地に移植する時に,カルスに付着した液体培地を1 ~ 2秒間濾紙で除去すると,除去しなかった場合(慣行区)に比べて緑色植物再分化率が13 ~ 18%増加した.以上の結果より,イネの浮遊葯培養の効率は,カルス誘導期に3葯/mlあるいはそれ以下の葯密度で培養すること,および液体培地で誘導したカルスを寒天培地に移植するときにカルスに付着した液体培地を濾紙で1 ~ 2秒間除去すること,によって高められる.
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